俺の彼女は風俗嬢の仕事ですコミュの風俗嬢冥利につきました!!

本日の出勤してすぐのお客さんは、新規のご予約のお方だった。
時間はロングの80分。ホテルに向かいドアを開けると、小柄な40過ぎの紳士的なおじさんが立っていた。

「本日は、初めてお会いするのに予約で来て下さってありがとうございます｣
私は新規で予約してくれたお客さんの初対面時には、必ずこう切り出して挨拶する。

私はＨＰで顔出しを一切していないので、新規予約の人がつくのは珍しい。
たいがいは｢以前、店で写真を見て入りたくなって｣とか｢電話で良い子がいないか聞いたら店員に薦められて｣などの返事が返ってくるのだが、このお客さんは違った。


「もう覚えてないよね？　１度会っているんだけど。以前、渋谷で働いてなかった？」
私は準備している手を止め、ビックリしてお客さんに向き直った。

あ、そうです!!　勤めてました。もう２年近く昔の話ですけど。
よ。わ〜、私のこと覚えていてくださったんですか！


「うん、そうだね。多分会ったのは３、４年くらい前だね」

……意外だった。なぜなら、渋谷から私を探して池袋にきてくれたお客さんは、当時、何度も足を運んでくれた常連さんのような人ばかりだったから。

私の渋谷での源氏名は、ちょっと珍しい名前だった。
渋谷のお店から池袋に移籍したときも、その変わった名前に変に愛着が沸いてしまい、変えずにそのまま使っていた。
そのおかげか、ネットでも探しやすかったようで見つけて来てくれる人が何人もいた。

そのときは変わった名前をつけて良かったなあ、
新しい店でも同じ源氏名にして正解だったなあと思った。
でも、そうして見つけて訪ねてくる人は、移籍した時期に多かった。

……私がこの店に来てもう１年９ヶ月経つ。今さらこんなことがあるんだろうか。
しかもついたのは３、４年前の１度きりだよ？



「わー、そんな昔の１度きりのことを覚えて探して来てくださったんですね、うれしいですよ」

そんなことを言って再びローションを置いたりなどの準備を進める。するとお客さんは
「今日は話があってきたんだ。準備はしなくていいから、こっちへ座って」
　と促してきた。

「え、いいんですか？」
（なんか仕事でイヤなこともあって愚痴でも聞いてもらいたいのかなあ)
そう思いつつ、お客さんの横にちょこんと座る。


もう私のこと覚えてないかな？　確かに１度しか入ってないんだけど。
私は風俗店を経営しててね、色々ときみに感動して、うちの店にスカウトしたんだよ。名刺を置いていってね。
結局連絡が来なかったから当時は諦めたんだけど。……覚えてない？

そう言われて、私はみるみる思い出してきた。
顔は全然覚えていないけれど、スカウトをされたことはよく覚えている。

当時いた店では、ずいぶん稼がせてもらっていた。
オーラスじゃないのに１日10万超えることもよくあったし、
計算したら片番の日給平均が８万超えていてビックリした〜なんて月もあった。
ほとんど休憩もなくて身体は大変だったけれど収入にまったく不満がなかった。

スカウトでバックを高く掲示されても、
わざわざ稼げる店をリスクを負って移籍するつもりはさらさらなく、
話は聞いたけどもそこまで興味も湧かず名刺はすぐ捨ててしまっていた。


「ああ!!　思い出しました。きみみたいなタイプの子が欲しいってスカウトしてくださいましたよね」

「そうそう、それ。よく覚えてるね」

おもいだしてきた..

その時は..ひととおりプレイが終わり、
スマタでフィニッシュというときに、このお客さんは

「入れたくなっちゃった、ダメ？｣と突然言ってきた。

ここまではとても良いお客さんだったのに……
こいつも最後はこれかよ。

私は心の中では鬼の形相で(ふざけんな！)と思いながら、
「ダ〜メ☆」と甘えたように答えた。

「おこづかいあげるから！」
「３万出すから！」｢10万？　じゃ、いくらならいいの？言ってみて。
私なら出せるよ｣などとしつこく言われ、

顔はニコニコしながらも心はブチ切れ寸前の私は、
冷静に　すみません、いくらお金を出すと言われても、
できないからヘルスにいるんです。

本番できるんだったら最初からソープに勤めますので。
そういうのがやりたければお客さんも最初からソープに行ってください。
それだけ出せるなら高級だって余裕で行けるでしょ？」と答えた。

