ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

小説 「おろし」コミュの●鈎針婆の章 おろし!! #40 ハイル・ビニール

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
風が砂を巻き上げ、落ち葉が雪のように舞う。

ビュン!!

ザグ!

黒丸が射った黒羽矢が、ビニール袋を被った全裸の男を貫通する。

矢は、眉間の辺りを射ぬいて、アスファルトに突き刺さった。

ビーーーーン。

黒い矢が唸りを上げている。

黒丸はこの場より約1キロ後方にいる。

射ぬかれた男は、ドサッと鈍い音を立て、地面に倒れ伏せた。

その音が闘いのゴングとなった。

次の瞬間、拳が空をきる!!!

シュッシュ!!!!

赤神 丞。 月夜に映える赤い髪。 サラリと揺れた。

「甘い。」

赤神は、攻撃をスウェーでよけ、
左手、逆手に持った小太刀『紅葉揚羽』の刃先を、
相手のミゾオチ辺りにイッキに滑り込ませる!

シャッグッ!!

あと数ミリで突き刺さろうかという時、敵は、己の突き出した拳、その反対の手、

つまり左手で、赤神の小太刀を打った。

ジャリリ・リィ・・ン・ン・・!!

赤神の左手に巻かれた玉鎖(ボールチェーン)が、
打ち降ろされた、敵の手刀によって軋む。

「ちっ」

小太刀が、スルリと赤神の手から離れる。

赤神、落下する小太刀の柄の部分に、右手、人さし指と中指を揃え、
軽く太刀の柄の部分に触れ"呪"を発した。

「 花 の 蜜 に 誘 わ れ し 蝶 よ ・・・飛べ」

パアッ!

その瞬間、小太刀の白刃は紅葉色に輝き、まるで線香花火のような美しい火花を
空に散らした。

それは、まるで蝶が花に誘われるかのような、ひらひらとした飛び方であった。

小太刀は、そのまま男のミゾオチに、今度はちゃんと突き刺さる。

まさに、"華麗"であった。

これには、術を唱えた赤神までも、小太刀『紅葉揚羽』の美しさに心踊らす。

「ふっ」

しかし、それは一瞬の微笑。

赤神は、ひと呼吸するもなく、そいつの"始末"にかかる!!

「ルアアッ!」

すかさず右脚で左脇腹を蹴り、左回し蹴りを、少し前屈み気味になった、
敵の左側頭部に叩き込んだ!

ガギ!!シュババババババババ!!

まるで、鼠花火のように、まるで、大車輪に乗った男のように、
敵は、空中を側転してるが如く、蹴り飛ばされてゆく・・・

ザるんっザるんっザるんっザるんっザるんっザザザ!!

青い血飛沫が、まるで冷たい五月雨のようにシトシトと、天から落ちてきた。

「嫌な雨だ。」

目を少し細めた赤神は、手刀で袈裟掛けに空を切った。

その手刀で発生した風が、地面に波紋を描いた。

ヒュッ

辺りの空気が、アスファルトに叩き付けられ、上昇気流を生じさせた。

ビュウウウウウウウウウウ!!

風圧により、空より降り落ちた血が、赤神の衣を汚す前に、吹き飛んだ。

キラキラキラキラキラキララララララララ・・・・

しばらくすると、キラキラと空に赤と金と銀の輝きが舞い降りて来た。

『ブラッディ・パウダー』

それが醜い蒼い血を蒸発さた・・・

ドサリ・・また一体、アスファルトに横たわった化け物(敵)。

赤神は、深く「ふう」と一息を入れ、鋭い眼で闇を睨みつけた。

クルクルクルクルクル・・・・


暗闇に紅葉を描く、赤とオレンジ、光のイルミネーション。


シュババッ!!

かざした赤神の右手に『紅葉揚羽』が戻る。



ヒュウウウウウ・・・ウ・・ウ・・


風が吹いた。

赤神の5メートル強前方に、5人。

右方向には3人、左方向には同じく3人。距離は、前方と同じく5メートル強。

さらに、赤神の後方には、8人ぐらいの全裸の男が立っている。

手を前にダラーンと垂らし、頭には全員スーパーのビニール袋を被っている。
それぞれの袋には、異なった店名が印刷されている。

前方にいる5人。
まず手前の4人には、緑ビニール袋に店名『H全然屋』と印刷されている袋を被っている。
この店は、魚が安くて夕方までには、ほとんどの商品が完売しているスーパーマーケット。

