このスタイルで走り始め、80年代初期に入るとDONNA SUMMER / HOT STUFF(79年5月)のような黒人ボーカルによるポップ路線の歌モノDISCOに進化していった。 これと同時期にCANDY-POPと言われる白人アイドル(ABBA、NOLANS等)によるダンスポップが出現し、この頃にシンセサイザーを使用したサウンドが出始めた。 ただこの頃はシンセサウンドが出てきたばかりで、生音に従来のアレンジの一つとして付け加えるイメージが主流となった。
HI-ENERGYサウンドの大ヒット第一号は、82年のBOBBY O / SHE HAS A WAY。 全盛時期に繋がる原型とも言えるサウンドの発祥はこの曲だと言える。 打ち込みサウンドに夢を描いていたミュージシャンは、当然ながら生音バンド出身の人物であり、シンセサイザーの出現によって今まで想像もしていなかった様々な音色の広がりと、シンセ音色でしか表現できない新たな音楽作りというものにワクワクしていたに違いない。 「どんなサウンドにしてやろうか」、「どんな個性を引き出してやろうか」そんなハングリーな気持ちをイメージしながら、マシンを使いこなすことから始まり、サウンドの形ができていくのに数年がかかった。
85年と言えば、気になっていたのがU-BAHN X。 果たして、本国UKではどうだったのか? 改めてこの作品について追跡してみた。 Young Hearts Of Europeのリリース時期は85年4月。 早速このあたりに近いレコードミラー誌を購入し確認してみると、初めてU-BAHN Xが取り上げられたと思われる記事が4月6日付の表紙裏ページにあった。 簡単なメンバー3名の紹介とサウンドスタイルについては、「NEW YORK STREET &GERMAN- METAL BEAT」という記述があった。 このキーワードは、恐らくプロデューサーCOLIN THURSTONによるオリジナルバージョンを指していると推測される。
更に4月20日付の記事では、これを確定付ける記述が確認することができた。 ここでは、4月22日に12インチバージョンVALKYRIE-MEGAMIXでデビューとあり、 女性ボーカルHeidi Von Dusseldorfのピクチャースリーブ入りで掲載された。
恐らく東京ではあの新宿NEW YORK NEW YORKが仕掛けたのだと私は思う。 一体誰があの数少ない12インチを探し出し、針を落としたのか? 日本のHI-ENERGYブームに新たな音を送り込んだ人物とは?
そしてもうひとつは、Young Hearts Of Europeは一度聴けば誰もがインパクトあるHI-ENERGYサウンドであることには気付くものの、未だPWLが関わっているという情報に対するイメージが然程無い。 これは残念なことでもあるが、言い換えればリミキサーを意識しなくとも、サウンドそのものに衝撃を与えたことは紛れもない事実だということが言える。 だからこそPETE WATERMANの才能が自然と評価されたことにもなるのです。
ちなみに当時のHI-ENERGY DISCOチャートでは、ANGIE GOLD、SEVENTH AVENUE、LEGEAR、 PAMELA NIGHTINGALE、DIVINE(WALK LIKE A MAN)、MODERN TALKING、LIFE FORCE (MAN IN A MILLION)と、D.O.A / LOVER COME BACK TO MEが上位を占めており、 正にボルテージが頂点を極めた瞬間であった。
U-BAHN Xには他にもプロモが存在しており、正規盤ジャケットにNOT FOR SALEシールが貼られたものもある。 昨年に入手した上記プロモの中にU-BAHN Xのプロモーション用ピクチャーが2枚入っていた。 これも極めて珍しい超レア・アイテム。