私はあまりにしつこく本番を強要されると、
必ず｢ソープに行け｣と言うことにしている。
こういうと、必ずみんなおとなしくなるからだ。

しかし、このお客さんは違った。

「……すごくいいね!!　真面目だし。
きみみたいな子がうちにも欲しい！　じつは……」と身体を起こしてきた。

この人は私を試していたのだ。
顔、スタイル、プレイ内容、雰囲気、会話、そして金で本番をするかどうか。
私の風俗嬢としてのすべてを……。　

今の今まですっかり忘れてたよ。
私もよく何年も前のことを思い出せるなーとは思うが。
まあインパクトがある出来事だったからな〜。

うれしかったんだよね。容姿はともかく、
「ルールを守れる子｣としてスカウトされるなんて。
本番しないことを評価してくれる人なんてそう多くもないからね。

自分のプレイを正当化されたみたいですごく誇らしくなったっけ。



ヘルスで本番をしない。



これは私の中での大きな約束事でもある。
彼氏がいるから最後の操は守りたいという気持ちからきているのもあるけど……。
ヘルスって思った以上に本番強要が多い。
お客さんは本番が出来ないのは分かってきてるはずなんだから、
本来強要するのはおかしい。まあ、入れたくなる気持ちもわからんでもないけども……納得してきてるんだから、そこは察しろって感じだよね。

私は、その場の雰囲気やお金の誘惑に流されず"やりません"という明確な意思
を持って働いていること、そして"本番しなくたってちゃんとＮｏ.１でいられるのよ"ってことにちょっとした誇りを持っている。

本番ができるならそういう場所があるんだから、そこでやればいいと思う。
わざわざ禁止の所でダメなことをするのって、
罪悪感というか、心に変なしこりが残っちゃう気がするんだよね。
「あー、やっちゃったぁ」みたいな後悔？　
気にしない人もいるんだろうが私はダメだ。そういうの味わいたくない。

あと、もしお金とかの誘惑に負けてやっちゃったとしてさ、
やってから「やっぱ金ない」って言われたら？　ない人から取れないでしょ。
店に言う？　言えないでしょ。

もしゴムが破けたとか中出しみたいになったら？　
｢わざとじゃない｣って言われたら強く責めれないでしょ。
それで妊娠しちゃったら？　誰が責任とってくれるの？　
誰もいない。誰の身体が傷つくの？　泣き寝入りでしょ。

そんなふうに思っちゃうわけよ。ソープだったらね、
ピルとか飲んだり、そうなるかも、、みたいな多少の覚悟の上で働くと思うのよ。

店に堂々と相談もできるだろうし、色々「しょうがない」と
諦めがつくかもしれないけど、
でも本番禁止のヘルスで金の誘惑に負けた結果がこれかってなったら･････

落ち込むところじゃないよ!!　や、極端な例だし考えすぎかもしれないけど、
絶対100％そうならないって保証はないわけでしょ。

もしそんなことになったら、私はきっと「一時の金に目が眩んでやらなきゃよかった」、｢お金はいらないからあの瞬間に戻して!!｣って死ぬほど後悔すると思うんだ。

だったら最初から危ないことはやんなきゃいいわけで。
それに本番で指名をとってもね、長く続かない気がするんだわ。

いまの私の常連さんを見ても、
みんな「本番してたら絶対来てないよな」と思うお客さんばっかだもん。

裏引きするとかお金取って本番とか、
サッと稼いですぐこの世界から足を洗うならそれでもいいかもだけど、
長くいるつもりなら逆に損すると思うんだよ。

無理をしないサービスで真心こめて接客を頑張る
＝指名がちょっとづつ増える
＝収入が増える＝店からも大事にされて働きやすくなる
と、頑張ったその分、結果的に自分にも良いことがドンドン返ってくる気がするんだよね。”

他人を大事にすること＝自分も大事にされるようになる"ってことに繋がっていくんだと思う。



でも、そんな私の誇りも風俗の世界からかけ離れた人から見れば
それは小さいことかもしれない。


「本番しようがしまいが、しょせん身体を売って金にしてるのは同じことじゃないか｣

そういわれてしまえば何も言い返せない。
でも世間では"身体を利用して金を稼ぐから同じこと"だとしても、
私の中では"本番をするかしないか、
ヘルスで働くかソープで働くか"　これは大きく意味合いが異なる。

