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司法試験論文試験対策「刑法」コミュの新司法試験平成22年度過去問

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こんにちは、現在ロースクール3年生のKちょうです。

新司法試験平成22年度 刑事系第1問を解いてみました。 よろしくお願いします。

問題は、http://www.moj.go.jp/content/000046906.pdf(法務省ホームページより)
第1 甲の罪責について
1 問題の所在
甲は、VのD薬によるアレルギーの状態を知りながら、乙が巡回に来たときに、「体を拭いているので、待ってください。夫に変わりはありません。」「熱は下がりました。」などの嘘をいい、医師や医療従事者に手をゆだねず、Vの呼吸が止まっても、帰ってしまった。
 このことから、甲に殺人罪の不作為犯(刑法第199条 以下法とする)が成立しないか。

2 殺人の不作為犯
不真性不作為犯とは、作為の形で構成されている構成要件を、不作為の形で 実現することである。
不真性不作為犯は不明確なので、成立範囲を限定する必要がある。
このため、殺人の不作為犯が認められるには、作為と同価値性があること。す なわち、
? 作為義務の存在、?作為可能性、?故意、?不作為と結果の因果関係である。
? については、保証人的地位 すなわち法令、契約、条理、事務管理、慣習などによって結果を支配しうる地位である場合である。
?については、当該不作為がなければ、十中八、九結果が発生する場合に認められる。

3 本問の場合
? について、甲はVの妻であり、民法752条により扶養義務があり、法令上の義務が認められる。また、乙に「体を拭いているので、待ってください。夫に変わりはありません。」「熱は下がりました。」と二回も嘘をつき、病室に医療関係者を入れず、Vと二人きりになっていた。
このことから、甲は結果を支配しうる地位であったといえる。
? について、医師を直ちに呼べば、治療は可能であったことから、作為可能性はあったといえる。
? について、甲は数年前の経験から、VをD薬によるアレルギーを放置すれば、しぬかもしれないことを認識していたこと。
Vがいなくなれば、介護から解放され、Vにとっても、死んだほうが幸せだとの甲が考えていたこと。
このことから、Vの死を認識し、死を認容していたことから、甲に未必の故意があったといえる。
したがって、甲に故意が認められ、?の要件を満たす。
? について、2時20分までに医師らがVの異変を気づけば、A病院では、救命体勢が可能であり、十中八、九救命が可能であったと考えられるから、?の因果関係が認められる。
4 結論
以上により、甲にはVに対する、殺人罪(法199条)の不作為犯が成立する。

第2 乙の罪責について
1 問題の所在
丙から渡された薬を確認せず、D薬をEに対し、点滴をし、Vはアレルギー症状をおこした(第一行為)
見回りの際に、甲の言葉を信じ、適切な治療をせずに立ち去り、Vは死亡した(第二行為)
このことから、第一行為に業務上過失傷害罪(法211条1項)、第二行為に業務上過失致死罪(法211条1項)が成立しないか。
2 第1行為について
業務上過失傷害罪の構成要件は、?業務上の行為により?過失によって
?傷害を負わしたことである。
ア ?業務性について
 業務上過失至死傷罪における業務性とは、社会的地位に基づき反復的継続的に行うもので生命の危険を生じさせるおそれのあるものを行うものである。
 本問では、乙は看護師であり、薬剤投与など社会的地位に基づき反復的継続的に行うもので生命の危険を生じさせるおそれのあるものを行うものである。
 このことから、業務性が認められる。
イ ?過失について
 過失が認められるには、予見可能性と結果回避義務が認められる必要がある。
 本問では、丙から処方された薬を確認すべきであること。乙は、VのD薬に対するアレルギー体質をもっていることを知っていたこと。
 このことから、乙に予見可能性が認められる。
 また、確認をすれば、結果も回避することができたといえる。
 従って、過失が認められる。
ウ ?傷害について
業務上過失至死傷罪において、傷害をしたとは、人体の生理機能を害したことである。
 本問では、D薬をVに処方したことにより、Vはアレルギー症状をおこして、容態が急変した。
 このことから、人体の生理機能を害したことといえ、傷害が認められる。
以上から、乙に第一行為について、業務上過失傷害罪が成立する。
3 第2行為について
業務上過失致死罪が認められるには、?業務上の行為により ?過失が認められ ?よって死亡させたことである。
ア ?業務性について
第2、1、アで示したとおりである。
イ ?過失について
 過失の意義については、第2、1、イで示したとおりである。
 本問では、検温もせず勝手に38度5分と記入したこと。甲の言葉を信じ、病室の中を確認して、Vの容態を確認しなかったこと。
 このことから、予見可能性が認められ、上記の行為をしなければ、Vは死亡することは、十中八、九なかったことから、結果回避義務もあったといえる。
 このことから、過失が認められる。
ウ ?死亡について
 Vは、医療行為も施さず、午後3時50分ころに死亡した。 このことから、?が認められる。
 以上から、乙に業務上過失致死罪(法211条1項)が認められる。
4 結論
乙には、第一行為について、業務上過失傷害罪(法211条1項)が成立し、第2行為について、業務上過失致死罪(法211条1項)が成立する。

