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万葉集コミュの万葉集7 1258・1259・1260・1261・1262・1263・1264・1265・1266・1267・1268・1269・1270

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7 1258;雑歌,古歌集,臨時,伝誦

[題詞](臨時)

黙然不有跡  事之名種尓  云言乎  聞知良久波  少可者有来

黙あらじと 言のなぐさに 言ふことを 聞き知れらくは 悪しくはありけり
 
[仮名],もだあらじと,ことのなぐさに,いふことを,ききしれらくは,あしくはありけり

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黙っていてはまずいだろうと

口先だけの慰めと知りつつ

聞いているのは気持ちしんどいなあ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

7 1259;雑歌,古歌集,臨時,広島,大阪

[題詞](臨時)

佐伯山  于花以之  哀我  <手>鴛取而者  花散鞆

佐伯山 卯の花持ちし 愛しきが 手をし取りてば 花は散るとも
 
さへきやま うのはなまちし かなしきが てをしとりてば はなはちるとも

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
佐伯山でウツギの花(卯の花)を持っていた

愛しいあの娘の手を握れたら

花が散ってもね いいのです
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「手をし」を「子をし」とする本もあるが、全身を引き寄せていそうで、詩情に欠ける。
 


7 1260;雑歌,古歌集,臨時,飛鳥

[題詞](臨時)

不時  斑衣  服欲香  <嶋>針原  時二不有鞆

時ならぬ 斑の衣 着欲しきか 島の榛原 時にあらねども
 
ときならぬ まだらのころも きほしきか しまのはりはら ときにあらねども

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
榛の実で染めたまだら(斑)衣を着てみたいけれど

明日香の島に広がる榛の林は実の熟する秋ではないように

あの娘と結ばれるのはまだ先のことなのか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



7 1261;雑歌,古歌集,譬喩,怨恨

[題詞](臨時)

山守之  里邊通  山道曽  茂成来  忘来下

山守の 里へ通ひし 山道ぞ 茂くなりける 忘れけらしも
 
やまもりの さとへかよひし やまみちぞ しげくなりける わすれけらしも

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しめ(禁)山の山守は山を下りてこない

里へ通う山道が草で覆われてしまった

わたしのもとへ通う道まで忘れたのかしら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



7 1262;雑歌,古歌集,怨恨,恋愛,枕詞,比喩

[題詞](臨時)

足病之  山海石榴開  八<峯>越  鹿待君之  伊波比嬬可聞

あしひきの 山椿咲く 八つ峰越え 鹿待つ君が 斎ひ妻かも
 
[あしひきの] やまつばきさく やつをこえ ししまつきみが いはひつまかも

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
山椿が咲く山々を超えて

しし(鹿)撃ちに出て帰ってこない夫を

精進して待つ猟師の妻でいますことですよ

あわたしは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



7 1263;雑歌,古歌集,恋愛

[題詞](臨時)

暁跡  夜烏雖鳴  此山上之  木末之於者  未静之

暁と 夜烏鳴けど この岡の 木末の上は いまだ静けし
 
あかときと よがらすなけど このをかの こぬれのうへは いまだしづけし

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜明け方だよと明け烏が騒いだと思ったが

この丘の森の梢の上は未だ静まりかえっている

もう少しきぬぎぬの別れを惜しめたのになあ夜烏め
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



7 1264;雑歌,古歌集,譬喩,歌垣,恋愛,奈良

[題詞](臨時)

西市尓  但獨出而  眼不並  買師絹之  商自許里鴨

西の市に ただ独り出でて 目並べず 買ひてし絹の 商じこりかも
 
にしのいちに ただひとりいでて めならべず かひてしきぬの あきじこりかも

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
西の市に たったひとり出かけ

見比べもしないで絹を買ったけれど

買い損ないだった

あんな男に引っ掛かるなんて 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・* 平城京には「東の市」「西の市」があり、山、海、里の住民が集まった。市は、商品の流通以外にも、若い男女の出会いの名所でもあった。



7 1265;雑歌,古歌集,防人,恋愛,妻,羈旅

[題詞](臨時)
[左注](右十七首古歌集出


今年去  新嶋守之  麻衣  肩乃間乱者  <誰>取見)

