DEAD OR ALIVEをビッグネームへと導いたものは何だったのか? 今回はD.O.Aについて掘り下げた話をしていきたいと思う。
D.O.Aの代表作と言えばYou Spin Me Roundですが、仮にこの1作品のみで確固たるビッグネームを 築くことはできたのだろうか?
当時のディスコ仲間との会話が思い出される。 友人「D.O.Aのアルバム(Youthquake)聴いてみたんだけど..」 私「どうだった?」 友人「まあ全体的に似たような曲が多かったかなあ..、D.Jナントカってのが良かったけど、 やっぱYou Spin Me Roundかな?」
You Spin Me Roundの途轍もないインパクトから、恐らく「一発屋」で終わるだろうと思っていた為、 この時点ではまだアルバムに興味がなかった。
アルバムYouthquakeの大ヒット要素とはいったい何だったのか?
通常なら、シングル4曲+2曲ぐらい良ければアルバムとしては成功なのかも知れませんが、 Youthquakeはアルバム曲全てに魅力が詰まったパーフェクト感を極めており、 I Wanna Be A Toy・D.J. Hit That Button・Big Daddy Of The Rhythm・It's Been A Long Timeをはじめ、強力な楽曲集によって全てが成り立っている。
You Spin Me RoundとYouthquakeのみでビッグネームを掴むことはできない。 アルバムが大ヒットしたとしても、シングルヒットが1曲で終わってしまったら、一発屋となってしまう。
では第二弾シングルLover Come Back To Meの連続ヒットだったらどうだろう? ファーストの衝撃的な大ヒットによって、次作への期待度は高まってくる。 当然ながら、レコード会社も意識するところでしょう。 HI-NRGサウンドで大ヒットなら、この流れを崩すことのないド派手なインパクトで押し続けたい。
Lover Come Back To Meの楽曲タイプは、ノリひとつで押し通すエレクトロなHI-NRGインパクトがありますが、1度聴いてノリを感じさせる分かり易い反面、冷めやすさもある。 仮にシングル2曲ヒットで終わっていたとしても、やはり一発屋イメージに変わりなく、 ビッグヒット+もう一曲という結果となる。
そして注目すべきポイントが、この後のヒット2作品にある。
第三弾シングルは、日本国内ではシングルが見送られたIn Too Deep。 ド派手なサウンド・イメージが強い日本では、ミディアム・テンポである In Too Deepは好ましくないという、レコード会社の判断が読み取ることができる。 未だ日本国内における知名度が乏しいのは残念なところ。
本国UKにおけるD.O.Aサウンドが定着したのは、In Too Deep・My Heart Goes Bangという2作ヒットにより確立されたと考えられる。 2作に共通するのは、アルバムバージョンからシングルリミックスへと進化を遂げた、 SAWならではのリメイク・テクニックにある。
In Too Deepは全英最高位14位、My Heart Goes Bangは23位という、見事な後半での巻き返し、これがアルバムYouthquakeの層の厚みとなり、大ヒットYou Spin Me Roundの存在価値を不動のものとした。 この勢いによって、次作アルバムMad, Bad And Dangerous To Knowへと繋がっていく。
ロックバンドDEAD OR ALIVEのメジャーデビューにあたり、新たなシンセ・ディスコとの融合を生み出したのが、全面プロデュースを担ったZEUS B. HELD氏であり、この流れ無くして、Youthquakeは誕生しなかった。
この形跡とも言えるワークがセカンドシングルLover Come Back To Meにみられる。
オリジナル12インチExtended VersionはSAWによるものですが、 セカンドとなるExtended RemixのミックスエンジニアはZEUS B. HELD氏となっている。
セカンドミックスにも関わらず、バージョン表記はExtended Remix。 これは2つのEXTENDED(正規12インチ)を意味しており、ZEUS B. HELD氏に対する感謝の意を示している。
成功となる要素は、SAW・D.O.Aともに勝負をかけた85年ワークというタイミングも大きい。
サードアルバムの後半シングルから下降線を辿る結果とはなりましたが、2作のアルバムヒットによって、8枚の全シングルを収録したノンストップ・アルバムRip It Up(主にUS・日本・オーストラリア)制作へと発展するとともに、日本ではIn Too Deepシングルリミックスがここで初めて収録されることとなった。
D.O.Aをビッグネームへと導くキーポイントとは、In Too Deep・My Heart Goes Bangのシングルリミックスのサウンドリメイクにある。