初めまして、
大劇場〜東京さえも〜未入手の〜哀れなやっちゃん〜可哀想ですよね〜
誰か〜チケ
ット等價（倫理）で讓って〜
みりおちゃんトート觀たいよ〜
とにかく凄い人気である。僕が見たのは９月14日（日）11時開演の部。10時半頃入ると、職員が「15時開演の当日券お求めの方はこちらに並んでください」と呼びかけていた。見ると凄い行列。
終演後、玄関付近でカメラを出そうと鞄をごそごそ探していると人が寄ってきて、「券余ってませんか」ですって。紛らわしい事してごめんなさい、と謝って早々に帰ってきた。
席はB席 ２階13列L４番 端っこだけど、前の方だしよく見えた。
今回は花組の新しいトップ明日海りおのお披露目興業兼トップ娘役蘭乃はなのさよなら興業でもある。
基本的には以前見た公演、月組と同じ。
そう、つまり、Harry Kupfer（ハリー・クプファー）がいかに偉大な演出家であるかウィーン版が流石にオリジナルだけあって凄いか、と言うことを再認識した、と言う結果に終わった。
毎度によって毎度の如く、誤訳・間違いが多い。初演からずっと「黄泉の帝王トート閣下」と言っている。帝王に対する尊称が「閣下」では非常に失礼であると指摘する人はいないのだろうか。ドイツ語云々以前の問題である。
最初から見ていこう。プロローグはウィーン初演の時と同じ形式を取っている。それはそれでかまわない。それにヒロイン・エリザベートの登場シーンもウィーン版より印象的である。それに今回黒天使（死の天使）と共にしろずくめの人物が出てきたがこれはプログラムによると「彫像」だそうだ。
塚版の特徴の一つに、説明が多いと言うことが上げられる。これだけ、何回も上演してるのだからもうわかりきっているので、僕はわずらわしく感じるが、子供も見るのでこれはこれで良いのだろう。
ちょっと変なのが、エリザベートのアリア「Ich gehoer' nur mir(私は私だけのもの・私だけに）」(注：原文・和訳・現行表示の順に表記する。また、文字化けを防ぐ為、ウムラウトは ae oe ue エスツェットは ss で表記する）の所。エリザベートが自殺を思い留まる。まぁ、ここで死んでしまっては話が終わってしまうが、彼女はそこまでヤワじゃない。最初の「Wie du (パパみたいに）」でわかるように、彼女は貴族の娘でありながらかなり自由に育った強い女なのだ。ちなみ、この「パパみたいに」と言う訳は良く出来ている。
ハンガリーのシーンでエリザベートが三色旗のドレスを見せるのは日本語版の面白い所。これで、彼女が政治にも関心を示していた事がわかる。それから、カフェのシーンで、壁にロートレックとミュシャのポスターが飾ってあるのも面白い。
更衣室のシーンで皇后は美容にさえ気を遣っていれば良いと言うことをもう少し強調するべきであろう。そうでなけでは、第二幕で各地を放浪したり息子の箴言を受け入れないシーンとつながらない。そして幕切れ。衣装はあのWinterhalterが描いた肖像画そのままで出てくるエリザベートは輝くばかりに美しい。ラスト銀橋で「エリザベート、愛している」と今回はトートが「歌って」くれたので失笑せずに済んだ。愛してるはないだろう。ここでのトートは悔しがっているのだ。
と言うことで第二幕へ続く。
終演後、玄関付近でカメラを出そうと鞄をごそごそ探していると人が寄ってきて、「券余ってませんか」ですって。紛らわしい事してごめんなさい、と謝って早々に帰ってきた。
席はB席 ２階13列L４番 端っこだけど、前の方だしよく見えた。
今回は花組の新しいトップ明日海りおのお披露目興業兼トップ娘役蘭乃はなのさよなら興業でもある。
基本的には以前見た公演、月組と同じ。
そう、つまり、Harry Kupfer（ハリー・クプファー）がいかに偉大な演出家であるかウィーン版が流石にオリジナルだけあって凄いか、と言うことを再認識した、と言う結果に終わった。
毎度によって毎度の如く、誤訳・間違いが多い。初演からずっと「黄泉の帝王トート閣下」と言っている。帝王に対する尊称が「閣下」では非常に失礼であると指摘する人はいないのだろうか。ドイツ語云々以前の問題である。
最初から見ていこう。プロローグはウィーン初演の時と同じ形式を取っている。それはそれでかまわない。それにヒロイン・エリザベートの登場シーンもウィーン版より印象的である。それに今回黒天使（死の天使）と共にしろずくめの人物が出てきたがこれはプログラムによると「彫像」だそうだ。
