村八分コミュの水たまり

僕は、チャー坊(charming 坊や；柴田和志)と3回会ったことがある。

全く端正で、妖艶な男だった。
ライブを見に行ったのではない。
正確に言えば、3回見かけたのだ。
僕は、柴田和志の実兄と仲が良かったので、
チャー坊が、兄に小遣いを無心に来る際に、
僕がなぜか一緒にいたのだった。
チャー坊の5才上の兄も、
端正で、妖艶な(不思議な魅力のある)男だった。
兄(柴田次男)は、山口冨士夫が20才の時に、
本人と2人で世田谷区役所に出生届を出しに行った。
冨士夫の誕生日は昭和24年の8月10日だが、
これは、捨て子だった冨士夫が成人して、
日本国籍を取得する際に、
誕生日をアバウトに決めたのだと、
兄(柴田次男)が言っていた。

伏見稲荷の近くの柴田家で、
メロディーを、冨士夫が弾き
それに、チャー坊が、詩をつけた。

チャー坊の墓碑銘は「草臥れて」だ。
チャー坊は、1994年4月25日にOver Doseで死亡、1950年5月5日〜享年45
兄の次男は、2016年10月6日に肺がんで死亡、1945年4月16日〜享年72

握りしめた　掌てのひらの宝は、寂しさ





https://m.youtube.com/watch?v=63-u8q1tzhs

作詞・作曲　柴田和志/山口冨士夫


日が暮れるまで〜
夕焼け観てた〜

ボロ靴履いて〜
眺めてた〜

ガキのころを〜
想い出して〜

シャボン玉〜
浮いて消えた〜
生まれてすぐ〜
音ひとつ〜

来る人に〜
うう〜水たまり

雨に打たれて〜
ああ〜水たまり

風に吹かれて〜
吹き溜まり〜

堕ちる人に〜
水たまり〜







blues rockの　真骨頂　

平仮名ロックの　最高峰

https://m.youtube.com/watch?v=63-u8q1tzhs


https://www.youtube.com/watch?v=wt1ToICQopA

以下、すべてコピペ．．．冨士夫のマネージャー粕谷氏の文章が秀逸
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/yomoyaba/yomoyaba-regular/165%e3%80%8c%e6%9d%91%e5%85%ab%e5%88%86%e3%80%8d%e4%ba%ac%e9%83%bd%e5%86%86%e5%b1%b1%e9%87%8e%e5%a4%96%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e5%a0%82/　　より

「村八分」京都円山野外音楽堂
今更ながらだが、
『村八分』はミステリアスだ。

それは、やはり
チャー坊の存在感によるものだと思う。
　
あの妖艶さは他に類をみないし、
作って作れるものではない。
京都という舞台もよかった。
日本のロックが創世記だったのも
時代にマッチしたのだと思う。

しかし、
いろいろな話を聞いてみると、
そう単純ではないような気がする。　　

チャー坊の生い立ちから発する
運命的な環境は、
決して他人が解説できるものではないし、
軽々しく口に出せるものでもない。

誰よりも深く日本を意識する様は、
誰よりも早く海外に渡った経験に裏打ちされて、
大人たちや同世代の若者たちを
睨みつけていたのだ。

チャー坊は詩人であり、
何をしでかそうかと企むパフォーマーだった。
冨士夫をけしかけ、　　
腑抜けた音楽界を茶番にかけたのである。
　　
僕が高校生のとき、
日比谷野音に流れた『村八分』の噂は、　　
風に乗った噂話にしては、
あまりにも生々しく印象的だった。

「村八分が全面鏡張りバックに、
赤い絨毯を敷き詰めたステージで演ったらしい！」

京都の円山公園にある野外音楽堂での話である。

「ストーンズより凄かったらしいぜ！」

誰もストーンズを観たことがないのに、
それぞれの妄想ストーンズが、
『村八分』に喰われていた。

想像が膨らみ過ぎて、
なんだか得体の知れない話になり、
『外道』なのか『キャロル』なのか、
まだ見ぬ『村八分』なのか、
バンド好きとしては興奮のベクトルを
どっちに向けたらいいのか、
右往左往しているタイミングだったのだ。

で、あるから、
『村八分ライブ』のLPを買いに
レコード屋に走った記憶がある。

ジャケットは好みじゃなかったが、
観音開きの2枚組が妙に嬉しかった。
高揚した気持ちのまま
レコードに針を下ろしたとたん、
「えっ？！」
気持ちがしぼむとはこの事だろうか、
あまりの音の悪さにすぐに針を上げたのだ。
（その後、音質が向上し、今では大好きであるが…）

それ以来、『村八分』は聴かなくなった。

次に聴いたのは約8年後、
冨士夫が持っていた
カセット音源からである。

そのときの冨士夫は音楽を辞めていたのだが、
『村八分』への想いを熱く語っていた。
物語は京都を舞台にしてヘビィに流れ、
胸の奥深くにつき刺さっているようだった。
　
「肉を削ぎ落とし、極限になるまで音を極めたんだ」

は、当時の口ぐせであった。
それだけのめり込んでいたのだろう。

「あんな想いは二度としたくない」

と言う度に心は遥か遠くを彷徨っていた。
かけがえのない日々だったのである。

チャー坊にとってもそうだろう。
冨士夫がいなければ歌うことができない。
お互いがお互いを失い、
『村八分』というバンドだけが、
相変わらずの噂の中で舞っていたのだ。

「ほんとうにやりたいことをやるときは、
ほんとうに大切にしていたものを失う覚悟が必要なんだ」

冨士夫が『村八分』を通して　
教えてくれた様々な思いを、
時おり心の中から引き出すことがある。

それは、本当にやりたいことに向かうとき、
勇気が必要なときなのである。

…………………………………

風の噂に乗った『村八分』を想像してみよう。

1972年8月27日、
一昨日からの厚い雲が去って、
嘘のような晴天だった。

京都盆地のうだるような残暑のなか、
円山公園内に設けられた野外音楽堂には、
すでにラブ&ピース族が詰めかけていた。

ステージは赤い絨毯で埋めつくされ、
バックには大きな鏡が演出されていた。

音楽堂を取り巻く樹々からは、
耳鳴りのような蝉の鳴き声がしている。
ふっと青空に目をやり、
光の眩しさに目が眩んだ瞬間だった。

つんざくようなギターのハウリングと共に、
『あやつり人形』のイントロが耳を刺した。
あわててステージに目をやると、
いつ出てきたのか
『村八分』の演奏が始まっているのだ。

音に群がる条件反射のように、
階段上の座席の横を
ステージに向かって突き進んでいた。

走って揺れる視覚の中に、
眉毛を剃った冨士夫が
ギターを斜に構え、
前後に動いているのが映る。

と、そのときである。
冨士夫の前を蝶か何かが横切った。

「うおぅ！」

そう声を上げ、
周りも一斉に揺れ動いた瞬間、

チャー坊がステージを舞ったのだ。

蝶に見えたのは、
チャー坊が着ていたラメに
反射する光の粒だった。

その屈折する光の動きに、
いつもよりテンポの速い
冨士夫のギターが共鳴する。

♪あやつってやる！あやつってやる！♪

チャー坊の目が飛び、
はなっからぐにゃぐにゃに
なっているのがわかった。

なんともいえない覚醒感が
背筋から脳へと走る。

足もとから
せり上がってくる快感の中で、
馬鹿みたいに叫ぶ
自分を感じているのだった。

（1972年〜‘86年頃）

PS/
村八分／京都円山野外音楽堂
2021年6月9日発売！
https://goodlovin.net/items/6059dad9d5e9c96b5f64c697