デラの小部屋コミュのデラのおんどく（『オサワリ天国』渋谷ミームマシンギャラリー2010年2月21日、最終日パフォーマンス用おんどくテキスト）

デラのおんどく用テキスト

〜　夏は入試の天王山だ！　〜




『ワイルドジョニー』

ドングリを噛み砕き、カステラを踏みつぶす。
おにぎりを握りつぶし、厄年を無視する。
おでんの汁をぶちまけ、レタスを引きちぎる。
乳毛を引き抜き、チョロQを殴る。

モチを破裂させ、亀を裏返しにし、マラカスを投げつけ、水風船をふり回し、
さなぎを触り、うどんを手づかみで食う。

ねりけしの匂いを鼻血が出るまで嗅ぎ、
ファミカセを穴に半分挿した状態で電源を入れてプレイしようとし、
袋入りラーメンを袋に入ったまま外側から指で何度も押してバリバリに砕いてから袋を開けて口に流しいれ、
最前列S席のチケットをチケット屋から１万５千円で買ったにもかかわらずライブ当日に寝過ごし、
バルサンたいて煙もうもうの部屋で耐え忍ぶ。

空き地の土管のなかに住み、
ポッキー２０本をまとめてヒザに叩きつけ、
グラサンを粉々に割り、
水道の蛇口を全開で外出し、
何も読まずに夏休みの読書感想文を仕上げ、
仁王立ちで死ぬ。

それが、ワイルドジョニー。




『スナック恵美子』

想像妊娠だろうか。
最近、無性にすっぱいものが食いたくなる。

そんなとき、スナック恵美子のママはやさしい。
ママから手渡された蒸しタオルで、過去の罪をぬぐった。

あの日、鮮魚売り場のさかなを、農協牛乳にぶちこむ実験をした帰り、信用金庫にひそむ鬼が、そっと耳打ちしたのだった。
「このグリーンジャンボ野郎！」
ぼくは、小学生から油粘土を、投げつけられた思いだった。
国道ぞいに落ちてる軍手も、笑っていた。

その瞬間、春のパン祭りに、スローモーションで、トラックが追突していった。
まるで、ソフビの怪獣人形を２体、ガチーンガチーンってぶつけ合うように、
ぼくはケツに、蒙古斑のイレズミを、彫ったのだった。

「健康的な白い歯ですね。よほどフッ素を配合しているんですね。」
多い日も安心な女が、そんなことを言った。
だからぼくは、言ってやったさ。
「俺好みのアップリケしやがって、この、ぎょうにんべん女！」

まさか、あの一言がきっかけで、その後毎年、お歳暮にハムが贈られてくるとは、思いもしなかった。




『秋の風物詩』

しゃぶり尽くした骨が、床に転がっている。

よっちゃんイカの当たり券、あげようか？
ギザギザが多すぎる手裏剣、投げつけてやろうか？

俺は昨日の晩、やっと、食物連鎖の頂点に登りつめた。
みんなに隠れて、秘密の特訓をしたのだ。

ひとん家の冷蔵庫を勝手に開けたり、
カブトムシのメスを素手で捕まえたり、
涙を流した数だけハムを食ったり、
そういう特訓だ。

俺の第二次性徴は、そうやって始まった。
異性の目が気になりだし、
体がだんだんと丸みを帯び、
どことなく乳房も膨らんできたような気がする。

そんな俺の横でオカンは、
俺のジャージに名前を縫い付けていた。



『終句』

安さが爆発している。俺の時給のことだ。
センチメンタル過ぎるから、俳句でも読む。

●ボクサーに　苦しまぎれの　ナポリタン
●ワンランク　上のクールな　タンバリン
●冷蔵庫　投げるラスボス　強すぎて
●手をかざし　稀に飛び出る　カメハメハ
●デコトラの　イルミネーション　目にまぶし
●帰宅する　道に落ちてる　つけぼくろ
●マシンガン　肩にひっさげ　一学期
●ガチャガチャの　中身を作る　町工場
●ちゃんこ鍋　お出かけ前の　エチケット
●死んでなお　やつは魁　男塾
●CanCamを　買って熟読する　球児
●短小と　言うな裸の　王様に
●テリヤキを　食べて指まで　しゃぶり上げ
●灰皿に　俺の夢ごと　揉み消され
●出くわした　ドッペルゲンガー　はにかみ屋
●ポリゴンの　母が涙で　訴える
●集まった　２４人の　俺とぼく
●ドール抱き　マグロ漁船に　乗る乙女
●駄菓子屋の　奥で１００億　受け渡し
●いつまでも　浜辺でおまえ　探すおれ
●飛びヒザで　蛍光灯を　割る老婆
●ラジオから　夜中に漏れる　うめき声
●掃除機の　吸引力が　変わらない
●ジャポニカを　漢字で埋める　冬休み
●みだれ髪　戦い終わり　おさげ髪
●矢印が　右折禁止で　右を向き
●準急の　ドアに挟まれ　もがく俺
●職安で　無職がひとり　ほくそ笑む
●サミットに　うちの親父が　乱入し
●割り箸が　割れずソバ屋を　後にして
●最大の　エンゲル係数　はじき出し
●賽銭を　盗むサンタの　資金源
●ふたりして　カーデンごしに　見る朝日　　　　　　　　　　　　　　　　　

〈了〉