ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

Baja1000 (バハ1000,SCORE)コミュの2008 BAJA500 参戦Report 04 -ジョニ男の場合-

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
<前回まで>
01. http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=31826712
02. http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=31923027
03. http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=31993910

--------------------------------------------------------------
RM 206-270 / Borrego - Trinadad / Like a shooting star...

 ボレゴのピットを飛び出して十数分、我が身に降りかかった出来事を、俄かに認めることは出来なかった。
 国道脇の、フラットで真っ直ぐ伸びたダートロード。
 体の節々にガタが出始めているけど、5速全開。トリニダットを目指す。
 この頃にはすっかり右側通行の人になってしまっていた。
 ――それにしてもトップのトロフィートラックはえらい事になってたな。
 これからあんなのに抜かれていくのか。
 なんて考えてた、正にその時だ――。

 フッと、音も無く、黄色の物体が、視界の片隅に飛び込んできた。
 
 風圧を感じたと思った瞬間には、もう、そいつの後姿が見えている。
 思い出したように耳を劈くエキゾースト!
「え?」
 あんな音、きっと擬音で表現できない。それも、アッと言う間過ぎて覚えてない。
 思わずアクセルを戻して呆然としてしまった。
 正気を取り戻した時には、もう砂煙も見えない。
 ただ、高く巻き上がった埃だけがいつまでも、うっすらと視界をさえぎっていた。
「、、、マジですか」
 ピットで座りながら見たモノとはまったく別物だった。
 後、50cm左側を走ったら――ギャップに弾かれて左に寄ってしまったら――頭が吹っ飛んでた。
 速度差、ありえない。
 僕は間違いなく、今の自分の最高速で走ってるんだし、え〜!
 こんなんがポンポン来るのか!?
 抜かれるまで、その存在にまったく気付けなかった。
 バカな、と思うかもしれないけど、本当です。
 それくらい速度差がある。
 ホーンを聞いて振り向いた瞬間にドーン!
 、、、ドーンじゃネェ。
 ややや、と、思いっきりビビッてしまう。
 いつの間にか座って走っている。一番端の、フカフカライン。
 キョロキョロと後ろを気にして、ペースも一向に上がらない。
 次BAJAに行く機会があれば、僕は確実にバックミラーを装備する。マジに。
 しかし、5分経ち、10分経ち、次の刺客は現れない。
 後ろを振り返るたびに、首は痛いし、真ん中に寄ってしまう。
「んあっ!?」
 正面のギャップに思いっきり弾かれた。
 転倒こそしなかったものの、あちこち痛い。
 チクショウ。もう横に逃げるのはヤメだ。
 幸い道幅はある。トラックなんてヤツは凹凸は完全無視だろうから、どっかに乗り上げてパスして行ってくれるはずだ。

 前に逃げてやる。

 気を取り直して、ステップを両足で踏みつける。頭はハンドルバーより前に。
 上半身は地面とほぼ水平。
 走りやすい中央の路面を狙って思いっきりアクセルを開けた。
 
 しかし気になることもある。
 実はここから先30マイル程、僕はプレランしていなかった。
 舗装路を使ってショートカットしたからだ。
 あのときにショーイさんが言ってたのは、ダルい、キツいという感じの言葉だったか。
 実際に走ってみると、バイクに合っていない、と言われた意味が分かる。
 点在するギャップはどれも深く、V字に掘れている。
 不用意に高速で突っ込めばフロントが沈みきって跳ね上げられてしまうだろう。
 路面状況が良くスピードが乗る区間だけに、何とも難しい。
 四輪ならコレも無視できるんだろうけど。。。
 ギャップを一つ越えるたびに、コブを一個飛ぶたびに、何かが零れ落ちていく。
 膝はもうショックを吸収しきれない。
 体の芯に直接ダメージが届き始めていた。
 大気に身を砕きながら突進する流れ星みたい、と言えば格好良過ぎるけど、もうそんな感じ。
 ボロボロと、いろんなものが剥ぎ取られていく。

