万葉集コミュの万葉集巻第二（85〜２３４）９５・９６

95；相聞,作者：藤原鎌足,安見児,采女,娶,宴席,歌謡,即興的,口誦

[題詞]内大臣藤原卿娶釆女安見<兒>時作歌一首

吾者毛也 　安見兒得有 　皆人乃 　得難尓為云 　安見兒衣多利

われはもや　やすみこえたり　みなひとの　えかてにすとふ　やすみこえたり

我れはもや　安見児得たり　皆人の　得かてにすとふ　安見児得たり　
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吾者毛也ーわれはもやー我れはもやー「もや」は間投助詞「も」に、間投助詞「や」のついたもの。感動の意をあらわす。 　
安見兒得有ーやすみこえたりー安見児得たりー采女をえた 　
皆人乃ーみなひとのー皆人の 　
得難尓為云ーえかてにすとふー得かてにすとふー容易に我が物にできない 　
安見兒衣多利ーやすみこえたりー安見児得たり
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私はまあ

美しい安見児を娶ったぞ

世の人々が容易に我が物にできない

あの安見児を手に入れたぞ
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内大臣（統治者）中臣鎌足が、采女（うねめ）安見児（天皇の娘・鏡王女）を娶（めと）ったときに詠んだ歌とも。

当時、臣下が采女と通じた場合は身を滅ぼした。天皇から賜ったのは大変な名誉である。
采女とは、郡司の姉妹・娘から美女を選んで都に上らせ、後宮に奉仕させた女官。采女との結婚は臣下には許されなかったので、天皇の特別の配慮があったに違いなく、歌に溢れる喜びもそれゆえのこと。
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＜重陽の節句を祝う ＞より抜粋転載。
http://blogs.yahoo.co.jp/mizunoene17/20855165.html
これは、安見児(やすみこ)という采女ー〔豪族の姫子達で、皇宮で奉仕をしている者〕が
　　自分の女になったことを鎌足が喜んで歌った歌です。
大抵の者では、相手にして貰うことなど叶わぬ“高嶺の花”を自分のものにすることが出来た、ということを歌にしているのですが、
　それが、どういう喜びなのかと云えば、勿論、
　　 自分も王族の仲間入りが出来た
という、身分が上がった時のような喜びです。
つまり古代に、実力も冠位も及ばぬ絶対の権力を保持する何か、人の身分を決定する何かが存在していたことを感じざるを得ません。
鎌足が討伐した『蘇我氏』は、朝廷を凌ぐ権力を誇示しました。それは、朝廷に引けを取る様ななにものも無かったからなのかもしれません。
蘇我氏にはあって、中臣には無いもの
・・・血脈というものだとは思いますが、その後に、藤原の血が天皇家に入って行くことがあっても、『藤原氏』は、臣たる立場を超えることはありませんでしたから、
その“血脈”は大化の改新の後に、皇室ただ一統の血脈となったのだ
　と思います。
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96；相聞,作者：久米禅師,石川郎女,歌垣,求婚,掛け合い歌,枕詞,比喩

[題詞]久米禅師娉石川郎女時歌五首

水薦苅 　信濃乃真弓　 吾引者 　宇真人<佐>備而 　不欲常将言可聞 [禅師]

[みこもかる]　しなぬのまゆみ　わがひかば　うまひとさびて　いなといはむかも

み薦刈る　信濃の真弓　我が引かば　貴人さびて　いなと言はむかも [禅師]
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水薦苅ーみこもかるーみ薦刈るー枕詞（信濃）　
信濃乃真弓ーしなぬのまゆみー信濃の真弓ー百発百中の名高い真弓と樹木のまゆみ（檀）　
吾引者ーわがひかばー我が引かばー弓を引くと袖を引く、気を引く、 　
宇真人<佐>備而ーうまひとさびてー貴人さびてー貴人ぶって 　
不欲常将言可聞 [禅師]ーいなといはむかもーいなと言はむかもーいやと言うのでしょうね
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信濃特産の檀（まゆみ）で作った真弓の弦を引くように

私があなたの袖を引いて気をひこうものならたなら

あなたは貴人っぽく、イヤとおっしゃるのでしょうかね。[禅師]
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久米禅師が石川郎女(いらつめ)にプロポーズしたときの歌。
　これに対して郎女は「何をおっしゃいますか，弓を引いてもみないくせに〜」と応じています。


久米禅師 くめのぜんじ 生没年未詳伝不詳。
「禅師」は師僧に対する称号であるが、俗人の名であろうともいう(萬葉集古義)。
万葉集巻二に石川郎女との贈答歌三首が載る。