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広島市医療・福祉従事者懇親会コミュの3/23本日のトピック

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【未曾有の高齢者虐待時代がくる?】
2007.03.22 更新

 神奈川県藤沢市で、寝たきりの妻の介護に疲れた74歳の男性が、妻をバットで数回殴ったうえにノミで胸を刺して殺すという凄惨な事件が起きたのは昨年8月のことだった。今年3月、この事件で殺人の罪に問われた男性の判決公判が横浜地裁で開かれ、懲役8年の求刑に対して3年の判決が下った。「昼夜を問わない介護に疲れ、将来に絶望して心中を決意した心情を短絡的とは評せない」と情状を酌みながらも、地裁は執行猶予をつけず、実刑とした。男性に認知症の症状が出ているため、「子らが被告を受け入れる状況になく実刑をもって臨むしかない」というのがその理由であった。

 近年、介護をめぐる悲惨な事件があいついでいる。18年にもわたって母親の介護をひとりで担ってきた足利市の男性が、「死にたい」と訴える母親に睡眠薬を飲ませて殺した事件、認知症が悪化した母親の面倒をみるために職を失った京都市の男性が、生活保護の申請を却下されてアパートの家賃も払えなくなり、母親本人の承諾を得て絞殺した事件など、たいていの介護殺人に執行猶予がつくなか、「被告の面倒をみる親族がいない」という理由で実刑となった藤沢市の事件は、家族介護の将来に暗雲がただよっていることを予感させた。

 それに関連して気になるのが、最近、介護放棄による殺人が目立つ点である。昨年暮れに広島市で寝たきりの男性が衰弱死した事件では、妻と2人の息子が「放置すれば死ぬと思ったが面倒くさくて」介護を放棄し、3人そろって殺人容疑で逮捕された。昨年秋に、やはり衰弱死した大阪市の寝たきり女性の場合は、夫と長男、長女の3人が「悪臭がひどく不潔」「部屋にはいると気分が悪くなる」といって褥創を放置し、保護責任者遺棄致死の疑いで書類送検された(のちに不起訴)。

 この2つの事件の家族たちは、公的サービスを利用していなかった。外部に助けを求めようとせず、死ぬとわかっていて家族を放置するこの精神の荒廃を、昨年4月に施行された高齢者虐待防止法は食い止めることができるのだろうか。地域で高齢者を見守るシステムが崩壊し、家庭が孤立しているところに問題がある、と指摘する識者は多い。しかし、事態はすでにそのレベルをはるかに超えて進んでいるのではないか。

 2000年に公的介護保険が創設されたとき、「消費者が介護サービスを選べる画期的な制度だ」「介護を家庭におしつける仕組みにすぎない」「理想的とはいえないが次善の策である」等々、さまざまな議論がなされた。それから7年、まがりなりにも制度は定着し、いまや250万人の高齢者が在宅サービスを利用するに至ったが、その制度の中核をなしているのは「家族」の存在である。家族がいない、あるいは家族に見捨てられた要介護高齢者は、十分なサービスも、サービスに関する情報も得ることができない。

 少子化がこのまま進めば、やがて子のない高齢者が珍しくない時代が来るだろう。だが、それより先に、家族が「介護装置」として機能しない時代が来るのではないか。いや、家族のもつ介護機能はもともと、誰もが経験したことのない超高齢社会を支えられるほど、強靱なものではないのではないか。となれば、救いの道は施設介護しかないが、それもまた困難な選択である。

 介護保険財政は、2000年の制度開始以来、利用者の増加により、年平均10%以上のスピードで膨らんできた。初年度3.6兆円だった総費用は、いまや7兆円に達している。これ以上の保険料値上げを防ぐため、2005年秋には大規模な介護報酬の改定が行われ、それまで保険から給付されていた施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、療養型病院)の居住費(光熱水費や室料)と食費が利用者負担となった。その負担をまかないきれない利用者は、退所して家庭に戻らざるを得なくなったのである。

 厚生労働省は、介護施設に効率的な経営を求めている。だが、現状ではそれは難しい。結果、全産業平均時給額が1830円であるのに対し、施設介護職員の時給は1210円、ホームヘルパーは1142円(いずれも2005年)に抑えられている。これでは有能な人材は集まらず、質の高い介護は望めない。いうまでもなく、人手不足は身体拘束や虐待の温床である。

 家庭と施設、どちらを選んでも、高齢者が虐待にあう条件は揃いすぎている。団塊世代700万人を待ち受けているのは、このような「前門の虎、後門の狼」的な状況なのである。個人がこの状況を乗り切るためには、ホテル並みの高級有料ホームにでも入居する以外にない(高価なサービスが必ずしも優良である保証はないが)。社会として対策をとるなら、「40歳以上」という現行の介護保険料負担者を、40歳未満にまで広げることだ。2004年に一度は提案され、厚労省が断念した案だが、再度検討せざるを得ない日が遠からずくるだろう。

(舘石淳 たていし・じゅん=『日本の論点』スタッフライター)

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