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コメント(112)
>>[73]
そのリンクと話がそれますが、私が投稿するそもそもの動機についてから。
それは一口に言って＜哲人＞政治家出現に期待するからです。
選挙（国政）と言えば投票率とか一票の格差だけが議論されているように見えます。愚かなことです。候補者に有能な人材がいないことの方がはるかに重大です。候補者にいないので当然、当選者にもいない。
そのような人材を生み出し、候補者として推挙する国民の総合的＜政治参加能力＞を高めることこそ現下の急務でしょう。
手元にある1939年出版の本で、或る人はこう書いています。
要するに我々は現在の段階にあって一人前の政治家、一人前の哲学者が日本に於いて出現することを待望する。明治以来の日本人の行動は格別深い洞察もなければ遠い見識もなく祖先以来恵まれた情意の論理に従って其の場其の場でいわば断片的に活動したに過ぎなかった。それにもかかわらず民族国家としての日本の運命は個々の活動を統一的な合目的性に変質せしめたのであった。それは隔絶され孤立した地理的、風土的、人種的な条件に僥倖されたものであって、けして強靭な目的意識によって遂行されたものではなかった。
（中略）
これによって今後現れてくるところのイデロギーは主として体系的哲学の傾向をとるということが推測され得るであろう。
結局、一人前の政治家、一人前の哲学者の出現は開戦、終戦までに間に合わなかったのです。一人前の政治家は一人前の哲学者が兼ねるべきです。
其の場其の場主義については、昨年、
「わが国を守るために必要な措置かどうかを気にすべきで、法的安定性は関係ない」ので、法的安定性が保たれる必要は必ずしもない・・・
と述べても、それら同じ説の論者はどこからも何ら説得は受けていないという点で脈々と継承されています。
そのリンクと話がそれますが、私が投稿するそもそもの動機についてから。
それは一口に言って＜哲人＞政治家出現に期待するからです。
選挙（国政）と言えば投票率とか一票の格差だけが議論されているように見えます。愚かなことです。候補者に有能な人材がいないことの方がはるかに重大です。候補者にいないので当然、当選者にもいない。
そのような人材を生み出し、候補者として推挙する国民の総合的＜政治参加能力＞を高めることこそ現下の急務でしょう。
手元にある1939年出版の本で、或る人はこう書いています。
要するに我々は現在の段階にあって一人前の政治家、一人前の哲学者が日本に於いて出現することを待望する。明治以来の日本人の行動は格別深い洞察もなければ遠い見識もなく祖先以来恵まれた情意の論理に従って其の場其の場でいわば断片的に活動したに過ぎなかった。それにもかかわらず民族国家としての日本の運命は個々の活動を統一的な合目的性に変質せしめたのであった。それは隔絶され孤立した地理的、風土的、人種的な条件に僥倖されたものであって、けして強靭な目的意識によって遂行されたものではなかった。
（中略）
これによって今後現れてくるところのイデロギーは主として体系的哲学の傾向をとるということが推測され得るであろう。
結局、一人前の政治家、一人前の哲学者の出現は開戦、終戦までに間に合わなかったのです。一人前の政治家は一人前の哲学者が兼ねるべきです。
其の場其の場主義については、昨年、
「わが国を守るために必要な措置かどうかを気にすべきで、法的安定性は関係ない」ので、法的安定性が保たれる必要は必ずしもない・・・
と述べても、それら同じ説の論者はどこからも何ら説得は受けていないという点で脈々と継承されています。
>>[83]
哲人政治家とは、一般の政治家が国民等選挙民に対して眼に見える＜福＞や＜利＞をもたらそうとするのに対し、それとともに或はそれ以上に彼らを覚醒させ＜進路＞、＜方向＞を与えることに重きをおく政治家ということになりましょうか。
以前述べたことですが、1940年出版の西田幾多郎著「日本文化の問題」に彼はこう書いています。
哲学は政治を離れたものではない。しかしまた政治は哲学をはなれたものではない。
（中略）
日本的な物の見方考え方に日本精神があることが忘れられていると思う。外国の事物を研究しても、そこに日本精神が現れるということが忘れられていると思う。
休みなく働いている自分の＜物の見方考え方＞に忘失がある、というこの見解そのものが誤りとする人もあるでしょう。
しかしこれを私は大いに考える余地のある（古臭くなっていない）問題提起と思います。
哲人政治家とは、一般の政治家が国民等選挙民に対して眼に見える＜福＞や＜利＞をもたらそうとするのに対し、それとともに或はそれ以上に彼らを覚醒させ＜進路＞、＜方向＞を与えることに重きをおく政治家ということになりましょうか。
以前述べたことですが、1940年出版の西田幾多郎著「日本文化の問題」に彼はこう書いています。
哲学は政治を離れたものではない。しかしまた政治は哲学をはなれたものではない。
（中略）
日本的な物の見方考え方に日本精神があることが忘れられていると思う。外国の事物を研究しても、そこに日本精神が現れるということが忘れられていると思う。
休みなく働いている自分の＜物の見方考え方＞に忘失がある、というこの見解そのものが誤りとする人もあるでしょう。
しかしこれを私は大いに考える余地のある（古臭くなっていない）問題提起と思います。
憲法制定（改正も含む）、その護持、運用等すべて人の＜見方考え方＞の側に源があります。そこで問題提起。
一昨年夏、首相補佐官から講演で次の発言がありました。
・・・
考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない。我が国を守るために必要なことを、日本国憲法がダメだと言うことはありえない。
・・・
現憲法には哲学が欠けているのです。哲学が欠けているからご都合次第、安定性は不要などということになるのです。
また憲法を金科玉条と見てひたすら死守しようとするのも＜よりどころ＞、つまり自分に哲学がないことでしょう。
果せるかなその後当人は、
・・・
私の発言で国民、委員会運営に迷惑をかけ、心から反省し、おわび申し上げる
・・・
と、謝罪したというのです。
外交上、厳しい対立が生じることは少しも新しくないことだし、その措置は憲法に織り込み済みでなければならないのです。
哲学＝安定性の基盤、と思います。
一昨年夏、首相補佐官から講演で次の発言がありました。
・・・
考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない。我が国を守るために必要なことを、日本国憲法がダメだと言うことはありえない。
・・・
現憲法には哲学が欠けているのです。哲学が欠けているからご都合次第、安定性は不要などということになるのです。
また憲法を金科玉条と見てひたすら死守しようとするのも＜よりどころ＞、つまり自分に哲学がないことでしょう。
果せるかなその後当人は、
・・・
私の発言で国民、委員会運営に迷惑をかけ、心から反省し、おわび申し上げる
・・・
と、謝罪したというのです。
外交上、厳しい対立が生じることは少しも新しくないことだし、その措置は憲法に織り込み済みでなければならないのです。
哲学＝安定性の基盤、と思います。
>>[87]
＞では、哲学とは何ですか？
哲学は・・・常識の観点からみると・・・ヘーゲルの言葉のように、「逆になっている世界である。
これはハイデッガーの言葉です（「形而上学とは何か」大江精志郎訳）。
ふつう人は常識家だから（非難の意味ではありません）哲学を理解するのに常識を援用したのでは混迷に陥るばかりでしょう。あげくの果ては哲学やその説明者への悪口雑言に変わります。
常識には深く慣れ親しんでいるためこれを意識しないし、まして「その逆になっている世界」は想像を絶することです。
私は哲学ファンを一人でも増やしたい。
しかしそういう訳で＜急いては事を仕損じる＞ということも念頭におくべきです。
ソクラテスは、哲学の知恵は空の甕に水を注ぎこむような具合にはいかない、と言っているのですが、これも同様な指摘です。
別種のものが先に甕を占拠しているのです。
＞では、哲学とは何ですか？
哲学は・・・常識の観点からみると・・・ヘーゲルの言葉のように、「逆になっている世界である。
これはハイデッガーの言葉です（「形而上学とは何か」大江精志郎訳）。
ふつう人は常識家だから（非難の意味ではありません）哲学を理解するのに常識を援用したのでは混迷に陥るばかりでしょう。あげくの果ては哲学やその説明者への悪口雑言に変わります。
常識には深く慣れ親しんでいるためこれを意識しないし、まして「その逆になっている世界」は想像を絶することです。
私は哲学ファンを一人でも増やしたい。
しかしそういう訳で＜急いては事を仕損じる＞ということも念頭におくべきです。
ソクラテスは、哲学の知恵は空の甕に水を注ぎこむような具合にはいかない、と言っているのですが、これも同様な指摘です。
別種のものが先に甕を占拠しているのです。
>>[88]
お書きのことはよくわかりますし賛同いたします。
しかし、seiganさん、あなたはアリストテレスに関するトピックをご自分でお立てになりながら、おおよそアリストテレスらしからぬご様子です。
私は、定義を求めています
哲人政治家、哲人、哲学。
しかしあなたは常にはぐらかします。プラトンが批判したソフィステスらでさえ、ソクラテスからの定義を求める問いには臆せず自己の考えを表明しました。
あなたの返答は、アリストテレス『詭弁論駁術』第５章にある論駁無視の誤謬であり、もし意図して行っているのであれば詭弁になります。
それから、あなたは他者からの引用ばかりで、あなた自身の頭で考えた言葉をほとんど語ってはいません。
もし、トピックの主題のようにアリストテレスがあなたのそうした哲学に対する態度を見たら、詭弁家として退けるでしょう。そしてもしアレクサンドロス三世が部下の反対に合わずに東征を続けて黄色人種に出会ったならば、アリストテレスは哲学する素質を持たない黄色人種などはトラキア人のように奴隷としてギリシア人に仕えさせるのが自然の理である、と手紙を書き送ったことでしょう。
アリストテレスの唱えた帰納法をベーコンやプラグマティストやミシガン、コロンビア、シカゴ大学などを通じて科学として復活させたものを、輸入して最大限に用いている現代日本の行政府と政治家のほうが、よほどアリストテレスの真理探究に忠実な人々であるように、私には思われます。
私はあなたに哲人政治家についてご教授いただきたかったのに、非常に残念でなりません。
お書きのことはよくわかりますし賛同いたします。
しかし、seiganさん、あなたはアリストテレスに関するトピックをご自分でお立てになりながら、おおよそアリストテレスらしからぬご様子です。
私は、定義を求めています
哲人政治家、哲人、哲学。
しかしあなたは常にはぐらかします。プラトンが批判したソフィステスらでさえ、ソクラテスからの定義を求める問いには臆せず自己の考えを表明しました。
あなたの返答は、アリストテレス『詭弁論駁術』第５章にある論駁無視の誤謬であり、もし意図して行っているのであれば詭弁になります。
それから、あなたは他者からの引用ばかりで、あなた自身の頭で考えた言葉をほとんど語ってはいません。
もし、トピックの主題のようにアリストテレスがあなたのそうした哲学に対する態度を見たら、詭弁家として退けるでしょう。そしてもしアレクサンドロス三世が部下の反対に合わずに東征を続けて黄色人種に出会ったならば、アリストテレスは哲学する素質を持たない黄色人種などはトラキア人のように奴隷としてギリシア人に仕えさせるのが自然の理である、と手紙を書き送ったことでしょう。
アリストテレスの唱えた帰納法をベーコンやプラグマティストやミシガン、コロンビア、シカゴ大学などを通じて科学として復活させたものを、輸入して最大限に用いている現代日本の行政府と政治家のほうが、よほどアリストテレスの真理探究に忠実な人々であるように、私には思われます。
私はあなたに哲人政治家についてご教授いただきたかったのに、非常に残念でなりません。
>>[90]
次は、明治21年(1888年)6月、枢密院において帝国憲法の草案審議が開始されたときの議長伊藤博文の言葉（抜粋）です。原文はリンク参照。
http://www.geek.sc/archives/691
・・・
故に今憲法の制定せらるゝにあたりてはまず我国の機軸を求め、我国の機軸は何々なりやと言うことを確定せざるべからず。
