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☆mixi小説☆書く?読む?コミュの小説 ただ、なんとなく・・・(1話目)

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 人と夜の者が交わり始めて月日がたつ。
 その期間は長いともいえず、短いともいえず。
 そして夜の者と同時に、人間の中に身体能力という言葉では済まない能力を持つ者が現れ始めた。
 当初それは恐れられていたが、夜の者が人を喰うと分かると、その「能力」は迎合された。
 そんな能力を有り余るほど持った、一人の女のお話。

「大した闇だな」
 男はそう言った。
 周囲は虫の音と己の草を踏む音のみ。
 千蘭は男の発言には答えず、無言で後ろを歩き、耳を澄ませていた。
 それは夜しか現れない。
 形状も様々で、人間界の動物と似ているものもいれば、空想世界に出てきていた者そっくりな者もいる。中には自分では体を持たず、人間に宿る者もいる。
最初、それを侮っていた人間は次々と殺された。それが人間達を喰い捨てるのだ。喰う部位は種類によって異なる。目玉だけ好む者、耳だけ好む者、臓器だけを好む者様々だ。
 動きは俊敏なものもいる。そして容赦なく、人間に襲いかかる者もいる。
 それを人間は「夜の者」と名付けた。 
夜の者が出現した時、人間は対抗した。人間が今まで発明してきた、殺し合う武器を今度は夜の者に向けたのだ。
 効果はあった。しかし夜の者はいなくならなかった。数が多すぎたのだ。地球上の生物と同数いるのでは、と学者が呟いたくらい、夜の者は殺しても殺しても現れた。
 いつしか人間は夜を恐れるようになり、世界の支配者が昼と夜とで分かれるようになった。
 そして夜の街はしんとなった。
「このあたりです、通報があったのは」
 千蘭より更に後ろを歩く青年がそっと囁いた。
 夜の者は夜目が効く上、耳も良い。種類によっては人間の目では確認出来ない速さで動く者もいる。千蘭が前にいる男―藤堂の意味のない発言に反応しなかったのはどこに夜の者が潜んでいるか、警戒をしているためであった。
 千蘭のいる2班―「夜の者」対策特殊2課2班班長の藤堂が立ち止まる。千蘭は横に並び、後ろに続く4人の部下に目で止まるように合図した。
「どう思う? 田辺」
「まずは班長が声を小さくしたほうがいいでしょう」
 夜の者が現れるようになり、自然と人間達は夜は囁くようにしか話さなくなった。しかも今いる場所は夜の者でも殺人に値する喰い方をする者が早朝に数匹目撃された場所である。このような場所で平常通りの声で話をされて、千蘭は苛立っていたのだ。
「大丈夫だろ」
 藤堂自身は大丈夫であろう。夜の者に対する特殊攻撃のスペシャリストなのだ。しかし千蘭以外の部下はそうではない。訓練を受け、他の班とは比べものにならないくらいの猛者を集めている班であるが、それでも千蘭と藤堂、他の4人の計6人が派遣されたのは、それだけ夜の者が脅威であることに他ならない。
「大体、課長が用心しすぎなんだよ。6人も連れてきて。俺と田辺で十分だって」
「それでは下の者が育たないでしょう。あなたは夜の者を甘くみている」
 さりげなく肩に回されそうになった手を周囲を見廻す振りをしてかわした。
 千蘭よりずっと年下の男なのだが、どうも千蘭に気があるようである。それは周囲から見ても明らかで、あまりにも煩わしいので、本人にも課長にも抗議したが、課長は穏便に水に流し、藤堂はへらへらとしているだけだった。何度も道場で打ちのめしたが、諦める気配が無いのでうんざりしているのだ。
 現場で声を大きくしていることだって、強さを誇示しているようにしか千蘭には見えず、自分の強さへの過信と、周囲への、特に自分より部下への配慮の無さに千蘭はいらいらした。
「柵に異常はありません」
 部下が柵の状況を報告した。
「そう、周囲を警戒しなさい。なるべく固まって。姿あったら報告した」
 柵、とは夜の者の住処と人間の住処を分ける境界線である。人間が建てたものだ。
 夜の者は自然を好んだ。竹藪やうっそうとした森など。そのため、人間はその境目に「柵」をしている。特殊な素材を使い、夜の者が近づかないようにしているのだ。
 そのはずなのに、早朝に柵の「人間側」で夜の者を見た、という情報が入ったのだ。
「意図的にこちらに来ていたのか。それともどこかに抜け穴でもあるのか」
「知的レベルが高い者が故意に開けているのなら厄介ですね」
夜の者の知能はまちまちだ。獣のような者もいれば、学者と語り合える者もいる。
 知的レベルの高い夜の者が他の夜の物を飼い慣らし、「柵」を壊して民家を襲う事件は少なくない。