夏場に、生きたカブトムシ虫、サワガニが、
透明の入れ物(お好み焼きとか買ったら入れてくれる箱)に入って、
魚と一緒に売っている謎の多いスーパーマーケットだ。

4人はそんな店の袋を被っている。『ハイル・H』

次にその後方にいるのは、このメンツの中で、一番巨体なファットマン、そいつの被る白色の袋には、赤文字で店名『出玉』とマスコットキャラ『ひまわりの絵』が
印刷されている。『ハイル・ファットマン出玉』
この店は、巨大チェーン店で、安さが売りのスーパーマーケットだ。

とにかく安い。質より量を求める方に愛されている。しかも24時間だ。心強い。
主婦もさることながら、労働者のおっちゃんらにもこよなく愛されている。
そして、この辺りで一番、電力の消費量が激しいスーパーマーケットとしても有名である。
眼が潰れるほどの光量、電球の数は尋常ではない。
そう、その尋常ではない電光掲示板がひと際目立つスーパー。
ファットマンはその店の袋を被っている。
もちろんピチピチで、ノビノビーンである。

次に、右方向の痩せ形3人は、これもまた、白色ビニール袋を被っている。
袋には、赤文字で『66』という数字の店名が大きく印刷されたものを被っている。『ハイル・66』
この、スーパーは、どちらかというとコンビニに近い、そう、すべての商品の下二桁が『66円』で統一された、コンビニエンス系スーパーマーケットだ。
また、その店の店内に流れるBGMは、個性的で耳に残る。
『ろっろっろく〜のお客さま♪あ〜ら奥さんどうしたの?・・・・』
が最高の曲だ。だがしかし、これはもう、流れていない。調子こいて、CDを制作したとたん、この曲は、闇へ消え去ったのだ。
そう、右3人はそんな店の袋を被っている。

次に、左方向の3人は、中肉中背。
半透明袋に、緑色で『ヤミズイ』と印刷した袋を被っている。『ハイル・ヤミズイ』
この店の、専用ポリタンクを買えば、一日一回ミネラルウォーターが貰える有名なスーパーだ。
ヤキトリバイキング、天ぷらバイキングとお惣菜コーナーも充実、可愛い女の子らが
いるパン工房も忘れてはならない。そこの『幻のクリームパン』が最高だ!
左の三人はそんな店の袋を被っている。

最後に、後方にいる8人全員は、どこか気取ったポージングをしている。
灰色ビニール袋に赤文字で店名『ウニクロ』が印刷された袋を頭に被っている。
『ハイル・ウニクロ』

この袋はカジュアル服のお店で、インナーが安く買える。
だが、最近、定番カラーの黒が姿を消しつつあり、デザインにもシンプルさが無くなって少し残念だ。黒のトランクスが、ソフトな肌ざわりしか無くなったのには、めちゃくちゃ腹が立つ。
そう、そんな店の袋を被っているのがこの8人だ。
何より、他のメンツと違うのは、この8人の袋は、他の奴らとは違う、少し硬めの素材で出来ている。かなり防御率が高いのかもしれない。

ちなみにすでに倒れている2人は、『H全然屋』の袋を被っていた。


「く・・見てられるか・・目眩がするほど悪趣味だ!」

赤神は、『紅葉揚羽』の白刃を鞘に納め、鋼丸の背に持たれかけた。

『♭の眼球』は、赤神の体内奥深くに移動する。

見たくないのだ、やつらの汚い身体(ボディ)を。

鋼丸は、赤神を背にし、『ウニクロ8人』の動きを眼で追いながら、
黒丸にテレパシーを送る。

ジリリと足を運ぶ赤神・・・

「そうか・・思い出したぞ・・こいつらの名を・・」

赤神が眼を細めて敵の動きを睨みつける。

「忌わしき生贄牡羊・・・終末坊主 森魚(モリウオ)の操る合成人間 ハイル・ビニール・・」

ビリビリビリ・・被った袋が風にはためく・・・

「ハイル・ビニールの血は青いか・・ふふ」鋼丸の唇が艶かしく動く。

「来るぞ・・」 赤神が構える。

それと同時に、ファットマン『出玉』が右手を上げ、大声で叫ぶ!!

『ハイル!ビニーーーーーーーーーーーーーーール!!』と大声で叫んだ!!

大地が揺れる。

醜い乳が揺れる。

脂肪の塊の腹が揺れる。

白くて短い陰部が揺れる。

ブっらああああああラララララーーーーーーーーーーッー!

