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ここはどこだ?
分からない。
ただ暗い所。
気がついたらそこにいた。
分かるのはそれだけ。
前は見えない。後ろも、横も、斜めも、上も、下も。
目の前にあるのは闇ばかり。
闇・・・。そう、闇としか言いようの無い所。
こんな所は初めてだ。僕はどうすればいい。それも分からない。
分からないからジッとしている。
だけど、いくらジッとしていても今ある状況は変わらない。
だんだん怖くなる。
とりあえず歩いてみる事にする。
前へ、前へ、ひたすら前へ。
歩く、歩く、ひたすら歩く。
しかし、歩けども歩けども
闇、闇、ひたすら闇。
もの凄く怖くなる。
僕は走る事にする。
前へ、前へ、ひたすら前へ。
走る、走る、ひたすら走る。
しかし、走れども走れども
闇、闇、ひたすら闇。
僕は泣きそうになる。
物音一つしないその闇に、
唯一僕の吐く荒い息とパタパタという足の音しかこだまさない。
ここは何処なんだ?
そんな事はもうどうでもよかった。
ここから抜け出したい。
今はその一心でひたすらに走る。
空気が冷たい。喉から鉄の味がする。息が苦しい。
飲み込む空気が喉を冷やし、自分の喉じゃ無い様な気持ちになる。
本当に気持ち悪い。早く休みたい。早くここから出たい。
速く、速く、もっと速く。
体が気持ち悪い事なんて、苦しいけど、気にもならない。
本当に早くここから居なくなりたい。
どれだけ走っただろう。
僕は今までに走った事の無い距離を全力疾走している。
でも、そんな大記録を喜ぶ余裕は今は何処にも無かった。

僕は目に映る突然現れた物に思わず足を止める。
人だ・・・人がいる!
再び走る。さっきよりも速いスピードで。
目に映る人影を、まるで迷子の中に母親を見つけたようにおもいっきりに走る。
人影がこちらを見て手を振る。
気づいてくれた。僕がここにいる事に。
僕が今、キミを目指して走っている事に。
人影は近くなる。
もうすぐでどんな人なのか分かる。
女の人なのか、男の人なのか。子供なのか、大人なのか。
良い人そうな人なのか、怖そうな人なのか。
でも今はもうどんな人でも良かった。
また僕は泣きそうになる。
だけど、その人影に近づくにつれて
目を覆う湿り気は奥へとおさまり、体を包む湿り気もいつの間にか湿度を失う。
変わりにこの空気よりも冷たい寒気が、僕の背骨の中を下から上へ走っていくのを感じた。
僕が人影に近づき人影の目の前に立っても、人影は人影のままだったからだ。
人の輪郭をしている、ただ黒いだけの物。
何だこれは?
今一瞬だけ、その事が思考の最優先になる。
ゼぇゼぇと呼吸をする。
酸素が足りない。
最優先の事でも思考が鈍くいつもの倍はかかる様に感じる。
「お前は・・・」
不意に人影が喋る。
「お前は・・・何処に行くつもりだ?」
まるでロボットのような話し方で僕に問い掛ける。
少なくとも之は人なのだ。僕はそう思う事にする。
そして、この質問は考えるまでも無かった。
「出口へ・・・僕は早く・・・ここから帰らないと・・・いけないんだ。」
呼吸はまだ整ってはなく、セリフが途切れ途切れになる。
「出口へ?何で?」
何で?って・・・
「ここは・・嫌なんだ。だから・・ここを出る方法を・・教えて欲しい。」
呼吸がだんだん落ち着いてくる。
そして、だんだん気持ちの焦りが蘇って来る。
「本当に、帰りたい?」
こいつの言っている意味が分からない。
僕はここが嫌だと言った。本当に帰りたいに決まっている。
「本当に帰りたいんだ!だから出口を教えて下さい!」
気持ちの焦りから、突然敬語になり深々と頭を下げる。
もう本当にここは嫌なんだ。早く帰りたい。あの居心地の良かった所へ。
「本当に、いいのか?」
まだ言うかこの人影!!
「当たり前だ!帰りたいに決まって・・・」
頭を上げ、思いっきり人影に迫ろうとした瞬間、僕は思わず息が止まり、目を見開く。
人影の後ろで映る映像。
そこは病院だった。
ベットの上で横たわる傷だらけの青年。
それは紛れもなく僕だった。
ベットを中心に何人か見覚えのある人が集まり、涙している。
その大きな泣き声を僕の体は物ともせずに寝入っている。
まるで人形のようだった。
「何で、僕が、あそこに。」
分けも分からず、ただ思った事を口にする。
「まだ、分からないか?アレを見ても。」
人影は相変わらず体温の感じない冷たい声で僕に話し掛ける。
僕はゆっくり人影の方を向く。
すると、さっきまでは無かったはずの人影の目が僕を鋭く見つめている。
不意に目が合ってしまう。
その時、僕は頭にガツンッと例えようの無いほどの衝撃を受ける。
耐えがたい頭痛。僕はその場にしゃがみ込み手で頭を支える。
人影の後ろから僕の知っている泣き声が聞こえる。
何だ?何だ!?何だ!!??
知る人の泣き声とさっきの衝撃で、頭の中をまるでまさぐられているような
途方も無い気持ち悪さに頭がおかしくなりそうになる。
そして・・・プツン、と頭の中で何か糸の様な物が切れるのを感じた。
僕はいつの間にか涙を流していた。
「そうだ・・・僕は。」
上を向いたまま放心する僕に人影は
「思い出したか。良かった、これで連れて行ける。」
と言う。
「・・・・。」
僕は黙ったまま人影の方を向く。
「私は迎えに来た。今日、車に殺されたお前を。」
そうだ、僕は今日、車で遊びに行った時に
猛スピードで走ってくる対向車を避け損なって。そのまま。。。
「まだ、戻りたいと思うか?戻ったとしても
 そこには壊れた器と、痛みがあるだけだ。」
僕はゆっくりと首を横に振る。
まだショックは大きいが、もう気持ちの殆どは諦めに包まれていた。
「それなら行こう。私がお前を連れて行く。」
僕はそれに素直に従う。
まだ頭は落ち着かない。でもそうするしかないと理解していた。
僕はゆっくりと人影の後ろを歩き始める。
まだ映っている映像から背を向け、歩き始める。
知る人の泣き声はまだ止まない。
僕はもう振り向く事も無く、ゆっくり、ゆっくり歩き続ける。
泣き声はどんどん小さくなる。
僕は歩くのを止めない。
そしていつしか泣き声は消え、映像は闇の中へ。
そして僕も、ゆっくりと、ゆっくりと闇の中へ・・・。
人影の後ろを少しも離れる事は無く。
ゆっくりと、
ゆっくりと、
闇の中へと、
降りてゆく。