「昼に巡回した時は穴のようなものはなかったと報告を受けています」
「柵の地中の深さは?」
「3mまで埋めてます」
 3mならこの地区の標準の深さだ。モグラのように穴を掘る種類もいるが、この地区では確認されていない。
「地下でないなら」
 藤堂は空を見上げた。
 この地域は翼を持つ夜の者が多い。夜、この街が他の街より一層静かなのはそのせいである。
 飛翔する者達を撃退するのは難しい。いま、試験的に飛翔している者をカメラが認識すると、夜の者が嫌うもの―発酵物をぶつけるという機械が設置されているが、結果は五分五分である。
「・・・・・・異常なしですかね」
 迷いがちに藤堂が言った。
 異常があったほうがやりやすく、異常が無いことを証明するほうが難しい。視察に出ておいて、異常なしとし、後で住民に夜の者が目撃されてしまえば、翌日にはクレームが殺到する。クレームだけで済めばいいが、もし殺人が起これば事態は更に申告となる。
「どうしたらいいですかね、千蘭姐さん」
 藤堂がおどけるように言った。助言を得るふりをして、撤退の理由を千蘭に求めているのだ。
 千蘭は無言で周囲を見回した。
 周囲は黒一色の世界だ。柵の青色がうっすらと見える以外、木々すらも沈黙している。
 千蘭は息を吐いた。ため息では無い。小さく、しかし長く己の息を吐き続けた。
 それは一分近く続いた。班の者は静かに吐く息を聞いた。
 千蘭が動いた。一緒に藤堂が動く気配がしたので、そこにいるように腕を強く抑え、千蘭は柵に近づいた。
 まだ、息を吐き続けている。徐々に、徐々に、千蘭は一人、柵に近付いた。
 瞬間、千蘭の体が総毛立った。
「花凛っ」
 千蘭が叫び、藤堂達が動いた。
「花凛の周りに集まれ。田辺」
「私は大丈夫です。そっちに3匹いきました」
 千蘭が冷静に答えると、腰の両側についている鉄の塊に手を伸ばした。
「お前の方は?」
「2匹です。大丈夫」
 まだ若い女性の声が何か呟くと、布が落ちる音が聞こえた。その瞬間、花凛と呼ばれた女性を中心に周囲が明るくなった。
 藤堂が息を呑んだ。
 確かに藤堂達の近くに3匹いた。そして千蘭のほうはすぐ触れられる距離に2匹いた。
 1匹はライオンに似ていた。しかし全身は青かった。もう1匹は大型犬程度の大きさでまさしく犬であった。体の色は真紅であったが。
 千蘭は後方に飛びすさり、同時に鎖につながれた2つの鉄塊を投げた。
 2匹はあっさりとそれをかわすと、千蘭に飛びかかった。
「田辺」
「私は放っといていいから、そっちをなんとかしてください」
 右からライオン、左から犬が襲いかかってきた。ライオンの方が跳躍力があり、先に千蘭に近づいた。
「ごめんね、殺す気はないんだ」
 千蘭はそう言うと、右手に握っていた鎖を離し、屈んでライオンを交わした。己より俊敏な行動を取られ、ライオンは着地すると周囲を見廻す。
 千蘭はその背中にそっと触れると、ライオンはあっさりと地に倒れた。
「君も殺さないから」
 千蘭の背中に向かってきた犬に向かってそう言うと、握りっぱなしにしていた左手の鎖を操った。
 鈍い音がして、続いてどさりと地面に落ちる音が聞こえた。
 千蘭はすぐに藤堂の方を振り返った。
 そこには人間大の紫色の蛙が3匹倒れていた。
 千蘭は小さく息を吐き、ライオンと犬の2匹が昏倒しているのを確認すると、藤堂達に近付いた。3匹とも殺されているのが体から流れる液体から分かった。
「斎藤、本部に連絡。捕獲班をよこすように伝えろ。あと警備班呼んどけ。花凛、セクシーモードはもういいぞ」
 藤堂は班長らしくテキパキと指示を出していた。
 ここまで騒動があると、普通なら野次馬が出てくるが、夜の者が出てくるようになってからはそういう事は起こらない。物音がした瞬間から自宅の警備を固め、じっと息を潜めている。もし役所の討伐隊が全滅した時、次に狙われるのは自分達と分かっているからだ。
 花凛はホットパンツにチューブトップという格好の上からジャケットを羽織った。他の部下が照明をつけたせいで周囲は明るくなる。
 花凛は一般に「能力者」と言われている。
 「能力者」とは夜の者の登場として同じくして現れた、人間側の夜の者に対抗する力を持つ者を指す。能力の種類は多種多様で、力には個人差がある。花凛の場合は己の体を自分の意思で光らせることができる。その光は夜の者をしりぞけ、弱い者には死を与える。
「田辺、生きてるのか、そいつら」
 ライオンと犬を顎でしゃくると、藤堂がそう言った。
「はい、標本に使われるかと思って」
「ふうん、優しいこって」
 藤堂は大きな声で言った。千蘭は軽く睨むと、村上を呼んだ。
「捕獲班がくるまで押さえ込むの手伝って」

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