宝塚が好き！（Gay Only）コミュの宝塚歌劇「ガイズ&ドールズ」劇評

古き良き時代のブロードウェイ・ミュージカル、そんな言葉がぴったりの作品であった。

今回、２回見た。一回目は、８月29日（土）15:00開演　B席２階14列71番　VISAと宝塚友の会の貸し切り公演だった。２回目は９月13日（日）11:00開演　B席２階15列64番　今度はセディナの貸し切り公演である。

この演目、宝塚では三度目ではあるが、権利関係が難しいとか版権が高いとかで、あまり上演されない。ブロードウェイ初演は1950年、作詞・作曲：フランク・レッサー（Loesser ドイツ系？）、台本：ジョー・スワーリング/エイブ・バローズ、でトニー賞を取っている。又邦題「野郎どもと女たち」と言う名前で映画にもなり、ゴールデン・グローブ賞を取っている。

プログラムに脚色・演出の酒井澄夫が次のような意味の事を述べている。ニューヨークでこの作品のプロモーターに会ったとき、彼から、この作品においては演出家はなにも心配することはない、役者が台詞をしゃべるだけで３行に一回は笑いが起きる、と言われた。でも、ますます不安になった。ジョークの感覚はアメリカ人と日本人とでは全く違うから。

しかし、実際見てみると、軽妙洒脱な台詞・歌詞で多いに楽しめた。もう一度プログラムを見直すと、翻訳：青井陽次・訳詞：岩谷時子。この舞台がこれほど面白いのはこの二人の力がかなりの物だっただろうと言う事は容易に推測できる。

今回、オーケストラはほとんどマイク・スピーカー等の拡声装置を使わない。生の音が楽しめる。このオケと指揮者佐々田愛一郎の実力が多いに発揮されている。ただ、楽曲の性質上であろうか、菅に比べて弦がいささか弱いように思われる。

最初から見ていこう。幕開きは新トップ北翔海莉のソロから始まる。見たことはないがブロードウェイ版では、幕を閉めたまま序曲の演奏から始まるのだろう。しかし、この塚版は幕を開け、序曲も群衆シーンで楽しませてくれる。宝塚ならではの心憎い演出である。

序曲が終わると三人男のナンバーから始まる。後のブロードウェイミュージカルでは三人娘が狂言回しの役割を担う物が数々出てくるが、ここでは三人男。ここで全体の雰囲気がわかる。専科の美城れんが好演。

第一幕で特に面白いのが、ネイサン（紅ゆずる）とジョーイ・ビルモア（十碧れいや）が電話で話すシーン。上手花道の電話ボックスにネイサンが、下手花道の事務所にビルモアがいて電話で話す。これは宝塚ならでわの演出で面白い。

ナイトクラブのシーン、ハバナのクラブのシーンでは、オーケストラが大活躍する。ここも聞き所、それに勿論本舞台でのダンスは見どころである。

主演の北翔海莉が存分な存在感を見せるのが第一幕幕切れである。どんどん装置が引っ込み、あるのは背景くらいなものとなるほどんど空の舞台を一人で持たせる事が出来る宝塚のトップの実力を十分見せて余すところがない。特に、背中を見せて幕が下りる所は圧巻である。

僕が見たのは両方ともカード会社の貸し切り公演。だから、「支払いはVIZAカードで」とか「セディナカードで払うよ」なんてアドリブが面白い。

第二幕幕開きは、いきなりミラーボールが出てくる。ここもブロードウェイ版なら第二幕への前奏曲があってすぐ幕が開く所だろう。第二幕で感心したのは下水道のシーンである。ここの装置、と言うか書き割りが良く出来ている。本当に配管がうねっているように見えるのだ。

新トップの北翔海莉は素晴らしい。帽子のかぶり方、身のこなし方、気障ったらしいくらいだが、粋である。存在感は十分だ。相手の娘役新トップの妃海風は可憐な感じだが、これまた十分達者な演技・歌である。

それから、十輝いりすが面白い。白いロングコート姿はかっこよくて粋だが、クマのぬいぐるみを手放せない。そんな滑稽な所を照れも悪びれもせず真面目に見せているのがかえって滑稽に見える。

最期はブロードウェイらしく予定調和の内に終わる。そこが「古き良き」時代の娯楽、こういうものもあっても良い、と思わせる。最初に見た時はVIZA・宝塚友の会の貸し切りで最初と最期に挨拶があった。2回目はセディナの貸し切りだったが、そのようなものはなく、最期に幕が下りた後、少しオケが演奏してくれた。これば僕にとってはとても嬉しかった。まさしく「ブラボー」であった。