・・・
そもそも欧州においては憲法政治のきざせること千余年、ひとり人民のこの制度に習熟せるのみならず、又宗教なるものありてこれが機軸をなし、深く人心に浸潤して、人心これに帰一せり。しかるに我国にありては宗教なるものその力微弱にして、ひとつも国家の機軸たるべきものなし
・・・
我国にありては機軸とすべきはひとり皇室あるのみ。
（旧かなづかいを改め漢字をひらがなに変えた箇所あり）
機軸とは＜纏まり（究極）を与えるもの、及びその纏まり＞としておきましょう。私が解する機軸は親子とか世代間で価値観が異なる、等と言われる時の＜価値観＞と多少似ていますが、そうした常識的なものではなくて世界観＞です。
彼、伊藤の言を論理としてみるとき、そこに致命的な欠陥がありそうです。
伊藤は、「欧州（欧州諸国）では機軸がすでに＜ある＞のに我国にはそれがない、そこで新たに機軸を定めたい」と言うのです。
彼は＜機軸＞を一つとせず、欧州のもの一つと別に我国のもの一つ、つまり都合＜二つ＞とすることを自明とし、この点に全く疑問を持っていないことに起因する事柄です。
しかも欧州では国ごとに機軸一つでなく、国境を越えて共通する一つの機軸（帰一せｔる機軸）を認めているというのに。
彼は自国日本と欧州の間に帰一する機軸の可能性を探ることをせず、あえて帰一しない方向を最初から選択しているのです。ここに述べられていない米国、インド、中国・・・
等々についてもそれぞれ機軸があるとすれば機軸の総数は果たしていくつになるのでしょう？
アリストテレスは形而上学のなかで、＜一＞と＜多＞は対立する＞と述べています。
一でない限り、二以上はいくらの数であっても同じく多であり、一とは相容れないもの（両立しない）という意味です。＜多のうちの一つ＞という捉え方も多が前提であるためこれも多です。そして対立と反対とは違います。反対には中間があり得るけれど対立には中間があり得ないのです。
＜多＞論者が＜一＞論者に向かって、「貴国の機軸は尊重する。しかし我国が貴国と別の機軸を定めても貴国の邪魔にはならない筈だ」と言っても納得しないでしょう。相手がアリストテレスを継承しているならばそのような反論は自分たちの＜一＞が否定されることだから。＜一＞論者からは肯定しながら同時に否定するという矛盾の主張とみなされます。
国土、言語、民族などが異なる＜国＞という側面でなく人間どうしという共通面（即ち、＜一＞）に立脚して機軸は定められるべきなのです。本来国家よりも人間が上位です。なぜなら究極を認識するのは人間のみに可能なことであって、＜一＞に到達してこそ人間に相応しい真価が得られるのだから。
ユーラシア大陸東部の中国、朝鮮半島二国そして日本は、伝統的に＜一＞志向ではなく逆に＜多＞を無意識に信条としていて、これが今なお国どうしの関係がギクシャクしている原因と思います。
互いに＜多＞論者ばかりという酷似した面を持つので皮肉にも友愛が育たないのです。
各自、己が機軸をしっかり握って手放さないから。
次は＜多＞はどこからどのようにして生まれるのか考えることにしましょう。
次は、明治21年(1888年)6月、枢密院において帝国憲法の草案審議が開始されたときの議長伊藤博文の言葉（抜粋）です。原文はリンク参照。
http://www.geek.sc/archives/691
・・・
故に今憲法の制定せらるゝにあたりてはまず我国の機軸を求め、我国の機軸は何々なりやと言うことを確定せざるべからず。
・・・
そもそも欧州においては憲法政治のきざせること千余年、ひとり人民のこの制度に習熟せるのみならず、又宗教なるものありてこれが機軸をなし、深く人心に浸潤して、人心これに帰一せり。しかるに我国にありては宗教なるものその力微弱にして、ひとつも国家の機軸たるべきものなし
・・・
我国にありては機軸とすべきはひとり皇室あるのみ。
（旧かなづかいを改め漢字をひらがなに変えた箇所あり）
機軸とは＜纏まり（究極）を与えるもの、及びその纏まり＞としておきましょう。私が解する機軸は親子とか世代間で価値観が異なる、等と言われる時の＜価値観＞と多少似ていますが、そうした常識的なものではなくて世界観＞です。
彼、伊藤の言を論理としてみるとき、そこに致命的な欠陥がありそうです。
伊藤は、「欧州（欧州諸国）では機軸がすでに＜ある＞のに我国にはそれがない、そこで新たに機軸を定めたい」と言うのです。
彼は＜機軸＞を一つとせず、欧州のもの一つと別に我国のもの一つ、つまり都合＜二つ＞とすることを自明とし、この点に全く疑問を持っていないことに起因する事柄です。
しかも欧州では国ごとに機軸一つでなく、国境を越えて共通する一つの機軸（帰一せｔる機軸）を認めているというのに。
彼は自国日本と欧州の間に帰一する機軸の可能性を探ることをせず、あえて帰一しない方向を最初から選択しているのです。ここに述べられていない米国、インド、中国・・・
等々についてもそれぞれ機軸があるとすれば機軸の総数は果たしていくつになるのでしょう？
アリストテレスは形而上学のなかで、＜一＞と＜多＞は対立する＞と述べています。
一でない限り、二以上はいくらの数であっても同じく多であり、一とは相容れないもの（両立しない）という意味です。＜多のうちの一つ＞という捉え方も多が前提であるためこれも多です。そして対立と反対とは違います。反対には中間があり得るけれど対立には中間があり得ないのです。
＜多＞論者が＜一＞論者に向かって、「貴国の機軸は尊重する。しかし我国が貴国と別の機軸を定めても貴国の邪魔にはならない筈だ」と言っても納得しないでしょう。相手がアリストテレスを継承しているならばそのような反論は自分たちの＜一＞が否定されることだから。＜一＞論者からは肯定しながら同時に否定するという矛盾の主張とみなされます。
国土、言語、民族などが異なる＜国＞という側面でなく人間どうしという共通面（即ち、＜一＞）に立脚して機軸は定められるべきなのです。本来国家よりも人間が上位です。なぜなら究極を認識するのは人間のみに可能なことであって、＜一＞に到達してこそ人間に相応しい真価が得られるのだから。
ユーラシア大陸東部の中国、朝鮮半島二国そして日本は、伝統的に＜一＞志向ではなく逆に＜多＞を無意識に信条としていて、これが今なお国どうしの関係がギクシャクしている原因と思います。
互いに＜多＞論者ばかりという酷似した面を持つので皮肉にも友愛が育たないのです。
各自、己が機軸をしっかり握って手放さないから。
次は＜多＞はどこからどのようにして生まれるのか考えることにしましょう。
>>[91]
プラトン、アリストテレス両者の思想の核心を文字に表せば、イデアとエイドスのように二つになりますが、肝心の精神内容においては同一です。
ただアリストテレスはプラトンがなしえなかったそこに至る＜方法＞の研究、つまり主著形而上学の他に霊魂論、トピカ、分析論二篇、詭弁論駁論などワキを固める仕事をしているのでその点でプラトンを凌いでいると言えます。
ですが、現実の政治への応用となるとこうした事柄については一般大衆にとって理解しやすいものではないだけに、学究アリストテレスよりも素人も交えての対話編を遺したプラトンの方が自習には相応しいかも知れません。
次は「哲学者」という副題のついたプラトンの「エピノミス」のほんの一部です。
国家の構成者のうちで、いまお話した一群の人々こそが教授してくれる者に恵まれさえすれば、最高の主権を握る資格を真の意味でそなえているのだ。また、この一群こそが、教授してくれる者に恵まれさえすれば、高貴の極致、高尚の極致をなすようことがらを学習するだけの能力をそなえているのだ。（水野有庸訳）
（注）一群の人々・・・優秀な資質をそなえた者たち
アリストテレスならば、「じゃあ、どうすればそのような資質のある者が発見され、また恵まれた教師が得られるのか。また資質ある者と教師が得られたとしても教師が複数いるなら教師ごとに教える内容が異なりはしないか。教授方法が確立してなければ何にもならないよ」と言うような気がします。
結局のところ、先ずもって重要なのは諸施策立案の前に哲学者養成でしょうか。
プラトン、アリストテレス両者の思想の核心を文字に表せば、イデアとエイドスのように二つになりますが、肝心の精神内容においては同一です。
ただアリストテレスはプラトンがなしえなかったそこに至る＜方法＞の研究、つまり主著形而上学の他に霊魂論、トピカ、分析論二篇、詭弁論駁論などワキを固める仕事をしているのでその点でプラトンを凌いでいると言えます。
ですが、現実の政治への応用となるとこうした事柄については一般大衆にとって理解しやすいものではないだけに、学究アリストテレスよりも素人も交えての対話編を遺したプラトンの方が自習には相応しいかも知れません。
次は「哲学者」という副題のついたプラトンの「エピノミス」のほんの一部です。
国家の構成者のうちで、いまお話した一群の人々こそが教授してくれる者に恵まれさえすれば、最高の主権を握る資格を真の意味でそなえているのだ。また、この一群こそが、教授してくれる者に恵まれさえすれば、高貴の極致、高尚の極致をなすようことがらを学習するだけの能力をそなえているのだ。（水野有庸訳）
（注）一群の人々・・・優秀な資質をそなえた者たち
アリストテレスならば、「じゃあ、どうすればそのような資質のある者が発見され、また恵まれた教師が得られるのか。また資質ある者と教師が得られたとしても教師が複数いるなら教師ごとに教える内容が異なりはしないか。教授方法が確立してなければ何にもならないよ」と言うような気がします。
結局のところ、先ずもって重要なのは諸施策立案の前に哲学者養成でしょうか。
>>[94]
＜変人＞出現に期待します。
先の「機軸」に関して書いてみました。
祭政一致
人々の眼を一点に釘付けにし、視線をそこに集中させる政治
・眼を引く衣装や道具、聞き慣れぬ音が出る仕掛け、奇声、奇妙な言葉や奇妙な動作、集中する点を動かし視線をアチコチに操作（ムラ単位の祭。各自マチマチな方向を向いている日常性を破る意義があります）。
・見る側は同一方向に顔を向ける。合図に従う、整列、姿勢を保って沈黙、同じ言葉を一斉に口にする。沈黙を破って突如起こる歓声や笑い声。
・効果：祭の主宰者とその他大勢の参加者はすべて同列同格（人体に具わる感覚機能は共通したものだからそこに生まれる頭の中の＜イメージ＞も同じ）。規模が大きいクニ単位でも＜イメージ＞により同一構造である。一体感の醸成、＜団結＞と＜安心＞が得られる、戦意高揚。
・応用：人々の眼を同一方向に向けようとする政治、様々の儀式や祭典。責任を取らせての「辞職」（祭を穢した責任）、頭を下げての陳謝会見（同左）
・弊害：＜不自由＞でありながら自覚がない。学問（「第一の学問」）不振（感覚重視は自由に対する反逆であることを知らぬ、＜高邁＞に欠ける）。隣のムラ、クニは自分の属するムラ、クニとは異なる点に対して祭を行うので隣国嫌い。本質的に＜膨張＞傾向を持つ。自分の属するムラ、クニ内部では祭を忌避する者やよそ見する者に対して制裁、弾圧を加える。
＜変人＞出現に期待します。
先の「機軸」に関して書いてみました。
祭政一致
人々の眼を一点に釘付けにし、視線をそこに集中させる政治
・眼を引く衣装や道具、聞き慣れぬ音が出る仕掛け、奇声、奇妙な言葉や奇妙な動作、集中する点を動かし視線をアチコチに操作（ムラ単位の祭。各自マチマチな方向を向いている日常性を破る意義があります）。
・見る側は同一方向に顔を向ける。合図に従う、整列、姿勢を保って沈黙、同じ言葉を一斉に口にする。沈黙を破って突如起こる歓声や笑い声。
・効果：祭の主宰者とその他大勢の参加者はすべて同列同格（人体に具わる感覚機能は共通したものだからそこに生まれる頭の中の＜イメージ＞も同じ）。規模が大きいクニ単位でも＜イメージ＞により同一構造である。一体感の醸成、＜団結＞と＜安心＞が得られる、戦意高揚。
・応用：人々の眼を同一方向に向けようとする政治、様々の儀式や祭典。責任を取らせての「辞職」（祭を穢した責任）、頭を下げての陳謝会見（同左）
・弊害：＜不自由＞でありながら自覚がない。学問（「第一の学問」）不振（感覚重視は自由に対する反逆であることを知らぬ、＜高邁＞に欠ける）。隣のムラ、クニは自分の属するムラ、クニとは異なる点に対して祭を行うので隣国嫌い。本質的に＜膨張＞傾向を持つ。自分の属するムラ、クニ内部では祭を忌避する者やよそ見する者に対して制裁、弾圧を加える。
ネットで「主観」「客観」を検索すると出てくるその説明はほぼ次のようなものです（哲学事典丸写しは除きます）。