一斉に、ハイル・ビニールが赤神と鋼丸に襲いかかる!!

ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!

黒丸の援護射撃。

何十本もの黒い矢が雨のように降り注ぐ!!

足もとに何本かの矢が刺さり、ハイル・66の動きが一瞬止まる!

その隙を、赤神は逃さない!

右方向にダッシュし、この四方攻撃の突破を試みる!

遅れず鋼丸も赤神の後方よりダッシュし、赤神を援護する。

ハイル・66の額に向けて『羽クナイ(手裏剣)』を投げつける!!

シュババッ!!

避けるハイル・66、それにより、また動きが止まる。

赤神すかさず、一人のハイル・66に詰め寄り、
左逆手に持った『揚羽紅葉』で首を刈り、右の手刀で首を袈裟掛けに打ち、
そのまま地面に叩き付ける!

ダダーーーーーーン!!・・ン・・ン・・

バウンドするハイル・66。

もう一人のハイル・66が、戸惑った。

それも赤神は見逃しはしない。

右脚で、ハイルの足を払う!!

ズリリリ!!

ハイル・66、バランスを崩し後ろ向けに倒れる。

ブハワアアアアアアアア!空に白銀の羽が舞う!!

鋼丸が前転宙返りで倒れたハイル・66の首に右かかと蹴りを食らわす。

ズゴキ!!

のど仏が砕ける!!

シュバ!! 鋼丸が『羽クナイ(手裏剣)』を赤神に向かって放つ!!

赤神に手裏剣が迫る!!

トン!!

赤神、羽クナイを右足で蹴り飛ばす!

ヒュン・・・・ザク!!

最後のハイル・66の額に、羽クナイが刺さった。

これで、赤神らは、四方からの攻撃を免れた。

ヒュン!ヒュン!ヒュン!

黒丸の第二射の矢が迫る!

ファットマン出玉が、両手を上げた!!

凄い量の粘り気の有る汗が飛散する。

ネチャバリューン!!

その汗が、バリアーとなり、矢の勢いを止める!!

悪臭が立ちこめた・・・最悪。

「うっ・・吐きそう・・」

キラ・キラ・キラ・キラ!

赤神は、瞬時に、ブラッディ・パウダーを風に乗せ、
ファットマン出玉の汗から身を守る。

ジュウ・・ジュウ・・。

焦げた匂いが、辺りに立ちこめた。

「うっ・・吐きそう・・」赤神は、口に手をやり堪える。

鋼丸は、羽クナイに、コビリ付いたファットマン・出玉の汗が、
ジワリジワリと刃先を溶かす様に驚きを隠せないでいる。

一方、黒丸は、ハイル・ウニクロの動きを警戒しつつ、

ファットマン・出玉に狙いを定める。

放つ矢は、『夜の矢』3本。

ブルン、ブルン、

ブルン、ブルン、

ブルブルブルブルウ・・・・

ファットマン・出玉が肉を揺らし、またもや、油っこい汗を飛ばした。

ビュッ!ビュッ!

「くはっ!」

手を振りかざし、ブラッディ・パウダーで応戦する。

ジュウ・・ジュウ・・。

赤神の顔がミルミル青くなってゆく。

そう、ファットマン・出玉の汗には、サリンと同じぐらいの殺傷力、
猛毒の分泌物が含まれていた。

赤神が、膝を地に付ける。
すかさず背後にいた鋼丸が、ファットマン・出玉に向け、羽クナイを放つ!

シャッ!

羽クナイは、勢いよくファットマン・出玉の心臓に突き刺さる!!

いや、刺さってはいない。

ファットマン・出玉の脂肪が、羽クナイをなんなく跳ね返し、夜の闇に羽クナイは消えていった。

攻撃が効かない。

それを、チャンスとみたファットマン・出玉が、ハイル・Hを掴み、投げつけてきた!

人間の槍!

全裸の槍だ!!

赤神の身体に、全裸のハイル・Hの頭がめり込む!

メリメリメリー!

赤神の身体が、2つに割れる。

それは、身代わり人形。

赤神は、変わり身の術を使い、ファットマン・出玉へ向かう!

"必殺の間合い"へは、ハイル・Hを超えなければならない。
今倒すのは、ファットマン・出玉だと、赤神は考えた。

ファットマン・出玉が、この戦場にいる"脅威"だと考えたのだ。

身代わり人形に仕込まれた白刃が、勢い良く飛んできたハイル・Hを、スライスした。

奇麗に、ハイル・Hは、三枚に下ろされた。

ヒュン・ヒュン・ヒュン!

