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俺的SS置き場INブラへコミュのRagnarok-蜜月闇夜の花- プロローグ

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りりぃ……りりぃ……

「むぅぅ〜……なによ……人間なんかに媚売っちゃって……」

薄暗い寺院の中、一人の少女が座布団に座りながら水晶の珠を見つめている。
外からは鈴虫の声が聞こえ、冷涼感をかもし出している。

「なんでそんなに笑ってるのよ……お兄ちゃんだったらそんなやつら、一発であの世逝きに……」

少女の見る水晶は一人の男を映している。

「ああ!そこの女!それ以上お兄ちゃんに近づくなぁ!!」

少女は変わった姿をしている。
狐の頭そのままの毛皮を被っていたり、手袋や胸覆いなども全て狐の毛皮である。

「むぅぅうぅぅ〜……」

少女は自分の脇に置いてある棒を取った。

「お兄ちゃんの……」

棒も変わっている。
先端に釣鐘が付いているのである。
さほど大きくもないが、少女が持つには手に余る。
が、しかし、少女は軽々とそれを持ち上げ、立ち上がると大きく横に振りかぶり

「ばかぁぁぁぁぁぁぁぁ〜ッ!!」

水晶珠にフルスイングをかました。

「はぁ…はぁ…」

水晶珠は寺院の壁を突き抜け、漆喰の塀にぶつかってめりこみ、落ちた。

「……いいもん」

少女は「水晶珠取りにいかなきゃ」と呟いて、釣鐘を引きずって扉に向かう。

「お兄ちゃんなんか……嫌い……」

ごごごごっ

自分の身長の10倍はあろう扉(というより門)を両手で軽々と開けた。
外に広がっている空間もまた異質であった。
本来空のあるべき場所に空がないのだ。
それはすべて岩壁。
つまりここは洞穴の中なのだ。
そして奇妙な空間に

「だぁぁぁぁいっきらぁぁぁぁぁぁぁぁいいっ!!!!」

天よ――この場合岩壁だが――裂けよといわんばかりの大絶叫が響き渡った。




「雷雨だな……」

モロクからフェイヨンへの道中、男は立ち止まり、雲行きの怪しい空を見て呟いた。
頭からフードマントを身に纏った男の正面からは鎧が垣間見え、両の腰には剣を佩かせていた。
その姿は王立騎士団のものとも、教会聖騎士団ものとも違った。
逆十字のペンダント、黒い鎧、鎧の内に見える血のように紅い鎖帷子、刺々しいガントレットとグルーヴ。
明らかにそれらは禍々しく、そして戦闘的だった。

「砂漠に雷雨とは……珍しいこともあったものだ。誰かマヤーとその巣でも破壊したか…」

沈んだ声は若く、フードの下に隠れた顔を創造させるように美しい。

「マリア」

男は自分の後ろに声をかけた。
男の後ろには一人、小さな少女がついてきている。
その姿は闇い蒼に染め抜かれたドレスに身をつつみ、ほっそりとした首には男と同じデザインの逆十字がチョーカーとなって飾り、
肩口で切りそろえられた銀色の髪は、太陽なくとも光り輝いている。
全身から高貴さを感じさせられるが、堅く結ばれた小さな口や変わることのない表情、
氷より遥かに冷たいであろう瞳は、いっそ人形のようであり、同時に禍々しさをかもし出している。
少女は振り返った男の顔を覗くように見上げた。

「雨に濡れると大変だ。私の中へ隠れるがいい」

男はマントを広げ、少女に手を差し伸べた。
たったそれだけだった。
それだけで少女はその氷を融かし、薄く微笑んだ。
そして男の体に正面から飛び込んだ。

「……急ぐとしよう。フェイヨンの森まで雨宿りなどできんからな」

マントを閉じ、振り向いた男の後ろには少女の姿は既に無く、ただその首には逆十字の付いたチョーカーが光っていた。

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