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FFXI_NovelコミュのEpisode14 "教会にて"

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Episode14 "教会にて"


 もうもうと巻き上がる土煙が次第に晴れ、周囲の様子が徐々に明らかになっていく。周囲にはまだ自分の足で立っているものはいない。目の前に倒れこんでいるエルヴァーンは銀髪のざんぎり頭、詩人のシキである。衝撃をまともに受けたのだろうか、倒れたまま動かない。
「うーん。」
少しうめいて、倒れたままわずかに足を動かそうとするシキ。傍らにいたマツリがケアルを詠唱し、怪我を回復しようとする。
「ごめん。大丈夫だ。」
こちらに顔を向け、傷だらけの体を起こそうとする。しかしいずれかの脚が折れたのだろうか。鉛のように下半身が重くて、うまく立つことができない。
「無理しないでいい。どうやら敵さんもそれどころじゃ。。。」
言いさしたとき、いやな音が聞こえてきた。遠くから聞こえてくるのは数多くの人間の呼ばわる声である。集団から発されたと思われる声は、徐々に近づきつつある。歓声、というよりは鬨の声というのがふさわしかろう。行軍の音に間違いない。それもその数は今まで相手にしてきた敵軍の比ではない。地面を揺り動かす轟音を立てて近づいてくる、それは大軍の足音だった。
「・・・どうやらお戻りですね」
タクが銃を構えなおしながら言う。メテオの衝撃音を聞いてバタリア方面からバストゥーク軍が取って返してきたのである。遠目に見てもその数、装備は今まで街中で対峙してきたバ軍のそれとは段違いのものである。教会前で邂逅するのはウィンダス軍のはずだったが、結局叶わなかったのであろうか。


ドン


突如、太い破裂音がした。ついで、どしゃっ、と大きな動物が倒れたような音がした。
「トツ!」
タルタルのオグロバーが叫ぶ。彼の兄弟分、ガルカのトツが突然倒れこんだのである。
「痛ェ!なんだこりゃぁ・・・」
うめくトツ。見ると彼の背中に小さな傷跡がついている。その傷跡から血が流れ出して地面に染み出している。
「おまえ、この傷・・・」


ドン ドン ドン


オグロバーが向き直った時、今度は複数の破裂音が聞こえた。同時に何人かのメンバーが倒れる。
「何だってんだ!」
オグロバーが見上げると、破壊されたジュノの中央階段、今はただの瓦礫の山の上から数人のバ軍兵士が銃を構えている。銃士制式長銃。バストゥークお得意の火器である。ル・ルデの庭の破壊からようやく生き残ったであろう兵士たちは、まだ戦う意志を捨ててはいなかった。むしろ、ル・ルデの庭が破壊された今、ここを突破しなければ彼らに待っているのは確実な敗北、あるいは死である。背水の陣の格好になった兵士たちは指導者の手を離れても立派に戦うことができた。
「バインド・・・いやスリプルだ!放て・・・」
ロックがそこまで号令したとき、バタリア側から迫った兵士たちからも銃弾が射掛けられた。


ドドドドドン


綺麗に整列した長銃隊が放った銃弾はメンバーたちの体にささり、あるいは貫いていく。誰にも当たらなかった銃弾が石畳に跳ねてあらぬ方向に飛び去っていく。そうした跳弾を、立ち上がったばかりのシキが左足に受けてまたくずおれる。もとより、メテオの衝撃のために大多数のメンバーは地に伏している。不幸だったのはその中でもいちはやく立ち上がった者達だった。
「シキ!」
カフィが思わず叫ぶ。傷口を増やしたエルヴァーンがまた地面にくずおれる。
「飛び道具とは卑怯だぜ!」
ヘイキチが盾を構えて長銃隊に飛び込む。エムニ、ヒメ、フォレスらが続く。しかし多勢に無勢である。さっと後退した長銃隊にひきこまれて、今度はこちらが包囲攻撃を受ける形になってしまった。包囲された仲間たちに容赦なく銃弾が降り注ぐ。銃声が鳴り響くたびに、誰かがゴムまりのように体を弾ませて地面に落ちていく。


