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十二鳥コミュの短編小説『太陽サークル』

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漸く眠りについたと思った瞬間、ピピピッ…という目覚まし時計の音が聞こえた。

時刻は午前6時。
隣で眠っている夫を起こさない様に、私はそっと布団を出た。

(あぁ、もう朝になっちゃったか…。)

鳥のさえずる声は聞こえて来なかったから、昨晩はきっと夜明け前には眠りに就けていたと思う。

最低でも2時間は寝たハズだけど、それでもほんの一瞬しか眠れてない感覚だった。


どうしよう…。

大事な日だというのに、ほとんど眠れなかった。


(気が弱いな、私は…)

情けないほど自分でもそう思う。
少し憂鬱な事があると、色んな事を考えて眠れなくなる。


そう、今日は私にとってとても憂鬱な事がある。
専業主婦の私の毎日とは全く違う一日が。




午前7時50分


夫を仕事へ送り出すと、私の憂鬱はさっきよりも一層重くなった。

今日も夫は、いつもと変わらない寝ぼけ顔のまま出勤した。

いつもと変わらない顔…。
その顔が羨ましく思えた。
きっと今日も、夫の仕事はいつもと変わらないのだろう。

別に夫の仕事が楽だ、なんては思っていない。

帰宅する彼の手は、洗っても落ちない程の機械の油汚れが着いていて、私はその手を見る度に毎日感謝している。
だから毎日大変だとは思うけれど…。
それがいつもの事で、今日も変わらずの一日ならば…。
やはりそれは今日の私に、羨ましく思えた。

専業主婦の私の日課は、いつもならばこの後は洗濯をして、台所の洗い物に部屋の掃除。
それが終われば、お昼までテレビを観るか、買い物なのだけれど…。

もうそろそろ出掛けられる様に、家事を急がなければならない。

(今日は部屋のお掃除は止めておこう、
えっと…、9時半には家を出たいから、買い物も家に帰ってからにしないと…、
あ、台所の片付けはやってしまわないと…、
どうしよう、お化粧してる時間あるかなぁ…)

普段は段取り良くやってる事が今日は何も進まない。

結局は家事すらままならないで、家を出なければならず、私にとって最も憂鬱な一日の始まりなった。


玄関の鍵を閉めてアパートの階段を降りる。
季節はすっかり秋めいていて、空は晴れているけれど陽射しは優しかった。

(…なんでこんな良い天気の日に、私はこんなにも憂鬱な気分にならなくちゃならないんだろう…)

みんなは憂鬱じゃないのかな、なんて思う。


みんなとは近所の主婦仲間で作ったボランティアサークルの人たち。


こんなふうに言ったら悪いと思っているけれど、今日わたしを憂鬱にさせる原因の人たちだった。


憂鬱の始まり…。
それは約二ヶ月前の事だった。

サークルの人たちは、みんな専業主婦という繋がりで、お茶したりする友達になったのだけれど、ある日、急にこんな話しになった。


お世話好きのおばさんが、「どうせ毎日に持て余す時間があるなら、みんなでボランティアサークルとか作らない?」と…。

私たち主婦仲間の中には、既に子供が独り立ちした人もいれば、小さい子供のいる若い夫婦もいるし、私みたいにまだ子供のいない夫婦もいる。

みんながそのボランティアサークルで活動出来るほど時間に余裕がある人たちではないと思ったのだけど…。

その時は、意外にもその話しが盛り上がって、賛成する人が多かった。

私もみんなとは結構楽しくやれていたので、反対する気持ちもなく参加してみた。
きっと草むしりや、ゴミ拾いとかするんものだと思っていたから。

気の合う人たちとだったら、そういう活動も悪くないと思っていた。

元々は私もそういう気質の人間なのだ。


私は結婚前の会社勤めの頃は、みんなとひとつになって、仕事をやり遂げる事の爽快感が何より好きだった。


主婦になって5年にもなると、久しくそんな爽快感は味わってなかった。

だから乗り気で参加したのだけれど…


いざ活動となったら思っていた内容と違った。

最近、町内に独り身の老人が増えたので、簡単な事でいいからヘルパーみたいな事をしよう、という事になった。

内容は専門的な事とまでいかない物の、家事の簡単な手伝いをしたり、話し相手になってあげたりという。

安易な活動内容かもしれないけれど、町内から孤独死等を防ごう、素人でも出来る事をしてみようという事になった。

お世話好きのあのおばさんらしい発想だった。



けれど…。
これが私の最も苦手な事だった。

専門的じゃないと言ってもヘルパーの真似事なんて、私にはそんな知識も経験も無いし…、
みんなで何かをする事が好きと言った手前、矛盾しているかもしれないが、私は大の人見知りなのだ…。


