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黒澤明・スピルバーグ他研究会コミュの「影武者」(黒澤明)を6回見ました。

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なかなかの作品ですね。
う〜ん、頑張って六回見ましたけど、作品の真髄には迫れなかったです。
七回、八回見ても、僕の足りない頭だと結果は同じだろうし、今日は月末なので見切りをつけ、頭の中が釈然としないまま感想を書きたいと思います。
って言っている間に4月1日になってしまいました。それだけ時間が、かかりました。まとめるのに、てこずりました。
今まで何作もご紹介してきましたが、一番てこずった作品です。
作品概要は書きましたが、字数の関係上、抜け落ちている素晴らしいシーンが沢山あるので、是非、皆さんに、その目で見て欲しいです。

(概要)
まず信玄の弟信廉(のぶかど)と、信玄と、信玄と瓜二つの影武者(以下カゲ)の三人の対面のシーン、信玄の「う〜ん良く似ておる」のセリフから、この映画は始まります。ここで信玄に対しズケズケと物申したカゲに、信玄は優しい言葉で返します。これでカゲは信玄に心服します。
ここで「影武者」のタイトルが入ります。
その対面からしばらく後のこと、信玄は、野田城という徳川方の城を攻略しています。野田城は、落城寸前でしたが、信玄は、城から狙撃されてしまいます。その情報は、信長、家康、謙信にことごとく伝わります。特に信玄を一番恐れている信長は、信玄の生死の確認を部下に命じます。
家康と謙信はそれとは違い、信玄の不慮の死を敵ながらにして「信玄ほどの弓取り、他にあるとは思われぬ、この話、本当ならば、近頃惜しいことじゃ」とか「英雄人傑とは信玄公こそ申すべし」と惜しみます。
信玄は野田城で弾を受けたものの、命は取りとめ、野田城と和議を結んで甲斐に撤退します。そして息子の武田勝頼ら重臣達を前にして、遺言を残します。
それは「われもし死すとも、三年は喪を秘し、甲斐の両国の備えを固め、ゆめゆめ動くな」というものでした。喪を秘すとは、死んだことを隠し通せということです。
そして、その後信玄は、籠の中で、本当に死んでしまいます。
残された重臣達は、三年は喪を秘しという難題の御遺言を守らねばなりません、そこへ信廉は、重臣達の前にカゲを登場させ披露します。
この男を持ってすれば、難題のご遺言は守り切れるかもしれないと期待させます。
徳川、織田の間者(かんじゃ。スパイのような者)は、信玄の死後、岩山から、馬上で行進するカゲを見て、どう見ても信玄よ、とあざむかれます。見抜けません。
しかし、信玄の死についても知らされておらず、その死の為に、なぜかのべつまく無しに影武者をやらせられているカゲは、とても付き合い切れないと盗みを働いて逃げようとします。
寺に安置されている大甕を割り、中のお宝を頂こうとします。
しかし、その大甕の中身は、信玄の遺体でした。
びっくりして捕まったカゲは、信廉ら重臣達に責められますが、生きていると思っていた信玄が死んでいたことを知って、その影武者の役をするのは馬鹿馬鹿しいと言います。
信廉は、これにはやむを得ない事情がある、信玄の三年は喪を秘しというご遺言があるのだ、と言ってもカゲは聞きません。
武田家重臣の山県正景らは協議し、この武田家の影武者の難題を、この武田家と無縁なカゲにさせるということは、所詮、我々の身勝手と申すものだ、とカゲを無罪放免します。重臣達は三年喪を秘すという難題をこなすのをあきらめます。
翌日、大甕に入った信玄の遺体は、諏訪湖に沈められます。
岸に両手をついて信玄の亡骸を見送る重臣達の様子を見ていたカゲは、それに心を打たれ、改めて影武者として使ってくれと信廉ら重臣達に懇願します。
次の日、戦勝祝いの奉能があり、それを見物する武田方の侍達に混じって、信玄の様子を見に来た織田徳川の間者は、舞台の前の先頭に座るカゲを、この時も影武者とは見抜けません。
そして甲斐の館に帰還したカゲは、お世継ぎの幼い竹丸君に帰還の挨拶を受けますが、竹丸はご帰還の祝辞を述べてしばらくして、「違う、これはおじじではない」と言い出し、重臣達は肝を冷やします。
信廉は、「構いません、近々と寄って、とくとご覧くだされ」と言い、竹丸はカゲの目の前まで近寄ります。
竹丸は「本当だ、おじじは本当に変った…。…怖くなくなった」と一同の笑いを買います。
その第一の危機を乗り切ったカゲは、その晩、側室達と対面します。
この対側室の第二の危機も、カゲの機転で乗り切ります。これも見てください。
面白いですよ。