主観とはその人ひとりのものの見方（その人にとっては満足できるが）、客観とは誰にでもそうだと思えるものの見方
以下は私の考えるところの概略です。
�� 見方（見解）がある
�� 見方は主観と客観に区別される
�� 主観は「真」なる主観と「偽」なる主観に区別される
�� 「真」なる主観は� ↓�及び�Ａ澗里鯤餝腓垢�
以後、「真」なる主観は「真」とし、「偽」なる主観は「偽」とします。
「客観」の説明としての「誰にでもそうだと思えるものの見方」は、とりあえず＜ま、いいか＞としておきます。けれども本当は「真」なる主観において客観の真価が見定められるべきです。
まずはその客観から。
次は客観が働くほんの一つの例です。
（平面上の）三角形の内角の和は、二直角である。
下図のように、辺ABを点Cに平行移動させると錯角、同位角の関係にある二角は点Cに移すことになり、もとのままの一角を合わせると、内角の和はすぐ二直角であると分かります。
(図を開いて下さい）
誰が、どう見ても「二直角」であるだけでなく、三角形の大きさ、向き、形と無関係、おまけに時間（今を中心に過去、未来）、場所（地上どこでも）で変わるとも考えられない。
かのピタゴラスの定理もこのように図上で証明できます（三角形の面積は、底辺と高さの二つを変えなければどのような形でも面積は一定、という性質を使います）。
このように誰にもそうだと思える（客観）ために、結局は見方から「誰」、「思える」が一切消失してしまうのです。
数学でなくてもかまいません。
きれいな満月が出ている、とします。数人のうち誰かが「あ、きれいだ」と言いながら見上げるとき他も一緒に見上げて共感する。このように視覚の対象は誰でもそうであるため「誰」、「思える」が同様に消失してしまうのです。
形而上学第一巻第一章、視覚（視覚による認知）について
（肉眼で見ることが愛好されるのは）この見ることが、他のいずれの感覚よりも最もよく我々に物事を認知させ、その差別相を明かにしてくれるからである。
としています。しかし、本書全体を通して言えば著者が視覚（その他含めて五感）による知をけして称賛するものでないことはすぐに分かります。さらに著者がこの客観的な数学すらも「第一」ではなく、なぜ「第二」の学問としているかの理由が。
主観とはその人ひとりのものの見方（その人にとっては満足できるが）、客観とは誰にでもそうだと思えるものの見方
以下は私の考えるところの概略です。
�� 見方（見解）がある
�� 見方は主観と客観に区別される
�� 主観は「真」なる主観と「偽」なる主観に区別される
�� 「真」なる主観は� ↓�及び�Ａ澗里鯤餝腓垢�
以後、「真」なる主観は「真」とし、「偽」なる主観は「偽」とします。
「客観」の説明としての「誰にでもそうだと思えるものの見方」は、とりあえず＜ま、いいか＞としておきます。けれども本当は「真」なる主観において客観の真価が見定められるべきです。
まずはその客観から。
次は客観が働くほんの一つの例です。
（平面上の）三角形の内角の和は、二直角である。
下図のように、辺ABを点Cに平行移動させると錯角、同位角の関係にある二角は点Cに移すことになり、もとのままの一角を合わせると、内角の和はすぐ二直角であると分かります。
(図を開いて下さい）
誰が、どう見ても「二直角」であるだけでなく、三角形の大きさ、向き、形と無関係、おまけに時間（今を中心に過去、未来）、場所（地上どこでも）で変わるとも考えられない。
かのピタゴラスの定理もこのように図上で証明できます（三角形の面積は、底辺と高さの二つを変えなければどのような形でも面積は一定、という性質を使います）。
このように誰にもそうだと思える（客観）ために、結局は見方から「誰」、「思える」が一切消失してしまうのです。
数学でなくてもかまいません。
きれいな満月が出ている、とします。数人のうち誰かが「あ、きれいだ」と言いながら見上げるとき他も一緒に見上げて共感する。このように視覚の対象は誰でもそうであるため「誰」、「思える」が同様に消失してしまうのです。
形而上学第一巻第一章、視覚（視覚による認知）について
（肉眼で見ることが愛好されるのは）この見ることが、他のいずれの感覚よりも最もよく我々に物事を認知させ、その差別相を明かにしてくれるからである。
としています。しかし、本書全体を通して言えば著者が視覚（その他含めて五感）による知をけして称賛するものでないことはすぐに分かります。さらに著者がこの客観的な数学すらも「第一」ではなく、なぜ「第二」の学問としているかの理由が。
ご覧の方には話を転々とさせているように思われるかも知れません。
しかし、私の頭の中では全部繋がっていてこれまでもこれからも「ただ一つの事に関する」話題です。念のため。
もし原因の種類が無限に多くあったならば、同じくまた知識はありえなかったであろう。というのは、我々の信ずるところでは、我々が何かを知っているというのはそれの原因を知っているときのことであるが、無限に多く増加されてゆくものどもを限られた時間内にたどりつくすことはできないからである。（第二巻第二章終り結び部分、「限られた時間」とは生と死の間）
プロタゴラスは、
・万物の尺度は人間である。＜ある＞ものついては＜ある＞ということの、＜あらぬ＞ものについては＜あらぬ＞ということの。
・魂は感覚すること以外のなにものでもない、また、すべてのことが真である。
と説いたことで知られています。
一つの点を除けば、彼の考えは間違ってはいないのです。
その一つとは、知は感覚からくるもののほか感覚に頼らず感覚とは異質のもの（思考活動）があることに気付かなかったのか、或は両者を混同していることです。
対話編「プロタゴラス」にはこんな話が出てきます。
ソクラテスが著名のソフィスト＜プロタゴラス＞の所に金を払って入門しようとする若者に向かって、学識を買うには大きな危険がある、と忠告します。なぜなら
＜飲食物を買うのなら、それを買って別の入れ物に入れて帰ることができるし、食べ方についても帰宅してからその量や時期について人に尋ねることができるから危険は少ない。ところが学識となるとそうはいかない、教わるやいなや魂に直接吸収され、帰り着くまでには益ならばよし悪ければすっかり毒されてしまっているのだから＞と。
感覚が常に真であることは、人間の感覚機能は動物一般と同様、己の身体を保全するという自然の理によって備わっているのです。だから人間めいめいが＜ある＞、＜あらぬ＞を判断して当然です。Aが歯痛を＜ある＞と判断し、同じ時Bは歯痛が＜あらぬ＞と判断しても不合理はありません。可笑しいのは、A（又はB）が歯痛を＜あり且つあらぬ＞と判断することなのです（実際そのようなことは錯覚か病気以外にはないでしょう。ご心配なく）。
ところが、例えば、＜魂＞のようにそれ自体が非感覚存在（形而上学的存在）である場合、一人が＜あり且つあらぬ＞を主張すればそれは矛盾許容を意味します。
「和魂洋才」の和魂とは魂一つを二つ（和魂、洋魂）に分割した一方です。何故分割するのかと言えば両者に相違点があると考えられるからです。では何故分割後どちらにも＜魂＞が含まれるのかと言えば相違点のみではなく相似点もあると考えられるからでしょう。ですから両者とも相違点（非同一性）と類似点（同一性）という反対の性質がそれぞれの属性になります。
和魂は洋魂に対し、同一性があり且つあらぬ（非同一性があるので）
洋魂は和魂に対し、非同一性があり且つあらぬ（同一性があるので）
和魂は洋魂に対し、非同一性があり且つあらぬ（同一性があるので）
洋魂は和魂に対し、同一性があり且つあらぬ（非同一性があるので）
和魂と洋魂の量的な比率を考え、例えば和魂9：洋魂1などとしても矛盾には変わりありません。その解決法はただ一つ、魂の分割を全廃するしかないのです。
また和魂と「日本精神」は上記の点でまったく同一です。
しかし、私の頭の中では全部繋がっていてこれまでもこれからも「ただ一つの事に関する」話題です。念のため。
もし原因の種類が無限に多くあったならば、同じくまた知識はありえなかったであろう。というのは、我々の信ずるところでは、我々が何かを知っているというのはそれの原因を知っているときのことであるが、無限に多く増加されてゆくものどもを限られた時間内にたどりつくすことはできないからである。（第二巻第二章終り結び部分、「限られた時間」とは生と死の間）
プロタゴラスは、
・万物の尺度は人間である。＜ある＞ものついては＜ある＞ということの、＜あらぬ＞ものについては＜あらぬ＞ということの。
・魂は感覚すること以外のなにものでもない、また、すべてのことが真である。
と説いたことで知られています。
一つの点を除けば、彼の考えは間違ってはいないのです。
その一つとは、知は感覚からくるもののほか感覚に頼らず感覚とは異質のもの（思考活動）があることに気付かなかったのか、或は両者を混同していることです。
対話編「プロタゴラス」にはこんな話が出てきます。
ソクラテスが著名のソフィスト＜プロタゴラス＞の所に金を払って入門しようとする若者に向かって、学識を買うには大きな危険がある、と忠告します。なぜなら
＜飲食物を買うのなら、それを買って別の入れ物に入れて帰ることができるし、食べ方についても帰宅してからその量や時期について人に尋ねることができるから危険は少ない。ところが学識となるとそうはいかない、教わるやいなや魂に直接吸収され、帰り着くまでには益ならばよし悪ければすっかり毒されてしまっているのだから＞と。
感覚が常に真であることは、人間の感覚機能は動物一般と同様、己の身体を保全するという自然の理によって備わっているのです。だから人間めいめいが＜ある＞、＜あらぬ＞を判断して当然です。Aが歯痛を＜ある＞と判断し、同じ時Bは歯痛が＜あらぬ＞と判断しても不合理はありません。可笑しいのは、A（又はB）が歯痛を＜あり且つあらぬ＞と判断することなのです（実際そのようなことは錯覚か病気以外にはないでしょう。ご心配なく）。
ところが、例えば、＜魂＞のようにそれ自体が非感覚存在（形而上学的存在）である場合、一人が＜あり且つあらぬ＞を主張すればそれは矛盾許容を意味します。
「和魂洋才」の和魂とは魂一つを二つ（和魂、洋魂）に分割した一方です。何故分割するのかと言えば両者に相違点があると考えられるからです。では何故分割後どちらにも＜魂＞が含まれるのかと言えば相違点のみではなく相似点もあると考えられるからでしょう。ですから両者とも相違点（非同一性）と類似点（同一性）という反対の性質がそれぞれの属性になります。
和魂は洋魂に対し、同一性があり且つあらぬ（非同一性があるので）
洋魂は和魂に対し、非同一性があり且つあらぬ（同一性があるので）
和魂は洋魂に対し、非同一性があり且つあらぬ（同一性があるので）
洋魂は和魂に対し、同一性があり且つあらぬ（非同一性があるので）
和魂と洋魂の量的な比率を考え、例えば和魂9：洋魂1などとしても矛盾には変わりありません。その解決法はただ一つ、魂の分割を全廃するしかないのです。
また和魂と「日本精神」は上記の点でまったく同一です。
先の和魂の＜魂＞、日本精神の＜精神＞の他に、見方、考え方、考え、方針、立場、理解、〜論、〜説、〜主義、見解、思い、意見、主張・・・等の無形、不可視の対象と
私の、私達の、あなたの、あなた方の、彼の、彼らの、我国の、貴国の・・・等たくさんある中の一（一部分、分割された）なる対象とを組み合わせれば、例えば、
あなたの見方、私の見方と言った言葉が生まれます。
そこでこれらを使うと、同一の事柄に関し、
あなたの見方はそうで＜ある＞が、私の見方はそうでは＜あらぬ＞
という矛盾のパターンが出来上がります。
デュルケムはオーストラリア原住民の宗教の研究から「宗教生活の原初形態」を著しています。古野清人訳。（ ）内は投稿者の蛇足です。
これを（これは）要するに、偽りの宗教は存在するものではない（いうことである）。あらゆる宗教はそのまま真実である。すべては様式こそ異なれ人間生存の一定の条件に応じているのである。もちろん、その序列をつけその順位に従ってそれらを配列することもできないではない。（中略）
それでわれわれが原始宗教（の研究）を目指すとしても、それは一般に（原始）宗教を貶めようとの底意があってではない。というのは、原始宗教もまた他と同じように尊敬すべきものであるからである。
また
信仰は、これらの矛盾に耐えるだけでなく、これを否定し、また信仰者に矛盾の意味を認めさせぬに足るほど強固であって然るべきだとさえ考えられる（に至ったのである）。このことが結果として、これらの矛盾が宗教にとって妨害にならぬようにしたのである。
