宝塚大劇場今年最後の出し物は、生田大和作演出の芝居「ディミトリ」と斎藤吉正作演出の「ジャガービート」。指揮は両方とも西野淳。
今年は生田大和の作品が２回上演された。前回の「リスト」は、言いたいことはわかる、しかし力が足りない、と言う結果に終わった。ただ、壮大なテーマに取り組んだ事だけは高く評価したい。
今回の「ディミトリ」はかつてはグルジアと呼ばれ今日ではジョージアと呼ばれている国を舞台とした話。並木陽作「斜陽の国のルスダン」を原作としている。この作品は元々同人誌として販売され、それがたまたまNHK の目にとまって「青春アドベンチャー」でラジオドラマになり、それを聞いた生田大和氏が脚色したといういきさつだ。また、宝塚歌劇になった事により、原作が商業出版される事となったと言う。
舞台は物乞い（美稀千種）を狂言廻しとしてわかりやすく展開していく。13世紀のキリスト教国ジョージアの宮廷で、隣国でイスラム教国ルーム・セルジュークから友好の印、早い話が人質として第四王子のディミトリ（礼真琴）は幼い頃から育てられていた。ジョージアの王女ルスダン（舞空瞳）とは幼なじみで、いつしか愛し合うようになっていった。
ジョージア国王ゲオルギ（綺城ひか理）は、妻バテシバ（有沙瞳）を愛しているが廷臣の反発を招くため、離別する。そして戦が起こり,国王は重症を負い、王位を妹ルスダンに譲り、ディミトリをルスダンを結婚させ王配とする、と遺言する。こうして、二人は結ばれるのだが、廷臣は面白くない。これは歴史上結構良くある話なのだ。女王・女帝と言うのは国民に人気がある。その時嫌われるのが、婿が出しゃばること。つまり、女王・女帝事国を乗っ取ろうとしているのではないかと疑いの目で見られるのだ。
そういう時に又戦が起こりジョージアの都トリビシが陥落する。ホラムズの帝王ジャラルッディーン（瀬央ゆりあ）との駆け引き、副宰相アヴァク（暁千星）の確執、こういう宮廷や戦略のドラマが見所になっている。
特にクライマックス、ディミトリ・ルスダンを始めとする人々が、一同に介して歌ってはいるが実は違う時間軸・違う空間で起こっている事、つまり、「レ・ミゼラブル」の「ワンデイモア」を模したシーンが出てきたり、小池修一郎作品でよく使われる、回り舞台を動かしながら舞台を進行させる、と言った演出が使われたりしている。これは今までの生田作品になかった。このような場が実に効果的に使われている。生田氏も進歩たな、と感じた。また、終盤近くディミトリがルスダンへの愛を歌い上げるシーンで、ゲオルギ国王・妻パテシバ（この二人はもう死んでいるからスッポンから出てくる）が出てきて、愛を貫いた事を聞かせ、三重唱になるところが実に面白かった。
また、太田健の音楽が良く出来ている。ジョージアの音楽を上手く舞台に生かし、いつもの宝�爐硫山擇醗穗卒兇覆�共存させている。また、生田氏が魅せられたと述べているジョージアンダンスが素晴らしい。特に、戦闘の場で効果的に使われている。そして、衣装が凝っている。特にスルダンとディミトリの結婚式の場で、ディミトリの来ている衣は総刺繍ではないだろうか。
今回、国王の妻バテシバの有沙瞳の歌に感心した。ただ、実声と裏声の境目が危ういのが気になる。しかし、声・歌唱そのものは大したものだと感じた。主役二人も申し分ない。暁千星の副宰相は、ディミトリに嫉妬しているように見え、国を思う気持ちとない交ぜになっているところを上手く表現していた。また、帝王ジャラルッディーンが側近に、王様は若くて美しい男に目が無い、と言われたりするところが面白いが、堂々とした風格を見せていた。
続くショー「ジャガービート」は、全編全速力で走っているような感じだ。ただ、斎藤吉正作の演出はトップを上手く使っていると感じた。つまり、登場人物がだんだん多くなり、場面が盛り上がり、頂点に達した時、おもむろにトップが出てくる。そんな場面が多々あって面白かった。
僕が見た12月10日二回目の公演は宝�猴Г硫颪隼旭羹四Д�ードとの共同貸し切り公演だった。だから一番最後にもう一度幕を上げトップが挨拶してくれる。そして、最後に幕が下りた後ジャガーの叫び声が聞こえ幕に礼真琴が写し出されるおまけがあった。
ただ、貸し切り公演に以前あった開幕前の組長の挨拶が無くなっていた。また、指揮者にスポットを当てなくなったのが寂しい。
と、公演そのものは満足したのだが、開演前・幕間が大いに不満だ。なんの役にも立たない感染症対策を言い過ぎる。曰く、ロビー・客席での談笑を控えろとか、実に馬鹿馬鹿しい。その呼びかけが五月蠅くて五月蠅くて、劇場案内人がチンピラ姐ちゃんに見えてくる。こいつら観客が楽しそうに話しているのがそんなに妬ましいのだろうか。人が嫌がる事を強制し、従わせる事にどす黒い悦びを感じているのではないか、とさえ思えてくる。、
