ギター一本で歌うイメージの強いAZUMIだが、このアルバムでは多彩な側面を見せる。まず冒頭から、今アルバムのタイトルにもなっている「御堂筋」のピアノバージョン。アコースティックピアノをバックに、戸惑い揺れる心情を切々と歌い上げる。スリリングなギターイントロで空気感は一変、AZUMI本来の荒々しくもどこか切ない「New blues shoes」と続き、驚かされるのが「星の数だけキスをして」だ。フルバンドにオーケストラを加えたゴージャスなトラック、70年代ソウルを彷彿とさせるメロウな旋律に乗せた優しくも力強い歌声にAZUMIの新たな可能性を予感させる。これだけ大編成のアレンジにも見劣りしないAZUMIの歌の説得力は見事だ。続く「まぼろし」の歌詞の孤独感は独特で、聴く者の心のひだにしみ込んでくる。「天王寺」ではブルース風味ながら軽めでポップなアレンジをほどこし、大阪出身でなくともディープ大阪にいざなってくれる。「そこにあるところ」では、きわめて少ない音数で、ここ!というところに絶妙に絡んでくるギターソロに痺れる。AZUMIギターの真骨頂だろう。そしてラストの「御堂筋」は、なんとフルオーケストラだ。AZUMIの歌声にストリングスの荘厳な響きがこんなに合うことを、いったい誰が想像したことだろう。聴き終えたとき、誰もが心地よい浮遊感で暫くは立ち上がれない・・・「御堂筋」はそんなアルバムだ。