宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「バレンシアの熱い花」「HOT EYES」劇評

宝塚歌劇団宙組の地方巡業公演を梅田芸術劇場で見てきた。

観劇日11月19日16:30開演　B席３階３列11番　結構良い席である

大劇場で「新・源氏物語」を見てから柴田侑宏の作品にはまっている。今回の「バレンシアの熱い花」も柴田作品、しかも結構古い作品である。1976年、榛名由梨・瀬戸内美八・順みつき・小松美保・舞小雪・北原千琴で初演されている。再演はずっと後、2007年大和悠河主演の宙組大劇場で、同年巡業でも上演されている。

今回の配役は

フェルナンド・・・・・朝夏まなと
ラモン・・・・・・・・真風涼帆
ロドリーゴ・・・・・・澄輝さやと
イザベラ・・・・・・・怜美うらら
シルヴィア・・・・・・遙羽らら
マルガリータ・・・・・星風まどか

最後の幕が降りる時、本当に良く出来た芝居だと感じた。まさに作劇術のお手本のような作品である。舞台は19世紀初頭のスペイン、幕開きはバレンシアの男と女の歌と踊りで始まる。見ていると、ヨーロッパ調のモダンな物語のような感じがする。

しかし、登場人物はと言うと、

婚約者をひたすら待ち続ける清純な乙女、身分違いの恋を諦め自分から身を引く女、金の為親兄弟の為好きな男がいるのに意にそぐわぬ結婚をしその男が忘れられない女、

それに、中心になっている物語は、親の敵討ち。

これ、今まで何回となく見てきた話ではないか。そんな新派みたいな話を、19世紀スペインと言う新しい器に入れたのがこの芝居。

僕はそれが悪いと言っているのではない。古い酒を新しい革袋に入れたのがこの芝居の成功の原因だと言っているのだ。

それに主役陣６人はそれぞれの役にぴったりはまっている。その上、敵役のルカーノ伯爵の寿つかさがなかなか立派だった。芝居は敵役が良くなければつまらない。それに、レオン将軍の松風輝、セレルティーナ公爵夫人の純矢ちとせが上手い。全体としてとても充実した出来になっていた。

これに続くショーは「HOT EYES」。今年の大劇場お正月公演で見たショーである。大劇場の時の売りは、大階段が最初から最後まで出ずっぱりです、だった。しかし、僕に言わせればこれは失敗。あんな大きなものがでーんとあるからかえって単調になった、

しかし、ここは梅芸、作演出の藤井大介がプログラムに書いている通り大階段もムービングライトも使えない。しかし、藤井大介はこの事を逆手にとって素晴らしいショーに仕立てた。たいてい大劇場で見たショーを巡業で見ると、見劣りがする。しかし、今回はそんな事はない、かえって大劇場の時より良いくらいだ。勿論、音楽は録音である。録音指揮は大谷木靖。大劇場の時より、完成度の高い演奏になっているのかと思えるような出来だった。しかし、録音は録音、生演奏のような迫力はない。

また、巡業の梅芸公演でショーを見ると空間がスカスカになるのだが、今回はそうならなかった。今回は演出の勝利であろう。それに、演出助手は今年大劇場デビューをはたした野口幸作が担当している。彼の功績もかなりあるのではないかと思う。

ただ、客席降りが結構あるのだ。その間、二階席、三階席は置いておかれる。ここがつらい。別に客席降りがあっても良いが、その間二階三階が置いておかれない工夫が欲しい所だ。

最後のパレードは、階段の段数が少ないから三階からでも全部見られる。それにトップが階段に立ちスポットが当たるその瞬間、大劇場と同じような感動を覚えた。