次の皮肉は同じシーンの別のセリフ,すなわち「アルビ派(Albigensenist)の異端信仰についてどう思うか?」に関するものである。フリードキンによれば,「マギーがピンターに指摘したところでは,アルビ派(Albigensian)の異端信仰は中世のフランスにおける宗教活動に関係しているんだが,ピンター自身はアルビ派(Albigensian)の異端信仰についてこれっぽっちも知らず,親友でもあったマギーから,ある晩バーでアルビ派(Albigensenist)の異端信仰について語り合う中で聞かされたというわけさ。彼はその台詞を劇に使った…そしてマギーがリハーサル中に言ったんだ,『よく聞け,ハロルド,われわれはこの件についての正確な脚色を演じようとしていて,それが映画として永久に残る以上,なぜその件を正そうとしない?それは「Albigensian」の異端信仰なんだ。「Albigensenist」じゃない』それに対し,ハロルドはこう言ったのさ。『パトリック,それは10年間ずっと間違ったままだったんだ。そのまま定着させてしまおう』とね」
「ビリーは製作のあらゆる局面でうまく全体を統制していた」とシェリックは言う。「演劇というものはその時代の演出家と俳優の解釈に委ねられているものなんだ」
俳優陣は,シェリックによれば,ピンターの友人であるロバート・ショー(ジョーズ,A Man for All season),ピンターの酒飲み仲間であるパトリック・マギー(時計じかけのオレンジ),ゼロ・モステルの代役としてピンターが推薦したシドニー・タフラー(The Lavender Hill Mob)を含んでいた。モステルはフリードキンとピンターの両者が,「偉大な喜劇役者である」ゴールドバーグ役に当初考えていた人物だと,シェリックは言う。タフラーの演技は,ほかの役者のそれと同様に,この不条理劇を納得させるだけのadmist(不明)である。