黒丸の『夜の矢』が、またもや放たれる。

鋼丸が叫ぶ!

それと同時に、赤神は、走りながら『黒い息』を吐く。

空中に、まるで水に落とした墨汁のような、黒い煙、影が立ちのぼる。

視界を眩ませる『ゴースト・ルージュ』。

その、ゴースト・ルージュの影に、穴が3つ空いた。

夜の矢だ。

ファットマン・出玉が悲鳴をあげた!

「ぎゃああああああああああああああああああああっ!!」

1本の矢が、頬を貫いたのだ。

残りの2本は、2人のハイル・Hに刺さっている。

ファットマン・出玉が、2人を掴み盾としたのだ。

フッ・・

地を蹴る赤神。

ゴースト・ルージュの影にまた穴が空く。

ファットマン・出玉は、反応出来ていない。

反応!反応!無反応!

赤神、影より飛び出す。

すでに抜刀している。

"必殺の間合い"

赤く火花を散らした紅葉揚羽の白刃。

ファットマン・出玉の身体が叫ぶ!

ぐぐぐぐ!

左手で掴んでいたハイル・Hの死体で、赤紙の白刃を止めようとする。

刃は恐ろしく鋭い。

ハイル・Hの身体が、上下に分かれる!

唖然とするファットマン・出玉の左横腹に、白刃が迫る!

ぐがあ!

それでも、ファットマン・出玉は反撃をする。

まるで棍棒のようjに、右手に掴んだハイル・Hを、赤神に叩き付けた!!


双方の攻撃はまさに同時。

肉が絶たれる音がし、骨が砕ける音がする。

ファットマン・出玉の横腹に、スルリと滑り込む赤神の刃。

強烈に振り落とされたハイル・Hは、腕の骨を砕いた。

だが、それは赤神の腕ではない。

鋼丸が左腕で、振り下ろされたハイル・Hを止め 赤神を身をていして守った。

鋼丸とハイル・Hの激突の衝撃から、
ファットマン・出玉の腕からハイル・Hが離れた。

フラフラと鋼丸はバランスを崩し、ハイル・Hと共に地面に崩れ落ちる。

鋼丸の顔が苦痛に歪む。
自慢の鋼鉄の左腕が、S字のような奇妙な形になり、見事に鋼鉄の骨は折れ曲がっている。

「グハッ!!」

ボタボタボタ!!

間髪入れずに、血飛沫があがる!

黒丸が叫ぶ!

目の前の光景を疑う鋼丸。

なんと目の前にいる、赤神の口から血が噴き出ている。

足下に倒れ、上を見上げている鋼丸の顔は、赤神の血で真っ赤に染まっていった。

いったい何が起こったのか?

鋼丸は思った。

これは、予想していたものではない・・・と。

ファットマン・出玉の脇腹には、しっかりと紅葉揚羽が刺さっている。

しかし、断ち斬ってはいない。

途中で、赤神の力が抜けたのだ。

右手には、最早、力が入ってはいない。柄に手を添えているだけのようだ。

何故?

「くっ・・がああ・・しくった・・まさかな・・・・これは・・キツイ・・な・・」

赤神の脇腹に、人間の腕が突き刺さっている。

しかも、その腕は、あろうことか、赤神の肉体の中でモソモソと動き、
ピンク色の腸をギュッギュッと握りしめていた。

「うっ・・・ぐああ・・・」

握られる度に、意識がぶっ飛びそうになる。

ボタボタと、その腕を伝い、赤神の血が滴り落ちる。

震える左手で、その腕を掴み、引き抜かれるのを防いでいる。

冷たい外気に晒された血は、白い湯気を上げ、辺りに血の臭いを漂わせた。

その赤神の肉体を貫いた腕の持ち主は、一人のハイル・ウニクロであった。

その腕は、長く伸びている。ゴムのような伸縮性に、鋼をも貫く鋭さを兼ね備えた肉体。

伸びれば伸びるほど、硬度は上がり、まるで紙切れのように平で細くなる体質。

それが、合成人間 ハイル・ウニクロの力。

パワーである。

相変わらず奇妙なポージングでキメている。

赤神は、判断を誤ったのだ。

この場にいる敵で、もっとも脅威となる対象を・・・

それは、ファットマン・出玉ではなく・・・ハイル・ウニクロだったという事を・・・

・・・つづく

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

小説 「おろし」 更新情報

小説 「おろし」のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。