矛盾を難なく乗り越えてしまうという不条理は、宗教では許されるとしても、「あなたの見方はそうで＜ある＞が、私の見方はそうでは＜あらぬ＞」では、早や喧嘩腰であり、先ず対話による相互の理解はできなくなります。
昨今の「いつまでも議論を続けるわけにはいかない。いずれ結論を出す時期がくる」といった発言は何を意味するのか。
矛盾を抱え込むと論理が破壊されて自分自身との対話（反省）ができず、相手を説得する能力を失い、さらに相手側の言い分に論理が欠けていることの指摘もできなくなります。
議論の「平行線」は、矛盾の潜在が背景であるといわざるを得ないのです。
この「平行線」を矛盾からの解放ではなく、それを放置した上での原理（政治上の）が先に述べたように感覚（感覚知覚）に訴える「祭政」へとつながってきます。
私の、私達の、あなたの、あなた方の、彼の、彼らの、我国の、貴国の・・・等たくさんある中の一（一部分、分割された）なる対象とを組み合わせれば、例えば、
あなたの見方、私の見方と言った言葉が生まれます。
そこでこれらを使うと、同一の事柄に関し、
あなたの見方はそうで＜ある＞が、私の見方はそうでは＜あらぬ＞
という矛盾のパターンが出来上がります。
デュルケムはオーストラリア原住民の宗教の研究から「宗教生活の原初形態」を著しています。古野清人訳。（ ）内は投稿者の蛇足です。
これを（これは）要するに、偽りの宗教は存在するものではない（いうことである）。あらゆる宗教はそのまま真実である。すべては様式こそ異なれ人間生存の一定の条件に応じているのである。もちろん、その序列をつけその順位に従ってそれらを配列することもできないではない。（中略）
それでわれわれが原始宗教（の研究）を目指すとしても、それは一般に（原始）宗教を貶めようとの底意があってではない。というのは、原始宗教もまた他と同じように尊敬すべきものであるからである。
また
信仰は、これらの矛盾に耐えるだけでなく、これを否定し、また信仰者に矛盾の意味を認めさせぬに足るほど強固であって然るべきだとさえ考えられる（に至ったのである）。このことが結果として、これらの矛盾が宗教にとって妨害にならぬようにしたのである。
矛盾を難なく乗り越えてしまうという不条理は、宗教では許されるとしても、「あなたの見方はそうで＜ある＞が、私の見方はそうでは＜あらぬ＞」では、早や喧嘩腰であり、先ず対話による相互の理解はできなくなります。
昨今の「いつまでも議論を続けるわけにはいかない。いずれ結論を出す時期がくる」といった発言は何を意味するのか。
矛盾を抱え込むと論理が破壊されて自分自身との対話（反省）ができず、相手を説得する能力を失い、さらに相手側の言い分に論理が欠けていることの指摘もできなくなります。
議論の「平行線」は、矛盾の潜在が背景であるといわざるを得ないのです。
この「平行線」を矛盾からの解放ではなく、それを放置した上での原理（政治上の）が先に述べたように感覚（感覚知覚）に訴える「祭政」へとつながってきます。
アリストテレスは「霊魂論」で、感覚として視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を挙げ、これ以外の感覚はないとしています。
そして、感覚されるものは以下三通りの意味で語られ、�‘汎辰粉恭仟仂櫃砲弔い討隆恭弌弊屬�ないことを、聴覚で知るとか、塩辛いことを触覚で知るとかいうことはありえない。即ち感覚分野を限って感覚すること）、��五感すべてに共通する感覚対象（運動、静止、数、形、大きさ）についての感覚（共通感覚）、�Ｉ嫗單�な感覚（例えば、色白であるものがディアレスの息子である場合、「ディアレスの息子」は視覚上の色白に付帯する事柄）、としています。
なお�△砲弔い討牢磧⊆�、鼻、舌、皮膚に相当するような特殊な感覚器官はなく、五感それぞれが付帯的に感覚する、としています。
共通感覚は、いわゆる常識（common sense）の語源となっています。この共通感覚とは、今、どの感覚で感覚しているのか、他の感覚ではこれをどう感覚するのか（見るだけでなく触わってみる、匂いだけでなく舐めてみる）等を指し、より明瞭に、より確かに把握するため五感の統合、協力作用を指していると思います。ですから＜共通＞より協働感覚とでも言ったほうが適切かも知れません。
哲学は、第二の学問に属する脳科学とは異なります。例えば、今日では感覚は五感だけでなく他に圧覚、温覚、冷覚、痛覚、運動感覚、臓器感覚、平衡感覚などが知られています。しかしアリストテレスが仮にこれらを知らなかったにしても哲学に関係ありません。
アリストテレスは共通感覚によって知られるものの一つとして「数」を挙げています。数えることと視覚が結びついている好例は十進法でしょう。十進法は、両手の指の数を基とし、指を順次曲げるなり伸ばすなりして数えることは誰もが（幼児を経験した者すべて）知っている筈です。なので形而上学では、数学は指の数や人間の数のレベルなので自然数で十分です。
また同種のものであっても、例えばバラの花はその花びらの形、色、大きさ、またそこから発する香りにより＜いろいろ＞、＜さまざま＞、＜あれこれ＞と、要するに＜たくさん＞あるのです。バラ園ならば赤だけ、白だけ、黄色だけを１本，２本、３本・・・と数えることも可能でしょう。
存在するもの（「ある」と言われるもの）の数の多いことを文字通り、形而上学では「多」と呼びます。
一と多とは、いろいろな仕方で対立している。（形而上学1054a20）
とした上で、その対立の仕方には
矛盾、欠如、反対性、相対関係の四通りがある。（形而上学1055b1）
としています。
ともあれ、この身近な感覚についてほかの箇所では、
さらに、我々は、いずれの感覚をも知恵であるとは見做さない。もちろんたしかに感覚は、個々特殊の物事については、きわめて重要な知識である。しかし、なにごとについてもそれのなにゆえにそうあるかを語らない。例えば、火のなにゆえに熱くあるかを説明しないで、ただ熱くあるという事実を告げるのみである。（形而上学981b10）
と言っています。
道路の歩行でも、車の運転でも感覚はフルに働かせなければなりません。それは強調しなければならないのだけど、他方高尚な学問となると感覚及び感覚に基盤をおく常識からは遠く離れなければならないのです。
そして、感覚されるものは以下三通りの意味で語られ、�‘汎辰粉恭仟仂櫃砲弔い討隆恭弌弊屬�ないことを、聴覚で知るとか、塩辛いことを触覚で知るとかいうことはありえない。即ち感覚分野を限って感覚すること）、��五感すべてに共通する感覚対象（運動、静止、数、形、大きさ）についての感覚（共通感覚）、�Ｉ嫗單�な感覚（例えば、色白であるものがディアレスの息子である場合、「ディアレスの息子」は視覚上の色白に付帯する事柄）、としています。
なお�△砲弔い討牢磧⊆�、鼻、舌、皮膚に相当するような特殊な感覚器官はなく、五感それぞれが付帯的に感覚する、としています。
共通感覚は、いわゆる常識（common sense）の語源となっています。この共通感覚とは、今、どの感覚で感覚しているのか、他の感覚ではこれをどう感覚するのか（見るだけでなく触わってみる、匂いだけでなく舐めてみる）等を指し、より明瞭に、より確かに把握するため五感の統合、協力作用を指していると思います。ですから＜共通＞より協働感覚とでも言ったほうが適切かも知れません。
哲学は、第二の学問に属する脳科学とは異なります。例えば、今日では感覚は五感だけでなく他に圧覚、温覚、冷覚、痛覚、運動感覚、臓器感覚、平衡感覚などが知られています。しかしアリストテレスが仮にこれらを知らなかったにしても哲学に関係ありません。
アリストテレスは共通感覚によって知られるものの一つとして「数」を挙げています。数えることと視覚が結びついている好例は十進法でしょう。十進法は、両手の指の数を基とし、指を順次曲げるなり伸ばすなりして数えることは誰もが（幼児を経験した者すべて）知っている筈です。なので形而上学では、数学は指の数や人間の数のレベルなので自然数で十分です。
また同種のものであっても、例えばバラの花はその花びらの形、色、大きさ、またそこから発する香りにより＜いろいろ＞、＜さまざま＞、＜あれこれ＞と、要するに＜たくさん＞あるのです。バラ園ならば赤だけ、白だけ、黄色だけを１本，２本、３本・・・と数えることも可能でしょう。
存在するもの（「ある」と言われるもの）の数の多いことを文字通り、形而上学では「多」と呼びます。
一と多とは、いろいろな仕方で対立している。（形而上学1054a20）
とした上で、その対立の仕方には
矛盾、欠如、反対性、相対関係の四通りがある。（形而上学1055b1）
としています。
ともあれ、この身近な感覚についてほかの箇所では、
さらに、我々は、いずれの感覚をも知恵であるとは見做さない。もちろんたしかに感覚は、個々特殊の物事については、きわめて重要な知識である。しかし、なにごとについてもそれのなにゆえにそうあるかを語らない。例えば、火のなにゆえに熱くあるかを説明しないで、ただ熱くあるという事実を告げるのみである。（形而上学981b10）
と言っています。
道路の歩行でも、車の運転でも感覚はフルに働かせなければなりません。それは強調しなければならないのだけど、他方高尚な学問となると感覚及び感覚に基盤をおく常識からは遠く離れなければならないのです。
思惟することにおいては正しく思惟することと正しくなく思惟することとがあるが、正しく思惟することというのは思慮、知識、真なる意見であり、正しくなく思惟することは以上のものどもの反対のものである---で、思惟することと感覚することとは同一ではない。何故なら感覚はその感覚に独特なものに関しては常に真である。そしてすべての動物にそれは備わっている。しかるに思考することはまた誤った仕方でもできる、そしてそれはまた理解力をも有する動物にでなければ、備わっていないからである。霊魂論427b10
とした上で、
「感覚なしには生ぜず、またそれなくしては思想が生じないところの心の様態」
として「表象」を持ち出します。表象とは記憶にあることから眼の前に作り出される感覚の似姿です。
さて先に、感覚は「なにゆえにそうある」のかを語らない、ことを述べましたが、これは火がその熱さを告げながらもその原因は告げないことを指します。
感覚の主導にただ従うだけになってしまうと、原因、特に必然としての原因が分かりません。必然とは、無論＜そうあるより他ではありえない＞ことです。
1.これら（呼吸、栄養物等）が存在しなければ動物は存在しえない
2.それ（労働）なくしては善いこと（金儲け）が存しないとか、それ（薬）なくして悪いこと（病気）から脱し得ない
3.衝動や意思により成そうとすること（自由な行動）が阻止、妨害されること
4.論証の必然性。三段論法の第一前提とされる事柄 （形而上学1015a20）
感覚は＜いろいろ＞あることを教えるため、その影響でとかく他説の評価というものが、＜違う見解もある＞、＜一理はある＞、＜一つの見方に過ぎない＞、＜一長一短の説だ＞等「多」のおさらいのような形になってきます。また取り上げる学説は、諸説いろいろあるうちのどれを選ぶかという必然ならぬ選択肢の問題のようにもなりかねません。
もし永遠的で不変不動ななにものかがあるとすれば、これを強制するなにものもなく、またその自然にさからうなにものも存しない。（形而上学1015a20）
強制する＝上記1〜3のように必然の原因が当のものとは別にありそこから強制されること
自然にさからうものなし＝必然という自然にただ従うのみ、必然に逆らうものは一切ないこと
述者の不在。
感覚器官は他の人間と接続はないのにそれによる知は自分のみでなく、他の人間にも同等に感覚すること（特に、視覚）を教えます。そこで誰が感覚するのか、とか、誰が感覚的に＜ある＞と言うのかなど一切気にならなくなるのです。例えば、富士山は（＜ある＞と言わなくても）＜ある＞、等。
述者の不在は、言葉が生まれるその場に誰もいないのに「ある」と述べられるという奇妙な現象を指します。
先に述べた主観の説明、
主観とはその人ひとりのものの見方
について言うならば、述者は
「人ひとり」つまり自分のものの見方に従えば、主観とは人ひとり（つまり自分）のものの見方である
とおっしゃっているようです。そして、その人ひとりのものの見方という見方には、客観に比して偏った見方という意味がこめられています。換言するなら、