今年行く 新防人が 麻衣 肩のまよひは 誰れか取り見む
 
ことしゆく にひさきもりが あさごろも かたのまよひは たれかとりみむ
・・・・・・・・・・・・
今年九州へ派遣される新島守りが着る

麻布の粗末な衣の肩のほつれは

誰が繕ってやるのか

着たきりスズメの防人の
・・・・・・・・・・・・



7 1266;雑歌,古歌集,羈旅,防人,望郷

[題詞](臨時)

大舟乎  荒海尓榜出  八船多氣  吾見之兒等之  目見者知之母

大船を 荒海に漕ぎ出で や船たけ 我が見し子らが まみはしるしも
 
おほぶねを あるみにこぎで やふねたけ わがみしこらが まみはしるしも

[左注](右十七首古歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
防人にとられ

防人船を荒海に漕ぎ出す

船を漕いでいる最中でも

私の見た可愛いあの娘の眼差しは

はっきりと覚えている
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



7 1267:雑歌,古歌集,旋頭歌,羈旅,枕詞

[題詞]就所發思 (所に就いて思(おもい)を発する)
[旋頭歌]

百師木乃  大宮人之  踏跡所  奥浪  来不依有勢婆  不失有麻思乎

ももしきの 大宮人の 踏みし跡ところ 沖つ波 来寄らずありせば 失せずあらましを
 
「ももしきの」 おほみやひとの ふみしあとところ おきつなみ きよらずありせば うせずあらましを

[左注]右十七首古歌集出
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宮中に仕える人たちが

歩いた足あとの場所がある

波が打ち寄せてこなければ

消えることもなかったものを
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「旋頭歌」:頭を旋(めぐ)らす歌。



7 1268;雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,奈良,哀悼,挽歌,枕詞

[題詞](就所發思)

兒等手乎  巻向山者  常在常  過徃人尓  徃巻目八方

子らが手を 巻向山は 常にあれど 過ぎにし人に 行きまかめやも
 
[こらがてを] まきむくやまは つねにあれど すぎにしひとに ゆきまかめやも

[左注](右二首柿本朝臣人麻呂<之>歌集出)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女の手を枕にする(巻く)という

巻向山は常に存在するが

亡くなった人に行き逢うことがあるだろうか
・・・・・・・・・・・
巻向山はいつも変わらずあそこにあるが、死んでしまった女を訪ねていって手枕を交わし、彼女を巻くことができようか、もうできはしない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山名でいえば、
「玉襷(たまだすき) 畝傍の山」(襷はうなじ(ウネ)に掛ける)。
「子らが手を 巻向山」(手を巻く)。
「梯立ての 倉椅山」(梯子を立て掛ける倉)。
「春揚(はるやなぎ) 葛城山」(揚の枝を輪にして「かずら」にする)



7 1269;雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,奈良,哀悼

[題詞](就所發思)

巻向之  山邊響而  徃水之  三名沫如  世人吾等者

巻向の 山辺響みて 行く水の 水沫のごとし 世の人我れは
 
まきむくの やまへとよみて ゆくみづの みなわのごとし よのひとわれは

[左注]右二首柿本朝臣人麻呂<之>歌集出
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
巻向山の山麓を轟音でどよめ流れる水は

いくら激しくとも水泡のように消えて儚い

この世に生きる我々も同じことだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
巻向(まきむく)は、奈良県桜井市の穴師(あなし)、巻向(まきむく)を中心とした一帯をいいます。巻向川は巻向山と北の竜王山との間から流れ出て、穴師(あなし)を通って西に向かい、初瀬川に流れ込んでいます。万葉の頃には痛足川(あなしがわ)とも言われていました。



7 1270;雑歌,古歌集,無常,奈良,枕詞

[題詞]寄物發思(物に寄せて思(おもい)を発(おこ)す)

隠口乃  泊瀬之山丹  照月者  盈ち為焉  人之常無

こもりくの 泊瀬の山に 照る月は 満ち欠けしけり 人の常なき
 
[こもりくの] はつせのやまに てるつきは みちかけしけり ひとのつねなき

[左注]右一首古歌集出
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泊瀬の山を照らす月が満ち欠けするように

人の一生もまた常ならず不変なものではない
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