「どうやら終わったなこりゃ!」


ロックが連続魔の術を使って何人かのバ軍兵士の足をとめる。しかしそれで精一杯だった。バタリア方面から迫ったバ軍の中央から大きな鉄製の筒が持ち出されると、その筒が火を噴いた。


ぼん


間抜けなほど乾いた音とともに、ガルカの頭ほどもある砲弾が打ち込まれる。
「カルバリン砲・・・?」
タクがつぶやく。バストゥークの大工房で作られているという大砲である。実戦配備されているのを見るのは彼もはじめてのことだった。巨大な砲身がひとたび火を噴くと、兵士がすぐに次の砲弾を装填し、発砲の準備に入る。一撃を受けるたびに地面に大穴が開く威力である。直接食らおうものなら五体がバラバラになってしまうこと請け合いだ。
「走りますよ!」
ラビン、サトチ、オプティ、シャイスターにニャーニャ。ミスラたちがカルバリン砲手目掛けて走っていく。
「おみやげですよ!」
銃弾をもかいくぐる敏捷性で砲手に接近、すれ違いざまに砲と砲手の間にボムの塊のかけらを投げ込んでいく。手榴弾の要領である。投げ込まれたかけらは小さな爆発を起こし、砲手と砲に傷をつける。砲手たちはおおいに混乱したが、その混乱は長くはなかった。砲に乱入されたことを見てとるや、周囲の兵士たちが殺到するのである。


完全に悪夢の世界が現出した。メンバーおのおのは隊のコントロールを離れ、リーダーたちは己が手に持つ剣で必死に敵と切り結んでいる。さらに半数以上のメンバーはメテオのショックで、あるいは立ち上がった後に敵軍の銃弾のために地面に伏していた。そして、その数は秒ごとに増えていく。


「あーもう完っ全に計算違いだわ!」


ユリがいまいましげに叫んで両手をかざし、印を結んだ。短い詠唱を終えると、彼女の両手からほのかな光がほとばしり、周囲3メートルを覆う光の幕ができあがる。高位のケアルガの詠唱である。周囲に倒れていたものたちの瞳に生気がよみがえる。他の白魔道士たちがこれに倣う。白魔道士がこれを行うのは、通常2通りのタイミングである。一つは周囲に何も危険がない場合、もう一つは今まさに彼ら、彼女らがおかれている状況。つまりは白魔道士の魔力を最大まで使い切って回復に回し、後のことは考えられないという最悪の事態である。バ軍の矛先が回復を行っている白魔道士に向けられる。最後の力を振り絞ってメンバーたちが反撃する。己が持つ最高の技をもっての応酬。戦士たちは最後の力を振り絞って一撃をくりだす。マイティストライク。狩人たちは一撃必中イーグルアイ、、、。しかし、おのおのが打ち込んだ力は圧倒的な敵軍の中に吸収されてしまう。白魔道士を含めた集団が敵に飲み込まれていく。もうすぐそこに終わりが見えている。砲声と銃声が鳴り止まず、白魔道士たちの治癒魔法もむなしくほとんどすべてのメンバーが地に伏した。イセは混乱の傍らにいて、負傷したムアラと魔力を使い果たして全身から力が抜けてしまったエルを両脇に抱えてしゃがみこんでいる。