偏ったものの見方に従えば、主観とは偏ったものの見方である。
即ち、自己言及です。説明に成功したか失敗したか不明でしょう。これを、
私の見方を除く偏ったものの見方に従えば、主観とは偏ったものの見方である、という誤りが生まれる。
と改めるとどうでしょうか。
主観とは、結局のところ、論理による自分の知の肯定であり、言葉には必然的に含まれる＜ある＞の肯定です。そして述者（固有名詞を意味しない）は欠かせません。
とした上で、
「感覚なしには生ぜず、またそれなくしては思想が生じないところの心の様態」
として「表象」を持ち出します。表象とは記憶にあることから眼の前に作り出される感覚の似姿です。
さて先に、感覚は「なにゆえにそうある」のかを語らない、ことを述べましたが、これは火がその熱さを告げながらもその原因は告げないことを指します。
感覚の主導にただ従うだけになってしまうと、原因、特に必然としての原因が分かりません。必然とは、無論＜そうあるより他ではありえない＞ことです。
1.これら（呼吸、栄養物等）が存在しなければ動物は存在しえない
2.それ（労働）なくしては善いこと（金儲け）が存しないとか、それ（薬）なくして悪いこと（病気）から脱し得ない
3.衝動や意思により成そうとすること（自由な行動）が阻止、妨害されること
4.論証の必然性。三段論法の第一前提とされる事柄 （形而上学1015a20）
感覚は＜いろいろ＞あることを教えるため、その影響でとかく他説の評価というものが、＜違う見解もある＞、＜一理はある＞、＜一つの見方に過ぎない＞、＜一長一短の説だ＞等「多」のおさらいのような形になってきます。また取り上げる学説は、諸説いろいろあるうちのどれを選ぶかという必然ならぬ選択肢の問題のようにもなりかねません。
もし永遠的で不変不動ななにものかがあるとすれば、これを強制するなにものもなく、またその自然にさからうなにものも存しない。（形而上学1015a20）
強制する＝上記1〜3のように必然の原因が当のものとは別にありそこから強制されること
自然にさからうものなし＝必然という自然にただ従うのみ、必然に逆らうものは一切ないこと
述者の不在。
感覚器官は他の人間と接続はないのにそれによる知は自分のみでなく、他の人間にも同等に感覚すること（特に、視覚）を教えます。そこで誰が感覚するのか、とか、誰が感覚的に＜ある＞と言うのかなど一切気にならなくなるのです。例えば、富士山は（＜ある＞と言わなくても）＜ある＞、等。
述者の不在は、言葉が生まれるその場に誰もいないのに「ある」と述べられるという奇妙な現象を指します。
先に述べた主観の説明、
主観とはその人ひとりのものの見方
について言うならば、述者は
「人ひとり」つまり自分のものの見方に従えば、主観とは人ひとり（つまり自分）のものの見方である
とおっしゃっているようです。そして、その人ひとりのものの見方という見方には、客観に比して偏った見方という意味がこめられています。換言するなら、
偏ったものの見方に従えば、主観とは偏ったものの見方である。
即ち、自己言及です。説明に成功したか失敗したか不明でしょう。これを、
私の見方を除く偏ったものの見方に従えば、主観とは偏ったものの見方である、という誤りが生まれる。
と改めるとどうでしょうか。
主観とは、結局のところ、論理による自分の知の肯定であり、言葉には必然的に含まれる＜ある＞の肯定です。そして述者（固有名詞を意味しない）は欠かせません。
江戸時代後期（ほゞカントとヘーゲルの間）の或る学者はその著書でこう述べています。
すべて人の知は限りが有って、真の理は得知れぬものじゃによって、ともかくに神の御上は猥りに測り言うべきものではないで、まして善いも悪いもいと尊き殊れたる神たちの御上に至っては、いともいとも霊しく奇々妙々にましますによって、更に人の小さき知恵を以てその理などは千重の一重も測り知るべきことではない、ただその尊きを尊び、畏きを畏み、恐るべきを恐れてあるべきものでござる。
まず、＜人の知には限りがある＞という点が知者に相応しくありません。
確かに身体的能力、例えば、速く走る、重いものを持ち上げるなどには限度があり、知に関するものでも、例えば、記憶能力には限度があります。
が、形而上学なる学では違うのです。
＜知には限りがある＞と言われるその「ある」（存在）の探究に従うなら完結があるのです。完結すれば未知はなくなります。だから本当は人の＜未知＞には限りがある、と言うべきです。人の知に限りがあるのでは未知が残ってしまいます。
既知（人の知には限りがあると言われるその限りにおける知）
未知（人の知には限りがあると言われるその限りから先の知）
ところが、未知であるのに知の限りの先に＜なにやら＞述べられているのでそれも＜知＞とすると、その＜なにやら＞部分は二つの合成、つまり既知（＜ある＞と言える＝＜ある＞）と未知（＜ある＞と言えない＝＜あらぬ＞）の合成と解することにならざるを得ません。＜ある＞と＜あらぬ＞を一度に述べるのは矛盾です。述べられたこと全体は、既知＋矛盾。
では、既知だけは健全なのかというとそうではありません。矛盾との合成を受け容れるからです。
始めから一気に未知を消滅させておくならば、上記学者の説とは大いに異なって結局、＜真の理は知れる＞ということに当然なります。
この学者の用いる人（人間）、知（知恵）、限り、真、理、有る（ござる）、神、神たちなどの語は十分形而上学に通じるものですが、全体は未完（偽）です。これはひとえに学問の方法を知っていないからで、もし形而上学の＜方法＞を学んでいるなら自らの学を形而上学において完結させる可能性があります。
古今東西、誰でも人間は＜ある＞の語を使っています。何を述べるのにもこれを欠くことはできません。俗語「いつまでも＜ある＞と思うな親と金」くらいはよく理解されています。
誰もが＜ある＞の語を使うことから見れば、＜ある＞の使用は必然だし、学問にも必然です。
なぜなら、学はすべて常にそうある物事か或は多くの場合そうある物事かに関する認識である。形而上学1027a20
常にそうある物事＝必然としての物事
論理による推論は必然です。必然でない推論は偽に陥るのです。即ち偶然に頼ることです。
学の完結について。
以上述べたことに関してもう一つ念頭におくべきことがあります。
それは、第一の学、第二の学それぞれの持つ性格の違いです。
第一の学（形而上学）は完結型ですが、第二の学（数学、物理学、化学、自然学、生物学、社会学とそれぞれの系列の諸学、簡略に言えば形而上学以外すべてを指します）は発展型です。
先の例は第二の学でなくて第一の学関連であり、従って、未完結で止め＜後者に託す、誤りがあったら直してくれ＞というわけにはいきません。後者、その後者・・・では際限がないから。
完結とは、「限り」です。
存在動詞は、日本語の場合は基本的に＜ある＞、＜いる＞、＜おる＞です。。
（英語は、下記Metaphysicsを参照しました）
https://ebooks.adelaide.edu.au/a/aristotle/metaphysics/book5.html
＜ある＞は、生命を有する存在を除いた一般的存在に用いられ、＜いる＞、＜おる＞は生命を有する存在、即ち人間をはじめその他生き物の存在です。
但し、＜思考の産物＞については、計画が＜ある＞、夢が＜ある＞、やる気が＜ある＞、のように言われていて、計画が＜いる＞、夢が＜いる＞、やる気が＜いる＞のようには使われません。
この＜ある＞に接続詞＜が＞を含めた＜・・・がある＞について、これを＜それ自体においてby their own nature＞「ある」こと＞を第一義の存在とします。
先に「ある」ことがなければ、それについて何か述べること（述語付け）もあり得ない筈です。換言すれば、次のような述語の諸形態があれば、それに先立つ第一義の存在が必ずあることになります
述語の諸形態
第一義の存在に対し、
＜・・・＞は（とは）＜〜〜〜＞（で、に、には）「ある」
の形は、上記の第一義の存在（主語、基体）について述べる様々の付帯的存在（付帯性）in an accidental senseを意味します。
付帯的諸存在とは、第一義の存在に関して、実体・本質、性質、分量、関係、能動、受動、場所、時間の述語付けをする「ある」です。
或るところにおじいさんとおばあさん＜が＞住んでいます＜いる＞
或る日彼等の仕事とは、おじいさん＜は＞山の柴刈、おばあさんは川での洗濯＜です（である）＞
敵が＜いる＞
その居場所は本能寺＜である＞
日本が＜ある＞
日本は神の国＜である＞
憲法改正（問題）が＜ある＞
私は、改正に賛成しない（反対）＜である＞
我思う、ゆえに我あり（デカルトの言葉）
これは、
私が＜いる＞
私は思うもの＜である＞、故に、私が『いる』
とした上で一行目を省いた形と考えます。『いる』は、彼の深い考察の成果であり、＜いる＞は考察の出発点だからです。＜いる＞ことなくして『いる』を知ることはなく、そして『いる』ことを得て後に＜いる＞即ち出発点を知るということでしょう。
＜になる＞はどうでしょうか。
８に１２を加えると２０＜になる＞→８に１２を加えると２０＜である＞
＜を加えるとするなら＞に当然20＜である＞、の意味のようです。
また、＜いる＞については、他の一般動詞と結合した形＜歩いている＞、＜飛んでいる＞、＜止まっている＞などがあります。これらが、或る何らかの状態が持続又は持続見込みであることを意味するならば、
歩いて＜いる＞→歩行中＜である＞
飛んで＜いる＞→飛行（飛翔）中＜である＞
流れて＜いる＞→流動中＜である＞
止まって＜いる＞→静止（不活動）中＜である＞
腐って＜いる＞→腐敗中である
死んで＜いる＞→死（死亡中）＜である＞
忘れて＜いる＞→忘失中＜である＞
失って＜いる＞→喪失中＜である＞、
などということになります。これは運動、静止の二つどちらもが一時的なもの（静止しているものが静止を続けず、運動しているものが運動を続けない））と把握しているのではないでしょうか。
実のところ、ものが同時にあり且つあらぬという人々は、結局、すべてのものが運動していると言うよりかむしろすべてが静止していると言うべきだ、ということになろう、なぜなら、かれらによると、すでにあらゆる属性があらゆる基体に内在しているわけであるから、転化してなにかになろうにもなにも存在していないはずだからである。形而上学1010a30
（あらゆる属性all attributesは、付帯的存在に同じ）
（英語は、下記Metaphysicsを参照しました）
https://ebooks.adelaide.edu.au/a/aristotle/metaphysics/book5.html
＜ある＞は、生命を有する存在を除いた一般的存在に用いられ、＜いる＞、＜おる＞は生命を有する存在、即ち人間をはじめその他生き物の存在です。
但し、＜思考の産物＞については、計画が＜ある＞、夢が＜ある＞、やる気が＜ある＞、のように言われていて、計画が＜いる＞、夢が＜いる＞、やる気が＜いる＞のようには使われません。
この＜ある＞に接続詞＜が＞を含めた＜・・・がある＞について、これを＜それ自体においてby their own nature＞「ある」こと＞を第一義の存在とします。
先に「ある」ことがなければ、それについて何か述べること（述語付け）もあり得ない筈です。換言すれば、次のような述語の諸形態があれば、それに先立つ第一義の存在が必ずあることになります
述語の諸形態
第一義の存在に対し、
＜・・・＞は（とは）＜〜〜〜＞（で、に、には）「ある」
の形は、上記の第一義の存在（主語、基体）について述べる様々の付帯的存在（付帯性）in an accidental senseを意味します。
付帯的諸存在とは、第一義の存在に関して、実体・本質、性質、分量、関係、能動、受動、場所、時間の述語付けをする「ある」です。
或るところにおじいさんとおばあさん＜が＞住んでいます＜いる＞
或る日彼等の仕事とは、おじいさん＜は＞山の柴刈、おばあさんは川での洗濯＜です（である）＞
敵が＜いる＞
その居場所は本能寺＜である＞
日本が＜ある＞
日本は神の国＜である＞
憲法改正（問題）が＜ある＞
私は、改正に賛成しない（反対）＜である＞
我思う、ゆえに我あり（デカルトの言葉）
これは、
私が＜いる＞
私は思うもの＜である＞、故に、私が『いる』
とした上で一行目を省いた形と考えます。『いる』は、彼の深い考察の成果であり、＜いる＞は考察の出発点だからです。＜いる＞ことなくして『いる』を知ることはなく、そして『いる』ことを得て後に＜いる＞即ち出発点を知るということでしょう。