塚版の特徴の一つに、説明が多いと言うことが上げられる。これだけ、何回も上演してるのだからもうわかりきっているので、僕はわずらわしく感じるが、子供も見るのでこれはこれで良いのだろう。
ちょっと変なのが、エリザベートのアリア「Ich gehoer' nur mir(私は私だけのもの・私だけに）」(注：原文・和訳・現行表示の順に表記する。また、文字化けを防ぐ為、ウムラウトは ae oe ue エスツェットは ss で表記する）の所。エリザベートが自殺を思い留まる。まぁ、ここで死んでしまっては話が終わってしまうが、彼女はそこまでヤワじゃない。最初の「Wie du (パパみたいに）」でわかるように、彼女は貴族の娘でありながらかなり自由に育った強い女なのだ。ちなみ、この「パパみたいに」と言う訳は良く出来ている。
ハンガリーのシーンでエリザベートが三色旗のドレスを見せるのは日本語版の面白い所。これで、彼女が政治にも関心を示していた事がわかる。それから、カフェのシーンで、壁にロートレックとミュシャのポスターが飾ってあるのも面白い。
更衣室のシーンで皇后は美容にさえ気を遣っていれば良いと言うことをもう少し強調するべきであろう。そうでなけでは、第二幕で各地を放浪したり息子の箴言を受け入れないシーンとつながらない。そして幕切れ。衣装はあのWinterhalterが描いた肖像画そのままで出てくるエリザベートは輝くばかりに美しい。ラスト銀橋で「エリザベート、愛している」と今回はトートが「歌って」くれたので失笑せずに済んだ。愛してるはないだろう。ここでのトートは悔しがっているのだ。
と言うことで第二幕へ続く。
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コメント(5)
で、第二幕。
最初のナンバーは "Kitsch" 、あまりにトンデモない展開に失笑を禁じ得なかった。よくこれだけぶっ飛んだ発想が出来ると感心する。"kitsch" とは”偽物”、それも土産物のように誰が見てもこれは偽物だとわかるような偽物。「フェイク」や「レプリカ」とは違います。
以前から "Wenn ich tanzen will" を「私が踊る時」と訳すのは誤訳と指摘してきたが、今回見てそれでも
良いかと思った。それは "wollen" の意味するところがかなり抜け落ちているからだ。カットされた部分は、エリザベートのソロの所、そこが無いからもう一つ、エリザベートの自立が曖昧になる。
宝塚には「すみれコード」なるものが存在するらしい。だからエリザベートが梅毒に感染すると言うことが
わかる、というところがダイエットのしすぎと言うことになっている、との事だった。それに関わるシーンの改変はこれが原因との事だ。その為、全体が "kitsch" になったしまった。
「マダムヴォルフの部屋」は元々、皇帝をそんな「いかがわしい場所」に連れて行けないから、側近が女を見繕ってくると言う設定になっている。宮殿に淫売宿を「取り寄せ」とか「宅配」する方が不道徳ではないか。娼婦と一緒に部屋に入る所をルキーニが写真に撮り、その写真をトートがエリザベートに見せると言う話になっている。そこで、"kisch" の設定が生きてくる、と小池は言いたいらしいが、なにもそこまですることはない。ウィーン版でも「フランス病」と匂わす程度にしている。もっともこの時代「フランス病」と言う言い方がはっきりした言い方だが、現在の日本では「匂わす」程度の言い方になっている。それに、芝居の中ではっきり言わなくても匂わす程度で観客はわかるものだ。
第二幕で大切なナンバーの一つに、病院のシーンで歌われる"Nichts, nichts, gar nichts" があるが原型をとどめないくらいカットされている。これは、第一幕終わりから第二幕始めで勝利を収めたエリザベートが、それまでして自分が手に入れた物は何だったのか、何も無い、と歌う。第一幕の "Ich gehoer' nur mir" と対称的になっている。ここがカットされている為、物語の厚みが失われた。それに、ルドルフを失ったエリザベートがトートに連れて行ってくれを願う所、結局トートは、まだ私を愛していない、と拒むのだが、その時「死は逃げ場ではない」と言う。ここも失笑を禁じ得ない。なにもそこまで教えてくれなくても観客はどんな場面か良く理解している。