さて家康は、信長が、小谷の浅井朝倉などを始めとして四面を敵に囲まれている、この好機に、なぜ信玄は京に向かって兵を進めないのか、理解できんと言います。そして駿河の武田領内に攻め入り、その出方によって、武田軍の後ろに信玄があるか、なしかを確かめようとします。
武田方の出城が一つ、家康に落とされ、甲斐の館で、武田家家臣を集めての戦評定が開かれます。
カゲは評定の段取りは、信廉に前もって教わっていました。
が、勝頼はそれを無視して、影武者と知っていて、カゲに「この勝頼、早々に出て蹴散らしてみせまする。父上、お指図を」と直接カゲに願い出ます。段取りには無かった展開だったが、近習が竹丸に語った、動かざること山のごとしの会話を思い出し、「動くな。…山は動かぬぞ」と第三の危機も、勝頼に万座の中で恥をかかせた形で乗り切ります。この事も、のちのち勝頼を追い詰める一つの要因だったのでしょう。
信玄が京に向かって進軍してこないのを怪しんだのは、家康ばかりではありません。信長は、京に追放された信玄の父、信虎を使い、南蛮の医者と信虎の重臣を合わせてカゲの元に、信虎からの病気見舞いだと送り込みます。カゲは、この第四の危機も難なくこなします。
ところでここで事件が起きます。勝頼が戦評定も無しで、単独で、駿河に侵攻した家康軍を撃退する為に、高天神城という城に攻めかかります。ぬけがけの勝頼の出陣に驚いた重臣達は、信玄でも落とせなかった高天神城を、勝頼が単独で落とせるはずは無いと、勝頼をあなどり、勝頼の陣の背後に、カゲを使った信玄の幻の本陣を構えます。
それに出向いたカゲと、根津甚八さん演じる近習番頭や小姓達とのやりとりが哀しくそして、面白いです。是非見て下さい。ここではあえて割愛します。
この高天神城攻防戦の映像美も是非堪能して欲しいところです。ハマりますよ。
勝頼は高天神城を落としますが、それは後見として背後に幻の本陣を敷き、風林火山の孫子の旗を見た家康が、信玄を恐れ、背後から勝頼を突かなかったからだとこぼします。
「この勝頼、いくらあがいたとて、父の幻から逃れることはできん」と部下の跡部(あとべ)に愚痴ります。重臣達も勝頼を諏訪殿として、つまり信玄の部下としてしか、勝頼を扱いません。この積み重なる勝頼のフラストレーションが、長篠の戦いという悲劇につながります。それは全編で何回かのシーンで分割されて説明されています。歴史好きの方は、カゲの事よりもこちらの方が面白いでしょう。
高天神城から館に戻ったカゲは、竹丸に黒雲という馬に乗れるのは、おじじだけだ、と黒雲に乗るようにせがまれます。その時、近習や小姓が、信廉の言いつけを守らずカゲの側に誰も付き添っていない時でした。
カゲは黒雲に振り落とされます。敵も味方も人はあざむけたが、馬だけはあざむけなかったのです。側室達は、部屋から庭へ飛び出してきてカゲを助け上げます。しかし、怪我は無いかと上半身裸にした時に、カゲの背中に川中島の戦いの時に上杉謙信に切りつけられた傷が無いことに気づき、信廉を問いただします。「信廉殿、やはりこれは影武者か?」と、ついにカゲが影武者であることが、ばれてしまいます。
すぐにカゲは、信廉や重臣達から、わずかな恩賞をもらい館から追放されます。
そして信玄の仮葬儀が行われます。
信長は、「さすがは信玄、死してなお、三年の間、よくぞ、この信長を、たばかった」と苦言を吐きます。
その直後、武田の全軍二万五千人が、長篠に向かいます。総大将は、やっとお世継ぎ竹丸君の陣代として、御館様になれたばかりの武田勝頼です。勝頼は、重臣達の止めるのも聞かず、意地になって進軍します。
この時すらも、重臣達は勝頼を御館様とは呼んでいません。勝頼殿と呼んでいます。この勝頼のことを、いつまでも、ないがしろにしてきた信玄と重臣達に、長篠の戦いの悲劇の原因はあったと思います。勝頼は勇将、知将として知られていたからです。なぜ勝頼が従来の冷静さを欠いていたかは、それまでの勝頼と、部下の跡部との会話で充分、説明されています。詳しい中身は後でさらに説明します。武田が滅ぼした諏訪家の血を引く勝頼を、いわゆる敵の子であるが故に、信玄の世継ぎには、信玄すらをも、できなかったという深刻な事情があるんですね。
織田徳川連合軍は、馬防柵を何キロにも渡って敷き、二千から三千丁もの鉄砲の準備を整えました。
そこに勝頼の采配で、騎馬武者の風の部隊、歩兵部隊の林の部隊、また騎馬武者の火の部隊が次々と突っ込んでいきます。まるで自殺行為です。
館を追放されてからも、行くあても無く、長篠までついてきたカゲも、槍を持ち馬防柵に向かっていって撃たれて死にます。そしてカゲの死体が河に流れて終わりです。
今回はラストシーンまであえて語りました。