＜になる＞はどうでしょうか。
８に１２を加えると２０＜になる＞→８に１２を加えると２０＜である＞
＜を加えるとするなら＞に当然20＜である＞、の意味のようです。
また、＜いる＞については、他の一般動詞と結合した形＜歩いている＞、＜飛んでいる＞、＜止まっている＞などがあります。これらが、或る何らかの状態が持続又は持続見込みであることを意味するならば、
歩いて＜いる＞→歩行中＜である＞
飛んで＜いる＞→飛行（飛翔）中＜である＞
流れて＜いる＞→流動中＜である＞
止まって＜いる＞→静止（不活動）中＜である＞
腐って＜いる＞→腐敗中である
死んで＜いる＞→死（死亡中）＜である＞
忘れて＜いる＞→忘失中＜である＞
失って＜いる＞→喪失中＜である＞、
などということになります。これは運動、静止の二つどちらもが一時的なもの（静止しているものが静止を続けず、運動しているものが運動を続けない））と把握しているのではないでしょうか。
実のところ、ものが同時にあり且つあらぬという人々は、結局、すべてのものが運動していると言うよりかむしろすべてが静止していると言うべきだ、ということになろう、なぜなら、かれらによると、すでにあらゆる属性があらゆる基体に内在しているわけであるから、転化してなにかになろうにもなにも存在していないはずだからである。形而上学1010a30
（あらゆる属性all attributesは、付帯的存在に同じ）
ヘラクレイトスは万物流転の説を説いた者として知られています。
同じ河に二度はいることはできない・・・散らばっては再び集まって来・・・また近寄っては去っていく。（断片集）
（彼はただこの一つだけ言っているのではないことは後述します）
アリストテレスはプロタゴラスの＜ものが同時にあり且つあらぬ＞説とこの＜すべてのものが運動している＞説を同一視しており、また事実そうなのです。
なるほど、物理としては川はかくのごとく水が流れています。浅い川にズボンの裾をまくって入るなら、脚の前で水は別れ後でまた一緒になるのだから。しかし、＜万物＞がそうだとは言えないのです。脚が常に新しい水にさらされているように＜知＞も同様にやってくるのなら結局は、確固たる知（究極の認識）はありえないことになります。
一つの知が流れ去って次の知が来る、その知もまた次に来る知によって流れ去り、新しくやって来た知はとどまることなくすぐ流れ去る・・・こうした連鎖が果てしなく続くことになります。他方、人間には必ず死が待ち構えています。限られた時間内に認識できないことは認識不可能を意味します。
プロタゴラス説については、
もし誰かに人間が船では＜あらぬ＞と思えるなら明らかに人間は船では＜あらぬ＞のであり、従ってまた船でも＜ある＞のである。なぜなら矛盾する述語がともに真であるというのだから。1007b20
＜人間は人間である＞というに留まるところを、＜人間は人間であり且つ人間ではあらぬ＞とすると、後半「人間ではあらぬ」部分は＜人間あらぬもの＞なら何でも妥当なゆえに途方もないことになります、例えば、船は明確に人間では＜あらぬ＞のでこれを「人間」の代り挿入すると、
人間は＜人間であり且つ船である＞
ところがこの「船である」部分にも＜あり且つあらぬ＞ことが働くので＜船であらぬもの＞、例えば、馬
人間は＜人間であり船であり馬である・・・＞
とにかく最初の＜ある＞で止めることができないため、人間は、更に月であり壁であり神である・・と果てることなく続きます。
以上のことは、要するに知が暴走する（延長する）のに似て、先の万物流動説と同様に一定の認識に達することの否定、つまり認識不可能を意味するのです。
また、＜すべてのものが運動していると言うよりかむしろすべてが静止していると言うべき＞については、
認識者（哲学者）に＜なる＞ということに関して、その＜なる＞という静止がありえないのでなにかになろうにもなにもなるものは存在していないはずだ、という訳です。そうであるならなることもなく運動もない、意外にもかの論は万物静止説ではないか、ということです。
ここでいう認識者（哲学者）とは誰々といった一部の人間を指すのではなく、すべての人間を可能態とし、そこから認識に到達した人間の全部を指します。不可能態というものはありません。可能態から出るのに排除すべきものが偽＜非存在＞であり、それがとりもなおさず矛盾と万物流動説ということになります。
前回投稿に＜なる＞と＜である＞の類似を少し述べました。改めて＜なる＞の使用例を取り上げます。
眠くなる、高くなる
大人になる、眠くなる
春になる、暗くなる
二直角になる、有名になる
戦争になる、平和になる
＜である＞は静的であるのに対し、＜なる＞は変化を意味するようです。ただ多くは人為を超えた変化（自然にそうなる）ですが、では開戦や終戦までもが人為を超えたものなのでしょうか。
（一行目）第一義の
〜が・・・ある
（二行目）述語付きの
＜・・・＞は（とは）＜〜〜〜＞（で、に、には）ある
に戻ります。
実際の文は、二行目の（主語・基体）＋述語の形がほとんどです。むしろこの形から一行目の第一義の存在が明らかになるのです。
アリストテレスは弥生時代初期の日本語を知らず形而上学を書いたのですが、それが今我々の語る日本語にそっくりと言っていいくらい当てはまるというのは実に不思議な気持ちです。時代、言語、国柄が大きく異なるのに。
おそらくこれは幾何で言うならその公理にあたる「ある（存在すること）」、それに理・理屈（ロゴス）への着眼によるのでしょう。
述語の意味内容の分類は、カテゴリー論にその詳細があります。そこでは先の８カテゴリーに状況、所持の２カテゴリーを加えた１０カテゴリーとなっています。
同じ河に二度はいることはできない・・・散らばっては再び集まって来・・・また近寄っては去っていく。（断片集）
（彼はただこの一つだけ言っているのではないことは後述します）
アリストテレスはプロタゴラスの＜ものが同時にあり且つあらぬ＞説とこの＜すべてのものが運動している＞説を同一視しており、また事実そうなのです。
なるほど、物理としては川はかくのごとく水が流れています。浅い川にズボンの裾をまくって入るなら、脚の前で水は別れ後でまた一緒になるのだから。しかし、＜万物＞がそうだとは言えないのです。脚が常に新しい水にさらされているように＜知＞も同様にやってくるのなら結局は、確固たる知（究極の認識）はありえないことになります。
一つの知が流れ去って次の知が来る、その知もまた次に来る知によって流れ去り、新しくやって来た知はとどまることなくすぐ流れ去る・・・こうした連鎖が果てしなく続くことになります。他方、人間には必ず死が待ち構えています。限られた時間内に認識できないことは認識不可能を意味します。
プロタゴラス説については、
もし誰かに人間が船では＜あらぬ＞と思えるなら明らかに人間は船では＜あらぬ＞のであり、従ってまた船でも＜ある＞のである。なぜなら矛盾する述語がともに真であるというのだから。1007b20
＜人間は人間である＞というに留まるところを、＜人間は人間であり且つ人間ではあらぬ＞とすると、後半「人間ではあらぬ」部分は＜人間あらぬもの＞なら何でも妥当なゆえに途方もないことになります、例えば、船は明確に人間では＜あらぬ＞のでこれを「人間」の代り挿入すると、
人間は＜人間であり且つ船である＞
ところがこの「船である」部分にも＜あり且つあらぬ＞ことが働くので＜船であらぬもの＞、例えば、馬
人間は＜人間であり船であり馬である・・・＞
とにかく最初の＜ある＞で止めることができないため、人間は、更に月であり壁であり神である・・と果てることなく続きます。
以上のことは、要するに知が暴走する（延長する）のに似て、先の万物流動説と同様に一定の認識に達することの否定、つまり認識不可能を意味するのです。
また、＜すべてのものが運動していると言うよりかむしろすべてが静止していると言うべき＞については、
認識者（哲学者）に＜なる＞ということに関して、その＜なる＞という静止がありえないのでなにかになろうにもなにもなるものは存在していないはずだ、という訳です。そうであるならなることもなく運動もない、意外にもかの論は万物静止説ではないか、ということです。
ここでいう認識者（哲学者）とは誰々といった一部の人間を指すのではなく、すべての人間を可能態とし、そこから認識に到達した人間の全部を指します。不可能態というものはありません。可能態から出るのに排除すべきものが偽＜非存在＞であり、それがとりもなおさず矛盾と万物流動説ということになります。
前回投稿に＜なる＞と＜である＞の類似を少し述べました。改めて＜なる＞の使用例を取り上げます。
眠くなる、高くなる
大人になる、眠くなる
春になる、暗くなる
二直角になる、有名になる
戦争になる、平和になる
＜である＞は静的であるのに対し、＜なる＞は変化を意味するようです。ただ多くは人為を超えた変化（自然にそうなる）ですが、では開戦や終戦までもが人為を超えたものなのでしょうか。
（一行目）第一義の
〜が・・・ある
（二行目）述語付きの
＜・・・＞は（とは）＜〜〜〜＞（で、に、には）ある
に戻ります。
実際の文は、二行目の（主語・基体）＋述語の形がほとんどです。むしろこの形から一行目の第一義の存在が明らかになるのです。
アリストテレスは弥生時代初期の日本語を知らず形而上学を書いたのですが、それが今我々の語る日本語にそっくりと言っていいくらい当てはまるというのは実に不思議な気持ちです。時代、言語、国柄が大きく異なるのに。
おそらくこれは幾何で言うならその公理にあたる「ある（存在すること）」、それに理・理屈（ロゴス）への着眼によるのでしょう。
述語の意味内容の分類は、カテゴリー論にその詳細があります。そこでは先の８カテゴリーに状況、所持の２カテゴリーを加えた１０カテゴリーとなっています。
述語について「形而上学」の訳者は、
西洋の学会では前者を「存在（エグジステンス）としての＜ある＞」と呼び後者を「繋辞（コプラ）としての＜ある＞として区別している。これは日本語ではあまり問題にならない。日本語では、後者の場合、「である」の「ある」をも用いないで、むしろ別の語で例えば「人間だ」「白い」「二尺です」等々言うのが普通である。・・・
それがために、この「ある」＝「存在」、「である」＝「がある」をめぐって、現にエレア学派からソクラテス門下の詭弁家たちにいたる怪しい論議もなされたわけである。
・人間だ→人間＜である＞
・白い→白色＜である＞
日本語では、形容詞で終わる文には＜である＞がないけれど同義でその形にすることはできます。但し＜面白い＞とか＜美しい＞などのように多様さが付きまとう場合には容易に名詞化できません。だからその場合＜面白い＞＜美しい＞そのままでもよいのです。そのようにしても述語の意義、即ち＜主語に関して何事かを述べるもの＞という性格が変わりはしないから。
・二尺です→二尺＜である＞
岩石落下の恐れがある、のように＜である＞でなく＜がある＞で終わる場合は
恐れがある、と、それは岩石の落下＜である＞、の二行に解釈すればいいのです。
主辞、賓辞、繋辞について
吾輩はレオという名の猫である
＜吾輩＞は主辞、＜レオと言う名の猫＞は賓辞、＜は〜である＞は繋辞です。
英語など印欧語では繋辞が主辞と賓辞とを＜繋ぐ＞位置にあり、明治期にそのような訳語を使い始めたものと思います。一般に、繋辞の＜は＞は主辞と賓辞の間にあり、＜である）は末尾にあって全体を締めくくります。
基体の定義
基体というのは、他の物事はそれの述語とされるが、それ、自らは決して他のなにものの述語ともされないそれ〔主語そのもの〕のことである。1028b30
（例えば、富士を想定してください）
＜それ＞は富士である、
＜それ＞は日本一高い山である
＜それ＞は美しい姿である
＜それ＞を基体として上記のように他の物事は＜それ＞の述語とされます。他方下記のようにすれば、＜それ＞自らは他のなにものの述語ともされないことが明らかになります。
御嶽山はそれではあらぬ
日本で五番目に高い山はそれではあらぬ
不格好な山はそれではあらぬ
仮に他のなにものかの述語にされるのならば、御嶽山は富士である、日本で五番目に高い山は富士である、不格好な山は富士である、ということになるでしょう。
述語とはかくの如くであり、日常会話、政治的発言、神話、女性語、古語、学術その他何であれ、すべてこうなります。もちろん形而上学各巻各章の記述自身もがそれに従っています。それのみか下記もそうです。