私は人と仲良くなれれば、トコトン仲良くなれるけれど、初対面では、かなりヒドイ。

何から話していいのか、何を話せばいいのか、どうすれば打ち解けられるか、全く解らない。

そういう面はいつも相手任せなのだ。

相手が歩み寄ってくれれば良いけど、もしも相手も人見知りなら、半日一緒にいても仲良くなれない自信のある人間なのだ。

初対面で老人と一対一なんて、私にとって地獄以外の何物でもなかった。



(はぁ…)
紹介された訪問宅へ向かう途中、何度もこんな溜め息が漏れた。

町内に住む人と言っても、老人の方となんて、ほとんど面識がない。

しかも今日の人は、最近この近所に引越ししてきたばかりだ。

頼に寄って、そんな人が私に廻って来るなんて、相手にとっても私にとっても、残酷だ。


(私、今日はきっと占い最低だろうな…)

そういえば今朝テレビの占い見てくるの忘れた事を思い出した…。


私はアレを観ないと一日が始まった気がしない。

もう、今更遅いけど…。

(多分、対人面で×だな)


あぁ、なんだか自分が情けない。
人見知りとか子供の頃から治らないんだ。
悪い所は三十路を過ぎても変わらない。

(あ、ううん、そうでもないかも…。
子供の頃は、コレに加えて、臆病とかもあったな…)

私は人の集まる所が苦手だった事を思い出した。

それは、うんと小さい頃。
多分小学校の三年生くらいまで。

いつの間にか、臆病な所は治ってたなぁ…。
何が原因で治ったんだろうか。

そんな事は今となっては全く思い出せなかった。

…でもあの頃はあれでも別に良かったんだ。

人見知りな事や、臆病な事なんて、子供の頃は、そんなに気に病まなくても、それなりに楽しく遊んでたもの。


(あぁ、子供の頃に帰りた〜い)


…そんな不毛な事を考えている間に、訪問宅に辿り着いてしまった。

家は小さな平屋造り。
多分借家だろうけど、小さいながらも庭があるし、アパート暮らしの私には少し羨ましい。
庭の奥の方には、古びた自転車が見える。
いかにも昭和という感じの使い込んだレトロな自転車で、きっと老人の愛車なのだろうと思う。

玄関には表札があり
『比留間』
と書かれていた。

(うん、ヒルマさん、間違いないわね…)

この時、私は何となく、この『比留間』という名前が心に引っ掛かった。

(きっとこの界隈では珍しい苗字だから、だろうな…)

そんなふうに思った。

私は一応おばさんの紹介状に書かれた名前と表札を確認して、インターフォンを鳴らした。

「御免下さぁい、えっと…、太陽サークルの者です」

『太陽サークル』とは、おばさんが命名した私たちのサークル名なのだけれど、私にはあまりシックリ来ない名前で、名乗るのは恥ずかしかった。

お願いだから、「どちら様ですか」なんて聞き返しはしないで欲しい。

二度もこのサークル名を名乗りたくない。


「…………」

しかし、聞き返しどころか、返事や物音すらなかった。

腕時計をみると約束した時刻に遅れはない。

(まさか…、)

一瞬嫌な予感で足が竦みかけたが、すぐに奥から足音が聞こえた。


「……ハイょ、ハイよ…」

玄関の曇りガラスの引き戸にのんびりとシルエットが見えた。

私は思わず空に向けて、深い安堵の溜め息を吐いた。



今日私たちサークルに依頼した方は『比留間歳蔵さん八十八歳』

額やら口許には深い皺が多くて、厳めしい顔のおじいさんだった。

比留間さんは玄関を開けるなり、いきなり私をギロリ睨らんだ。

いや、睨んだというより、きっと深い皺のせいでこういう目付きに見える人なのだろうと思った。


(それにしても、この顔付き…)