 勢い良く右コーナーを曲がると、いきなり舗装路が現れた。
 警官が交通整理をしているが、少し驚いてマシンを止めてしまう。
 ボテッと立ちゴケ。
 何かもう、マシンをまともに支える事が出来ないみたいだ。
 思ったより消耗している。
 ヤレヤレ、とバイクを起してキック開始。
 こういう時は、何でかエンジンが掛からない。
 適当な段差も無いので空キックするのも一苦労だ。
「・・・・・・!!」
 と、そんな僕を見守っていた地元の人間が突然肩を叩いてきた。
 スペイン語は分からない。でも真剣な顔で後ろを指差している。
 言わんとすることはすぐに分かった。
 今走り抜けたコーナーの向こう、大きな砂塵の塊が見えたからだ。
 口笛の音も聞こえる。
 数名の男性に手伝ってもらって、マシンをコース脇に押しのけた。
 そうか。もう、コケてもおちおち休んでもいられないわけだ。
「トロフィー!!」
 また誰かが叫んでいる。
 が、姿を現したのはトラックではなくバギーだ。多分CLASS1だろう。
 僕にしてみれば どっちも同じようなもんだけど。
「あれはterribleだよね!」
 思わず叫んだら、金髪のお姉さんが反応してくれた。
「英語話すの?」
「少し」
「日本人?」
「そうだよ」
「何処に住んでるの?」
「んー、フクオカってわかる?」
「カリフォルニア?」
「え?あ、うー。日本から来たんだ。先週。レースの為に」
 なんかゾロゾロ人が集まってきた。
 そんなことしてる間にもう一台、トラックだかバギーだかが追い向いていく。
 もうあんまりバイクいないな。
「この人、レースの為にアメリカに来たんだって!」
「oh! welcome!」
 このwelcome!は今でもはっきりと覚えている。
 会話の内容も、結構はっきり覚えている。
 映画で見たそのまんまだ。
 大げさに両手を広げ、屈託ない笑顔を向けてくれる。
 レース中じゃなかったらもっと楽しかっただろう。
 でも、アメリカじゃなくてメキシコだからな!
「もう行かなきゃ」
 空キックの小儀式でエンジンをかけて、後ろ髪を引かれながら発進。

 舗装路へ。ちょっと長い。
 体を休めることの出来る貴重な時間だ。
 制限速度の60マイルをキープしながら一般車両をやり過ごす。
 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 舗装路の前に一つBAJA PITがあったんだけど、良く覚えてない。
 それだけ四輪連中のインパクトが強かったんだな、と思う。
 生きながらに死神と対峙する機会は中々無いけど、横を駆け抜けられてしまった。
 思い出すのは、PITで本林さんが写真を撮っててくれたのに、トロフィーに追われる情けない顔をしてたことかな。
 りある・でんじゃらす。
 ベテランライダーが「前3割後7割」って言ってたのが良く分かりました。
 BAJAにはバックミラー、だぜ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 またポリスに促され、多くの観客に励まされながらダートロードへ。
 BAJA通には有名な、マイクス・スカイ・ランチョという牧場兼宿泊施設へと延びる、とんでもない道だ。
 道幅は広く、路面はところどころ岩が埋まっているけど基本的にはフラットな、柔らかな砂。
 そんな道が入り口から数キロ、真っ直ぐ伸びている。おうおう。
 グイグイと加速しながら、ふと、ダスト・トゥ・グローリーのワンシーンを思い出した。
 敬愛するキャンベル先生が、前走者を追いかけて砂浜を全力疾走するシーン。
 ――こう、腰を引いたシッティングで、、、。
 思いっきり腰を引いて、シートに体を押し付けた瞬間――。
「あばばばばば」
 突如XRがグニグニと身悶えし始めた。
 激しく左右に触れるハンドルを押さえ込み、再度スタンディングへ。
 シッティングで走るのも、存外難しいもんだ。
 ひたすら真っ直ぐ飛ばし、やがてアップダウンの激しい峠道に。
 これがまた楽しい。
 しばし体の疲労を忘れて、純粋にライディングを楽しんだ。
 ちょっとしたヒルクライムの頂点で、何か飛べそうな気分になってくる。
 感覚が完全におかしくなってたんだと思うけど、あらゆる登り坂がジャンプ台に見えてきて、、。
 (実際トップのライダーは飛んでるのかもね。)
 もちろん阪の向こう側がどうなってるか覚えてないから、不用意には飛び出さないんだけど。
 思う存分峠を駆け上がると、道はだんだんと狭くなり、やがて完全なシングルトラックになった。結構掘れたフープスが連続する。
 流石にこの辺りになるとフープスにも慣れてきて、フロントをぶつけてトトンとクリアできる回数も増えてきた。
 勿論距離を間違って「ぐふっ」となる回数の方が多いけどね。

