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詩国(しこく)コミュの四季 〜君に綴る想い〜 【出逢いの華】

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チェストの上で伏せていた、想い出の額を起こして立てる。
微笑んだ二人が写った絵を見ると、胸が苦しくなるけど、
あの頃を消す事なんて出来ないから…




















四季 〜君に綴る想い〜 【出逢いの華】









桜並木道沿いを走る電車の中、
暖かい日差しが心地よくて、小さな本を手にうとうとしていた。

時折瞳を開いてみては、
窓の外に溢れる眩しい光と、それを反射し白く輝く花びらの群れに見惚れた。



「あぁ、春だなぁ。」



当たり前な季節の巡りに感謝しつつ、
次第に意識も虚ろになり、夢とも言えない夢を見ていた。



「あの…」




「すみません…」




遠くでする小さな声に意識を戻すと、
さっきまで一人だったボックス席に、人が居るのに気が付いた。



「あの、本、落としましたよ。」



そう言われてみると、手にあった筈の本は無く、
斜め向かいの席から伸びた、透き通る様な白い手の中にあった。



「あ、すみません。ありがとう。」



本を受け取り、少し叩いてから鞄の中にしまった。






一度意識を戻すと目が冴えてしまったので、また外の春景色を眺める事にした。

さっきまであった長い桜並木道はもう無くて、
家やビルの立ち並ぶ、いつもと変わらない景色になっていたが、
所々にある桜や緑が、とても活き活きと輝いて見えた。






暫く外を見ていると、なんだか後頭部に視線を感じ、
車内側に振り返ってみたが、見て取れる範囲に居るのは、
さっき本を拾ってくれた女の子が一人、斜め向かいの席に居るだけで、
彼女もまた、窓から外の景色を眺めていた。



__________なんだ、気のせいか。同じ方見てるだけじゃん。



視線を窓の外に戻そうとした時、
ふと、前の彼女と瞳が合ってしまったので、慌てて逸らそうとした。



「外…」



「え!?」



意思に反して急に声を掛けられ、驚いて声が上ずってしまった。



「綺麗ですよね。」



彼女はそういうとニッコリ笑い掛けてきた。

少し開けた窓から流れる爽やかな風が、胸まで伸びた綺麗な髪を躍らせ、
彼女はそれを、片手で耳に掛ける仕種をした。



「本当…綺麗ですね。」



頬が、顔が、体が熱くなるのを感じながら、必死の想いで応えた。



「窓…閉めましょうか?」



言葉が喉に詰まるような感覚に苦しみながら、声を振り絞った。



「ううん。気持ちいいから…」



「そう…」



会話はそこで終わり、情けない気持ちと高ぶる鼓動を感じながら、
彼女に釘付けになった意識と視線を、無理矢理窓の外に戻した。

それでも上の空になり、彼女が気になって仕方なかった。






何駅か通り過ぎ、もう一駅で終着駅に着くという時だった。



『まもなく〜○○駅、○○駅です。お降りの方は…』



車内アナウンスが響き渡り、それを合図に人々が動き出す。

すっ、と立ち上がった彼女に、少しドキリとしていると、
「それじゃぁ」と微笑みながら、ドアへと歩いて行った。

追い駆けたい気持ちに足は動かず、
座席に体を縛りつけられたまま、電車はまた動き出し、駅を出た。



終着駅に着くまでの5分間、
固まってしまった体をほぐしたくても、なかなか動かず、
長い時間、そこで過ごしたような気分だった。

簸たすら俯き、足先を眺め、自分の足に問いかけた。



_________なんで動かなかったんだよ…




今も少し強張った体のまま、必死で立ち上がり、終着駅に降りた。
…目的地は4駅も手前だったのに。



ふぅ…と溜息を吐き、発車寸前の折り返し電車に乗り込んだ。

電車はまた動き出し、さっき彼女が降りた駅を通り過ぎた。
視線を引き摺りながら…







そう。
あの一瞬、あの時に君に恋をした。
恋をしたんだ、オレは…





















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初めての小説投稿です。
ここは小説もOKでしたよね?
大好きなw-inds.を題材に使っていますが、知らない人でも読んでもらえるような内容です。
連載モノですので、宜しければ続けてお読みください。
出来るだけ毎日更新します!
※サブタイトルが毎回変わりますので、ご注意を!

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