澁澤龍彦コミュの澁澤龍彦邸の居間にある、マルキ・ド・サド直筆の手紙。

北鎌倉の澁澤龍彦邸の居間にある、マルキ・ド・サド直筆の手紙。フランス革命後である。この実物を初めて見たときは震えた。サドは大学の卒論のテーマだった。後年、サドを書くときになぜ澁澤さん直々の教えを請わなかったのか、後悔することしきりなのだが。サドの作品では「アリーヌとヴァルクール」(澁澤訳では「食人国旅行記」) という長編小説が一番好きだ。これはサドの中ではめずらしくポジティブでユートピアが描かれている。原書でも翻訳でも読んだ。もっとも一番衝撃を受けたのは「悪徳の栄え」だったけど。自分が日頃信じている価値観がいかに柔なものだったか、思い知らされた。学生時代、南仏のラコストにあるサドのお城を訪れたこともあったっけ。

ぼくは10代から20代にかけて澁澤龍彦に導かれるまま、サドやユイスマンス、リラダンやマンディアルグなどの18世紀から20世紀にかけてのフランスの幻想的かつ耽美的、高踏的な文学やアンドレ・ブルトンなどのシュールレアリストの作品ばかり偏愛してきた。読書に大幅な偏向があり、そのためドストエフスキーなどを読んだのは30歳も過ぎてからだった。
澁澤龍彦夫人の龍子さんからよく「秋山さんは澁澤のおかげで人生を狂わされたんじゃないの」とからかわれるのだが、澁澤ファンとしてはそれで本望である。

コメント(1)

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[1] mixiユーザー 10月08日 20:55

「人生を狂わされた」の句に反応したくなりました。ご自身で認めめておられるように、澁澤龍彦に狂わされたことに悔いはないことと思いますが。

反応したくなったのは、もうすぐ高齢者という年齢で来し方を振り返って思うに、僕自身は一回限りの人生を「三島由紀夫に狂わされた」と思う面があるからです。ほとんど誰に言ったことも、書いたこともなかったことですが。

三島自身、自らを「ごった煮」と評しているように、さまざまな面を持つ多面体ですが、その中の「ニヒリズム」と呼んでよい部分に最も惹かれ、日本文学の大学院に行くきっかけになりました。ただ、その全集を読み終わった頃には、三島が嫌いになっていたというか、「こんな人と付き合っていては生きていけない」と思うようになりました。三島から離れ、もっと広い世界へ出ようと、日本を発ってニューヨークで生活することを選んだのでした。

澁澤氏は、昔から一部に熱狂的なファンがおり、また何度かブームもありましたが、僕自身にとっては、正直に振り返ればファッションでしたが。

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