(感想)
1.映像美がすごい。高天神城攻防戦での統率の取れた歩兵や騎馬武者の動き、ラストの長篠の戦いでの馬防柵から織田徳川連合軍が鉄砲を撃ちかけるシーンの美しさは絶品です。なぜカンヌ映画祭でパルムドール賞を獲れたかは、この映像美につきる、と思われます。僕はハマりました。一度は見てください。テレビ放映を待ってでも充分ですよ。

2.誰の話なのか分からない。表向きはカゲの話ですし、ラストシーンも河を流れるカゲの死体で終わるので、カゲの話だと一応は感じるのですが、ラストのカゲの死体に哀れさを誘うカタルシス(感動、快感)が無いんですよね。あそこには無いです。
理由は、影武者の存在の有無の事実は別として、全編が史実に基づいているので、あっちこっちに描写が飛んでいるからだと、僕は思います。
信長も家康の動きも説明しないといけないし、何よりも勝頼の鬱積する葛藤を説明しないといけないから、人間としてのカゲの葛藤に迫れなかったのです。それでも三時間弱という長い作品です。カゲの人間としての葛藤を盛り込むと長すぎます。
僕はこの作品には、二人の主人公が存在してしまった、と感じています。一人は文字通りカゲで、もう一人は武田勝頼です。
それもラストに長篠の戦いという武田家の悲劇を持ってきたためです。その為に勝頼のことを説明しないといけなくなったのです。暴論ですが、ラストをカゲが影武者ということがバレて追放されてしまう所で終わったら、その分、思う存分脚本の黒澤さんと井出雅人さんはカゲの人間に迫れたと思います。が、間違いなくカンヌは獲れなかったでしょう。だから僕の暴論です。カゲは小才の効く便利屋としてしか描けませんでした。僕としては、カゲが追放された後、信廉や近習などがカゲの質素な住まいを訪れたりしても良かったのではないかと思います。
勝頼のことを、知っている所だけ書きます。僕自身も昔の本の記憶で、はっきりしないので、間違いだったらご指摘下さい。
作品を見れば説明せずとも分かるのですが、まだ小さい勢力だった武田家は、諏訪家と敵対していました。そして一度は和睦し、そして又、だまし打ちをして諏訪家を滅ぼしました。その後、信玄の力で武田家は大きくなっていったのです。
その時に、諏訪家の姫を側室として迎えます。これは信玄のスケベ心だったのか、政略だったのかは、覚えていないのですが、子供が産まれます。それが勝頼です。その時、信玄には嫡男がいました。太郎義信という名前でしたが、父信玄に歯向かい謀反を起こそうとして、逆に信玄に殺されてしまいます。
そこで実子で残ったのが、勝頼一人だけだったということです。諏訪家という敵の子供である勝頼を、実子とは申しても、嫡男には据えかねます。太郎義信がいたので、重臣達も勝頼自身もまさか、勝頼が跡継ぎになろうとは思っておらず、重臣達はいつまで経っても、諏訪殿、諏訪殿と映画の中でも呼んでいます。諏訪殿と言われることは、お前は敵の子であると突きつけられ続けることでもあるわけです。それらが次々と刺さってくるのが勝頼の日常ですし、映画の中でも、それは描かれてます。
山県昌景が、影武者の一件が露呈して「今日よりは勝頼殿が御館様じゃ」と言っても、実際、長篠に向かって進軍の指揮を採っている勝頼には、勝頼殿と言っています。御館様と呼ぶべきなのにです。自分の子の竹丸が、信玄のお世継ぎで、竹丸君が元服するまでのわずかな期間だけの陣代という立場にも、納得がいかないですよ。そりゃ。勝頼の扱いを、信玄も重臣達も間違ったのですよ。映画の中でも、ある重臣が「勝頼殿のことが一番頭が痛い」とも言っていました。
またカゲが小才を効かせながら仕事をこなしている間は、盗人のカゲにひざまずくしかなく、なぜ知将、勇将の名をとどろかせた勝頼が、御館様になれないのか、屈辱的な日々を消化できるはずも無いのです。その意味で、三年は喪を秘し、というご遺言自体が、勝頼を過小評価した間違った命令であったわけです。三年は喪を秘しというご遺言が無ければ、この映画自体も無かったのですが、勝頼が素直に家督を継いでいて、重臣達も御館様と勝頼を立てていれば、ひょっとしたら長篠の悲劇は無かったかもしれません。

