「Let’s Get Together Tonite」は、SAW流「R&B-FUSION」といったサウンド・アレンジをベースに、ボーカルを当てはめ完成させたイメージという点では非常に珍しいタイプ曲であり、ファンにとっては12インチバージョン「The All Together Tonite Mix」でじっくりとサウンドを味わいたいところでしょう。
「All The Way」の方は、「イングランド・サッカーチーム」との単なる企画モノと捉える人は多いようですが、サウンド面で言えば「My Arms Keep Missing You」と同系タイプのSAW-POPであり、 「RICK ASTLEY」が歌ってもフィットする程に爽やかサウンドというイメージを含め、 「Featuring Sound Of STOCK AITKEN WATERMAN」というサブタイトルにもそれらしさが感じられる。
「Looking Good Diving / MORGAN MCVEY」(86年) 「I Just Can’t Wait / MANDY」(87年1月) 「Turn It Up / MICHAEL DAVIDSON」(87年11月) 「My Arms Keep Missing You / RICK ASTLEY」(87年12月)
この中で注目すべきは、「RICK ASTLEY」。 「My Arms Keep Missing You」のオリジナル12インチ「The No L Mix」(PHIL HARDING)と、 リミックスバージョン「Bruno's Mix」(PETE HAMMOND)とのサウンドの中に 「PETE WATERMAN」によるミックスイメージ選定に悩んだという形跡が感じられる。
というのも、「RICK ASTLEY」ファーストアルバムからのシングルについては、全て「Mark Mcguire」+「PETE HAMMOND」によるスタッフであったように、実にソフト音色がジャストフィットしていた。 しかし、カバーシングル「When I Fall In Love」とのカップリングで、印税対策としてSAWオリジナル曲を収録するにあたり、楽曲イメージをどうするか?という面で「PETE WATERMAN」はワンパターン化を避けたかったようだ。 そこで、「My Arms Keep Missing You」というノーマルイメージの強いポップにアクセントを付けようという発想から、オリジナル「The No L Mix」では、かなりインパクトの強いブレイクビートが加えられた。 この激しいパーカッションによる打ち込みは何処からやってきたのか?
これは「HOUSE-SOUND」でお馴染み、「The Opera House / JACK E MAKOSSA」(87年9月)のカップリング収録曲「AFRICAN-MIX」のブレイクビートからきている。 ご存知この曲は、「ARTHUR BAKER」による作曲兼プロデュースですが、ミックスを担当したのが、「PHIL HARDING & PETE WATERMAN」。 恐らくブレイクサンプルは「ARTHUR BAKER」によるモノだと思われるが、このインパクトある パーカッションサンプルが気に入った「PETE WATERMAN」が、「My Arms Keep Missing You」で取り入れようと思いついたのでしょう。
「PETE HAMMOND」による「Bruno's Mix」の方は、セカンドミックスながらも、サウンドイメージは実にノーマルであり、「RICK’S-POP」にフィットした仕上がり。 しかしサウンド面のワンパターン化を避ける為、「The No L Mix」(PHIL HARDING)をオリジナル 12インチとして採用したと考えられる。
こうした経緯はあるものの、上記2バージョンのサウンド統括エンジニアとしてSAW-POPを支えたのが「Mark Mcguire」。 双方にミックスイメージの違いはあるが、聴き易さあるポップミュージックとしてのSAWの拘りをしっかりとキープしながら、リミキサーとのサウンド固めに傾注したスタンスというものが、 「The No L Mix」に感じさせられる。
○「Burning All My Bridges / PHIL FEARON」(86年11月) < Ain´t nothing but a house party >
○「You're Never Alone / MANDY」(87年1月) < I Just Can't Wait >
○「More Than Words Can Say / CAROL HITCHCOCK」(87年5月) < Get Ready >
○「Just Good Friends / RICK ASTLEY」(87年10月) < Whenever You Need Somebody >
○「I'll Never Set You Free / RICK ASTLEY」(88年2月) < Together Forever >
この中で最も注目すべきは「RICK ASTLEY」による2作品。 楽曲タイプで言えば、「Just Good Friends」は「PETE HAMMOND」のようなソフト音色で、 一方「I'll Never Set You Free」はどちらかというと「PHIL HARDING」に近い。 これは一体どういうことか? ひとつの視点で言えば、リミキサーが誰であれ、基本は「SAW-SOUND」だという表れであり、 もう1点は「PHIL HARDING」、「PETE HAMMOND」それぞれの特徴音色を使い分けている点でみれば、これがサウンドの統括エンジニアを担っているという証。 この2曲については、ある意味レア音源である。 「RICK ASTLEY」オリジナル曲を「SAW」がサウンドプロデュースというワークは、これ以外には存在しない。
ここで付け加えておきたいのは、「PETE WATERMAN」だけが評価しなかったということではなく、 これは双方の最終判断であったのだと思いますが、逆に言えば上記2曲については 「PETE WATERMAN」に気に入られた作品だということが言える。 個人的にもこの2作品については、「GOOD-MUSIC」として評価したい貴重音源だと思う。 ちなみに「RICK ASTLEY」がPWLワークとして採用された作曲作品とは、 「MIKE DUFFY」プロデュース、「PETE HAMMOND」がミックスを担当した 「Is This Really Love? / JOHN OTIS」。(88年11月)
ほぼ同時期にリリースされた「You're Never Alone」と「More Than Words Can Say」に共通するキーワードが「ロックバラード」。 「アイドル・ボーカル」ということで分かりにくい人もいると思うが、スタイルはギターやメタル調なスネアドラムをメインとしたサウンドが特徴的。 「More Than Words Can Say」は「MEL & KIMバージョン」が最も魅力だが、サウンドを 「ロックバラード」として切り分けてみると、もうひとつの「STOCK & AITKEN’Sワールド」として感じさせるものがある。