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Baja1000 (バハ1000,SCORE)コミュの2008 BAJA500 参戦Report 07 -ジョニ男の場合-

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<前回まで>
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RM 400-440 / Ojos Negro - Ensenada / Last Battle
 
 久しぶりに大声で笑った。
 過去に大阪で英語講師をしていたというその男は、僕がピットにいる間ずっと励まし続けてくれた。
 パッと見は細いけど、お腹だけはデップリしている典型的なアメリカ中年。
 笑って、日本語を聞いて、またお菓子を食べて、すっかり元気になった。
 勿論体はボロボロなんだけど、気持ちがまた、前に向いている。
 ここからエンセナダのフィニッシュラインまでなんて、あっという間だ。
 朝走った時は一時間もかからなかったぞ(大嘘)。
「まだしばらくはシルトが続くから気をつけるんだぞ!」
 大きな歓声に後押しされてピットを後にした僕だったが、10mも進んだところで思いっきりスリップダウンしてしまった。
 本当にシルトだ。まだ気は抜けない。
 バタバタと人が集まってくる。ちょっと恥ずかしい。
 奥は慌しくエンジンをかけて再スタートをきった。
 
 ペースは悪くない。
 しばらくすると、路面も硬くしまった土に代わっていった。
 ライディングに少し余裕が出てきたところで初めて寒気を感じた。
 大きく呼吸すると、その空気は驚くほど冷い――。
「あはは」
 少し嬉しくなって、余計にアクセルを開けた。

 ――ここは、見覚えがあるなぁ。
 スピード制限の標識があるフラットな牧場道だ。
 もうここまで戻ってきたんだ。もう少しだ。
 朝のようなスピードは出ないけど、それでも一時間前とは別物のペースで走りぬいていく。
 急げ急げ。時間自体は、そう余裕があるわけではない。
 あと一時間もてば後はどうなっても良いから、まだ持ちこたえてくれ。
 気を抜けばすぐにでもくず折れそうな手足を励ます。
 
 と、本来ならば曲がらなければならない角を誤って直進。
 この時はすぐに気付いたんだけど、今思えばここから僕のBAJA500の第三幕が始まっていたんだ。
 それはミスコースとの戦いだ。
 ここに来るまでも、何度かミスコースの危機はあった。
 闇夜に紛れてコースリボン・マーカーが見えづらい場所も沢山あったが、そういうところではキャンパーや観客が道を教えてくれていたのだ。
 しかし、この辺から人の気配はとたんに薄くなり、マーカーの数も昼間に比べれば激減していた(様に思う)。
 観客たちが記念にコースマーカーを持ち帰る場合があるそうだ。
 一度は大きく道をはずれ、10数分後に突然行き止まりにぶつかって心底肝を冷やした。
 時々見える4輪のライトやエンジン音を頼りにオンコース復帰。

 どうなってるのか。
 朝走ったときや、プレランの時は一切の迷い無く道を選べていたのに。
 覚えの無い二股に差し掛かって、いよいよ僕はマシンを止めてしまった。
 時間は刻一刻。静かに流れ続ける。
 幸いだったのは、四輪がまだ数台後ろにいたこと。
 GPSがあるのか、単に覚えているだけなのか、彼らは簡単に正解の道を選んで走っていく。
 今回もタイミングよく現れた四輪の後に続いて右に曲がった。
 、、、すぐに置いていかれるんだけど。
 
「何でマーカーが無いんだ!!」
 何度目かの悪態をつきながら、コースをたどる。
 周囲が見渡せるならば、感覚的に理解できる地形、コースも、僅か5m先の視界だけではあっという間に迷路に早変わりだ。
 すっかりペースは落ち込み、また焦りが生まれてくる。
 心持を表すグラフがあったなら、今日一日の波形は きっと ものすごくダイナミックだろう。
「あぁ、もう――」
 ライトが照らすままに任せてその下りに差し掛かった瞬間、僕は視界の隅にコースマーカーを捉えた。
 まさに今下ろうとしているこの坂がコースでは無いことを示す、そんなマーカーだった。
 「正しい道はコッチだよ」って、矢印が明後日の方向を指しているのだけど、今更止まれない。
 フロントタイヤが斜面をすべり、一拍遅れてライトが地面を照らす。
 見えたのは行く筋も深く刻まれた縦溝だった。
 避けられない。
「っ!!」
 フロントタイヤが溝にどっぷりはまって、後輪が持ち上がる。
 僕は勢いに逆らわずに――逆らうような体力も無く――大人しく前に放り出された。
 斜面を滑って停止。
 あっという間に静寂と暗闇に包まれた。
 ヘルメットのLEDライトが消えてしまったからだ。
 スイッチを捻りなおすとあっさりライトは復活。壊れてない。
 LEDに照らされたXRは直立とまでは行かなくても、いい角度で後輪を持ち上げたまま静止していた。
 もう前輪は見えない。
 試しに押したり引いたりしてみたけど、がっつり嵌まったバイクは、まったく動く気配が無かった。
「、、、」
 上手く頭が回らない。この状況、一体どうしたら良いんだろう?
 、、、、、、、、。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
「どうしよう」
 随分長い間かけて呟いた一言は、自分でもビックリするくらい情けないものだった
 ここまで色んな危ない目にあっても、きつくても、何とかがんばって前進してきたのに、今は何も出来ない。
 目の前にバイクがあって、まだ体は動いて、ゴールはすぐ近くにあるのに!
 悲しさや、焦りというよりも、驚きに近い。こんなことがあるのか。

