宝塚が好き！（Gay Only）コミュの劇評「星逢一夜（ほしあいひとよ）」「La Esmeralda」

上田久美子は大劇場デビューをなんとも切ない作品で飾った。

観劇日７月26日11:00開演　B席　２階11列91番

時代劇、演じるのは「和物の雪組」、舞台は九州だが、出てくる三日月藩も登場人物も徳川吉宗以外はすべて架空の人物である。それに面白いのは登場人物が10歳から全ての年代を一人で演じる。つまり、いつものよう子供時代は別の一が演じる、と言う事ではない。又、三日月藩主天野家の紋が三日月に三つ星と言うのも面白い。

九州は三日月藩の跡取り、晴興（早霧せいな）は妾腹の子で、星の観測がなによりも好き。農民の子と遊ぶような子供時代を過ごす。しかし、兄が死去したため跡取りとなり、江戸へ行く。そこで将軍吉宗に目を掛けられとんとん拍子に出世するが、、、、と言う話。

百姓に混じって少年自体の晴興が星の観測をするところがなかなか面白い。低く見えるつばくろ星、と言うのはカノープスの事かと思ったがそうでもないらしい。ここで晴興が天文に通じている事をよく表している。

身分違いの恋、登場人物は皆良かれと思ってやっている事が裏目に出てしまう。これまで散々見てきたような話だが、陳腐にならず、切ない話にした上田は見事である。客席からすすり泣きの声が聞こえ、目頭をハンカチでぬぐう人がちらほらみうけられる。

演出で上手いと思ったのが、星祭りの場。暗転中、蛍（？）の光が出てきて、照明がともると、銀橋・本舞台とも勢揃いで星祭りの歌になる。

出演者では英真なおきの吉宗が見事。貫禄十分で、この人が出る事で舞台が締まる。また、その吉宗の姪を演じる大湖せしるが踊る所があるが、そこが見事である、裾を引いた着物をあの床で見事にさばいている。

それに、早霧せいな、咲妃みゆ、望海風斗の三人の間が見事である。しかし、歌はもう少しなんとかならないか。最後のシーンを見て、何故子供時代からずっと一人が演じているのかよくわかった。

毎度の事ながら、佐々田愛一郎指揮の宝塚オーケストラの演奏は精妙であった。特に弦と木管が切なさを良く出していた。

今回のショーは斎藤吉正作で、バイレ・ロマンティコ「La Esmmeralda」と称している。一種のラテンものらしい。僕が面白かったのは、懐かしい曲が出てきたこと。尾藤イサオでよく知っている「Don't Let Me Be Misunderstood（邦題：悲しき願い）」とか、ザ・テンプターズの「エメラルドの伝説」が出てきてとても懐かしく嬉しかった。

それに今回、燕尾服は黒ではなく白でちょっと色がついていた。ショーにも英真なおきが出てきて歌ってくれたのが嬉しい。

ただただ切ない芝居に対して、これはなんとも熱いショーであった。芝居とショーのバランスが良くて十分堪能出来る内容になっている。