・店頭の或る品に「298円」の値札が付いている
この品は298円＜である＞
・店に入って店員に「カツドン」と言えば
私の注文はカツドン＜である＞
・グラウンドで監督が子供たちに「あつまれぇ」と声をかけます
「あつまれぇ」とは私の指示＜である＞
（状況、場面により指示だけでなくご案内、依頼、命令なども考えられます）
映画「カサブランカ」にこんなシーンがあります。
歌うたい兼ピアノ弾きのサムがAs Time Goes Byを弾き始める。するとそこに店主のリックがやって来て言います。「その曲は弾くなと言ってるだろ？」。サムはそばのテーブルを目配せします。（あの方のご注文です＜である＞）と。
確かに目は口ほどにモノを言うのです（ボディランゲージ）。
誰でも話しているのでそれでもう言葉について語る資格があるように思っている（ゲーテ、「格言と反省」）
西洋の学会では前者を「存在（エグジステンス）としての＜ある＞」と呼び後者を「繋辞（コプラ）としての＜ある＞として区別している。これは日本語ではあまり問題にならない。日本語では、後者の場合、「である」の「ある」をも用いないで、むしろ別の語で例えば「人間だ」「白い」「二尺です」等々言うのが普通である。・・・
それがために、この「ある」＝「存在」、「である」＝「がある」をめぐって、現にエレア学派からソクラテス門下の詭弁家たちにいたる怪しい論議もなされたわけである。
・人間だ→人間＜である＞
・白い→白色＜である＞
日本語では、形容詞で終わる文には＜である＞がないけれど同義でその形にすることはできます。但し＜面白い＞とか＜美しい＞などのように多様さが付きまとう場合には容易に名詞化できません。だからその場合＜面白い＞＜美しい＞そのままでもよいのです。そのようにしても述語の意義、即ち＜主語に関して何事かを述べるもの＞という性格が変わりはしないから。
・二尺です→二尺＜である＞
岩石落下の恐れがある、のように＜である＞でなく＜がある＞で終わる場合は
恐れがある、と、それは岩石の落下＜である＞、の二行に解釈すればいいのです。
主辞、賓辞、繋辞について
吾輩はレオという名の猫である
＜吾輩＞は主辞、＜レオと言う名の猫＞は賓辞、＜は〜である＞は繋辞です。
英語など印欧語では繋辞が主辞と賓辞とを＜繋ぐ＞位置にあり、明治期にそのような訳語を使い始めたものと思います。一般に、繋辞の＜は＞は主辞と賓辞の間にあり、＜である）は末尾にあって全体を締めくくります。
基体の定義
基体というのは、他の物事はそれの述語とされるが、それ、自らは決して他のなにものの述語ともされないそれ〔主語そのもの〕のことである。1028b30
（例えば、富士を想定してください）
＜それ＞は富士である、
＜それ＞は日本一高い山である
＜それ＞は美しい姿である
＜それ＞を基体として上記のように他の物事は＜それ＞の述語とされます。他方下記のようにすれば、＜それ＞自らは他のなにものの述語ともされないことが明らかになります。
御嶽山はそれではあらぬ
日本で五番目に高い山はそれではあらぬ
不格好な山はそれではあらぬ
仮に他のなにものかの述語にされるのならば、御嶽山は富士である、日本で五番目に高い山は富士である、不格好な山は富士である、ということになるでしょう。
述語とはかくの如くであり、日常会話、政治的発言、神話、女性語、古語、学術その他何であれ、すべてこうなります。もちろん形而上学各巻各章の記述自身もがそれに従っています。それのみか下記もそうです。
・店頭の或る品に「298円」の値札が付いている
この品は298円＜である＞
・店に入って店員に「カツドン」と言えば
私の注文はカツドン＜である＞
・グラウンドで監督が子供たちに「あつまれぇ」と声をかけます
「あつまれぇ」とは私の指示＜である＞
（状況、場面により指示だけでなくご案内、依頼、命令なども考えられます）
映画「カサブランカ」にこんなシーンがあります。
歌うたい兼ピアノ弾きのサムがAs Time Goes Byを弾き始める。するとそこに店主のリックがやって来て言います。「その曲は弾くなと言ってるだろ？」。サムはそばのテーブルを目配せします。（あの方のご注文です＜である＞）と。
確かに目は口ほどにモノを言うのです（ボディランゲージ）。
誰でも話しているのでそれでもう言葉について語る資格があるように思っている（ゲーテ、「格言と反省」）
要約すると、これまでのところ＜ある＞に関しては、一応次のようになります。
�� 第一義（�△亮膰譟Υ霏痢�
・・・がある
・・・があらぬ
�� 述語付き
は・・・である
は（とは）・・・であらぬ（ではあらぬ）
ヘラクレイトスの言葉です。（断片集）
・彼は誰の弟子にもならなかった。むしろ彼は「自分自身を探究して、凡てのことを自分自身から学んだ」と言った
・人々は理性を以て言動し、ちょうど国が法を以て強化するように、万物に共通なものを以て自らを強化しなければならない
・しかるにこのロゴスが共通なものとしてあるのだけれども、多くの人間どもはめいめい、あたかも自分に特別な見識があるかのように生きている
・私にではなく、ロゴスに聞いて万物が一であることを認めるのが、智というものだ
・人間どもにとって眼や耳は悪しき証人である。彼等がわけの分からぬ魂を持っている限り
ロゴスは「理」、そして理は言葉に含まれるので「言葉」、つまり＜理＞と＜言葉＞の両方の意味を持っています。
先に紹介した江戸期の或る日本の学者は、そこに、
すべて人の知は限りが有って、眞の理は得知れぬものじゃ（によって）、・・・
と言っています。
すべて人の知は限りが有る
（知は、理に従う）
（眞の理は、眞ならざる＜偽の理＞を排除した理である）
ところが、その眞の理は得知れぬものである
と解釈すれば、上から三行目まではアリストテレスが読んだとしても「そうだ」頷くでしょう。ですから、この学者がもし形而上学を学んでいたなら四行目は書き換えると思われるのです。
眞の理は知れるものじゃ、と。
とはいえ、そこに到達するにはかなり勉強は必要ですが。
そこで今言いたいのは、ロゴスは、＜古代の＞、＜ギリシャの＞、＜西洋の＞と言わずに、我々日本人も知っているということです。
そして、そろそろ＜初めにロゴスありき＞を認めようではありませんか。
理（理性）は、原理であり、またそれらを解する能力でもあります。
或る人が理性を動物のうちにあるように自然のうちにも内在するとみて、これをこの世界のすべての秩序と配列の原因であると言ったとき、この人のみが目覚めた人で、これにくらべるとこれまでの人々はまるでたわごとを言っていたものかともみえたほどである。984b10
この目覚めた人は、アナクサゴラスです。
自然界は別として、言葉のうちのロゴスは、第一に「区別」でしょう。
＜がある＞と＜があらぬ＞の区別
＜である＞と＜であらぬ＞の区別
＜＜がある＞と＜があらぬ＞＞と＜＜である＞と＜であらぬ＞＞の区別
�� 第一義（�△亮膰譟Υ霏痢�
・・・がある
・・・があらぬ
�� 述語付き
は・・・である
は（とは）・・・であらぬ（ではあらぬ）
ヘラクレイトスの言葉です。（断片集）
・彼は誰の弟子にもならなかった。むしろ彼は「自分自身を探究して、凡てのことを自分自身から学んだ」と言った
・人々は理性を以て言動し、ちょうど国が法を以て強化するように、万物に共通なものを以て自らを強化しなければならない
・しかるにこのロゴスが共通なものとしてあるのだけれども、多くの人間どもはめいめい、あたかも自分に特別な見識があるかのように生きている
・私にではなく、ロゴスに聞いて万物が一であることを認めるのが、智というものだ
・人間どもにとって眼や耳は悪しき証人である。彼等がわけの分からぬ魂を持っている限り
ロゴスは「理」、そして理は言葉に含まれるので「言葉」、つまり＜理＞と＜言葉＞の両方の意味を持っています。
先に紹介した江戸期の或る日本の学者は、そこに、
すべて人の知は限りが有って、眞の理は得知れぬものじゃ（によって）、・・・
と言っています。
すべて人の知は限りが有る
（知は、理に従う）
（眞の理は、眞ならざる＜偽の理＞を排除した理である）
ところが、その眞の理は得知れぬものである
と解釈すれば、上から三行目まではアリストテレスが読んだとしても「そうだ」頷くでしょう。ですから、この学者がもし形而上学を学んでいたなら四行目は書き換えると思われるのです。
眞の理は知れるものじゃ、と。
とはいえ、そこに到達するにはかなり勉強は必要ですが。
そこで今言いたいのは、ロゴスは、＜古代の＞、＜ギリシャの＞、＜西洋の＞と言わずに、我々日本人も知っているということです。
そして、そろそろ＜初めにロゴスありき＞を認めようではありませんか。
理（理性）は、原理であり、またそれらを解する能力でもあります。
或る人が理性を動物のうちにあるように自然のうちにも内在するとみて、これをこの世界のすべての秩序と配列の原因であると言ったとき、この人のみが目覚めた人で、これにくらべるとこれまでの人々はまるでたわごとを言っていたものかともみえたほどである。984b10
この目覚めた人は、アナクサゴラスです。
自然界は別として、言葉のうちのロゴスは、第一に「区別」でしょう。
＜がある＞と＜があらぬ＞の区別
＜である＞と＜であらぬ＞の区別
＜＜がある＞と＜があらぬ＞＞と＜＜である＞と＜であらぬ＞＞の区別
あなたがいる
あなたは、私の太陽である
「オー・ソレ・ミオ」は素晴らしい。言ってみたいし聞いてみたいものです。アリストテレスは、＜歌うたいが嘘八百を言う＞と言っていますが、少なくともこの歌はそうではありません。
�� 第一義（�△亮膰譟Υ霏痢砲里△襦ΑΑ� 「がある」
�� �，暴匕譴鯢佞后ΑΑΑ屬任△襦�
ネットを見ると、日本語には主語が＜ない＞、とか、＜あったりなかったりする＞、とか、遂には、主語は＜いらない＞、などと言われているようです。
これは英語と比較し、述語は別にして、主語の有無、要否の話です。上の例に取り込むと、
あなたがいる
xは、私の太陽である
となる訳ですが心配はありません。アイコンタクトとか抱擁とかが代りをするからです。それのみか一行目も要らないのです。ちなみにオー・ソレ・ミオはズバリ＜私の太陽＞です。
主語のある、なしは、音として或は文字として現れていなくても別の仕方でちゃんとこのようにあるのです。
しかしながら、一人称主語の不在は別に考えねばなりません。
あなたは、私の太陽である
「オー・ソレ・ミオ」は素晴らしい。言ってみたいし聞いてみたいものです。アリストテレスは、＜歌うたいが嘘八百を言う＞と言っていますが、少なくともこの歌はそうではありません。
�� 第一義（�△亮膰譟Υ霏痢砲里△襦ΑΑ� 「がある」
�� �，暴匕譴鯢佞后ΑΑΑ屬任△襦�
ネットを見ると、日本語には主語が＜ない＞、とか、＜あったりなかったりする＞、とか、遂には、主語は＜いらない＞、などと言われているようです。
これは英語と比較し、述語は別にして、主語の有無、要否の話です。上の例に取り込むと、
あなたがいる
xは、私の太陽である
となる訳ですが心配はありません。アイコンタクトとか抱擁とかが代りをするからです。それのみか一行目も要らないのです。ちなみにオー・ソレ・ミオはズバリ＜私の太陽＞です。
主語のある、なしは、音として或は文字として現れていなくても別の仕方でちゃんとこのようにあるのです。
しかしながら、一人称主語の不在は別に考えねばなりません。
「形而上学」の名はアリストテレスの著作を意識したものですが、「哲学」では多くの人があり、例えばヘーゲル。
下は、その「精神現象学序論」（岩崎武雄訳、中央公論社）の抜粋です（・で始まる数行）。
用語、表現は異なるもののアリストテレスと同じと言っていいくらいの思想内容なので、紹介しておきます。
（ ）内は私が挿入した語句と解釈です。
・学問がそれ自身としていかなるものであるにせよ、直接的な自己意識との関係においては、学問はさかさまのものとして現れる。
言い換えれば、自己意識は自分自身の確実さということに（あらかじめ）現実性の原理をもっており、そして自分は自分として学問の外にいると思っているのであるから、（これから立ち入ろうとする）学問は非現実的なものという相を呈するわけである。
（これから取り組むことになる学問は、その学習者には自分自身とは＜さかさま＞のものに向き合うことになる。
というのは、学習者が今持っている自己意識の＜現実的な確実さ＞と他にもう一つの＜現実的な確実さ（学問）＞という同時に二つはあり得ない現実性に直面することになるからである。