 その後も何度か脱出を試みたけど、無理。
 いよいよパニックに陥り掛けた時、僕は今回のレース中最大級のラッキーに出会うことになる。
 斜面の下の方から突然、二人の子供が何かを叫びながらやってきたのだ。
 その子供たちをワンボックス車のハイライトが下から照らしている。
 斜面でイゴイゴやっているLEDライトを見つけてくれたのだ。
 スペイン語はまったく分からないけど、助けてくれるみたい。
 でも小学生くらいの子供が二人増えただけじゃな、なんて思っていたけど見た目以上に腕っ節の良い彼らの助力で前輪を溝から引っ張りだす。
 ――次はオンコースまで上げないと。
 そう思いながら斜面を見上げる僕を尻目に、二人の子供はバイクを抱えながらさっさと斜面を下りて行く。
「ち、ちょっと待ってよ!」
 彼らにも英語は通じないだろう。
 バイクを取り返そうとしても笑って放してくれない。
 無邪気に笑う彼らを見ながら、少し怖くなった。
 何処に連れて行かれるんだ?まさか、、、。
 かなり怖い想像が頭に浮かんだけど、斜面を下り終わったその場所は見覚えのあるところだった。
 本来九十九折れの斜面を転がり落ちて一気にショートカットしたみたいだ。
 下からライトで照らしてくれていた父親らしき人物がサムアップ。
「グラシアス!!」
 安堵に少し上ずった声で、精一杯のお礼を述べた。
 また走れる。それも、もう本当にゴールが近い。やったぞ。
 この騒ぎで体力はもうゼロに限りなく近い。
 かまうものか。
 ここを抜けたら、もう住宅地につく。
 歩くようなスピードで走る僕の前に、キャンパーが作った小さなジャンプ台が姿を現した。
 端っこの、一番段差の無いところを選んでなめて通過する。
 ――通過したはずだったのだが、段差を越えて接地するはずの前輪がいつまでたっても地面をとらえない。
 ギャップの裏側を、思いっきり掘ってやがった。
 仕方なく本日何度目かの前転。
 僕はもう可笑しくて可笑しくて、最後にこれかよって笑って、大の字に寝転んだ。
 そのジャンプ台から丁度死角になる位置に、沢山の子供が隠れているのを発見したからだ。
 僕が笑い出したのを見て飛び出してきた子供たちが次々にのしかかって来る。
 つーかお前たち何分そうやって待ってたんだよ。
 自分たちでこかしたバイクを起こして、ギャーギャー笑っている。
 やれやれ。今なら許してやる。
 これが、僕がBAJAで経験した最後の転倒だった。

 
 舗装路に出た。
「あ、、、」
 深夜1時前。
 唐突に、僕のBAJA500は終わろうとしていた。
 ここから川底のストレートに入ってしまったら、もう終わっちゃうんだ。
「、、、」
 何とも言えない気持ちだった。
 寂しかった。
 警官が静かに僕を誘導する。「良くやったな。さぁ行け」。
 頷いて、川底に降りる。
 
 大きく、息を吸い込んだ。
 
 もう誰もいなくなったジャンプ台を僕はアクセル全開で飛ぶ。
 ――やっぱり誰もいないのか。
 無理も無い。もう日付も変わり、他のレーサー達の姿も無い。
 フォレストの皆はいるだろうか。まだコースで、もしかしたら僕を探しているかも。
 少し寂しくて名残惜しくて、残り1マイルはゆっくり走った。
 最後のダストを巻き上げて舗装路に上がる。
 街灯が眩しかった。
 
 空を見ながらゆっくりと走る。
 その角を曲がれば、フィニッシュラインだ――。
 
 
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RM Pd. / Ensenada / ヒーローになって (2)
 