口は皺が多いけど、ヘの字の一文字。

なんだか、見るからに寡黙そうで、とても私が願うような歩み寄ってくれるタイプの人じゃないと思えた。

「あ、あの私…、太陽サークルの…」
私は動揺して、聞かれもしないのに自分から太陽サークルを名乗った。

人見知りの私は、最初の一言が如何に大事な事か、よく知っている。

ここで先に言葉が出ないと、後々まで微妙な空気になって最後まで気まずくなってしまう。

比留間さんの雰囲気を見ると、太陽サークルの名前がシックリ来ないとか、言ってる場合じゃなかった。


すると、これが良かったのか、それとも比留間さんが私の想像する人と違ったのか、皺の奥にある眼が優しくほころんだ。


「…どうぞ」

ホッとした。
私の憂鬱や緊張は、この一言で幾分和らいでいた。



家の中へ入ると、比留間さんはまだ引越しの片付けが終わって無かったのか、大きなダンボールを茶の間に置いていた。


「散らかっていてすみません…、年寄りの手では中々片付かないんです」

そう言って申し訳なさそうに、イソイソとダンボールを縁側の方へ押した。

(…あ、今日は引越しの片付けか…)
私は比留間さんがサークルをお願いした理由を察した。

けれど正直いうと少し困った。

これじゃヘルパーどころか、完全なお手伝いさんだ…。
卑しい考えかもしれないけど、老人とは言え見ず知らずの人に、無償でやる事じゃないように思えた。

きっとあのオバサン、アチコチの老人に「何でも言って下さい」みたいな事を言ってたんだろうなぁ…。

(こんなの私一人じゃツライよ…)

憂鬱が和らいだ替わりに、腹立たしくなってきた。
(ケータイからあのクソババアに電話して手伝わせてやる、こんな事ならサークルだって話しが違うし!)


そう思ってバッグから携帯を取り出そうとした時、比留間さんが「座って下さい」と言った。

「あ、引越しの片付けですよね?直ぐ始めちゃいませんか?」


ダラダラしてたら日が暮れて夕飯の支度が遅れてしまうし、夫だって帰って来てしまう。
来た以上は仕方がないから、こんな事はサッサと終わらせて早く帰ろう。

「ちょっ…、え、手伝い?」

比留間さんは皺に隠れた目尻が開くほど驚いた顔をした。

「え?違うんですか…」

「ハハハ…、違いますよ」

比留間さんは笑いながら、また優しく目尻を弛ませた。
心の中でいろんな勘繰りをした自分が、恥ずかしかった。



私が座ると比留間さんは、馴れた手つきでお茶を注いでくれた。

その仕草に独り暮らしの永さを感じた。

「…ありがとうございます」

私がお客さんになってしまった。

何だかさっきの自分勝手な勘ぐりといい、尚更に自分が情けない。

「いただきます…」
私は正座したまま深々と頭を下げた。
まるで先生に叱られた子供のように。


「……今日、太陽さんにお願いしたいのはね…」

比留間さんは縁側から見える庭に眼をやりながら、話し出した。

「は、ハイ、何でもどうぞ」

(あ…)

あの世話好きおばさんが、言っていたかもしれない事を、私が自分で言ってしまった。

「大した事じゃないのだけれど、公園に案内して戴きたいのです…」


「え、公園…ですか?」


「はい…」と、比留間さんは小さく頷いた。

「……公園です、赤い滑り台のある」


「あ…」

私には心当たりがあった。
「何故、あの公園に…?」

不思議だった。

比留間さんは最近引越して来たばかり…。
この町内に公園は二つある。
けれど比留間さんが言う赤い滑り台の公園は…。


「…宜しくお願いします」

私は驚いた。
比留間さんは公園への案内を頼むのに、手を着いて私に深々と頭を下げた。


「頭を上げて下さい、そんな事でよければ喜んで案内しますから」


それでも比留間さんは、頭をさげたまま、細く震える指をついたまま、
「ありがとうございます…」
と言っていた。


(何かはあるんだろうな…、あの公園に…)

「えっと、じゃぁ、行きますか?そんなに遠くないですから…」



玄関を出る時に下駄箱の上に置かれた、四角い木箱が眼についた。

(何だろうこれ…、これも靴が入っているのかしら…)
後ろ向きに置かれているので、木箱という事以外は結局何か分からなかった。



(それにしても、あの公園がどうしたんだろう)

案内する道すがらに尋ねようと思ったけれど、深々と頭を下げる比留間さんの姿が眼に焼き付いて、私は何も聞けなかった。


公園までの道を歩きながら、比留間さんは私の後ろで、しげしげと家並みを見ていた。

「変わったんだねぇ…、この辺りも」

「え?」


聞き返したが、比留間さんは独り言のつもりだったのか、何も答えずに歩いた。


「ここですよ」

私は手を向けて、公園の入り口へ彼を促した。

中へ入った比留間さんは公園を茫然と見回している。

「ごめんなさい、比留間さん…」


「此処なのかい…?」

「…はい、六年前に整備されたんです、滑り台は劣化が酷かったので、その際に撤去されたんです」


(滑り台に想い入れがあったのかしら)

