宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「グランド・ホテル」モン・パリ誕生90周年レビューロマン「カルーセル　輪舞曲」劇評

観劇日１月３日11:00開演　２階B席10列91番　端っこではあるがA席のすぐ後ろ

この公演、月組の新しいトップ珠城りょうのお披露目である。そして、塚版「グランド・ホテル」は涼風真世の退団公演として24年前に初演され、今回ひさびさの再演である。この作品もともと小説だが、映画になった。これは、グレタ・ガルボ、ジョーン・クロフォード、ジョン・バリモア、ライオネル・バリモア、など当時のMGMのオールスターキャストで制作され、１932年のアカデミー賞を受賞した。バリモア一族は役者の家系で、名優を次々と輩出した事と異性関係の派手さで有名である。

舞台は1928年ベルリンのグランド・ホテル、映画では最初に電話交換のシーンが出てきて舞台でもそれを思わせるシーンが出てくる。映画はスター総出演せいもあって、誰もが主役の一種の群集劇になっている。これをどのように宝塚のようなスターシステムに乗せるかが見どころなのだが、上手く行っている。

新トップの珠城りょうの役所はガイルゲン男爵、貴族とは名前だけで、文無しで犯罪にまで手を染めると言う役。今回ガイルゲン男爵を主役にするため、改変が加えられたと言う事だ。しかし、映画でも舞台でも一番良い役、おいしい役はオットー・クリンゲラインである。この役は、余命いくばくもない会計士で、実にカッコ悪い役である。しかし、演技派とか実力派と呼ばれる役者はこういう役を演るのが好きなのだ。だから、この役を貰った美弥るりかはトップよりおいしい役を貰った事になる。その結果、一番目立って一番良かったのは美弥るりかとなった。

娘役トップの愛希れいかの役は、何度目かの引退興行の最中でベルリンにいるバレリーナ、グルーシンスカヤ。映画よりも大切で良い役になっている。この舞台ではバレエのシーンがあるのが良い。今回、上手いなと感心したのは、グルーシンスカヤの付き人ラファエラ・オッタニオを演た暁千星である。とにかく歌が良い。それに、グルーシンスカヤとのただならぬ関係を匂わせるのが良い。なんせここは宝塚、本場であるのだから。それに「匂わせる」程度にしているのが品があって良い。

一番しんどい役を貰ったのが、ドクター・オッテルンシュラーグ役の夏美よう。眼帯をし、顔の半分を湿布のようなもので覆っている。ほとんど出ずっぱりで、言うなら狂言廻しになっている役だ。しどこのない時も、下手の椅子に座りっぱなし。その役の顔でずっといるのは流石だが、さぞ疲れる事だろう。専科からは華形ひかるも呼んでブライジングを演ってもらった。貫禄十分でなかなか好演。ただ、タイピストのフリーダ・フラム役の早乙女わかばがイマイチ。これジョーン・クロフォードが演った役。役をもう一つ生かし切れていない。

特筆すべきはこの演出。宝塚大劇場は数々のセリ、廻り舞台があり、それを生かし豪華な装置が数々出てくるのだが、今回ほどんど舞台は一杯である。椅子など道具の出し入れは出演者がおこなう。それに、数人の主要キャスト以外は全てちょい役扱い。ダンスのシーンがあるが、男女が組んで踊っているようにみせかけて実は一人で踊っているのが面白い。ある意味で、非常に贅沢な演出と言えよう。

最後に短いフィナーレが着くが、蛇足の感がある。なにもこんな時にフィナーレをつけなくとも、この後レビューがあるのだから。

今回のレビューは、「モン・パリ誕生90周年」とうたっている。だから、「モン・パリ」が多々出てくるのだが、それだけ。なんとも眠いレビューとなった。ま、寝ていられると言う事は、寝てもいられないほどひどくなかったと言う事だろう。指揮は、「グランド・ホテル」、レビューとも上垣聡。今回、サックスの甘い音とトランペットの柔らかい音が印象に残った。