観劇日６月29日（土）15:00開演 ２階B席 ほぼ中央
この公演は、三井住友VISAカードと宝塚友の会の共同貸し切り公演だった。だから、開幕前に組長さんの挨拶があった。芝居は浅田次郎作「壬生義士伝」、脚色演出は石田昌也。この作品は、ベストセラー小説で映画化もされている。作曲編曲は手島恭子、指揮は御崎恵と女性コンビ。ところでMaestroは男性形だから、女性ならMaestraになるのかな。
「椿姫」の「乾杯の歌」から舞台は始まる。女声と言うより、娘役がイタリア語で歌っていたのでちょっと驚いた。鹿鳴館で芸者と女学生がダンスの稽古をしている、そこへ暴漢が乱入して、ってこれ三島由紀夫の「鹿鳴館」のパロディか、と言うところで元新撰組の斉藤一などが入ってきて物語りが本格的に始まる。一種の回想形式になっている。凪七瑠海扮する元新撰組の主治医、明治に入ってからは陸軍軍医の松本良順が全体の狂言回しとなっている。これだといろいろな説明がしやすい事は確かだが、たびたび芝居が中断されると言う欠陥もある。これ前に見たような感じだな、と思っていたが、「モンテクリスト伯」が同じような形式だったと思い出した。「モンテクリスト伯」はもちろん、この原作も膨大なものだから、これを１時間35分にまとめるにはこのような手法をとったのだろう。なるほど、説明はこういう形式の方がしっくりいく。
この鹿鳴館のシーンはたびたび出てきて、言うなら「チャリ場」になっている。最初の「椿姫」の演奏は録音だったが、生演奏の時もあり、なかなかいい演奏だった。マエストロ（あえてこう呼びます）御崎、今度「椿姫」全曲を振りませんか。また、踊りの稽古をする芸者たちに、新政府の要人たちの婦人は元芸者が多いと言うところが笑わせる。実際、新橋や祇園の芸者を妻にした人は多かった。勤王の志士は金がないので島原には行けなかったのだ。
新撰組の話だから、切った張ったの話だとか、英雄の話、だと思ったら大違い、主役の吉村貫一郎（望海風斗）は東北の南部藩を抜け京で新撰組に入ったのは家族の生活を助ける為。京に出るまでに、その貧しさが強調される。その妻しず（真彩希帆）はそんな夫を慕っている。吉村は新撰組に入ってからも、介錯をしては金をねだる。それも、無理な事をしたから刀がこぼれたと研ぎ代を求める。ただ、実直な人柄だと言う事はよくわかるようになっている。
その貫一郎には大野次郎右衛門（彩風咲奈）と言う幼なじみがいる。彼は妾腹の子である。思わぬ出世を遂げるが、それでも貫一郎とその家族を思いやる。その実母を演じるのが、梨花ますみ、出番は少ないながら、存在感があった。
その京で貫一郎を見そめるのが両替商の娘みよ（真彩希帆、二役）、京言葉に関東訛りが混じるのは毎度の事で致し方ないが、なかなか好演、望海風斗もそうだが歌にますます磨きがかかっていた感がある。みよは、貫一郎に侍をやめて自分の婿になってほしいと希望し、周囲もそれを勧めるすが、貫一郎はそれを拒む。この時くらいからだろうか、客席からすすり泣きの声が聞こえるようになる。最後は、貫一郎の死になるが、これあ息子に、これは娘に、これは妻に、と書き置きするところで、客席からはすすり泣きどころか嗚咽まで聞こえるようになる。
ところで、僕は関西人だからこの京言葉変だと思っていたが、東北の人が聞いたらこの南部言葉をどう思うのだろうか。
続く、「Music Revolution」は中村一徳作演出、指揮は橋本和則、この指揮者今年のお正月の「エストレージャス」に続いて二度目。凪七瑠海という人は歌のうまい人だが、芝居ではあまり歌がなかった分、このショーで十分歌声を聞かせてくれる。オーケストラがすごかった。トランペットとサックスのハイトーンの競演は鳥肌ものだ。ただ、これ録音ｗ。ま、これを生で毎回、と言うのはつらいだろう。ものの見事にひっくり返る可能性が大いに大なのだから。ドボルザークの「新世界」第四楽章、「威風堂々」、リストの「愛の夢」が元になった楽曲がとてもおもしろかった。
橋本和則は若い、今度は芝居でも振って欲しいし、この人がオペラやミュージカルを振る機会があるのなら聞いてみたい。終演後、トップ望海風斗の挨拶があった。客席からのすすり泣きは舞台にまで聞こえていたようだ。この公演、東京では「泣ける芝居」として話題になるのではないだろうか。
この公演は、三井住友VISAカードと宝塚友の会の共同貸し切り公演だった。だから、開幕前に組長さんの挨拶があった。芝居は浅田次郎作「壬生義士伝」、脚色演出は石田昌也。この作品は、ベストセラー小説で映画化もされている。作曲編曲は手島恭子、指揮は御崎恵と女性コンビ。ところでMaestroは男性形だから、女性ならMaestraになるのかな。