「団長!」


叫んだのと同時に銃弾がカフィのわき腹をとらえた。バ軍から見れば誰が頭目かなどわかりはしない。一斉射撃のうちの一つの銃弾が命中したに過ぎなかった。カフィがまとっているのは戦士鎧である。鎧がカバーしていない、素肌が露出した部分から火が出るような痛みが発し、カフィの体の中央を走る。
「大事ない。伏せていろ・・・」
搾り出すように言い、まだ両足で立っていたカフィに他の兵士が突進してくる。赤い戦士鎧よりもさらに赤い鮮血が滴り落ちる。敵の剣を受け流そうにも左手が動かない。今の銃弾を受けて麻痺してしまったのだろうか。マツリが、カーバンクルを放って兵士の足をとめようとするが、いかんせん大きさも勢いも足りていない。兵士の一撃はカフィの左側から入って肩口にめり込む。またも鋭い痛みが走って体が震える。一瞬銃撃の痛みがやわらいだように感じたが、全身から汗が引く感触が来て、直後にまた数倍の痛みがよみがえった。刹那、半ば本能にまかせて右手を振り払う。手斧が弧を描いて敵の兵士の肩口に突き刺さった。その兵士は悶絶したが、息つく暇もなく次の兵士がやってくる。このとき視界がぼやけた。
「あ・・・?」
両の足で立とうとする意志と、体の耐久力に矛盾が生ずる。ふっ、ともう一度眩暈がして、世界が反転した。受身も取らないまま倒れるカフィ。これは冒険者たちの運命の行く先を暗示しているようだった。周囲の動きが全てがスローモーションのように見える。敵の真っ只中に飛び込んで自爆を計る忍者たち。多数の矢玉を浴びつつ、立ったまま空を切る拳を繰り出すモンクたち。魔力が尽きた魔道士たちは、地に伏したままただそれを呆然と眺めている。それら全てがゆっくりと傾き、加速的に視界から遠ざかっていく。目に力を入れてしっかり見据えたいのだが、角膜がどんどん力を失っていくのがわかる。
「ちっ、俺らごときに大人気ないぜバストゥーク・・・」
つぶやいたのは、地面に完全に倒れこんだときだった。言葉を発すると喉の奥が苦しい。気管に損傷があるのだろうか。
 遠巻きに囲むバ軍の中で、にわか仕立ての軍隊は動きを止めようとしていた。メテオが墜ちてからわずか20分とたたない間に状況は一変した。いつのまにか頭にも傷を受けていたのだろうか。額から目に血が入り込んでくる。視界が赤く染まる。視界はぼやけているが、聴覚はまだ失ってはいない。バストゥーク軍の銃撃は鳴り止んでいたが、それはこちらの大部分が既に倒されていることを示していた。 限られた視界と聴覚だけでここまで人は絶望できるものか、と一瞬考えていたとき、視界の一部がさらに赤く染まった。出血が激しくなったのだろうか。バストゥーク軍の青い旗が赤く染まって見える。いよいよここまでか。すると、耳にもう聞きたくない音が響いた。


銃撃。


ただ、今までの銃撃とは何かが違った。今までの銃撃は、破裂音の後にすぐこちら側に着弾の音がしていた、あるいは跳弾の音がしていた。しかし、今度はこちら側に着弾の音がしない。また、発砲音もこちらを向いてはいないように聞こえる。


「お・・ぎる・・す」


いつのまにかカフィの傍らに来ていたファイフが呟いている。タルタルの背丈のため、銃撃に晒されなかったのであろうか。ほとんど無傷である。カフィは聴覚までぼやけてきて、何を言っているのかよくわからない。
「・ン・・ア!」
軍勢がわめく声が聞こえる。赤く見える旗がひるがえった。ぼやけて見えるが、何かそこに違和感がある。


歯車が無い。


バストゥークの旗は青地にストライプ、真ん中には歯車を模した模様が書いてある。サンドリアは赤地で翼、ウィンダスは緑地に大樹である。見間違えようがない。しかしそこに見えた旗は翼の模様を書き表した旗である。赤く見えたのではない。そこに翻ったのは真紅のサンドリア国旗だったのである。


「サンドリア!」


鋭く叫ぶ声が聞こえた。ついにサンドリアとウィンダスの連合軍がジュノに進入したのだろうか。カフィの視界は急激に色を失い、太陽までもが暗転する世界に墜ちて行った。


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