3.大事な二点のカゲの心の動きに説得力が無い。
まず1点は、冒頭の信廉と信玄とカゲの対面のシーンで、なぜカゲが信玄に心服したのか、はっきりしません。仲代さんの演技力を責めるつもりは無いのですが、若干優しい言葉を投げかけられただけで、影武者の大役を勤めおおせるほど心服したのか、僕は納得できないわけです。これは演じる仲代さんのせいではなく、脚本が足りないと言っていいでしょう。
次の2点目は、大甕に入れられた信玄の遺骸が諏訪湖に葬られる所で、心を打たれたカゲが、「おらぁ、あの方の役に立ちてぇんだ」と、信廉に「頼む、もう褒美なんか要らない、俺を使ってくれ、使ってくれ」と改めて懇願したのでしょうか、何に心を打たれたのか、分からず、カゲの行動が不自然です。
この2点は、カゲが影武者をやることについての動機となる、カゲが主人公になるには作品全体の核となる大切なシーンです。
この2つが弱いので、ラストのカゲの死体が河に流れるシーンにカタルシスが無くなるのです。人間を深く描いてきた黒澤さんにしては浅いです。黒澤ファンの一部が「影武者」を邪道扱いするのは、分からないでもありません。

4.脚本の流れは見事です。
絶賛しつつも、悪口ばかり書いてきましたが、次々と降りかかる難題をカゲがこなしていく所は、コミカルかつ痛快な流れで、無学なカゲが、なぜそのセリフをしゃべるかの説明は、必ずそのセリフの前のシーンで前ふりされており、その流れのテンポはラストシーンまでトントンと進んで小気味良いくらいです。

5.信玄が神格化している。
この作品を見て、尊敬する人を信玄だとした人は多いのではないでしょうか?
あれほど統率された優秀な部下を沢山持ち、敵方の家康や謙信にも、その不慮の死を惜しまれ、あの信長が、はっきりと、この世に怖いものはただ一つ、あの甲斐の山猿だ、と明言させ、三年喪を秘しきった信玄に対して「さすがは信玄」と言わせた信玄は、黒澤さんが意図したのか分からないですが、人間を越えて神格化していますね。信玄、黒澤作品の登場人物の中でも、この上なく格好良いです。
最後は褒めて終わりたいと思います。では。

コメント(2)

勝新太郎にやって欲しかったですね。天衣無縫の信玄と影。
そうですね。僕も勝新にやって欲しかったです。
仲代さんだと「乱」は良かったのですが、「影武者」については、信玄をやるにしては線が細いと思うんですよ。
勝新なら、野良着も似合ったろうなと思うと、勝新の電撃降板は残念でしたね。

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