宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「舞音（マノン）」「GOLDEN JAZZ」劇評

観劇日11月29日（日）15:00開演　２階B席11列81番

日曜日と言う事でたぶん満席。座席についてプログラムを開いて驚いた。指揮が塩田明弘。そう、あの有名なミュージカル指揮者塩田明弘が宝塚大劇場で振ってくれる。僕が彼の演奏を聞くのは2013年のベルばらフェルゼン編以来である。

そうこうする内に開演である。最初は「舞音」、最初に指揮者に拍手、させない演出だった。折角来てくれたのに残念。塩田の音作りは精妙、素晴らしい演奏だった。今回は外部からの参加が多い。特に良いのが音楽の Joy Son である。今回「マノン・レスコー」を1929年のベトナムに設定を移している。ベトナムの民族楽器・民族音楽が上手く使われている。

良いのはここまで。植田景子は去年の「オセロー」に続き、今回も出来が良くない。もっとも前作ほどの駄作ではないが。時代場所を1929年のベトナムに移たのは良いが、そこまで。最大の欠点はマノンと言う女が描けて無いことである。マノンは最初高級娼婦で、シャルルは彼女の気まぐれで一夜を過ごしただけ、と言う感じなのだが、何故、シャルル一途になるのかが、はっきり示されていない。だから、何故シャルル（原作の騎士デ・グリュー）がこれほどまでにマノンに惹かれるのかが曖昧になっている。また、今回シャルルは「二人一役」となっている。最初はサイゴンの港、純白の軍服に軍帽の青年将校が出てくる。これが龍真咲かと思えば、美弥るりか。宝塚版の「風と共に去りぬ」のスカーレットと同じような設定でどのような展開になるのか楽しみだったが、それが十分生かし切れてない。そのもう一人のシャルルは台詞は最後の一言だけ、それ以外は踊りで心情を示すと言う意欲的で、おいしい役ではあるが、ドラマの効果を上げてるとは言えない。

マノンが流刑地へと連行されて行く所で、ベトナム民謡を歌う。それに人々が唱和し、大合唱になる所は感動的である。1929年のベトナムに舞台を移したのはこれがやりたかったのか。最後の悲劇で終わる所は原作通り。このシーンはなかなか美しい。

歌唱はどれも不満が残る。ことごとく音程がだだ下がり。もう、ため息しか出ない。

それでも結構見ていられた。それは音楽の Joy Son、指揮者の塩田明弘、それにオーケストラの好演による。僕の席からは、フルート奏者はピッコロとバス・フルートを持ち替えているのが見えた。

ショーは「GOLDEN JAZZ」、今回結構楽しめた。今回、指揮は芝居に引き続き塩田明弘である。このショーの幕開きでやっと塩田に拍手を送る事がで来た。ショーになると、塩田の指揮はもっと情熱的になってくる。素晴らしい演奏だった。

幕開きは、花道に三人がバケツをドラムに見立てて叩く所から始まる。そして「聖者の行進」となって華やかに幕を開ける。今回、観客参加型だった。ミニ・タンバリン（有料で販売）をたたいて参加して下さい、との事。宝塚のwebサイトには振り付けの動画がupされ、同じ動画をロビーでも映していた。それに、場内アナウンスで再三にわたって、他の観客の迷惑にならないように、静な場面ではタンバリンをたたかないように、との注意があった。

ただ、こんな狭い中で踊れと言われても、困る。タンバリンも結構高価。それでも、結構楽しめた。良かったのは「Sing, Sing, Sing」ジャズの名曲を見事にショーにしている。それに生演奏ではなかったが、アフリカのシーンが面白かった。又、黒燕尾の代わりに黒いスーツに、赤い縦縞のシャツ、シルバーグレーのネクタイ、と言うのがなかなか面白かった。

エトワールはこの星条海斗、この人の歌が一番良かった。結局今回一番良かったのは塩田明弘指揮と宝塚オーケストラだった。