誇り高き　迷馬の館コミュのガラスの皇子よ永遠に

　　ユメマボロシの三冠馬が居た…
　　　　　　　　　　永遠に届かないハナ差の苦汁…

黒鹿毛の雄大な馬体と、額に輝く見事な菱星、この美しいサラブレッドが
引き裂かれた英雄、ガラスの皇子、なんてキャッチフレーズが様になる
ハナ差に泣いた、第67回優駿ダービーの呪縛ユメマボロシの三冠称号…
平成十二年の二冠馬エアシャカール号で在る、

産れながらの秘蔵っ子は、社台ファームの願い通り父サンデーサイレンス譲りの
雄大な馬体を持ったサラブレッドに成長していった、必然周囲の期待も高まる
天才、武豊とのコンビでクラシック戦線に挑むので在ったが、

迎えた第一冠皐月賞、一人気は別路線から抜群の安定感で連勝して来た
初のサンデー孫血統フジキセキ産駒ダイタクリーバに与えられた、
二人気に甘んじたエアシャカールで在ったが、本家の貫禄で優々追い込み
引き離しての勝利では無かったが、堂々差し切って皐月賞の栄冠に輝いた。

第二冠と為る優駿ダービーでは、勢力図に変化も無く勿論一番人気だ
皐月賞でクビ差2着のダイタクリーバが二人気、三人気には
トライアルを連勝して、ようやく間に合ったアグネスフライトが付けた。
アグネスフローラの仔で翌年の光速の遺伝子と異名を取った
サンデー最高傑作と言われたアグネスタキオンの全兄で在る。

鞍上は武豊の兄弟子、関西の雄でタキオンの鞍も預かる事になる河内洋だ
栄光のゴールに向かい快心の騎乗で抜け出したシャカールと武豊に
抜群の追い出しで並びかける黄金の馬出現、騎乗ミスだ…武豊痛恨の…

甦る記憶、4年前のダービー、絶対勝利を確信していたダンスインザダーク
永遠に消せない炎の十字架を刻んでしまった天才武豊で在った。
ダービーのゴール前、完全に抜け出した…勝利が脳裏を過る…一瞬のスキ
あの時弟弟子は見逃さなかった、兄弟子も見ていた…満を持して追い出す
馬体が重なった、――時既に遅し――タイミングを見失ったシャカール…

　…三冠馬の称号と栄光のゴールは、永遠のハナ差に消えた…

迎えた秋、難なく菊花賞を勝利し二冠馬に輝いた、以前周囲の期待は高く
海外競馬にも果敢に挑戦、古馬戦線にも挑んだが尽く跳ね返されてしまった。

ガラスの皇子…類まれな素質が有るのに、何かが足りない…

スピード馬を一蹴しスタミナ馬を子ども扱いする能力を持ちながら、
彼は素質だけでクラシック戦線を戦って来たのだ、タイムだけでは計れない
本当の完成された古馬の競馬を若駒の時期に学んで来れなかった…

同世代に自分を磨いてくれる、強力なライバルの存在が無かった。
追われる者の立場、待ち受ける者の志、そう…精神を鍛える事が出来なかった。
何よりも古馬と為って必要な条件となる勝負根性を培う事が出来なかった。
凌ぎを削るライバルさへ居たら、君はもっと自由に翼を拡げ羽ばたいて居ただろう。

　　　　　類まれ為る素質を持ちながら…
　　　　　　　　　　　静かにターフを去るガラスの皇子…