ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

恋愛観測コミュのフィカ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
コペンハーゲン中央駅ホームを歩いていると、時計塔のデジタル表示が目にとまった。その瞬間に表示板が回転して、13時13分になった。またか、とぼくは思いながら、ゆるんできたバックパックのベルトを締め直した。ここのところずっと、時計を見るたびに13という数字を目にするのだ。西洋では不吉な数字らしいが、ぼくはラッキーナンバーだと勝手に決めていた。

これから北上する列車に乗ってストックホルムまで行き、さらにフェリーでヘルシンキに渡る予定だった。所定のプラットホームに着くと、二人の若い女性が立ったままで話していた。足下には旅行鞄やバックパックが置かれてあった。

ぼくは彼女たちのそばに荷物を降ろした。どういうきっかけで話し始めたのかは覚えていないが、とにかくぼくらは親しくなってしばらくの間談笑した。

ガッシーと名乗った女性はアメリカ人で、ブラックジーンズに温かそうなバックスキンのコートを羽織っていた。聡明そうな顔に少しそばかすがあった。そしてダークな長い髪を後ろで束ねていた。

ワインレッドの民族衣装っぽいコートを身につけた女性はオランダ人で、フィカという名だった。金髪のおかっぱがよく似合っていた。

やがてぼくの乗る列車がホームに入ってきた。他方面に向かうガッシーに別れを告げ、ぼくとフィカは列車に乗り込んだ。彼女はノルウェーの首都オスロに住む友人を訪ねていくところだった。つまりストックホルムまでは道連れだということだ。ぼくらは英語で話していたが、ぼくの語学力はお粗末で、想像力をフル動員しなければならなかった。

窓外はしだいに暗くなり、列車は夜の闇の中を走り続けた。寝台車ではなく普通の座席だったので、ぼくらは肩を寄せ合って眠った。

ふと目覚めると、窓ガラスに二人の姿が映っていた。彼女はぼくの肩に頭をあずけて眠っていた。馬が合ったのだろうか、出会って数時間なのに共にいることがとても自然なことだった。

外見は違っていても、きっと魂に差はないんだと思った。育ってきた歴史や文化、習慣の違いが、互いの理解の妨げになることはあるかもしれない。でも本当の意味で解り合える相手は、世界中のどこにいても不思議はないと思った。ぼくはそのために旅を続けているのだろうか。

やがてストックホルムが近づいてきた。もう二度と会えないかもしれなかった。彼女が眠りから覚め、ずっと起きてたの? と訊いた。ぼくは彼女の頭を撫でながら、いいやよく眠れたよ、と言った。

コメント(1)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

恋愛観測 更新情報

恋愛観測のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング