宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「ワンスアポンナタイムインアメリカ　Once upon a time in America 」

観劇日１月31日（金）13:00開演　いつもの２階B席　ほぼ真ん中　

この公演は凄い人気である。いつもなら土日祝日にチケットを取るのだが、取れなかったのだ。だから平日に見てきたのだが、平日でも立ち見が出ている。ちょっと聞いてみたら初日からずっと立ち見が出ているのだそうだ。ま、大入りで一番ほっとしているのは経営者だろうけど。高い（？）著作権料を払って不入りだったら悲惨だ。下手したら偉い人の首が飛ぶ（？）。

言わずと知れたセルジオ・レオーネ監督の映画「ワンスアポンナタイムインアメリカ」が原作である。脚色・演出は小池修一郎、作曲は太田建。小池はこの映画によほど強い思い入れがあるのだろう。いつもの作風とはひと味もふた味も違っているのだ。去年の「オーシャンズ11」を見て、よく出来た娯楽作品、この人はこんな娯楽作品の人、だと思っていたが、今回は違う。娯楽色が後退しているのである。それに小池作品・演出でよくある、第一幕幕切れと第二幕冒頭がつながっている、と言う事もやっていない。

僕はこの映画を見ていないのでどれだけ映画に忠実かはわからないが、宝塚歌劇として、それ以前に舞台の作品として大変完成度が高い。マフィアの話と言えば「ゴッドファーザー」に代表されるようなイタリア、特にシチリア系マフィアと思いきや、それとはちょっと違ってユダヤ系のマフィアの話である。だから、結構薄汚くて血なまぐさい話ではあるが、主役ヌードルス（望海風斗）とデボラ（真綾希帆）との恋模様が救いになっている。

"a once upon a time" 、おとぎ話はこの文句から始まるが、この芝居はおとぎ話とは打って変わってどろどろした話になっている。物語は1920年代から1950年代まで、出演者は少年青年期から円熟期までを一人で演じる。そこに、何の不都合も不満も生じていない。禁酒法時代の事が中心になってくるので、衣装は装置共にアールデコ調でそれなりに楽しませてくれるが、特にそれを強調する事をしないのは小池らしい。ちょっと面白かったのはジークフェルト・フォーリーズを彷彿とさせるショーのシーンである。衣装がエルテそっくりで楽しくなった。

小池は望海風斗をよほど信頼しているのだろう。第一幕幕切れも、第二幕幕切れも望海一人である。望海はその期待に十分応え、圧巻の演技を見せてくれる。太田建は真綾希帆と言うDIVAに素晴らしい音楽を書いてくれた。否、彼女だけでなくすべての音楽の完成度が高い。「ワンスアポンナタイムインアマリカ」と聞いて最初に頭に浮かぶのは「アマポーラ」だ。しかし、今回この曲は使われていない。しかし、見ているうちにそんな事どうでもよくなってくる。
　　

今回特に感心したのは美術である。ローワー・イースト・サイドの街角のシーンでは映画のポスターに使われたウィリアムズバーグ橋が背景に使われている。それに、摩天楼を模したセットが効果的に使われている。時には摩天楼そのもに、時には摩天楼の外枠のみ、と言う形で。それに、近頃はやりの映像も使われているが、これ見よがしに使うのではなく、芝居の一部として機能させている点を高く評価したい。それに、最初の方で、マシンガンを客席に向かって撃つところが面白い。舞台下前に備え付けたライトを銃に見立て点滅させるのが面白い。

A onece upon a time in America, 「昔々、アメリカに二人の男の子がいました。一人は日の当たるところに行きましたが、もう一人は行けませんでした。しかし、どちらが勝った、どちらが負けた、とは言えません。言えるのは、二人とも自分の人生を一生懸命生きた、と言う事だけです。」この物語は、結局こういう話なのだ。つまり、大人の為のおとぎ話なのだ。