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すごいぞ! キューピット仮面コミュの#01 え〜っ!?俺が愛のキューピッド?

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 太谷ゆ〜ごは、普段より2分遅く家を出た。いつもギリギリで電車に乗るので、この2分の遅れは電車に乗れるか乗れないかのボーダーラインだった。原チャリを飛ばしながら、駅までの道のりを急ぐ。普段は混んでいる道も、今日は何故かスムーズに流れており、いくつかある信号も待たされることなく通過できた。
「順調、順調。このままなら、余裕でいつもの電車に乗れそうだ。」
 それは長い直線を過ぎて、やや急なカーブにさしかかった時だった。一組のアベックが、沿道から車道の方へ歩き出てきた。そこに横断歩道はなく、まして一時停止の表示などあるわけもない場所で、しかも彼ら二人はお互いの顔を見つめあったまま歩いているので、バイクが近づいて来ることにまったく気付いていない様子だ。慌ててゆ〜ごはクラクションを鳴らした。
「おいおい、うそだろ。どおしてだよ〜。」
 どういう訳か彼らには、バイクの音もクラクションのそれもまったく聞こえていないといった様子で、まだ見つめあいながら歩いている。ゆ〜ごは急ブレーキをかけ、ハンドルをきった。もっと早くブレーキかけろよ、おい。と、つっこみを入れたいかもしれないが、かなり飛ばしていたのと、あまりにも作り話の様な光景だったので、つい遅れてしまったのだ。人間とはそういうものだ。
 スピード、ブレーキ、ハンドル。この三つの力が同時に作用すればどのような結果を得られかは、小学生でも解ける簡単な方程式である。ゆ〜ごはバイクともどもガードレール及び電信柱の方向へ、物凄いスピードで突っ込んでいった。
「*@# $?!!!!。」
 表現することが困難な奇声を発しながら、ゆ〜ごは自分の人生の最終局面を迎えたことを悟った。
 そのときであった。突然目の前に光の球が現われ、ゆ〜ごの体をバイクとともに包みこんだ。身の周りから発する光のため視界がまったく効かなかったが、体が宙を浮くような感覚を味わった。ゆ〜ごはそのまま意識が遠のいて行くのを感じた。
 
「う、う〜ん。」
「お気づきになられましたか。」
「ここは。」
「病院じゃないですか。見ればわかるでしょ。」
「何故ここに。」
「何故ってあなた、駐輪場で貧血おこしたんでしょう。」看護婦は半ばあきれ顔で話した。「どなたか親切な方が、救急車呼んで下さったんですよ。」
「は、はあ。でも、」ゆ〜ごは何か釈然としない表情で尋ねた。「確か目の前に人が飛び出てきて、その人達をよけようとして・・・。」
「なに寝ぼけたようなことを言ってるんですか。倒れたときにどこか打ったのかしら。とにかく気分がよくなったのなら、さっさと出て行ってくださいね。こっちだってあなた一人に構っていられるほど、ひまじゃないんですから。」
 まだ色々と聞きたいことはあったのだが、あの「トド」のような看護婦に慌ただしく追い出され、しかも帰り際に「お金無いかもしれないけれど、ちゃんと栄養のあるもの食べてくださいね。」などと言われてしまったので、それ以上なにも聞く気がなくなってしまった。
「ああ、今から会社行ったら昼だなあ。でも金ねえしなあ。しょうがねえから行くかなあ。」
 しぶしぶゆ〜ごは会社に向かった。そのときすでに、彼の体に異変が起こっていたとは当然知らずに。
 
