ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

〜小説投稿コミュ〜コミュのN.Gstyle 5話

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「いよいよ明日か。なぁ恵」
「そうですね」

 祭さんが拳を掌で鳴らしながら言った。
今夜も海奈さんの店で世間話をしている。

「まぁ頑張んな。もちろん、私も出るけどね」

 明日は海奈さんの地下スタジオ『ニライカナイ』で、あるイベントが行われる。

「絶対優勝!そして…、食事券ゲットだぜ!」

 優勝商品は『和美』(なごみ)お食事券一万円分。

「あ、そうそう」
 カウンター越しに海奈さんが燃え上がる祭さんに言う。

「一応確認だけど、チームの受付は一チーム三人だから。よろしくね」

「え?」

 うちのメンバーはどう考えたって二人。一人足りません。
「!」
 祭さんの叫びが店内に響いた。


 N.Gstyle 5話


「どうすんだよ!?後一人足りねぇじゃねぇか!」
「そうですね」
「「そうですね、アハハ」じゃねぇ!」

(言ってませんから)

「あ〜もう!せっかくの食事券がぁ!」
「しょうがないですよ。今回はあきらめましょう」
「しょうががないなら商店街へでも行って来い!…無理。絶対無理!…。おい海ー。一緒に出てくれよ」

 泣き落としに出た。実際泣いてないけど。

「何言ってんの。無理に決まってるでしょ」
「食事券半分やるからさ?」
「うちの貰ったって意味ないでしょ」
「あれ?そういえば海奈さんのチームが優勝したらどうするんですか?」
「そしたら券にしないで現金で貰うわよ。食事券の費用は参加費から出してるから。つまり負けてもうちにはあんまり被害ないのよね。食事代だけで利益大きいし」
「だったらうちのチームに入れ!」
「嫌よ。少しでもお金欲しいもん…」

 後者は早口で言った。

「うー。誰かいないのかぁ」
「誰かって…。あ」
「んあ?どうしたぁ?」
「一応、いますよ?」

 僕はケータイで結さんを呼んだ。

 結局あの後から毎日ガッコウで絡まれている。
昼休みになれば僕のいる教室へ来て、前の子の席を奪い取り、雑談しつつご飯を食べて帰っていく。


カラカラと戸の開く音がした。

「こんばんは」
「あら結じゃない。久しぶりね」
「海さん久しぶり」
「?あれ、海奈さん結さんのこと知ってるんですか?」
「あぁ、アタシ最初は『T.B.W』にいたのよ」
 結さんは僕の隣のカウンター席に座りながら言った。
 『T.B.W』は『明日のBluewing』の略、とのこと。

「そうだったんですか」
「でもアタシは自分のチームが作りたくてね、で」
 結さんは目を逸らした。

(で、今の状態なのか…)

「ん?結こそ何で恵時君のこと知ってるのよ。結の方が一つ学年が上でしょ?」
 海奈さんが言った。
「アタシ恵時に負けちゃってさぁ。何でもいいなりってわけ」
「違!」
「…あー、大体分かったわ。結のなりふり構わず戦い挑むの、相変わらずなのね」
「そ、そうなんですか」
「昔はそれでよく面倒持ち込んで来てたわね」
「う、海さん。昔のことは忘れましょうよ。アタシ、コーラで」
「はいはい」
「で、結とやら…」

 祭さんが手を組み軽く顎を乗せ、両肘を突きながら言った。

「俺のチームの助っ人になるってのは…」
「もちろん!構わないわ」
「フ、フフフ。アハハハハハハハハ」
 不気味に笑う祭さん。
「よ〜し、これで食事券は俺のもの!!」
「まだアンタのものじゃないよー」
 海奈さんが突っ込んだ。

 こうして僕達は三人で戦うことになりました。



 そして次の日。現在十一時。スタジオには大勢のチームが集まった。

 室内自体は広いのだが観客自体が多すぎるので、控えのチームは上の和美(なごみ)に集まった。

「う〜。この込み上げる熱意と情熱とその他もろもろ!戦い甲斐があるねぇ」
 シュシュシュとシャドーボクシングをしながら祭さん。
今は三人でカウンター席に座っている。