「椿姫」の「乾杯の歌」から舞台は始まる。女声と言うより、娘役がイタリア語で歌っていたのでちょっと驚いた。鹿鳴館で芸者と女学生がダンスの稽古をしている、そこへ暴漢が乱入して、ってこれ三島由紀夫の「鹿鳴館」のパロディか、と言うところで元新撰組の斉藤一などが入ってきて物語りが本格的に始まる。一種の回想形式になっている。凪七瑠海扮する元新撰組の主治医、明治に入ってからは陸軍軍医の松本良順が全体の狂言回しとなっている。これだといろいろな説明がしやすい事は確かだが、たびたび芝居が中断されると言う欠陥もある。これ前に見たような感じだな、と思っていたが、「モンテクリスト伯」が同じような形式だったと思い出した。「モンテクリスト伯」はもちろん、この原作も膨大なものだから、これを１時間35分にまとめるにはこのような手法をとったのだろう。なるほど、説明はこういう形式の方がしっくりいく。
この鹿鳴館のシーンはたびたび出てきて、言うなら「チャリ場」になっている。最初の「椿姫」の演奏は録音だったが、生演奏の時もあり、なかなかいい演奏だった。マエストロ（あえてこう呼びます）御崎、今度「椿姫」全曲を振りませんか。また、踊りの稽古をする芸者たちに、新政府の要人たちの婦人は元芸者が多いと言うところが笑わせる。実際、新橋や祇園の芸者を妻にした人は多かった。勤王の志士は金がないので島原には行けなかったのだ。
新撰組の話だから、切った張ったの話だとか、英雄の話、だと思ったら大違い、主役の吉村貫一郎（望海風斗）は東北の南部藩を抜け京で新撰組に入ったのは家族の生活を助ける為。京に出るまでに、その貧しさが強調される。その妻しず（真彩希帆）はそんな夫を慕っている。吉村は新撰組に入ってからも、介錯をしては金をねだる。それも、無理な事をしたから刀がこぼれたと研ぎ代を求める。ただ、実直な人柄だと言う事はよくわかるようになっている。
その貫一郎には大野次郎右衛門（彩風咲奈）と言う幼なじみがいる。彼は妾腹の子である。思わぬ出世を遂げるが、それでも貫一郎とその家族を思いやる。その実母を演じるのが、梨花ますみ、出番は少ないながら、存在感があった。
その京で貫一郎を見そめるのが両替商の娘みよ（真彩希帆、二役）、京言葉に関東訛りが混じるのは毎度の事で致し方ないが、なかなか好演、望海風斗もそうだが歌にますます磨きがかかっていた感がある。みよは、貫一郎に侍をやめて自分の婿になってほしいと希望し、周囲もそれを勧めるすが、貫一郎はそれを拒む。この時くらいからだろうか、客席からすすり泣きの声が聞こえるようになる。最後は、貫一郎の死になるが、これあ息子に、これは娘に、これは妻に、と書き置きするところで、客席からはすすり泣きどころか嗚咽まで聞こえるようになる。
ところで、僕は関西人だからこの京言葉変だと思っていたが、東北の人が聞いたらこの南部言葉をどう思うのだろうか。
続く、「Music Revolution」は中村一徳作演出、指揮は橋本和則、この指揮者今年のお正月の「エストレージャス」に続いて二度目。凪七瑠海という人は歌のうまい人だが、芝居ではあまり歌がなかった分、このショーで十分歌声を聞かせてくれる。オーケストラがすごかった。トランペットとサックスのハイトーンの競演は鳥肌ものだ。ただ、これ録音ｗ。ま、これを生で毎回、と言うのはつらいだろう。ものの見事にひっくり返る可能性が大いに大なのだから。ドボルザークの「新世界」第四楽章、「威風堂々」、リストの「愛の夢」が元になった楽曲がとてもおもしろかった。
橋本和則は若い、今度は芝居でも振って欲しいし、この人がオペラやミュージカルを振る機会があるのなら聞いてみたい。終演後、トップ望海風斗の挨拶があった。客席からのすすり泣きは舞台にまで聞こえていたようだ。この公演、東京では「泣ける芝居」として話題になるのではないだろうか。
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コメント(2)
ここからは単なる感想。
この主人公の吉村貫一郎の事は子母沢寛の「新撰組三部作」の一つ「新撰組物語」で知っていた。浅田次郎の原作は未読。ちょっと前までは、新撰組の事ならまず子母沢寛の新撰組三部作を読むべし、だったのだが、今はそうでもないのだろうか。
