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君島三郎・死力回復センターコミュの夏を熨す。

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東京は元来坂の多いところだが、
このところの日照り続きで
いたるところの勾配が急にきつくなった。
今日の九段下などは靖国通りから
神保町にむかうあたりなど絶壁に近い有り様。
うっかり足を踏み外すとそのまま落下、
とても坂道などという暢気なものではない。
高さのちがう町並みが光の加減でお互いの影になる。
昨晩も酔客があやまって内堀に転落、
二人が水死、一人が行方不明という。
このような状態になっても
都知事は民度の低さをあげつらうばかり。
爆音のような「海ゆかば」を流しながら、
右翼の宣伝カーが靖国神社に上って行こうとするが、
ひたすら坂をすべり落ちるばかりで
振り子のような繰り返しがかれこれ十五分も続いている。
英霊の御霊は鎮められていないのだ。
こんな日はどこからともなく
人を諌める主のない声が幻聴のように宙に舞う。
「昭和に帰れ、帰れ昭和に」
道を往く人の顔が一様に
マネキンめいてのっぺりと黒い。
俺は天丼のいもやをめざす。
こんなからっ風の酷暑の昼に
海老天は最高の揚がり具合を見せると
先代の亭主が口にしたのを思い出したからだ。
あれから二十年。
飯は中盛り、飯食いは供儀。
生きていなくては死んでいるのだから、
あの甘くはない天つゆにこそこの身を捧げたい。
空は青く高くもう入道雲の類いは見えぬ。
暦の上では完全に秋となった。



「死力回復センターML」2004/08/19 

コメント(2)

神保町のいもやは、飯粒をのこすと割高になるという伝説がなかったですか。この絶壁というのは夢で見たらしい。よくブラブラしましたが、喫茶ならさぼうるよりはエリカ、ブラジルを好んでました。よくいった飯屋はずいぶん姿を消した。パチンコ屋、昭和ナントカ?、あそこで勝つと景品は必ず歌謡曲のシングルレコードに変えたっていってた。この界隈は永井龍男のイメージがある。「東京の横丁」とか。片岡さん読んでたかなあ。
>ズートさん
これまた風景を強烈に喚起させる文ですよね〜。
しみじみします。。

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