宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「ロミオとジュリエット」

宝塚大劇場に行くのはほぼ２ヶ月ぶりくらいになる。この「ロミオとジュリエット」は大好きな演目なので２回は見たかったけど、緊急事態宣言などと言う馬鹿げた茶番劇のあおりを喰らって、２月は見られず３月21日にやっとチケットが取れたので見てきた。

この日は雨、春分の日の翌日、と言うこともあってか、冷たい雨ではなかった。劇場内で予約したチケットを発券し、入場する。このところ、チケットは当日にしか発券出来ないようになっている。

席につくと、相変わらずオーケストラボックががらんどうなのが寂しい。開演すると、「ロミオとジュリエット」の世界が劇場中に広がる。「愛」と「死」の踊り、そして絵真なおき氏のナレーションが始まるとこの世界にどっぷり浸ってしまう。

僕がこの「ロミオとジュリエット」を初めて聞いたのは「ウィーン・ミュージカル・コンサート」、ドイツ語で聞いている。それから宝塚歌劇団がこれを日本初演した初日に梅田芸術劇場で見ている。それ以来、大劇場はすべて、東宝での公演も何度か、フランス本国からの来日公演も見た。

今回、日本初演以来の小池修一郎氏の潤色・演出に加え、稲葉大地氏が演出に加わり、野口幸作氏が演出助手として加わっている。音楽監督・編曲に太田健氏、この人は小池氏と相性がいいのだろう。録音ではあるが指揮に橋本和則氏が起用されている。スタッフ陣も若手が育って来ているのが嬉しい。

ロミオを歌うのは礼真琴。申し分のない出来だ。この作品はほとんど地の台詞がなくほとんどが歌なのだが、歌で芝居するのは勿論、高音から低音までコントロールが実に良く出来ている。理想的なロミオである。相手役のジュリエットは舞空瞳、ただ単に可憐なだけでなく、芯の強さを持っている事が良く出ている。

この作品が宝塚で上演されるのは５度目だ。初演が星組、次いで雪組、それから月組、この時はダブルトップの龍真咲と明日海りおの御披露目だった。そして、再び星組。そして、８年ぶりに今回の星組。

ロレンス神父役の絵真なおきは今回で４度目だ。もうこの人の持ち役になってしまった。ジュリエットの乳母は毎回歌の上手い人が演ってくれるが、今回の有沙瞳も素晴らしい歌を聞かせてくれた。ちょっと物足りないのは、キャビュレット卿の天寿光希、第二幕のアリアで芝居は良いが歌が。この人だけを聞いていたら別に不満はないだろうが、以前から聞き慣れている一樹千尋とつい比べてしまい、もう一つ、のように感じるのだ。

この作品の面白さは、「愛」「死」と言う踊りだけの役が出てきて、あるときは登場人物を導き、あるときは登場人物と絡んだりして物語を進めていく事。それに、知りすぎているほど知っている原作に、激しい音楽と斬新な振り付けの踊りで現代にまで通じる普遍的な主題を浮かび上がらせ、永遠の恋愛物語を紡いだ事だろう。

小池演出は、第二幕の最初に第一幕幕切れの余韻を残すところはまだ良い。最後、オリジナル版は全員の合唱で終わるのだが、この塚阪はおまけがあってそこがいかにも宝塚で良いのだが、いささか冗長である。フィナーレでトップ二人のデュエットが、ラテン・スペイン風だったのが新鮮だった。

一番惜しいのが、生演奏では無かったこと。特にこのような大作だと生演奏の必要性を大いに感じる。終演後、外に出ると雨はやんでいた。花のみちには、木蓮が、桜が咲き始めている。次の週末くらいには見頃になるのではないだろうか。