これから学ぶのであるから自分はまだ学問の外であり、だから当の学問は非現実的なものして現れているに違いない。
そこで、学問の＜現実的な確実さ＞の方を手にしようとするならば（学問に入るには）、今現に持っている自分の＜現実的な確実さ＞）の方を非現実のものとして、捨て去るしかないのである。）
・こうした現実性を欠いているかぎり、学問は（噛み砕かないで飲みこんだ状態、すなわち）即自としての内容であるにすぎず、まだ内なるもの（未消化のもの）であるにとどまっている（だけで）目的、精神としてあるのではなくて、（現実性のない）精神的実体たるにすぎぬものである。
（先立って意識が持つ自己確実性は学問に結び合わせなければならない。その作業によりそこに新たな＜現実性＞を見出さなければならない。でなければ、学問を進めようにもそれはただ未消化、未吸収のまゝであり、目的にも精神にも及ばず、学問はただ現実性のない精神的実体にすぎないものとなる）
・知識が最初にとる姿、すなわち直接的な精神は、まだ精神のないものであるところの、感覚的意識である。
感覚的意識とは
眼に見える、手触りがある、体を動かす、音・声を聞く、痛み・寒暖・匂いを知る、空腹・満腹、味を感じると言った＜現に本物に接しているという実感＞に基づくところの意識です。
これら諸感覚が人間の生存と行動に深く関係していることは言うまでもありません。誕生してのち寸時の中断もなく、生活や実用に必要な多くの何かを人間に＜教え続けている＞わけです。
ところが、その長い時間には、人間は、それによって＜知る＞以外の事が＜自然に＞教えられたり、或は＜知る＞のに制約が＜自然に＞加えられたり、また＜自然に＞曲げられたりする悪い側面があるのです。
それは、おそらく感覚器官の問題ではなくて知覚に属する事であり、そのため必然として思考、思想にも悪い影響（偽、或は仮象）が現れてきます。
ところが、この＜偽＞なるものは、人間が意図して取り入れたものでなく（偶然としての取り入れ）、あっても何ら痛痒、窮屈さ、気味悪さを感じないし、感覚のあまりの鮮明さに全注意をそっちに奪われ、規模の大小を問わず共同体においては、構成個人の間に等質性が維持されることなどによって、＜隠蔽＞されてしまい、自分にも他の人間にもそれに気付いたり発見したりすることは容易ではありません。
学問は、全く未知のものに向き合うのではなく、感覚に埋没することなく、むしろ感覚とは距離を置き、そしてこの＜偽、仮象＞から脱出する方向を目指すことになります。学問における「感覚」の語は、もっぱらそのような意味において用いられています。
なお、ここで言う学問は、「第一の学」のみです。
下は、その「精神現象学序論」（岩崎武雄訳、中央公論社）の抜粋です（・で始まる数行）。
用語、表現は異なるもののアリストテレスと同じと言っていいくらいの思想内容なので、紹介しておきます。
（ ）内は私が挿入した語句と解釈です。
・学問がそれ自身としていかなるものであるにせよ、直接的な自己意識との関係においては、学問はさかさまのものとして現れる。
言い換えれば、自己意識は自分自身の確実さということに（あらかじめ）現実性の原理をもっており、そして自分は自分として学問の外にいると思っているのであるから、（これから立ち入ろうとする）学問は非現実的なものという相を呈するわけである。
（これから取り組むことになる学問は、その学習者には自分自身とは＜さかさま＞のものに向き合うことになる。
というのは、学習者が今持っている自己意識の＜現実的な確実さ＞と他にもう一つの＜現実的な確実さ（学問）＞という同時に二つはあり得ない現実性に直面することになるからである。
これから学ぶのであるから自分はまだ学問の外であり、だから当の学問は非現実的なものして現れているに違いない。
そこで、学問の＜現実的な確実さ＞の方を手にしようとするならば（学問に入るには）、今現に持っている自分の＜現実的な確実さ＞）の方を非現実のものとして、捨て去るしかないのである。）
・こうした現実性を欠いているかぎり、学問は（噛み砕かないで飲みこんだ状態、すなわち）即自としての内容であるにすぎず、まだ内なるもの（未消化のもの）であるにとどまっている（だけで）目的、精神としてあるのではなくて、（現実性のない）精神的実体たるにすぎぬものである。
（先立って意識が持つ自己確実性は学問に結び合わせなければならない。その作業によりそこに新たな＜現実性＞を見出さなければならない。でなければ、学問を進めようにもそれはただ未消化、未吸収のまゝであり、目的にも精神にも及ばず、学問はただ現実性のない精神的実体にすぎないものとなる）
・知識が最初にとる姿、すなわち直接的な精神は、まだ精神のないものであるところの、感覚的意識である。
感覚的意識とは
眼に見える、手触りがある、体を動かす、音・声を聞く、痛み・寒暖・匂いを知る、空腹・満腹、味を感じると言った＜現に本物に接しているという実感＞に基づくところの意識です。
これら諸感覚が人間の生存と行動に深く関係していることは言うまでもありません。誕生してのち寸時の中断もなく、生活や実用に必要な多くの何かを人間に＜教え続けている＞わけです。
ところが、その長い時間には、人間は、それによって＜知る＞以外の事が＜自然に＞教えられたり、或は＜知る＞のに制約が＜自然に＞加えられたり、また＜自然に＞曲げられたりする悪い側面があるのです。
それは、おそらく感覚器官の問題ではなくて知覚に属する事であり、そのため必然として思考、思想にも悪い影響（偽、或は仮象）が現れてきます。
ところが、この＜偽＞なるものは、人間が意図して取り入れたものでなく（偶然としての取り入れ）、あっても何ら痛痒、窮屈さ、気味悪さを感じないし、感覚のあまりの鮮明さに全注意をそっちに奪われ、規模の大小を問わず共同体においては、構成個人の間に等質性が維持されることなどによって、＜隠蔽＞されてしまい、自分にも他の人間にもそれに気付いたり発見したりすることは容易ではありません。
学問は、全く未知のものに向き合うのではなく、感覚に埋没することなく、むしろ感覚とは距離を置き、そしてこの＜偽、仮象＞から脱出する方向を目指すことになります。学問における「感覚」の語は、もっぱらそのような意味において用いられています。
なお、ここで言う学問は、「第一の学」のみです。
形而上学は、その学びに着手前の状態（感覚主導）を脱して新しい知識（思想主導）を得ることなので、＜学びに着手前の状態＞を自分から切り離さなくてはなりません。
つまり、学びとは＜学びに着手前の状態＞を確保しつつ発展させるのではなく、要するに＜学びに着手前の状態＞に新たな何かの知識を＜継ぎ足す＞のではありません。
＜学びに着手前の状態＞を自分から切り離すことによって、そのものの正体を、即ちそれと全く異なる＜思想の見地から見究める＞、実にこのことが＜新しい知識＞に生まれ変わるわけです。
「第二」の学に上記のことは当嵌りません。第二の学はすべて部分の学つまり専門学であり、また第一の学のような＜完結＞を伴わない学問です。プラトンがその学園アカデメイア入口に掲げたと言われる「幾何学を学ばざる者入門を許さず」の考えをアリストテレスは否定し、幾何を含む数学は第二の学の一つとしています。
＜より先＞と＜より後＞
すなわち或るものは他のものがなくても存在しうるがゆえに＜より先き＞であるが、他のもの＜より後＞はこの或るものなしには存在しえないからである。
・・・
ものをその可能性においてみるか完全現実態においてみるかによってちがいが生じる。すなわち或るものは可能性においてのほうがより先きであり他の或るものは完全現実態においてのほうが先きである。1019a1
＜より先＞なるものは自立すること、＜より後＞なるものは＜より先＞なるものに依存すること、です。
テーブル上にグラスが置かれている場合、テーブルはそこにグラスが置かれていようがいまいが関係ありませんが（自立）、グラスは机によってその高さに支えられていて、机なくしては落下して割れること必至です。＜より先＞は主（する側）、＜より後＞は従（される側）とも言えます。
形而上学の学びには、主、従の関係が互いに逆方向の二つが考えられます。
＜学びに着手前の状態＞は可能態、＜その究極を学び終え、新しい知識を得た状態＞は完全現実態です。現実態は可能態と完全現実態の双方に目配りできる両者の統合態です。
可能態からみると可能態は出発点である故にこれが主（知る側）、完全現実態は従（知られる側）です。可能態が存しないならそこからの出発もあり得ないから。しかし完全現実態に到達後はそちらが主（知る側）、可能態が従（知られる側）側と逆転します。
可能態であることの意味は可能態においてではなく可能態を＜解体＞後の完全現実態に達してのちに理解される、ということです（添付した図の矢印の向きは＜知られる側＞に向けてあります。太い矢印は＜さかさま＞を強調したものです）。
現実態
完全現実態においては、可能態と完全現実態の二つを手に入れることになるので、それらを統合した（従って双方に目配りできる）立場が考えられ、これを現実態とします。例えば、この「形而上学」のような書物を著す著者の立場です。あくまでも完全現実態到達後のことです。
参考、可能態potency、完全現実態complete reality、現実態actuality
完全現実態にせよ現実態にせよこの「現実」の語には、〔今〕なる時間が含まれています。過去、未来いずれでもなくて現に生きている〔今〕です。
つまり、学びとは＜学びに着手前の状態＞を確保しつつ発展させるのではなく、要するに＜学びに着手前の状態＞に新たな何かの知識を＜継ぎ足す＞のではありません。
＜学びに着手前の状態＞を自分から切り離すことによって、そのものの正体を、即ちそれと全く異なる＜思想の見地から見究める＞、実にこのことが＜新しい知識＞に生まれ変わるわけです。
「第二」の学に上記のことは当嵌りません。第二の学はすべて部分の学つまり専門学であり、また第一の学のような＜完結＞を伴わない学問です。プラトンがその学園アカデメイア入口に掲げたと言われる「幾何学を学ばざる者入門を許さず」の考えをアリストテレスは否定し、幾何を含む数学は第二の学の一つとしています。
＜より先＞と＜より後＞
すなわち或るものは他のものがなくても存在しうるがゆえに＜より先き＞であるが、他のもの＜より後＞はこの或るものなしには存在しえないからである。
・・・
ものをその可能性においてみるか完全現実態においてみるかによってちがいが生じる。すなわち或るものは可能性においてのほうがより先きであり他の或るものは完全現実態においてのほうが先きである。1019a1
＜より先＞なるものは自立すること、＜より後＞なるものは＜より先＞なるものに依存すること、です。
テーブル上にグラスが置かれている場合、テーブルはそこにグラスが置かれていようがいまいが関係ありませんが（自立）、グラスは机によってその高さに支えられていて、机なくしては落下して割れること必至です。＜より先＞は主（する側）、＜より後＞は従（される側）とも言えます。
形而上学の学びには、主、従の関係が互いに逆方向の二つが考えられます。
＜学びに着手前の状態＞は可能態、＜その究極を学び終え、新しい知識を得た状態＞は完全現実態です。現実態は可能態と完全現実態の双方に目配りできる両者の統合態です。
可能態からみると可能態は出発点である故にこれが主（知る側）、完全現実態は従（知られる側）です。可能態が存しないならそこからの出発もあり得ないから。しかし完全現実態に到達後はそちらが主（知る側）、可能態が従（知られる側）側と逆転します。
可能態であることの意味は可能態においてではなく可能態を＜解体＞後の完全現実態に達してのちに理解される、ということです（添付した図の矢印の向きは＜知られる側＞に向けてあります。太い矢印は＜さかさま＞を強調したものです）。
現実態
完全現実態においては、可能態と完全現実態の二つを手に入れることになるので、それらを統合した（従って双方に目配りできる）立場が考えられ、これを現実態とします。例えば、この「形而上学」のような書物を著す著者の立場です。あくまでも完全現実態到達後のことです。
参考、可能態potency、完全現実態complete reality、現実態actuality
完全現実態にせよ現実態にせよこの「現実」の語には、〔今〕なる時間が含まれています。過去、未来いずれでもなくて現に生きている〔今〕です。
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