「その気持ちわかる!あー、チーム戦って初めてだから楽しみ!いつも見てるだけだったからね」
と拳を握り締め結さん。

 それぞれ始まる前から熱過ぎる…。

 地下の様子は、スタジオに設置されているカメラで、「和美」のカウンターの上に付けられたテレビから見ることが出来る。

 海奈さんいわく「最初の頃は下でイベントがあっても上を開けてたのよ。それで上にいながら下の様子を見られるように、幾つかカメラを仕掛けておいたんだけど、面倒くさくなっちゃってね。今はイベントがある時は上閉めちゃうから、このモニターは全然使わなかったし。役に立つ機会があってよかったわ」とのこと。


「あっ、海奈さんだ」
「んあ?」
 十一時半くらいになって、海奈さんがマイクを持ってステージに現われた。

 ステージは僕のガッコウの体育館のステージとほぼ同じくらい(適当過ぎないだろうか…)。そしてステージは客席へ突き出るように凸状になっている。
今はその飛び出た部分に海奈さんは立っていた。

 客席自体地下なのに結構広くなっていて、テーブルと椅子が幾つか並べられている場所と、バーカウンターがあり、どの席も全部埋まっていた。
今日はイベントということで、ステージ近くにテーブルは出してなかった。立見の客がたくさんいる。
 会場では海奈さんのチームのメンバーがそれぞれ手伝いで働いていた。「和美」のカウンター内でもメンバーらしき男の人が作業している。


『それではこれより第…何回だっけ?…まぁいいわ。町内チーム戦、今回は「ニライカナイ」より放映します。あっ、そうそう。この様子、この店のホームページでネットにリアルタイムで流してるから。半端な戦い演じたら恥ずかしいわよ』

(そうなんだ…)
 流石海奈さん。やることに半端が無い。

『路上戦の様になんでもありってわけにもいかないので、今回のルールを発表するわ。ステージ上手下手のそれぞれの陣地にある酒瓶を倒した方が勝ちよ。簡単なルールね。ちなみに逝かせない程度なら何をしてもいいので心配しないでね』

(何をだ…)
 しかし倒すだけなら僕にも出来そうだ。ちゃんと狙えば少し遠くても当たるだろう。

『尚、倒す際には酒瓶を囲う円の中に入ってから倒さないと無効なのであしからず』

「うっ」
 (お見通しか…)

「つまりどういうことだ?」
 祭さんが隣で訊いてきた。
「つまり相手側の瓶を倒せばいいってことですよ。円の中でですが」
「ふ〜ん。面白そうじゃねぇか。相手の夢や希望諸共、木っ端微塵に打ち砕いてやるぜ」
 しなくていいです。

『それじゃあ十二時になったら一回戦を始めるわ。今回の参加チームは一六組ということで、AブロックとBブロックに分けたわ。じゃあ発表するわね。まず最初は…』
と海奈さんはそれぞれ順番に一回戦から言っていった。

『Aブロック四回戦、あ。『明日のBluewing』対『DAYDREAM』』

 「まじかよー!」と後ろの方で声が聞こえた。
Aブロックでは呼ばれなかったということは…。


『Bブロック二回戦。『N.Gstyle』対『イエローハブ』』


 「ぎゃー!」と後ろの方から叫び声が聞こえたが、聞こえなかったことにしよう…。

『…ということで最初のチームは今のうちに下に来ておいてください。ネットから見ている方々は掲示板等ございますのでしばらくお待ちください。一旦切ります』
と言った後、画面が消えた。



 十二時になって再び海奈さんが画面に映った。


『お待たせしました。それではこれより第一回戦を始めるわ』

 画面にはまた海奈さんと、二組のチームがそれぞれ立っていた。大体全員が二十代位であった。


「お〜、始まったか!」
「いよいよですねぇ」



『…それじゃあ。始め!』

 互いのチーム共に押したり引いたりの攻防を繰り広げた。リーダーの激しい蹴りが以下省略。


『さて、Aブロック最後は私のチーム『明日のBluewing』対『DAYDREAM』です。あー、司会代わってもらおうかしら。ちょっと誰か来てー』
と言った後、客席から女の人が来て、その人に海奈さんはマイクを渡す。

『それでは、始め!』
 女の人は声を上げて言った。


「下行かねぇか?」
 祭さんが言った。
「アタシも久々に海さんの戦い見たいなぁ」
と結さん。
「わかりました。行ってみましょうか」
ということで下へと降りていった。

