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武者小路実篤コミュの新しき村

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新しき村に就て〜武者小路 実篤

僕達は何を望んでいるか。
 一番の望みは生き甲斐を得ることだ。この地上に何か、生きた人間に喜びと希望を与えてゆきたいことだ。
 それ以上自分達が生き甲斐を感じたいことだ。生れた喜びと言ってもいいが。そして死ぬ時も、安心して希望を持って死ねることだ。
 人間はこういう風に生きればいいのだということを理屈でなしに実感で知りたいのだ。
 その為には僕は多くの兄弟姉妹と協力して、地上に美しい世界をつくってゆきたいのだ。そこではお互が愛しあい、尊敬しあい、信じあい、助けあう世界だ。
 他人に迷惑をかけず、他人に迷惑をかけられる心配なく、互に助けあって、美しい世界をつくることだ。余力を捧げるに足る世界をもつことだ。
 我等の力は少ないのである。だがその少ない力も集れば強大になる。我等は無理はしたくない、背のびして歩きたいとは思わない。我等は他人に重荷を無理に背負されたいとは思わない。しかし自分相応の荷はかつぎたい。もしそれが兄弟姉妹の喜びになるなら、心から感謝してもらえるなら、我等は他人の生命にも役に立ちたいのだ。ただ自分の進むのに足手まといになるものははらいのけたいが、迷惑せずにすむ程度では他人の為にも働きたいし、殊に皆の為に働きたい。
 皆と心をあわせて働くのは喜びである。誰もが物質的には得をしないが、誰もが精神的には喜べる世界、そういう世界こそ、心の美しいものが喜んで集る所である。
 目医者には目の悪い人が集る。金もうけの出来る所には金のほしいものが集る。心の美しいものだけが喜べる所をつくれば心の美しいものが集るわけだ。そして我等を心から喜ばしてくれるものは心の美しいものである。
 我等は心の美しいものが集り、その美しい心が地上に生きることを望んでいるものだ。
 少くも、その土地にゆく時、その土地にいる時は、利害を忘れ、物質的欲望からはなれ、金のことを忘れ、ただ兄弟姉妹と喜ぶ為にのみ働く世界、それが我等の世界なのである。
 誰も物質的には得をしない。皆が損をしている。物質的に我等は得のしようがないのである。それだけ純粋な気持で喜べる。この気持がわからない人は、我等の仲間にはなれない。この世では、得をしないでもしたい仕事はいくらでもある。僕達が新しき村の仕事を始めたのは、生き甲斐を得るためで、金をもうける為ではない。
 僕達は金を軽蔑はしない。今の世では金は必要である。しかし他人を損させて自分だけがもうけるのは気がひける。又金を唯一の目的として働くのもいやである。
 我等は自分の生命をよりよく生かす為に金も必要なので、自分の生命を賤しくする為には金は不必要である。
 我等が働くのも、協力するのも、勉強するのも、文芸の仕事をするのも、我等の本来の生命を生かしたいためで、金もうけの為ではない。我等はお互の生命を尊重して、お互の生命が健全に生きることをのぞんでいるのだ。           
自分達の望みは簡単に言うと友達になれるものとは、なるべく多く友になり、そしてその友達と力をあわせて美しい世界をつくりたいということである。お互に他人を利用することはしないで、お互に他人に迷惑はかけないで、自分の余力を出しあって、その力で美しい世界をつくろうというのである。
 僕達は個人としては力の強いものではない。他人を助ける力はない。だから他人から時間も、金も、労力も強要されるのはいやである。自分から好んで働きたいだけ、働き、つくしたいだけは喜んで尽すが、他人から強要されて、僅かな時間や金を心にもなく出すのはいやである。そのかわり自分の方で喜んで奉仕したいことには奉仕する。強要される時は御断りするが、自発的に喜んで働けるだけ働くその力が多く集ることで、自分達の望んでいる世界を築き上げたいと思っている。
 その世界は、一定の義務労働をすることで生活が出来る世界である。つまり健康な合理的な公平な労働を皆がしようと思うと出来、その労働をすれば生涯の心配がなくなり、安心して病気の時は養生出来、子供は安心して育てることが出来る世界である。
 そしてその余暇で自分のしたいことが出来る世界で、僕達の言葉で言えば、誰もが天寿を全うし、個性を生かすことが出来る世界である。
 そういう村をつくりたいというのである。同時に人間はそういう風に生きるのが、本当であることを人々に知らせたいと思うのである。そしてそういう人が多く集って、その多くの人の自発的な協力で、そういう村を出来るだけ早く、大きくつくりたいというのである。そしてその村を見る人は、誰でもこの村に住んでみたいと思うような村にしたいと思い、住みたい人はなるべく多く住めるようにしたいと思っているのである。

(「新しき村に就て」四・五より)

コメント(2)

自分達の仕事の精神 武者小路実篤

自分達の仕事の精神は何処にあるか、それをはっきりして
おく必要がある。自分達の望みは全人類が協同してすべての
人が人間らしい生活をすることが出来るようにすることであ
る。