 ほとんど仕事も手につかぬまま、ゆ〜ごはその日の仕事を終えた。まだやり残している仕事もあったが、とても残業をする気にはなれなかった。何かぼんやりした気分で土手の上を自転車に乗りながら駅まで走っていると、前から今朝の二人が歩いてくるのに気がついた。(それも今朝と同じように、二人見つめあったままでだ!)どんどん二人が近づいて来るにつれ、ゆ〜ごは次第に不安な気持ちに包まれていった。
「今度は真正面なんだから、気付いてくれるよなあ。」
 しかし彼等は、予想に反してというか、予想どうりというか、真直ぐとゆ〜ごの方へ進んできた。「わわわわわ、またかまたかまたか、どうしてどうしてどうして。」と、心の中でつぶやいているうちに、もう避けきれないところまで二人は接近してしまっていた。けれどもゆ〜ごは、もう半分開き直っており、どうでもいいやといった気持ちでブレーキもかけず突き進んでいった。
 すると、やはり今朝と同じようにゆ〜ごの体の周りを光の球が包みこみ、ゆ〜ごから視界を奪った。けれども今度は、意識をはっきりと持っていることができた。視界が効かないのではっきりしたことは解らないが、ゆ〜ごはどんどん上空へと浮かび上がって行くようだった。そしてその浮上感が止まったかと思うと、今度は物凄い速さで上下左右と光の球体は進み出した。しばらくその状態が続くと、突然視界が広がった。その光景は、いままで数多くの人間が想像してきた、まさに「天国」のそれであった。
「ゲッ!俺、死んじゃったのかよ。」
 ゆ〜ごがその場で自分の手や足を叩いたりつねったり、夢なら痛くないかも知れないけど、死んだ場合は痛いのかなあなどと考えていると、いつのまにか目の前に一人の男が立っていた。身長2メートルは超える体に、黒の帽子、黒のスーツ、白い手袋、その手にはステッキを持っている。そして浅黒い顔には緑色に光る目が、帽子のつばの下からかろうじて見えている。
「ベ、ベム!」
 ゆ〜ごは、思わず叫んだ。その男の姿は、小さいころテレビで見た「妖怪人間ベム」そのものであったのである。
「なんでベムがこんなところに。ベラ、ベロはどうした。」
(ナニヲイッテオル。ワタシハベムデハナイ。)
 ゆ〜ごの質問に答えた男の声は耳から聞こえたものではなく、直接脳に響きわたるものであった。「テレパシーだ。」ゆ〜ごはすぐにそう感じた。
(ワタシハ、ニンゲンタチノコトバデイウトコロノ、「ゴッド」ツマリ「カミ」デアル。)
「か、神だって。そんな格好した神なんて、今まで見たことないぞ。」
(ホンライノスガタハ、オマエタチガヨクテレビヤマンガデミルヨウナスガタヲシテイルノダガ、ソレダトスグニ「カミ」ダトバレテシマウ。ソレデ、コノヨウナスガタデアマリメダタヌヨウニシテオルノダ。)
「十分目だっていると思いますが。」
(ワカイクセニ、アマリコマカイトコロヲキニスルモノデナイ。)
「ま、まあそれは良しとしよう。で、あなたがその神だとして、神様がいったい俺になんの様なんだ。」
(ヨシ。マズソノマエニ、ヒトツテイアンナノダガ、コノヒョウゲンホウホウハヒジョウニツカレル。ドウイウコトカトイウト、カンジガツカエナイタメイミヲトリチガエラレルオソレガアル。サッキハ「カミ」ヲ「ペーパー」トマチガエラレナイヨウニ、マエモッテ「ゴッド」トイッテオイタガ、コンナコトヲイチイチシテイタラトテモジカンガカカルシ、ソレヨリモナニヨリモ、ヒジョウニヨミヅライデアロウ。ソコデオマエトオナジヒョウゲンホウホウヲツカイタイノダガ、イカガナモノカ。)
「できるんだったら初めからそうしてくれればいいじゃないですか。こっちもいつ言おうかと思っていたんです。」
「よし、わかった。では用件を言おう。最近人間界ではストーカーだの、援助交際だの、とても正常だとは思えぬ雌雄関係が頻発しておる。」
「あ、あの、雌雄ってまるで動物みたいに。」
「神の立場から言えば、犬も猫も人間もあまり差はないのだ。先を続けるぞ。そこでこの腐った雌雄関係を打ち砕き、真の眼輝輝的心臓爆爆的熱昇昇的気持浮浮的恋愛純愛を世の中にもたらしてくれるものは居らぬかと探していたのだ。」
「で、俺が見つかったと。そうだよなあ、俺って純粋だしなあ、正義感強いしなあ、そういう役は俺みたいな奴じゃなきゃつとまんねえだろうなあ。」
「いや、それは違う違う。ちょっとおだてれば、すぐ調子に乗って引き受けそうだったからおまえを選んだのだ。で、やってくれるか。」
「なんか、褒められてるのかけなされてるのかよくわかんないけど、面白そうだからやってみっか。で、まずどうすればいいんだ。」
「おまえの左手首をよく見ろ。」
 ゆ〜ごは、自分の左手首を見た。そこにはいつものように「G-SHOCK」の腕時計がつけられている。もう6時半回ってるよ。早く帰えんねえと、また怒られるよ。などと思いながら時計を眺めていると、とんでもないことに気がついた。
「Qショック〜?」
 時計に書かれているはずの「G」の文字が、 「Q」に変わってしまっていたのだ。
「なかなかおしゃれだろ。そのボタンを押してみなさい。」
 ゆ〜ごは言われたままにボタンを押した。すると、液晶部分に青を背景に赤い文字で「Q」と現われ、その文字がどんどん大きくなり頭上に水平に浮かび、ゆ〜ごの体をまるでスキャンするように「Q」の輪の中心を通しながら降りて消えた。それと同時にゆ〜ごの体は、異様なコスチュームに包まれていた。青い仮面、全身白タイツ、背中にはあまり大きくはないが羽がついている。そして額と胸には「Q」の文字。
「今日からおまえはその姿で謎のキューピット仮面となり、世界中に愛をもたらすのだ。細かいアイテムの使い方は、そのつど教えてやる。」
「はあ。でも何故「Q」なのですか。」
「それは「Qpit仮面」の「Q」に決まっておるだろ。」
「お言葉ですが、「Qpit」でなくて「Cupid」ではないでしょうか。」
 一瞬神の顔が青ざめた気がしたが、もともと顔色は余りよくないので本当のところはよくわからなかった。
「ばばば、ばかもの。それではオリジナリティーが無いではないか。わたしはあえて綴を変えたのだ。そんなことは気にせず、さっさと戻って仕事をしろ。」
 
 気付くとゆ〜ごは、原チャリで家へと帰る途中であった。腕を見ると、そこにはきちんと「Q-SHOCK」が巻かれているので、夢や幻では無かったことが解る。
「これからどうすりゃいいんだろ。ま、なんとかなんべ。」
 ゆ〜ごは、家へと急いだ。そのときにはバイクが、一時期奥様方がみんな乗ってたスクーター「薔薇」に変わっていたことなど、家に帰るまでゆ〜ごはまったく気がつかなかったのであった。

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