風俗に"ソープ"というものしかなかったら、
決して足を踏み入れてなかった世界だと思う。
ちっぽけなプライドかもしれないけれど、
私はその「本番はしない｣という気持ちを大事にしたいんだ。


あ、でも私は……ヘルスで本番をする子は
……ちょっとイヤだけれど否定はしないよ。
接客のやり方は人それぞれだし、
個室に入ってしまえば、そこで女の子が何をしてるかなんて結局は分からないわけだし。

自分がそれで良くて、お客さんもそれで良いなら、
じゃーそれでいいんじゃん、みたいなね。
「やるならソープ行けよ」なんて、店の責任者でもないのに口出しできるもんでもないし。

ただ、ヘルスはヘルスでしか味わえないプレイってのがあると思うの。
そういうヘルスでのみの楽しさを
お客さんにバーンと提供するのがいいんじゃないかなーと個人的には思う。

「サービスすんのがめんどくさいから」なんて理由で本番する子は、
最初は良くてもすぐに飽きられて、長く続く指名や太客には繋がらないと思う。

あぅ、偉そうにごめん。



……話がだいぶ逸れましたね。



で、このお客さん、いまは新たに会員制の高級デリヘルをやっているそうなんです。
手広いのう。
まあ話っていうのは、またスカウトだったんです。

さらに良い子を増やそうということで、
私を思い出して再びスカウトしにきてくれたそうなんです。
容姿やスタイルも重要だけど、

なんといっても目先のお金で動かない、
しっかり信念のある子がいいんだって。

お金持ちの紳士はお金への欲望が見えちゃう人間を嫌うそうで。
そ、そうなのか？！　私は貧乏だからワカランですｗ　
結局80分、店のシステムや手取り、客層や料金のことなどを聞いて終わりました(爆)

来てくれた以上、私はプレイするつもりだったんですけどね(汗)　
申し訳ないっす(;　;)　

プレイしなかったことを謝ったのですが、
｢スカウトの話で来て、もともとプレイするつもりはなかったから気にしないでいい｣と言ってくれました。

なかなか良いおっちゃんです。手取りとか条件も、びっくりするくらいよかったよ。
高級デリヘルで価格設定も高いから紳士的なお客さんしかいないし、
女の子のクレームも全然ないみたい。


「いいなあ」と思いましたよ。ええ、正直。

でも、いろいろと考えて、最後にスカウトの件は丁重にお断りしました。

店の子に話したら「えー絶対条件いいよ、ちょっとでも行けばいいのに」とか
「もったいない」と散々言われましたが……。
でも、あと何ヶ月かで風俗辞めるというこんな状態で新しく行っても
すぐ辞めるの悪いなあと思って。

まだ風俗続けるならいいけどさ、このタイミングじゃね。
今でもコソコソと店に出てるのにさ。
それに今の店だってスローペースにも関わらず、その割りにそこそこ稼げてるし……。

不満がないのに、必要以上に欲を張っても人間良いことないんと違うかと思って。

私は、この店できちんと卒業したいと思ってるから、

変に高級デリヘルが居心地よくなって離れられなくなっても怖いし。

お客さんにはけっこうすごい人(医者とかＩＴ社長とか財閥とかそんなんも多いらしい)とかもいるとかいってビビったしね。

なんか庶民的って言ったら悪いけど、
ごく普通のお客さんのほうが私には合ってるよ。
緊張するより、身の丈に合った場所で、マイペースに楽しくやりたいのだ。


しかしまあ、感動しました。
３年も４年も前に１度会った子を覚えていて、

探してまたスカウトしに訪ねてきてくれるってことが、
もうメチャメチャ嬉しかった〜。こんなの初めてです!!　

風俗嬢冥利に尽きますよ。

ほんと、それについてはおっちゃんにお礼を言いまくりました。
｢覚えていてくれてありがとう｣って。

たった１回の接客でも、人の心に"忘れない何か"を残せたなんて、

なんか感激だよ。あー本当に涙が出そうなほど嬉しい。


「風嬢やっててよかった」

と思う出来事が、私の中でまたひとつ増えました。