宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「ファントム」

観劇日11月23日11:00開演　２階B席
今回雪組の「ファントム」は非常にチケットが取りにくかった。宝塚友の会の会員の発売日で、PCをリロードしまくってやっと取った。ここまで、取りにくいのはシステムが新しくなって初めてだ。

信頼の置けるweb情報（プロの劇評家）とか「ありがとう浜村淳です」と言うラジオ番組でも、今回のファントムは歌がとても良い、という情報は得ていたが、半信半疑だった。この劇評家はクラシック音楽の評論家ではないし、浜村淳は戦前から宝塚を見ている人だが、オペラを知っている人ではないし、話半分に聞いておけば良い、と思っていた。

それがどうだ。素晴らしい歌を聴かせてもらった。歌だけでなくオーケストラの演奏も素晴らしい。実はこの「ファントム」は以前宝塚でも東宝でも見ている。今回が一番良かった。

最初から行こう。宝塚版の「ファントム」はトンデモなところもあるが、それでも、大沢たかお主演の東宝版よりはまし、程度にしか思っていなかった。

緞帳が上がると、スクリーンに「PHANTOM」の文字が映し出される。今回、装置を一新したと言う事だが、映像も多用し、それが効果を上げている。指揮は御崎恵から佐々田愛一郎にかわった。序曲が始まる。今回、序曲も新しくなっていた。映像が動いて、月がファントムの仮面に変わり、オペラ座の地下へと向かっていく。それで、プロローグとなる。以前の演出では、古風な序曲の演奏の後、このプロローグとなる。だから、唐突に本編となんの関係もないプロローグがついている感がして、はっきり言ってトンデモだった。しかし、今回はこの場を出すだけの必然性があり、とても印象的になっている。

また、宝塚版で一番トンデモないのは、「カルメン」がオペラ座で上演される事になっている事。19世紀のパリ・オペラ座で「カルメン」が上演されているはずがない。「カルメン」は台詞を伴ったオペラであり、オペラ・コミークで初演されている。「カルメン」がパリ国立オペラ座のレパートリーに入るのは1959年の事だ。また、タイトルロールははメゾ・アルトである。プリマドンナが歌うようなオペラではない。しかし、今回の上演では、オーケストラを聴かせる為の方便として使われているのだと感じた。それくらい、今回のオーケストラは素晴らしい演奏を聞かせてくれる。勿論「闘牛士の歌」「セギディーリア」を元にした編曲もよく出来ている。特にこの場面の演奏は素晴らしい。このまま、コンサートで「カルメン組曲」を聞きたいと思わせるほどだ。佐々田愛一郎の指揮が素晴らしい。なにより良いのは、オーケストラに芝居をさせているところ。オーケストラが芝居の雰囲気を造り出している。やはり、ピットに入っているオケの演奏はこうでなければ。

今回一番関心したシーンは "The Bistro" 、ここはクリスティーヌ役の真彩希帆が歌う、言うなら「歌合戦の場」なのだが、オペラ歌手なみの技術が要求されるところ。特にコロラトゥーラ、高音はオペラ歌手ではないと歌えないと思っていた。今まで宝塚でも東宝でも満足のいく歌唱を聞いた事がなかった。しかし、今回は本当に満足出来た。低音域から高音域への経過がとてもなめらかで不自然さがない。それに、ベルカント唱法を自分のものにしているかのようなコロラトゥーラ・高音に舌をまいた。ここだけでも聞く値うちがある。このまま二期会でも藤原でもオペラの舞台に立てるのではないかとおもわれるほどだ。この舞台の成功のかなりの部分が彼女の歌唱と言えよう。

勿論、トップの望海風斗が素晴らしいのは言うまでもない。最初のナンバー、プロローグからして素晴らしい。この場に満足出来るのは、前述した演出だけでなく彼女の歌唱である。それに、第一幕でビストロでクリスティーヌが成功を収め、フィリップといい仲になる場があるが、その後で歌うファントムのソロが良い。彼女の成功を喜んではいるのだが、寂しさがよく表れていた。

主役二人の影響か、その他の登場人物の歌唱も素晴らしい。カルロッタは実に存在感のある歌を聴かせてくれる。ファントムには嫌われるが、パリ・オペラ座のプリマになろうとする人である。この歌を聞くとそれも納得できる。また、キャリエール、フィリップの二人の男役も満足する歌を聴かせくれた。特に感動的だったのは、第二幕のキャリエールとファントムの二重唱である。よく考えると、一番悪いのはキャリエールなのだが、あまりそうとは感じさせないのも良い。
とにかく、この「ファントム」は素晴らしい。チケット入手難なのもうなずける。