輪廻転生デスレンジャー！コミュの第１話『素敵な出逢いと今生の別れ……』

　ある晴れの日の、午後のことでございました。さんさんと降り注ぐ日光の届かない街、天神地下街。そこから、一人の少女の数奇なる運命は始まったのです＿＿＿＿＿



＿＿＿その日、死人ちゃんは朝から気分が優れませんでした。熱があるわけでも、どこが痛むわけでもなかったのですが、ただなんとなくズンと頭が重たかったのです。

「偏頭痛？……妄想のしすぎかしら？」

本当は立っているのも辛かったのですが、だからといって１日ぐだぐだと寝ているわけにはいきません。明日は、大事なアノ例会があるのです。そこで発表するアノ論文を、それはもう綿密に仕上げなければならないのです。

「ああ、でもだめだわ…少し休もう……」

死人ちゃんは再び眠りにつきました。


　夢の中で、死人ちゃんはなにかに導かれるかのように外を歩いていました。部屋着のまま、はだしのままなのに、道行く人々は誰も気に留めてはいないようでした。そのまま、月面歩行でもしているかのような軽やかさで階段をとびおりたそのとき、人波の向こう側に、こちらを見つめる１つの影があったのです…。しばしの沈黙ののち、その人影はこちらへと近付き、死人ちゃんへとそっと手を差し伸べました。

「あ、あなたは……誰？」

目深に帽子をかぶったその人は、なにも答えません。そのかわり、差し出した手をパチンとならすと、そこには一輪のチューリップの花が握られていました。あかむらさき色でした。

「これを、私にくれるの？」

チューリップを受け取ると、その人影は背を向け、スッと人混みにまぎれ、どこかへ消えてしまいました。

「待ってセニョール！あなたはいったい……」




ハッと目を覚ますと、そこは死人ちゃんの部屋でした。不吉にも胸の上で組まれた手には、夢で見たチューリップが握られていました。

「不思議な人……また逢いたいわ、エロイムエッサイム。」

そうつぶやくと、とつぜんチューリップが激しく発光し、ぐにょりぐにょりと暴れ始めました。

「きゃっ！なんてこと、この人食い花！」

死人ちゃんは驚きのあまり、おもわずチューリップにフライングバットレスをきめ、壁にたたきつけると、ミラーボールのような激しい発光はとまりました。しかし、今度はふわふわと飛行をはじめ、ゆらゆらとろうそくの火のように鈍く光り、はらはらと花びらの一枚一枚が舞い散ってゆきました。

その、すこしばかり幻想的な雰囲気に魅入っていると、いつの間にかすべての花びらは散り落ちて、中から輝くいきものが出てきました。

「きゃっ！もしかして、あなたはかぐや姫を装った愛玩動物？」

「違うよ、僕は親指姫を装った太陽神だよ。死人ちゃんの守護神だよ。」


　
それが、二人の出逢いでした＿＿＿＿＿



が、そんな余韻に浸る間もなく、太陽神は言いました。

「死人ちゃん！早く散歩に出かけるんだ！太陽エネルギーを充電しなきゃ僕は…脳死状態に……！」

「わかったわ太陽神！私にまかせて！」

そそくさと散歩に出かけた死人ちゃん。心なしか、足早です。


（夢の中の地下街で出会った、あの素敵な帽子のセニョール……NOGASANAI！！）

ドンッッ

「きゃっ！」
「うわっ！」


＿＿＿＿＿＿＿それもまた、出逢いでした。



（な、なんて素敵なマフラーのセニョール……！！）

帽子のセニョールのことなどすでに忘れ、死人ちゃんは前方不注意でぶつかってきたこの殿方に心奪われてしまいました。

「……ごめんね、大丈夫かい？」

「だいじょうぶです。」

「…えっと、君は、その」

「死人ちゃんです。」

「死人ちゃん……おわびに、Mドナルドでもごちそうさせてくれないかい？」

「はい、是非……」


一目惚れでした。青い春でした。いっそ清々しい心持ちでした。ああこれは、太陽神がもたらしてくれたあたたかい輝きなのね……！死人ちゃんは、素直にそう信じることができました。


「へぇ〜、死人ちゃんは大学生なんだ。」

「はい、えっと、そういえばあなたのお名前は…？」

「俺かい？俺は死体くんだよ。」

「死体くん……お仕事は、なにを？」

「ソムリエだよ。」

「えっ！？」

「隣町の老人ホーム『パラライズ銀河』で香酢のソムリエをやっているんだ。」

「パラライズ銀河！わたしも、バイトの配達でよく行きます！お得意様が、そちらの老人ホームのパトロンなんです。」

「ああ、老衰さんのお知り合いなんだ。あの、投資家の、通称不死鳥老衰！」

「はい、とてもご機嫌うるわしい方ですよね。」


共通の話題を見つけた二人のおしゃべりは、つきることがなかった。

　　　　　　 　→To Be Continue!!