 

「わーーーー!」


「んあ!?」
「何ですか?…!」

 階段を降りている間に決着が付いてしまったらしい。

 海奈さんが手を上げて声援に答えている。その横で二人男の人も一礼していた。
一人は少しツンツンとした髪型をしていて、白いワイシャツを着ていた。
もう一人は少し長めの髪を上のほうだけ軽く一つに束ねて垂らして、黒いワイシャツを着ている。

「見かけない顔だが、少しは手ごたえありそうだな、あいつ等。俺には分かる」
「祭さんが言うってことは、相当ですね…」

 気を引き締めないとまずいかも…。

 でもよく考えると、僕は海奈さんの戦っているところを見たことがない…。
一体どれだけの実力なんだか。祭さんも認めていて、大規模なチームのリーダー。深夜海奈さん…。

 海奈さんはさっきの女の人からマイクを受け取った。

「はい、勝者『明日のBluewing』でした。さて、Bブロックの試合の準備が始まるまで一旦休憩です。しばらくお待ち下さいね」

 そう言ってステージ脇の階段を降りていった。客席の間を通り抜け、こっちの出口近くにあるカウンター席側に来る。

 そこへ祭さんが近づいていった。
「よぉ、流石だな海。つっても降りてくる間にケリがついちまったみたいで見れなかったんだけどな」
「あらそう。まぁいいわ。次は祭達の番よ」
「あぁ、じゃ決勝でな。負けんなよ。心配はしてないが」
「そっちこそ。心配はしてないけど。じゃあ後で」
 海奈さんは上への階段を上っていった。

「よし、いっちょやるか!」
 祭さんは掌を打ち鳴らす。

 何分か経ちBブロック一回戦が始まる。
「それじゃあ。始め!」
 海奈さんが言うと同時に、お互いのメンバーが走り出す。

 そんなこんなでいよいよ僕達の出番になった。

「いよいよ次だな」
「そうですね」
「あー、楽しみ。早くアタシ達の番になれっての」

 決着が付いたようだ。勝利チームは次の相手ってことなのに、祭さん達全然見ていない…。二人とも準備体操をしている。


 僕達はステージへと上がる。
「さぁBブロック二回戦は『N.Gstyle』対『イエローハブ』」
 海奈さんが出っ張ったステージの上で言い、歓声が沸いた。
「よろしくな」
 祭さんが相手チームの一人に言った。全員二十代の男性と言ったところだろうか。
「ひっ!」

(脅えてるよ…)

「それじゃあ。始め!」
 海奈さんが言った。

チーム戦:『N.Gstyle』vs『イエローハブ』

「う、うりゃあぁ!」
 相手チームの一人が鉄の棒で祭さんに殴りかかる。
「うるせえぇ!」
 その鉄の棒を祭さんは叫びながらハイキックで蹴り飛ばした。続いて左足で回し蹴りを放つ。

 同時進行で、
「この野郎!!」
と相手チームの一人が結さんに掴みかかろうとする。

「野郎じゃなくて阿魔だろうが!」

と伸ばさないままのロッドの底でこめかみ辺りを叩いた。

 二人の男はほぼ同時に倒れた。
「ほら恵!さっさと倒せ!」
祭さんが叫ぶ。
「はい!」
僕は瓶の元へ走りだした。
「させるかぁ!」
最後の一人が僕に向かって突っ込んで来た。

「こっちのセリフだぁ!」
祭さんはその男の頭に跳び蹴りをかました。
崩れ落ちる男を横目に、
円の中にたどり着くと同時に瓶を蹴り上げた。
「勝者『N.Gstyle』」
再び歓声が沸きあがった。


 この後の準々決勝、準決勝もこんな感じで勝ち進んだ。

『はい、準決勝勝者は『明日のBluewing』でしたー』
 画面から聞こえる海奈さんの声。

「やっぱり決勝は海のチームか」
「えぇ。ふぅ…。大丈夫ですかね?」

 いくら祭さんでも、どうなるかわからない…。

「んあ?俺が信用出来ないか?」
「え?」
「フッ。勝って、ここで飯食おうぜ」
 そう言って立ち上がり、僕の肩を叩いた。
「はい」
「さっ、行くか」


 僕達は下へ降りた。


 歓声を受けながらステージへ上がる。
「来たわね」
 海奈さんが祭さんを見据える。
「負けるからって適当に飯作んなよな」
 祭さんも見返した。
「フフ。そんなことしないわよ。私達が勝つんだから」
 海奈さんの隣に男の人が並ぶ。