第3 丙の罪責について
1 問題の所在
丙は、VのD薬に対するアレルギー体質を知りながら、アンプルを確認せずに、誤って、乙にD薬を処方した。
 このことから、丙に業務上過失傷害罪(法211条1項)が成立しないか。
2 業務上過失傷害罪の成否
ア ?業務性について
業務性の意義は、第2、1、アで示したとおりである。
 本問では、丙は薬剤師であり、薬の処方は、場合によって、患者に生命の 危険を生じさせることから、丙に業務性が認められる。
イ ?過失について
 丙は、乙に提供する際に、ラベルを確認すれば、D薬とE薬の区別が可能であったのに、ラベルを確認しなかった。このことから、予見可能性が認められる。
 また、D薬を提供したことにより、Vはアレルギー症状をおこしたのであるから、結果回避義務が認められたといえる。
ウ ?傷害について
 Vは丙が提供したD薬によって、アレルギー症状をおこした。このことから、Vの生理的機能を害したといえ、傷害したといえる。
3 業務上過失傷害の共同正犯いついて
ア  丙は、誤ってD薬を乙に渡し、乙がVに対し、D薬を処方している。このことから、Vに対する業務上過失傷害罪の共同正犯(法211条1項、60条)が成立しないか。
   過失について、共同正犯が成立しうるかが問題である。
イ この点、過失についての共同正犯が成立しうるとすべきである。
  なぜなら、両者に共同の注意義務が課されていると考えれば、過失についての共同正犯が成立すると考えられるからである。
ウ 本問では、乙と丙は、VのD薬に対するアレルギー症状を知っており、乙と丙にD薬をVに処方しないとする、共同の注意義務がある。
  このことから、乙と丙に、Vに対する業務上過失傷害罪の共同正犯が成立する。

第4 結論
1 甲には、Vに対する、殺人罪の不作為犯(法199条)が成立する。
2 乙には、第一行為には、Vに対する業務上過失傷害罪(法211条1項)が成立し、丙との関係で、共同正犯(法60条)である。
 また、第2行為には、Vに対する業務上過失致死罪(法211条1項)が成立する。
 両者には、確定判決を得てない二罪であることから、併合罪(法45条前段)が成立する。
3 丙には、Vに対する業務上過失傷害罪(法211条1項)が成立し、乙との関係で共同正犯(法60条)である。
以上
 
  

 

コメント(6)

過失の共同正当はそもそもありえるのかについて、肯定するのはいいと想いますが、故意犯の共同正犯とのバランスを図る観点から過失の共同正犯の認められる範囲はかなり限定されてますよね!
とすると、乙は看護士、丙は薬剤師であり、同一の注意義務を認めるのは難しいのでは?
この場合過失の競合として処理した方がより実務的だと想いますがいかがですか?
乙の罪責について、過失犯においても因果関係は必要だと想います、特に本問では、甲の嘘が介在している、かかる嘘が因果関係を認める上で影響を与えるかを論じた方がいいと想いますがいかがでしょうか?
> さとしさん
ありがとうございます。

過失の共同正犯については難しい問題で、再現答案を見ていても、共同正犯を認める答案、認めない答案がはっきりとわかれていました。

この点、乙が看護士、丙が薬剤師と立場が異なるので、共同正犯を認めるのは難しいと思われますが、二人ともVのアレルギー体質を知っていたこと、Vに対しアレルギーをおこさないように適切な処置をする義務があることから、私見は認めようと思います。

ただし、認める立場
に立ったとしても、乙は看護士、丙は薬剤師であり、立場が異なることは、触れとくべきでした。
> さとしさん
甲の嘘が介在しているというより、甲の一連の不作為が介在しており、乙の因果関係にいかなる影響を及ぼすか ということでよろしいでしょうか

この場合、甲の故意による不作為は、異常性が高いといえるが、乙のD薬投与及び巡回しなかった行為は、結果発生に対する危険性が高い。
また、甲の行為はこれを促進したにすぎないと考えて、因果関係を肯定しようと思います。

25年前の受験生ですが司法修習の前期があったころなら前期でやるようなきめこまかい事実をひろって評価していく問題です。修習の白表紙とちがって無駄に事実はだいぶへっていますが、けっこう難問です。少数説にあいさつしているひまはないというのはよくわかるとおもいます。

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