そんな「迷」シーンが続く中で、ウィーン版より良く出来ている「名」シーンが出てくる。それは「夜のボート」。ここは本当に切ない。皇帝もエリザベートもお互い愛し合っているのだが、お互いの思いがすれ違う。遠景にむつまじい老夫婦、近景にエリザベートと皇帝をおいてその対比を見せる。音楽は二人が最初に愛を誓うシーンと同じ。素晴らしい出来である。
出演者の出来はと言うと、一番良いなと思ったのは北翔海莉、安定した歌唱、卓越した表現力は申し分ない。勿論、明日海りおも良い。それ以外は、音程のぶら下がりが目立つ人が多い。今回専科から、マックス公爵と、皇帝に人を呼んでいる。エリザベートの父親役を専科から呼ぶのは良いとして、皇太后を専科から呼んで方が良かった。桜一花の皇太后は悪くはないものの、この人になにも老け役をやらせなくても良いではないか。
今回の公演で一番素晴らしいと評価したいのは、指揮者とオーケストラである。指揮は佐々田愛一郎。今までこの人の棒でいろいろ聞いていたが、今回が一番素晴らしい。この様なミュージカルの大曲ではこの人でなくては勤まらないだろう。トンデモな演出、もう一つ音楽的に弱い出演者、にも関わらず最後まで見られるのは、音楽監督・指揮者・オーケストラが上手いからだ。特に良かったのは、フィナーレ、それも、ロケットが終わってからパレードまでの間。僕は舞台そっちのけでオーケストラボックスばかり見ていた。最後の幕が下りたとき、ブラボー・佐々田！と叫びたいくらいだった。このオーケストラ、指揮者でコンサートをやって欲しいくらいだ。
最初のナンバーは "Kitsch" 、あまりにトンデモない展開に失笑を禁じ得なかった。よくこれだけぶっ飛んだ発想が出来ると感心する。"kitsch" とは”偽物”、それも土産物のように誰が見てもこれは偽物だとわかるような偽物。「フェイク」や「レプリカ」とは違います。
以前から "Wenn ich tanzen will" を「私が踊る時」と訳すのは誤訳と指摘してきたが、今回見てそれでも
良いかと思った。それは "wollen" の意味するところがかなり抜け落ちているからだ。カットされた部分は、エリザベートのソロの所、そこが無いからもう一つ、エリザベートの自立が曖昧になる。
宝塚には「すみれコード」なるものが存在するらしい。だからエリザベートが梅毒に感染すると言うことが
わかる、というところがダイエットのしすぎと言うことになっている、との事だった。それに関わるシーンの改変はこれが原因との事だ。その為、全体が "kitsch" になったしまった。
「マダムヴォルフの部屋」は元々、皇帝をそんな「いかがわしい場所」に連れて行けないから、側近が女を見繕ってくると言う設定になっている。宮殿に淫売宿を「取り寄せ」とか「宅配」する方が不道徳ではないか。娼婦と一緒に部屋に入る所をルキーニが写真に撮り、その写真をトートがエリザベートに見せると言う話になっている。そこで、"kisch" の設定が生きてくる、と小池は言いたいらしいが、なにもそこまですることはない。ウィーン版でも「フランス病」と匂わす程度にしている。もっともこの時代「フランス病」と言う言い方がはっきりした言い方だが、現在の日本では「匂わす」程度の言い方になっている。それに、芝居の中ではっきり言わなくても匂わす程度で観客はわかるものだ。
第二幕で大切なナンバーの一つに、病院のシーンで歌われる"Nichts, nichts, gar nichts" があるが原型をとどめないくらいカットされている。これは、第一幕終わりから第二幕始めで勝利を収めたエリザベートが、それまでして自分が手に入れた物は何だったのか、何も無い、と歌う。第一幕の "Ich gehoer' nur mir" と対称的になっている。ここがカットされている為、物語の厚みが失われた。それに、ルドルフを失ったエリザベートがトートに連れて行ってくれを願う所、結局トートは、まだ私を愛していない、と拒むのだが、その時「死は逃げ場ではない」と言う。ここも失笑を禁じ得ない。なにもそこまで教えてくれなくても観客はどんな場面か良く理解している。