子母沢寛の書き方では、この吉村貫一郎は、卑しい奴なのだ。金に汚い、とにかく、金、金、それしか考えていない感じなのだ。幕末は激動の時代、勤王の志士は列強の支配を避け新しい時代を作ると言う大義があった、新撰組は京警護と言う仕事があり、その為にちからを尽くした。勤王の志士は京を焼き払おうとしたが、それを阻止したのは新撰組である。
最後も、浅田次郎・石田昌也とは違って、子母沢寛の描く吉村は誠に情けない。鳥羽伏見の戦いの直前、幾ばく金が分配された。吉村はその金を早速故郷に送っている。その時隊士は五十六人、一人減っても目立った。伍長の島田魁（しまだかい）は、「吉村先生、脱走かと思いましたよ」と笑ったと言う。
大阪で大野を訪ねてはいるが、大野は吉村を卑しむような目付きで見たと言う。そして、今度は勤王に仕えたいと言う吉村に、武士の魂をもっていないとか、果ては、南部武士に吉村のような男がいたと言うのは我が藩末代までの恥、とまで大野は言っている。そして、切腹を勧めるのだが、その最期も本当情けなく、小刀と金を家に送ってくれと言う書き置きがあったと言う。
新撰組では、戦闘で死んだ隊士より、私闘や処刑で死んだ隊士の方が多かったと言う。処刑は主に切腹だが、切腹と言っても三種類あった。扇子腹と称して、切腹人が刀を撮る前に首を落とすもの。これは介錯人に人斬りの稽古をさせると言う目的もあった。次は介添え腹で、知人友人が」手助けするもの、最後は切腹人をうっちゃておくもの、これが一番残酷だっと言う。吉村も一人はらで、十畳の部屋を血だらけにして、悲惨をきわめた。これは、子母沢寛が実際に聞いた話だそうだ。
こういう事をしっているのだか、吉村貫一郎に全く感情移入できず、しらっとした感じで見ていた。なんとも情けない奴、としか思えない。介錯をして、なおも金をせびるところは、おまえはそれでも武士か、と言いたくなるくらいだ。だから、まわりですすり泣き、嗚咽が聞こえても、なんともない、しらじらとした気分になるだけ。
原作は未読だが、よく考えてみると、この情けない人物を悲劇の人に祭り上げる、浅田次郎、そして観客の涙を誘う石田昌也の筆力はたいしたものだと言えるのではないか。
この主人公の吉村貫一郎の事は子母沢寛の「新撰組三部作」の一つ「新撰組物語」で知っていた。浅田次郎の原作は未読。ちょっと前までは、新撰組の事ならまず子母沢寛の新撰組三部作を読むべし、だったのだが、今はそうでもないのだろうか。
子母沢寛の書き方では、この吉村貫一郎は、卑しい奴なのだ。金に汚い、とにかく、金、金、それしか考えていない感じなのだ。幕末は激動の時代、勤王の志士は列強の支配を避け新しい時代を作ると言う大義があった、新撰組は京警護と言う仕事があり、その為にちからを尽くした。勤王の志士は京を焼き払おうとしたが、それを阻止したのは新撰組である。
最後も、浅田次郎・石田昌也とは違って、子母沢寛の描く吉村は誠に情けない。鳥羽伏見の戦いの直前、幾ばく金が分配された。吉村はその金を早速故郷に送っている。その時隊士は五十六人、一人減っても目立った。伍長の島田魁（しまだかい）は、「吉村先生、脱走かと思いましたよ」と笑ったと言う。
大阪で大野を訪ねてはいるが、大野は吉村を卑しむような目付きで見たと言う。そして、今度は勤王に仕えたいと言う吉村に、武士の魂をもっていないとか、果ては、南部武士に吉村のような男がいたと言うのは我が藩末代までの恥、とまで大野は言っている。そして、切腹を勧めるのだが、その最期も本当情けなく、小刀と金を家に送ってくれと言う書き置きがあったと言う。
新撰組では、戦闘で死んだ隊士より、私闘や処刑で死んだ隊士の方が多かったと言う。処刑は主に切腹だが、切腹と言っても三種類あった。扇子腹と称して、切腹人が刀を撮る前に首を落とすもの。これは介錯人に人斬りの稽古をさせると言う目的もあった。次は介添え腹で、知人友人が」手助けするもの、最後は切腹人をうっちゃておくもの、これが一番残酷だっと言う。吉村も一人はらで、十畳の部屋を血だらけにして、悲惨をきわめた。これは、子母沢寛が実際に聞いた話だそうだ。
こういう事をしっているのだか、吉村貫一郎に全く感情移入できず、しらっとした感じで見ていた。なんとも情けない奴、としか思えない。介錯をして、なおも金をせびるところは、おまえはそれでも武士か、と言いたくなるくらいだ。だから、まわりですすり泣き、嗚咽が聞こえても、なんともない、しらじらとした気分になるだけ。
原作は未読だが、よく考えてみると、この情けない人物を悲劇の人に祭り上げる、浅田次郎、そして観客の涙を誘う石田昌也の筆力はたいしたものだと言えるのではないか。
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