すべての人間を衣食住の心配から解放すること。そしてこ
の世に人類の栄光を発揮出来るだけ発揮し、人間にたいする
動かない信仰を確立すること。
金の為に労働せずに、人類にたいする個人の義務として労
働すること。
義務労働以外は、各人の自由意志を尊重すること。しかし
同時に他人の迷惑を顧慮すること。他人に迷惑を与えない範
囲で自由を楽しむこと。
義務労働以外のごとは社会からも、他人からも強いられな
いこと。
人類の為に貢献したものは尊重される。
思いやりのゆきわたることが大事である。
思いやりのないもの、賤しい根性に支配されるもの、そう
云う人は独立した人とは云えない。
独立した人と云われないことは一番不名誉なことである。
自分と同じ主義を他国人がもつことによって矛盾を起す主
義はあやまった主義である。
愛国心は、他国人の愛国心を害せず、尊敬出来る範囲をこ
すと罪になる。
祖国の為に戦うものをお互に尊敬が出来ず、愛することが
出来ないのは国家主義の欠点である。
自分達は自分と同主義者が世界中に出来れば出来る程、感
謝し、よろこべる主義を持たなければならない。同じ心を心
としたものを兄弟の如く愛すことが出来ないような心をもつ
ものは新しき村にふさわしくない者だ。
又世界中の人間が自分達と同じ生活をすることによって人
類が進歩しなくなるのでも困る。その反対でなければならな
い。吾等は愛と正義と勇気とを失ってはならない。それ以
上、正しきものの力を信じなけれぱならない。我々の力は小
さくも、我等の道がまちがっていないこと。人類に祝されて
いる、ーもし神があるとすれば、神がよしと見給うー道
をふむものはこの世で一番強いものだと云うことを信仰しな
ければならない。
その信仰さえ本当につかめば、そしてその上に立つたしか
さを本当に感じれば、自分達の力が弱いとか、仲間が少ない
とか、若いとか、他人が認めないとか、笑うとか、そんなこ
とは問題ではない。
自分は今の資本家や、労働者や、その仲間のものが一人ぬ
け、二人ぬけして、自分達の仲間に入る時がくることを信じ
ている。そして仲間がある一定の数にたっするまで、自分達
は縁の下の力持ちのように見られ笑われる方ことを甘んじて
いられる。もう十年、もう二十年だ。そうなれば一通り目鼻
が出来るであろう。それまでは笑われる方が気持がいい。自
分達は目的を忘れずにこつこつ働いてゆくことを無意味な仕
事とは思わない。
それが自分達の信仰だ。
(一八・八・一一)
土 地 ー終章ー

自分は祈りたくなった。
「我を生かしたものよ。我にこの仕事をさせるものよ。我に兄弟を与え、この土地を与えたものよ。我の仕事がまちがっていなかったら、我々の仕事を助けよ。自分は七度倒れても八度起きる。百度倒れても百一度起きる。いくら倒れても何千度倒れても、必ず自分は起きる死なない限りは。そしてこの仕事が正しい限りは、私の一生をあなたに捧げる。私は一番正しい、まちがいでないものに一生を捧げないことを恥じるものだ。あなたよ。私を導け。私の未来の頁にはどんなことが書かれているかは知らない。だが背き切りにはならないようにしてくれ。そして死ぬ時はあなたの懐に帰りたい。あなたを抱きたい。
私の仕事は時に消えかかるかも知れない。油が不足になるかも知れない。だがその時でもあなたに背かなければ最後の勝利を得ることを知っている。
私をここまで導いてくれた神よ。私にはもう人類は犠牲を払わずにあなたのもとに帰れる時に達しているように思えます。私はその道を見いだしたと思います。
それはまちがいですか。いやまちがいとは思いません。真心さえ生きれば、私の真心さえ生きれば、兄弟姉妹の真心さえ生きれば、全世界の真心が生きれば。
神よ私はあなたの前に跪きます。お導き下さい。私は今迄まちがった生活の為に、労働力が半人前切りないでしょう。私をお導き下さい。私をお使い下さい。そして私の足りない処を十二分におぎなってくれる兄弟姉妹をお授け下さい。
すべて私の力ではありません。あなたの力です。しかし私の真心を通してのみあなたがあらわれることを私は信じております。
神よ。自分は心で神を礼拝した。自分の目は涙ぐんでいた。清き流れはたえず流れ、仲間を受け入れて海へと流れてゆく。
幸よあれ!


土 地 (抄) 一

自分は一九一八年十二月の或日朝早く川岸に出た。清い川の流れは岩にぶつかり、泡を立てて流れている。ある岸の岩の上に自分は立った。自分は顔を洗い、うがいをつかった。そして川向うの城の土地を見て祈った。
日はまだのぼるのに間があった。其処は四方山にかこまれていた。自分はあたりを見まはした。誰も居ない。
自分は暁方の空気につつまれた、その清い水と、清い山と、空を見た。自分は跪きたい気がした。自分達の仕事はこの土地で始められる。神よ守護してくれ、あなたの助けなくしてこの仕事は出来ない。
*
自分はこの仕事を始めようとしてまだ半年たつかたたないかだった。幸福は自分につきまとって、この仕事を祝してくれた。
世間の人はこの仕事は必ず失敗すると云った。しかし友は信じてくれた。仲間は一人ふえ、二人ふえした。一月たつかたたないかに百人以上の熱心な仲間を得た。
東京で始めて仲間にあった時は五、六人だった。しかも四度目にあった時は、三、四十人になった。或日書留の郵便が来た。あけて見ると千円の小切手が入っていた。
自分達は何かに感謝した。
よき手紙がくる度に妻はよろこんで、自分にとびついた。自分は喜びの上に決心を今更に強めないわけにはゆかなかった。


土 地 (抄) 二

自分達は何をしようと云うのか、新しき社会をつくろうと云うのである。其処では皆が働ける時一定の時間だけ働くかわりに、衣食住の心配からのがれ、天命を全うする為には金のいらない社会をつくろうと云うのだ。その上に自由をたのしみ、個性を生かそうと云うのだ。
そんなことが出来るか? 出来る!
それが自分達の確信であり、その確信のもとに進もうと云うのだ。
それには先ず土地が必要である。土地を只にする為に、先ず我等は一定の土地を買わなければならない。
土地をただにする運動をするかわりに、少しつつでも土地を買って、共同のものにし、ただと同じだけの実をあげたいと思った。

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