コメント(9)

またトピックを立てさせていただきました。
一応何度も読み返しましたが、またしても誤字が出てしまったら
どうもすみませんm(_ _)m
生物は生まれながらに死へ向かう。

なんて、格好いいこと書いても突然の死というのは受け入れがたいですね。
でも、
「まだ、戻りたいと思うか?戻ったとしても
 そこには壊れた器と、痛みがあるだけだ。」
なんて言われた日には、さすがに戻りたいと思いません。
うまい台詞です。

全体的に少しどんよりとした感じではありますが、こういう死の物語もアリでしょう。
個人的には「闇」の表現をもう少し工夫してほしかったところです。
「闇」の一言で終わらせるのは勿体ないんで。
DDDさん>
コメント早くてビックリしました!
ありがとうございます☆

そうですね。
認めたくない不幸に突然来られても
なかなか受け入れる事は出来ないですよね。
「闇」に関しましては、この文章の中での青年の素直な気持ちを
なるべく交じりっけの無い文章にしたかったので
ステージのメインとなる暗闇はあえて遠回りはせず
真っ直ぐに「闇」としました。
この方が逆に説得力があって読んでる人にスッと入り込むと思ったんです。
ですが確かに「闇」の言葉にもうちょっと工夫があったほうが
また文章として面白くなると思いました。
ご意見どうもありがとうございます。
また何か持ってきた時にはまた読んでくださいまし。
はじめまして、こんばんは。

人影の微妙な優しさ……かな?なんか良い感じですね。
kun太さん>
はじめましてコンバンワ☆
コメントありがとうございます!

どうなんですかね?
人影はただ業務をスムーズにこなしたいが為に、という見方も出来ますからね。
ただコイツは僕にもよく分からないので
もしかしたら、深い優しさを持った奴なのかもしれませんね。
自分の死を自覚し、なおかつ自分を知り涙を流している人にも声をかけられないままこの世を去る。
悲しいお話ですね。
人間いつ死ぬかわからないから後悔はしないように生きないとダメですね。


闇の中でのお話もよかったと思いますが、一つ突っ込みを入れるなら……。

>その時、僕は頭にガツンッと例えようの無いほどの衝撃を受ける。

「ガツンッとしか例えようのない」とか、「ガツンッという言葉では例えられない」とか、「ガツンッ! 僕は頭に例えようの無いほどの衝撃を受ける」といった感じにしてはいかがでしょう?
この文章だと「ガツンッ」と例えているようにもとらえられるので……。
璃瑚さん>
そうですね。
いざ僕もこの立場になると戻れないのは分かるけど
もしかしたらい行けるんじゃねえか?
みたいなおうじょうぎの悪さを発揮すると思います。
同時に目の前まで行って怖くなって諦めるといったヘタレさも発揮すると思います。
どっちにしろ突然死ぬのは嫌ですね〜。
あかんべーさん>
とりあえず「ガツンッ」の所は
僕の例えようの無いほどの痛みを受けた時の実体験として
例えようは無いけど人に喋る時に仕方なくよくある言葉を使うしか無かった
という部分からあえてこういう書き方にしてはみたんですが、
改めて見ると確かにこの文章はおかしいですね。
この場合はもしかしたら擬音は擬音として
わけて文章にした方が良かったかもしれませんね。
御指摘ありがとうございます!

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