「それではこれより決勝戦!『明日のBluewing』対『N.Gstyle』の試合を始めます!」
 大きな歓声と拍手が響く。
「それでは。始め!」


チーム戦:『N.Gstyle』対『明日のBluewing』


「いくぜぇ!」
 祭さんが叫ぶ。
「海さん。今日は勝たせてもらいますからね!」
 結さんも叫ぶ。
「恋季(コイキ)、アンタは祭を。樹ヰ(ジュイ)は結ちゃんを狙って」

「はいはい」
と、恋季と呼ばれた木刀を持ったツンツン頭さんは祭さんの方へ。

「わかったわかった」
と樹ヰと呼ばれた長い木の棒を持った長髪男さんは結さんの方へそれぞれ向かった。


「さて、と」
「え!」
 海奈さんは僕の前に立った。

「てめぇきたねぇぞ!」
と祭さんが少し離れた場所で叫んだ。

「フフ、今回はチーム戦。路上戦とは違うのよ」


僕 vs 海奈さん


(と、とりあえず…)
 僕は銃を構えた。
ただ目の前の海奈さんだけを狙う。
「恵時君、お手柔らかに」
「え、あ。こ、こちらこそ」
「と言っても、少し本気出そうかしら?」

(結構ですからぁ)

 そう言って海奈さんはジャケットのポケットから何かを取り出した。

(扇子?)

「さて、始めましょうか?」
 さっと広げ、顔反面を隠し、僕を見据えた。

「くっ…」
 僕は右手の銃で一発撃った。

海奈さんは動じることなく扇子を振った。

「!」

弾は簡単に弾かれてしまったようだ。

「これでお仕舞いかしら?」


(ダメかも…)

 絶望的だった。

「恵!」
 祭さんがこっちへ駆けて来る。後ろからは恋季という人が追って来ていた。
「流石に無理だろ。代わるぞ!」
そう言って向かってくる恋季さんの方に押しやられた。


 僕と祭さんは背中合わせになった。


 ステージの出っ張った所では、結さんと樹ヰさんという人がお互い攻防を繰り返している。
「アンタやるわねぇ」
「そっちもな」


「さて、どうしますか?」
「どうするもこうするも、やるっきゃないだろ」
 そう言って祭さんはパーカーの帽子から<団扇>を取り出した。
団扇の取っ手からはチェーンが垂れている。それを左手に巻いていった。
「え?なんですかそれ?」
「んあ?みりゃ分かるだろ。団扇だ団扇」

(それはそうですけど…)

「アンタも本気みたいね」
「お前だって恵相手に武器使ってんじゃねぇか」
「男の子相手だもの。別にいいじゃない」
「よく言うよ。素手ごろで百人は楽勝なくせに」

(そうなんだ…)

勝ち目は微塵も無かったのね…。


「じゃ、いくぜ!」


祭さん 僕 vs 海奈さん 恋季さん


「喰らえ!」
 祭さんが団扇を投げつける。海奈さんは軽く避けた。

「もういっちょ!」

素早く引いてチェーンの遠心力だけで再び海奈さんを狙う。
「甘いわね」
 海奈さんは扇子を閉じて団扇を弾いた。

(今だ!)

 僕は銃を撃った。が、海奈さんは再び扇子を開いて全て弾いた。

「なかなかだったけど、まだまだね」
 見た目は布で出来た扇の部分だけど、絶対何か入ってる…。この<銃>は鉄板くらいなら楽に貫通出来るし…。流石海奈さんの武器…。

「じゃあ、今度はこっちの番ね」
 二人は走り出し、向かって来る。

「うわっ!」
 恋季さんが木刀で斬りかかって来た。とっさに避けたが二撃、三撃と即座に仕掛けてくる。

「避けんな!当たらねぇだろうが!」
「無理言わないでください!」
 とりあえず銃で撃った。
「おっと。その銃、な…じゃねぇ。海奈のだな?危ないっつーの」
「お互い様で、しょう!」
 立て続けに連射した。
「うわっと!」

(今だ!)

