宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「炎のボレロ」「Music Revolution」

この公演は今年５月に梅田芸術劇場を皮切りに全国巡業が行われるはずだった。しかし、コロナ渦で一旦中止となり、８月から17日から梅田芸術劇場のみで上演されるはずだったが、これまた12日延期となった。僕はこの公演を８月22日に予約していたが、９月５日の振り替え公演を見てきた。

今度は良い場所だった。三階のほぼ中央で前の方だったのだ。相変わらず座れない席がある。見渡してみると、座れる席はほぼ埋まっているようだった。

「炎のボレロ」は柴田侑宏の作品で1988年初演され今回が２回目だ。作曲は寺田瀧雄。今回の演出は中村暁。演奏は録音だが録音指揮は吉田優子。

前回ここで見た「FLYING SAPA」とは全くと言って良いほど作風が違う。上田久美子の「とんがった」作風とは打って変わって、良くも悪くも典型的な宝塚歌劇の作品である。とは言っても流石に柴田作品、傑作とは言えないがそれなりに楽しく見られる。

場所はメキシコ、時代は1860年代、実質的にはナポレオン三世の支配下にありマキシミリアン皇帝は一種の傀儡であった。抑圧されたメキシコ人民は密かに祖国復興をの機会をうかがっていた。

年に一度の祭りに一人の青年が姿を見せる、彼はアルベルト・カザルス（彩風咲奈）。三年前、フランス軍に抵抗するが、長男と共に殺された大農園主カザルス侯爵の次男である。そこへ、カテリーナ・ドロレス（潤花）と言う娘と出会う。彼女は、家族を守る為にフランス政権に従わざるを得なかったドロレス伯爵の娘であった。

この地のフランス政権の権力者はブラッスール公爵で、彼の息子とカテリーナを結婚させようとしていたが、実際はブラッスール公爵自身がカテリーナに御執心なのであった。そこで、言うなら敵同士のアルベルトとカテリーナは恋に落ちるが、その行方は、そして政権は・・・

と言うなら、どこかで見たようなと言っても良いような話だが、柴田の手にかかると、面白く、しかも、安心して見られる。柴田作品の魅力の一つは、観客を喜ばせる事を目的にしているのは確かだが、決して観客に阿る事をしない事であろう。今回、特に感じたのは寺田瀧雄の音楽だ。決して前衛的でも奇をてらったものでもないが、実に物語に寄り添って上手く出来ている。最後はほのぼのとした気分にさせられる。これはこれで極上の娯楽作品となっている。

続くネオダイナックショーと銘打った「Music Revolution - New Spirit- 」は昨年の本公演、秋の巡業、に続いて三度目の上演だと言う事だ。作・演出は中村一徳、これも録音だが指揮は橋本和則、大劇場のピットで見た事がある若い指揮者だ。

僕は大劇場で見ているはずなのだが、よく覚えていない。いうなら、よくある宝塚のショーである。これはこれで悪くない。こういうショーを梅芸でみると、ちょっと寂しい、空間が空いている、とは感じるのだが、あまり、気にならない。考えてみると、宝塚のショーを見るのは昨年の宙組公演以来である。

ありきたり、ではあるが、最後のパレードになり主役が大きな羽根をつけて階段を降りてくる所を見ると、嬉しくなってくる。梅芸の良いところは、階段の段数が少なく、僕のように三階から見ていても見切れる事がない事だ。最後、カーテンコールをやってくれたのが嬉しかった。このような、伝統的とも言っても良い作品も、前衛的な作品も両方上演するのが、宝塚歌劇の良いところだろう。楽しい気分になって劇場を後にした。