比留間さんは暫く落胆した表情をしていたけれど、一度頷くと少し淋しげに、ベンチに腰を下ろした。


私も隣に座って、公園を見渡してみた。

考えてみたら私も、この公園には永いこと来ていなかった。


昔は比留間さんが言うように、この公園には他にないような際立つ赤い色の滑り台があった。
他にも黄色い開栓塔に、木がボロボロになったシーソーボード。

サビだらけのジャングルジムに、鎖を掴むと手が汚れるブランコ。


何もかもがボロボロの公園だったけれど、懐かしく記憶に甦った。

私が就職でこの町を離れて、その後、結婚して三年目に戻って来たら…。

もう、あの公園は無かったっけ…。


不思議な気分…。

今日此処に来るまで、この整備された公園を、私は何とも思わなかった…。

ただ、(へぇ、キレイになったんだ)、なんて程度にしか思わなかった。


寂しいな…、
キレイなプラスチックボードで出来た、新しいこの遊具は、今更ながらあの頃の公園を知っている私には、何だか寂しく感じる…。


この町内も、昔ほど子供がいないから、此処があの頃みたいに賑わってる様子を見ていない。


「昔は…」
「昔は…」


思わず口をついて出た言葉が、比留間さんと重なった。

私が比留間さんを見ると、彼は私に向けて、そちらからどうぞ、と話しを促してくれた。



「私…、昔はよくこの公園で遊んでいたんです」

そう切り出した私に、比留間さんは眼を細めて、頷いた。

「私もです…、昔はよく此処へ来ていました」


(あぁ…、やっぱり比留間さんも、この公園を知る人だったんだ…)


私は、比留間さんが今日知り合ったばかりの、苦手なはずの初対面の人だという事もすっかり忘れて、話しを再開した。




私がよく此処へ来て遊んでいたのは小学生の頃だった。
学校から帰ると、当時まだ三歳くらいの弟を連れて、
母に「オジサンの所へ行って来る」と言って出掛けてた。

その時、母はいつも私に百円を渡してくれたのを覚えてる。


公園に行くのに「オジサンの所」っていうのは、今考えると凄く可笑しい。

けれど母にはその言葉で、通じていた。

当時を思い出せば、そう言っていたのは、きっと私だけじゃない。


この近所の子供たちは、みんな親にそう言って出掛けて来てたんだ。

「オジサンの所に行こうぜ」

「オジサンの所に行ってきます」って…


弟は覚束ない足で、私に手を引かれていた。

私はそんな弟の手を引きながら、「大丈夫だから、お姉ちゃんに任せてね」なんて、いつも言って公園へ来ていた。


あれは何だったんだろう…。
私は弟と公園に向かう時は、いつもケンカでもしにいく位の気合いを入れていた。

ウキウキしながら…。


それで、私たち姉弟が公園に着くと、もう砂場の方には、上級生の人だかりが出来ていた。

弟はいつもそっちに行きたいのに…、いざ公園に行くと私は迷わず友達の女の子がいる隅の方へ進んでしまった。

人だかりの中心にはいつも紙芝居のオジサンがいた。

そのオジサンが公園を賑わせてくれる人だった。

だからみんなこの公園を『オジサンの所』と言っていたのだ。


オジサンは直ぐに紙芝居を始めない。

先ずはいつも来る子供たちが集まるまでじっと待っていた。


私も紙芝居見たかった…。
弟にもいつも見せてあげたくて…。
だから公園に行く迄の道では、いつも弟に「お姉ちゃんに任せて」なんて言ってたんだろうな…。

でもオジサンの周りには、いつも大きい男の子たちや上級生のお姉さんたちがいて、私たちは結局入って行けなかった。


仕方なく公園の隅で、女の子の友達と四つ葉のクローバー探したり、シロツメグサで冠を作ってた。
オジサンが鳴らす金色の鐘が、紙芝居開始の合図だったけど、弟の手前、私は聞こえない振りしてた。