今年は生田大和の作品が２回上演された。前回の「リスト」は、言いたいことはわかる、しかし力が足りない、と言う結果に終わった。ただ、壮大なテーマに取り組んだ事だけは高く評価したい。
今回の「ディミトリ」はかつてはグルジアと呼ばれ今日ではジョージアと呼ばれている国を舞台とした話。並木陽作「斜陽の国のルスダン」を原作としている。この作品は元々同人誌として販売され、それがたまたまNHK の目にとまって「青春アドベンチャー」でラジオドラマになり、それを聞いた生田大和氏が脚色したといういきさつだ。また、宝塚歌劇になった事により、原作が商業出版される事となったと言う。
舞台は物乞い（美稀千種）を狂言廻しとしてわかりやすく展開していく。13世紀のキリスト教国ジョージアの宮廷で、隣国でイスラム教国ルーム・セルジュークから友好の印、早い話が人質として第四王子のディミトリ（礼真琴）は幼い頃から育てられていた。ジョージアの王女ルスダン（舞空瞳）とは幼なじみで、いつしか愛し合うようになっていった。
ジョージア国王ゲオルギ（綺城ひか理）は、妻バテシバ（有沙瞳）を愛しているが廷臣の反発を招くため、離別する。そして戦が起こり,国王は重症を負い、王位を妹ルスダンに譲り、ディミトリをルスダンを結婚させ王配とする、と遺言する。こうして、二人は結ばれるのだが、廷臣は面白くない。これは歴史上結構良くある話なのだ。女王・女帝と言うのは国民に人気がある。その時嫌われるのが、婿が出しゃばること。つまり、女王・女帝事国を乗っ取ろうとしているのではないかと疑いの目で見られるのだ。
そういう時に又戦が起こりジョージアの都トリビシが陥落する。ホラムズの帝王ジャラルッディーン（瀬央ゆりあ）との駆け引き、副宰相アヴァク（暁千星）の確執、こういう宮廷や戦略のドラマが見所になっている。
特にクライマックス、ディミトリ・ルスダンを始めとする人々が、一同に介して歌ってはいるが実は違う時間軸・違う空間で起こっている事、つまり、「レ・ミゼラブル」の「ワンデイモア」を模したシーンが出てきたり、小池修一郎作品でよく使われる、回り舞台を動かしながら舞台を進行させる、と言った演出が使われたりしている。これは今までの生田作品になかった。このような場が実に効果的に使われている。生田氏も進歩たな、と感じた。また、終盤近くディミトリがルスダンへの愛を歌い上げるシーンで、ゲオルギ国王・妻パテシバ（この二人はもう死んでいるからスッポンから出てくる）が出てきて、愛を貫いた事を聞かせ、三重唱になるところが実に面白かった。
また、太田健の音楽が良く出来ている。ジョージアの音楽を上手く舞台に生かし、いつもの宝�爐硫山擇醗穗卒兇覆�共存させている。また、生田氏が魅せられたと述べているジョージアンダンスが素晴らしい。特に、戦闘の場で効果的に使われている。そして、衣装が凝っている。特にスルダンとディミトリの結婚式の場で、ディミトリの来ている衣は総刺繍ではないだろうか。
今回、国王の妻バテシバの有沙瞳の歌に感心した。ただ、実声と裏声の境目が危ういのが気になる。しかし、声・歌唱そのものは大したものだと感じた。主役二人も申し分ない。暁千星の副宰相は、ディミトリに嫉妬しているように見え、国を思う気持ちとない交ぜになっているところを上手く表現していた。また、帝王ジャラルッディーンが側近に、王様は若くて美しい男に目が無い、と言われたりするところが面白いが、堂々とした風格を見せていた。
続くショー「ジャガービート」は、全編全速力で走っているような感じだ。ただ、斎藤吉正作の演出はトップを上手く使っていると感じた。つまり、登場人物がだんだん多くなり、場面が盛り上がり、頂点に達した時、おもむろにトップが出てくる。そんな場面が多々あって面白かった。
僕が見た12月10日二回目の公演は宝�猴Г硫颪隼旭羹四Д�ードとの共同貸し切り公演だった。だから一番最後にもう一度幕を上げトップが挨拶してくれる。そして、最後に幕が下りた後ジャガーの叫び声が聞こえ幕に礼真琴が写し出されるおまけがあった。
ただ、貸し切り公演に以前あった開幕前の組長の挨拶が無くなっていた。また、指揮者にスポットを当てなくなったのが寂しい。
と、公演そのものは満足したのだが、開演前・幕間が大いに不満だ。なんの役にも立たない感染症対策を言い過ぎる。曰く、ロビー・客席での談笑を控えろとか、実に馬鹿馬鹿しい。その呼びかけが五月蠅くて五月蠅くて、劇場案内人がチンピラ姐ちゃんに見えてくる。こいつら観客が楽しそうに話しているのがそんなに妬ましいのだろうか。人が嫌がる事を強制し、従わせる事にどす黒い悦びを感じているのではないか、とさえ思えてくる。、
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