そんな「迷」シーンが続く中で、ウィーン版より良く出来ている「名」シーンが出てくる。それは「夜のボート」。ここは本当に切ない。皇帝もエリザベートもお互い愛し合っているのだが、お互いの思いがすれ違う。遠景にむつまじい老夫婦、近景にエリザベートと皇帝をおいてその対比を見せる。音楽は二人が最初に愛を誓うシーンと同じ。素晴らしい出来である。
出演者の出来はと言うと、一番良いなと思ったのは北翔海莉、安定した歌唱、卓越した表現力は申し分ない。勿論、明日海りおも良い。それ以外は、音程のぶら下がりが目立つ人が多い。今回専科から、マックス公爵と、皇帝に人を呼んでいる。エリザベートの父親役を専科から呼ぶのは良いとして、皇太后を専科から呼んで方が良かった。桜一花の皇太后は悪くはないものの、この人になにも老け役をやらせなくても良いではないか。
今回の公演で一番素晴らしいと評価したいのは、指揮者とオーケストラである。指揮は佐々田愛一郎。今までこの人の棒でいろいろ聞いていたが、今回が一番素晴らしい。この様なミュージカルの大曲ではこの人でなくては勤まらないだろう。トンデモな演出、もう一つ音楽的に弱い出演者、にも関わらず最後まで見られるのは、音楽監督・指揮者・オーケストラが上手いからだ。特に良かったのは、フィナーレ、それも、ロケットが終わってからパレードまでの間。僕は舞台そっちのけでオーケストラボックスばかり見ていた。最後の幕が下りたとき、ブラボー・佐々田！と叫びたいくらいだった。このオーケストラ、指揮者でコンサートをやって欲しいくらいだ。
偶然youtubeで1998年ウィー版 "Elisabeth" の第一幕幕切れのシーンを見た。この時は、エリーザベトと皇帝しか出てこない。これを見ると、ここに死神が出てくる劇的必然性の無い事がよくわかる。その事に寄って、宝塚版では何故ここに死神が出てくるのかがよくわかった。
では、何故宝塚版ではここに死神（トート）が出てくるのか。それは宝塚歌劇ではトートが主役でトップスターが演じる為、ここに出さなければならないから。つまり劇的必然性ではなくて宝塚歌劇の約束事に従って出てくるのだ。又、宝塚版のトートが何故最後に「エリザベート、愛している」と言うのか。それは宝塚歌劇には恋愛がつきものだと言う約束事の為だ。その典型的な例が、この間の「王妃の館」、最後にとってつけたな恋愛話が出てくる。恋愛を匂わせているだけにとどめている「幕末太陽傳」の方が好感を持てる。
その約束事がウィーン版に刺激を与えてウィーン版の第一幕幕切れにも死神が出てくるようになった。ただエッセン版のト書きでは、鏡の中に「死」姿が現れる、となっている。そして「死」はこう言う、「今日この目が見る物は明日には過去になる。おまえの視線の行く先がわたしの方になるのは時間の問題だ。おまえはわたしだけのもの」
Kunze氏の書く詞は哲学的でなんともわかりにくいが、要するに、今はエリザベートは皇帝の方に向いているが、必ずいつかは自分の方に向くようになる、と言っている。
つまり、「約束事」が支配するのが宝塚版、哲学的なのがウィーン版と言えるだろう。
では、何故宝塚版ではここに死神（トート）が出てくるのか。それは宝塚歌劇ではトートが主役でトップスターが演じる為、ここに出さなければならないから。つまり劇的必然性ではなくて宝塚歌劇の約束事に従って出てくるのだ。又、宝塚版のトートが何故最後に「エリザベート、愛している」と言うのか。それは宝塚歌劇には恋愛がつきものだと言う約束事の為だ。その典型的な例が、この間の「王妃の館」、最後にとってつけたな恋愛話が出てくる。恋愛を匂わせているだけにとどめている「幕末太陽傳」の方が好感を持てる。
その約束事がウィーン版に刺激を与えてウィーン版の第一幕幕切れにも死神が出てくるようになった。ただエッセン版のト書きでは、鏡の中に「死」姿が現れる、となっている。そして「死」はこう言う、「今日この目が見る物は明日には過去になる。おまえの視線の行く先がわたしの方になるのは時間の問題だ。おまえはわたしだけのもの」
Kunze氏の書く詞は哲学的でなんともわかりにくいが、要するに、今はエリザベートは皇帝の方に向いているが、必ずいつかは自分の方に向くようになる、と言っている。
つまり、「約束事」が支配するのが宝塚版、哲学的なのがウィーン版と言えるだろう。
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