 ――バババッと、久しぶりに二輪のライダーに追いつかれた。
 何となく嬉しくなって一生懸命追いかけたけど、全然追いつかないでやんの。
 ここまで遅れているのは何かトラブルがあったのかな。
 もっと上手くなりたいな。
 彼らのBAJA500と、僕のBAJA500はきっと別物だろうね。
 どっちも楽しいことに変わりは無いだろうけど、僕はバババッと走りたいほうの人間だな。
 日本に帰ったら練習だ。今は今の全力を出して、ゴールを目指す。
 
 高圧電線の鉄塔下を走る。
 鉄塔下なんて言うと嬉しくなるのは、山遊び好きなライダーの証拠だ。
 少しガレて来たトラックをしばらく走ると、トリニダットのピット。
 お馴染みBAJA PITにバイク止めると、重みでぐらりと傾いた。
 走っている時には感じなかった疲れが今になって押し寄せてくる。
 このトリニダットでいよいよナイトラン用の大型ヘッドライトに換装する。
 フォレストのピットにマシンを入れて、後はショーイさんにお任せです。多謝。
 僕は、出来るだけ疲労回復に努める。ロックスター+バナーナ。
 後になって反省することになるけど、本当は もっとちゃんと食べたほうが良い。
「うー」
 早く走り出したいけど、体は「まだまだ」。動かない。
 学生時代にもあまり運動をしてこなかった僕だから、ここから先は本当に未体験ゾーンなのだ。
 限界を超えて体を酷使するとどうなるか。チャレンジという言葉が現実味を帯びてくる。
 こうしている間にも、バギー、トラックが走り去っていく。
 まだ日は高い、、、様に見える。
 2本目のバナナの皮を剥きながら、両手がすっかり痺れてしまっていることに気付いた。
 ――こういうときにテーパーバーが効くのかも。
 今回は手配したステアリングダンパーの都合でノーマル形状のハンドルバーを使用している。
 (かつてのBAJA KING ラリー・ロズラーのレプリカっす)
 ちょっと後悔した。
 日本ではテーパーバーしか使ったことが無かったし、その効果も意識したことは無かったけど、、、。
 僕のように要領の悪い者は、必要なもの、大切なものを実体験から学ぶしかない。
 グローブを嵌め直して、ギュッと、空を握り締める。
 預けておいたジャケットにも袖を通す。
 ヘルメットにはバイザー下にLEDライトをセット。
 ツールバック、バックパック、ネックブレース、メット、ゴーグル。
 重たい体に一つ一つ装備を取り付け、バイクを受け取った。
 大きなシングルライトを装備したXRは、僕の頭の中にあるBAJAマシンそのものだった。
 つい、にやけてしまう。
「格好良いなぁ」
 
 ここから先は、プレランの時は楽々気分で走った山間の林道や、海沿いのフラットな道が続く。
 ガタが来た体を休めながら走れるはずだ。
 なんか一箇所変な所をのぞけば難所も無かったしね。
 崖落ちしたら一発。
 、、、でもちょっとは油断しても良いよね。
 
 (と、この時は思っていた、、、。あぁ。)
 
 
--------------------------------------------------------------
RM --/ night-run? / 君と夜空を? 

 日が暮れるのは大体pm8:00くらいなのだ。
 それまではずーっと明るい。急に暗くなる。待って。待って。
 祈る気持ちでした。
 トリニダットでライトを着けたのは何時くらいだったかな。
 pm5:00くらいかな。
 もうすっかりバイクには抜かれ切ってしまって、他のライダーがどんな装備でナイトランに挑んでたのか僕には分からないんだけど(笑)、僕はシングル1灯+ヘルメットに取り付けたヘッドライト。
 本やビデオで見た、トラディショナルなBAJAライダーの装備です。
 今回の挑戦の、テーマというほど大げさではないけど、考え方の一つにこの「トラディショナルな」というものがあった。
 多くの先輩ライダー達が経験してきた辛さや恐怖、楽しさを実体験したかった。それが今回の参戦の大きな動機の一つだ。
 だからバイクはセルなんて付いてちゃいけないし、HIDライトなんてのも付いてちゃいけないのだ。
 決して予算だけの問題ではないのだ。
 。。。ホントだって。
 
 
--------------------------------------------------------------
RM 270-360 / Trinadad - Santo Tomas / 誤算と洛陽
   d

コメント(2)

この辺りからバイクに乗っていたことよりも、
人と話したこととか、考えたことの方を良く覚えています。
ますます、筆が走ってるね!

次回も楽しみにしてます。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

Baja1000 (バハ1000,SCORE) 更新情報

Baja1000 (バハ1000,SCORE)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング