宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「るろうに剣心」劇評

観劇日２月20日15:00開演　２階B席13列52番

この塚版「るろ剣」は凄い人気だ。大劇場公演、東京公演共に早々に売り切れている。僕が見た日も立ち見が出ていた。

席に着きオケボックスを覗くとモニタらしきものが見える。始まると和楽器を多用しているが、もしかしたら和楽器はすべてシンセなのかも。指揮は佐々田愛一郎。

「るろ剣」は実写の映画になった時たいへん話題になった。それがDVDになった時みたが結構面白かった。この塚版では、原作に出てこない人物が出てくる。それは新撰組剣士の加納惣三郎。子母澤寛の「新撰組物語」では大変な美剣士で、衆道の対象になったとか。大島渚が監督した「御法度」の重要人物である。これは新撰組隊士間の男色を描いた映画で、僕に言わせれば男同時のベッドシーンを描けなかった腰抜けホモ映画である。だから、この舞台を見るまでは、もしかして剣心と神谷薫と加納惣三郎の三角関係かと思った。

舞台は幕末から始まる。ここで「人斬り抜刀斎」と呼ばれた剣心の剣豪ぶりをよく見せている。刀と刀がぶつかる時に派手な音が出る。まるで「新感線」の舞台のようだ。しかし、新感線の影響はこれくらで、潤色・脚色・演出の小池修一郎は見事に宝塚の作品に仕上げている、第一級のエンターテインメントに仕上がっていた。この舞台では加納惣三郎は、島原の大夫（京の島原では「大夫」と書いて「こったい」と読ませている）を身請けしようとしている。幕末から明治になるまで約15分、短く的確にまとめている。映像を多用した舞台は小池が得意とする所。

物語は映画とほぼ同じである。映画で最大の悪役は武田観柳であるが、この舞台では加納惣三郎がその上を行く敵役になっている。プログラムによると、小池は二番手にさせる役が原作に見当たらなくてこの役を新しく追加したとか。演じる望海風斗は見事に期待に応えている。そのプログラムだが、縦書きになっている。今回の公演はかなり「和」を意識しているのかも知れないが、実際はそうでもない。明治期だから洋装の登場人物も多い。後半からは洋館が舞台となる。小池が和物を手がけるのは今回が初めてとか。だから、だろうか、今まで見てきたような「和物」と言う感じがしない。あくまで「るろうに剣心」の世界である。特に、廻り舞台を使うダイナミックな演出は小池の得意とする所で、見事な効果を上げている。

早霧せいなの剣心は映画の佐藤健にひけをとらない。見事な塚版剣心になっている。咲妃みゆは神谷薫。女剣士らしい、りりしい所と優しい所を両方みごとに表現している。それに高荷恵役の大湖せしるが公演である。

アクション中心の舞台ではあるが、最後にちゃんと恋愛をもってくる事が流石宝塚。十分楽しめる舞台に仕上がっていた。