 少しの沈黙の後、いきなり歓声に包まれた。
 ゲートの前にはまだ沢山の観客がいた。
 先にゴールしたバギーのドライバーが、お立ち台の上で拳を突き上げていた。「やったぞ!!」。
 俺もだ、、、!!。
 声にはならなかったけど、僕も叫んだ。
 色んなものを抑えながら、チェッカーフラッグを受けた。
 おめでとう。おめでとう。サル・フィッシュと握手。
 そんなことよりも――。
 バギーのドライバーとも握手。おめでとう。ありがとう。
 そんなことよりも――。
 我慢できなくなって、バイクから飛び降りてお立ち台へ。
 観客に、今まで応援してくれた皆の前に立って、ヘルメットをシッカリと右手に掴んだ。
「っしゃああああああ!!!」
 突き上げる。イメージは、まんまダブルフリップをメイクしたときのパストラナ。
 その場に居合わせた全ての人間が、この大馬鹿者の日本人の為に声を出し、拍手をしてくれた。
 倒れそうになったけど、何とか踏みとどまって、退場。
 お立ち台から降りると、ショーイさんが駆けつけてくれた。
「やったな!ホントにやったな!!」
「はい!!」
 がっしり握手。まさか本当に走りきるとは思ってなかっただろうショーイさんの顔を見て、思わず笑みがこぼれてくる。
 でも、もう限界っす。
 また満身創痍のバギーが一台チェッカーを受ける。
 歓声を遠くに聞きながら、僕はショーイさんがライドするXRの後ろに乗って会場を後にした。
 
 スポーツマン オーバー250クラス 40台中29位。
 The last finisher of BAJA riders.
 
 こうして僕のBAJAチャレンジは幕を閉じた。

 モーテルの前で少しの間 談笑して、顔も洗わずにベッドの上へ。
 吸い込まれる様にして眠りについた先に見た夢は、やはり当然のように砂漠を走る夢だった。
 ダストを追い抜き、次のゴールへ――。


<Finish!!>

コメント(5)

このコミュニティに参加したばかりの者ですが、一気に読ませてもらいました。

はっきり言って、、、、

            感動した!

僕もいつの日かBAJAにチャレンジと思っていますが、都内在住&自営業の為練習場所や時間的に厳しいと思い込んでいました。

しかし、ジョニ男さんのこのReport見たら、そんなネガティブ要素が吹っ飛びました! 何よりも他の日本人参加の方に比べ、サポート体制もじゅうぶんでは無いのに、自分の気持ちで乗り切ってるトコも脱帽モンですね。

現在2歳になる息子と参加が目標ですが、まずはソロ! ですね。

日本ではまだ知名度の低いBaja。 しかし現地ではヒーローだったジョニ男さんの姿が眼に浮かびます! 最終的には自己満足なのかもしれませんが、走破したことで得る、自信や達成感は凄いんでしょうね!

お疲れ様でした!
ジョニ男さんなかなかやりますな 
バハに出たい出たい と ゆう人は多いけど 出場してしまったとこがすごい
金銭的な事 休みの事いろいろ苦労はあったと思いますが
まず出場するための 熱意がすごいね
俺も1988年にはじめて 出場した時はサラリーマンでした
それもその時俺は40歳でした 会社からはいい歳してなんだ なんて
ですから まず 休暇を取るのにすごい苦労しました でも情熱ですね
次は1000ですね ループコースの1000は500のコースにプラスして作ったコース
ラパスまでのコースはループとは違って長い 1600Km
青森から下関までの距離 そう考えると 長いね
帰りも大変です ラパスからロスまで約1700Km
でも楽しめますよ ぜひ今度は1000に出場してください
ソロで走りますか  ?
もう 病気になったみたいですね バハ熱
自分もBaja出場を目標にしてますが、
すごく勇気をもらいました。
読みながら、Bajaの風景が浮かんできて
自分への気合いもりチャージできました。

僕も目標達成に向けてこつこつとがんばります。
>けんたろーさん
ありがとうございますー。書いた甲斐がありました。

目標があれば毎日有意義になる。
目標があれば力が出せる。

多くの事を学びました。
いつか けんたろーさんも自分の目標を実現してください。
夢→目標に切り替わったところから、スタートだと思います!!

>norio-sunさん
初めは勢いだったんですが、みんなに宣言して回ってる内に
引っ込みがつかなくなりまして、、、(笑)
初めはどうなることかと思いましたが、会社で
出発前に少し気まずくなった人とも、今では出発前以上に仲良くなりました。
情熱は人を変えます!
いつかは縦断してみたい。。。
今度はどうやって休み取ろうかなー。

>tarzanさん
tarzanさんも もう夢ではなく「目標」にしてしまったのですね!
困難を乗り越えていく価値があります。断言です。
あっという間の10日間でしたけど、一生忘れないですもん。
そんな経験、なかなか出来ないですyo〜。
ジョニ男さん完走おめでとうございます。次は1000だね!

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Baja1000 (バハ1000,SCORE) 更新情報

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星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。