人見知りで怖がりで…、

弟にとって、私は頼りないお姉ちゃんだったのだろうと今更後悔したりする。



紙芝居が終わると、みんなが待っているのは、オジサンが売ってくれるお菓子だった。

お菓子を買う時間になると、人だかりは買った順から減りだすから、これでやっと私は弟とオジサンの近くに行く。

懐かしいナ…。
オジサンのお菓子は、全て木箱から出てくる。

そしてオジサンは、その木箱を魔法の箱と呼んでいた。

幾つかの引き出しからは、三種類の水飴に、ソース煎餅、ふがしに、カレースナック。

あ、たしかUFOっていうお菓子は人気があった。
半円型のモナカの皮に、ジャムを入れてミルク煎餅を上に一枚。
そしてその上にまたモナカを乗せると、UFOみたいなお菓子になった。

食べたかったけど、長い事そのお菓子がUFOという名前だと知らなくて…。
私はオジサンに注文出来なかった。

あれも人見知りが原因だったのかな…。

駄目だな…私は。

でも私にはUFOより好きな物があった。
小袋に入った小さな焼きそば。

手の平くらいの麺に、具なんて揚げ玉が少しあるだけだったけど、美味しくて好きだった。

持ち帰らないで、その場で食べるとオジサンがソースを足してくれてた。


あのオジサン…、今頃はどうしてるだろう。

いつも子供たちに囲まれて…、
口数の多い人じゃなかった…。
でもいつも私たちを見る眼は優しくて…。

そうだ…!
人見知りは相変わらずだけど、私の臆病が子供のうちに治ったの、オジサンがキッカケだ!

弟に紙芝居見せたくて、頑張って人だかりに入った私は、男の子に横入りされて押し出されたんだ…。
そしたらあのオジサン…。
その男の子を叱って、私と弟を紙芝居を乗せた自転車の椅子に乗せて、見せてくれた。

「今日は頑張ったお嬢ちゃんと坊やには特別だ」

オジサンは…、「今日は頑張った」って言ったの…。

私、あれがすごく嬉しくて。

このオジサンいつも私たちを見てたんだって…。

いつも公園の隅にいた私たちの事も見ててくれたんだって思えて。

確かその日…、
私はオジサンが帰るまで、弟と二人で公園にいた。

お礼がしたくて。

オジサンの自転車の箱の片付けが終わるのを、じっと待ってた。

それでオジサンの帰り際に、シロツメグサの冠をプレゼントした。

「オジサンにかい…、ありがとうお嬢ちゃん。」

「私、オジョーチャンじゃないよ、真友子っていうんだよ」

「そう、ありがとう真友子ちゃん」

オジサンはしゃがみこんで私の頭を撫でてくれた。
「オジサンは何て言うの」

私は確かオジサンの名前を聞いた記憶がある。

オジサンはあの時、私にこう言ったんだ。

「オジサンの名前は、昼間のオジサンだよ」って。

昼間の…お、オジサン…って…。



私は…。




「比留間さん…、あなた、あの時の…」


深い皺になった眼は、あの優しい眼だった。


「真友子ちゃん、公園は変わったんだねぇ…、」


あぁ、そうだ。
庭の奥に見えた自転車…。

下駄箱の上の木箱…。


比留間さんは、一度私の顔を見て、秋の空を遠く仰いだ。
「私は老いてしまった。もうオジサンなんて若さじゃないけれど…」


あの頃よりもずっと細くなった両腕を高く天に伸ばした。

「また此処で子供たちの笑顔が見たくってね…」


私は思いがけない言葉に涙が溢れた。
「おかりなさい、昼間のオジサン、これからは太陽サークルが応援してあげる!」

コメント(7)

読んでいて、紙芝居のおじさんがこのおじいさんなんだろうなとは思いましたけど、こういうお話はじ〜んときますよねほっとした顔太陽サークルの腕の見せどころですねわーい(嬉しい顔)どうやって昔みたいに子どもの集まる公園に戻していくのか!!ぴかぴか(新しい)考えつかないような結果を楽しみにしてますねほっとした顔
蓮さん…、
す、すんません…、この話し、これで終わりです…冷や汗
言われてみれば、確かに続きあるみたいな感じになってますね…冷や汗
真友子のセリフで〆です。ごめんなさい。
もうなんかグダクダにしちゃって申し訳ありません。
心よりお詫び申し上げます。
そうだったんですか!?てっきり続きものかとあせあせ(飛び散る汗)こちらこそすいません顔(願)あせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)
蓮さん
や、謝らないでいいんですふらふら
まわりにも最期が悪いと酷評されましたし…あせあせ(飛び散る汗)
これは完全に僕が悪いです顔(願)
ユリアさん
う…すんません。
このラストはおれも非常に残念です。
未だに良いラストは浮かばないし…。
だから転載しなかったんだよね〜(-.-;)

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