 僕はトンファーを持つように銃を逆手に持って、思い切り木刀を殴った。
どうやらいい所に当たったらしく、木刀を弾き飛ばせた。
「おりゃ!」
弾き飛ばした木刀は客席の方へと蹴り飛ばしておいた。

「あ!おま…!…くっ」
 僕は銃を突きつける。歓声が沸いた。

「お前、手順が銃使う時の海奈にそっくりだな…」
「この銃を貰った時にいろいろ習ったので…」
「あ〜、だからか…」

(この人、海奈さんと相当長い付き合いなんだろうなぁ…)

「お前名前は?」
「僕は恵時。霧夜恵時です」
「俺は夜想(ヤソウ)恋季。よろしくな。さて、と。お〜い、海奈。負けたから後よろしく!」
 離れてしまったため少し遠くで戦っている海奈さんの方に向かって言った。


「いちいち報告しないで頂戴!気が滅入るわ!」
「はいはい。…さ、どうすんだ?」
 立ち上がる恋季さん。
「え?」
「祭の野郎に、加勢しなくていいのか?」
「?あ、そうですね」


「うるぁ!」
 祭さんは右手に持った団扇で斬りかかる。
「はっ!」
 海奈さんはそれを扇で受け止めた。

 お互い一度離れた。

「そろそろ必殺技、いくぜ!」
 パーカーの帽子から団扇を何本も取り出し、指の間に握り拳を作って持つ。

「喰らえ!夜風流埋葬術!爪狂乱舞!」

 回転しながら上中下段と連続で素早く斬りつけていく。
「まだまだね」
海奈さんは扇子で団扇を狙って突いていった。
団扇は全部弾け飛ばされていった。

「んな!」
「そんな闇雲な技目の前からじゃ当たらないわよ」


「祭さん!」
 僕は海奈さんに向けて撃った。

「おっと」
 海奈さんは軽く避けた。
「今のはなかなかね」

「アホ!さっさと瓶倒して来い!」
 祭さんが叫ぶ。

「え?」
「え?じゃねぇ!手空いてんの恵だけだろうが!」
「あ…」
 結さんも攻防を続けたままだ。
「早くしろ!」
「あ!はい!」
 僕は急いで瓶の方へ走った。

「させないわ!」
 海奈さんが扇子を投げて来た。
「うはぁ!」

「そうは問屋が卸すかぁ!」
 それを祭さんが団扇を投げて弾き飛ばす。
 僕は瓶を蹴り倒す。

 今までで一番の歓声がスタジオに響いた。



「よっしゃあ!勝ったぜ!」
「はいおめでとう」

 ステージの上で海奈さんが祭さんに封筒を渡した。客席から拍手が沸く。

「まぁ、今回は恵時君に負けたけど。次は勝つわよ」

(僕何もしてませんよ…)

「んあ?何言ってんだよ。俺の活躍のおかげだな」
 祭さんが言った。

(まぁ間違ってはないですけど…。うーん)

「何かアタシ、全然役に立ってなかったなぁ…」
 結さんが言った。

「そ、そんな事ないですよ」
「そうかなぁ…」
「そうですって!」
「そうかな?…よし!飯行きましょう!祭さん!」
「おう!」

(立ち直るの早いなぁ)

二人は盛り上がっていた。


「あー、祭。アンタこの間のツケちゃんと返してね」

「んへ?」
「この間恵時君寝ちゃった後、お金払ってないでしょう?」

(この間…?あ、あの騒音騒ぎの前の日か…)

「というわけで食事券で、返してもらっといたから」
「返してもらっといたって…。あ〜!」

 祭さんは封筒を開ける。中には何も入ってなかった。

「え…あー!」
 結さんも横から覗き込んで叫んだ。

 客席からは笑い声が聞こえる。

「ん…あ…。俺の…努力は…?」
「まぁツケがなくなっただけ、ましと思えば…」
 僕が言った。
「んあ?…ならまぁ…いい、のか?」

 結局今回も、祭さんに振り回されるだけの<夜>であった…。


5話 〜N.Gstyle〜 続く

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

〜小説投稿コミュ〜 更新情報

〜小説投稿コミュ〜のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング