続『日本短編漫画傑作集』炎上騒動に思うこと

■小学館『日本短編漫画傑作集』を「少年青年漫画編」のサブタイ追加し発売　「少女漫画が収録されていない」との指摘を受け
(ねとらぼ - 2021年06月30日 19:09)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=6574450

　記事では省略されているが、残る４〜６巻の収録作家のラインナップも発表されている。詳細は以下の通り。

●日本短編漫画傑作集　４
　いしいひさいち、一ノ関　圭、ますむらひろし、星野之宣、高橋葉介、さべあのま、新田たつお、藤子・Ｆ・不二雄、坂口　尚、はるき悦巳、宮西計三
●日本短編漫画傑作集　５
　高野文子、湊谷夢吉、ひさうちみちお、泉　昌之、杉浦日向子、浦沢直樹、高橋留美子、谷口ジロー、関川夏央、弘兼憲史、いがらしみきお
●日本短編漫画傑作集　６
　吉田戦車、青山剛昌、岡崎京子、すぎむらしんいち、よしもとよしとも、松本大洋、藤田和日郎、村野守美、とり・みき、筒井康隆、あだち充、真造圭伍

　なるほど、１〜３巻に比べて、「女性」作家の収録作が一気に増えている。そのメンバーも、一ノ関圭、さべあのま、高野文子、杉浦日向子、高橋留美子、岡崎京子と、この方々が入らなかったら嘘だ、と思える納得の名前が挙がっている。選者の皆さんの「見識」の深さが窺える。
　しかし、これだけのメンツを揃えても、やはりまだまだ不十分、という声は当然のように上がるだろう。「全６巻」という巻数はあまりにも少ない。編集部が「少年・青年漫画」にジャンルを絞り、さらに「年代」も2000年代初頭までに区切ったのは、できるだけ「漏れ」を少なくしようという配慮だったのだろう、と考えられる。
　批判を受けて、「少年青年漫画編」とサブタイトルを付けた以上は、続刊として「少女漫画編」や「一コマ漫画・風刺漫画編」、あるいは「ゼロ年代編」「2010年代編」も上梓しなければ、それこそ嘘だろう。近年の作品はまだ評価が定まっているとは言えないのではないか、という意見もあるとは思うが、たとえば、こうの史代や西原理恵子が収録されなかったら、やっぱりふざけんなって怒りの声が噴出することになるだろう。近年の作家でも、既に「名作」の評価を得ている方々はしっかりいらっしゃるのである。

　こうなると、批判を受けた根本的な問題は、やはり「たった６巻」で日本の短編漫画を網羅するかのように錯覚させたタイトルの付け方に問題があったのだと言わざるを得ない。続刊として、「少女漫画編」や「一コマ漫画編」を出すとしても、さらに５〜６巻、「21世紀編」を出すならそれに加えて２〜３巻は必要になるだろう。
　だから最初から全20巻くらいの規模で出せよ、と前の日記にも書いたのだ。

　コロナ禍は長年言われ続けていた出版不況をさらに加速させている。小学館編集部としては続刊を希望していても、売れ行きが悪ければ計画を断念せざるを得なくなる。最初に3巻を一気に発売というのは、まずはまとめ買いをしてほしいという思惑があるのだろう。シリーズものはだいたい１巻ごとに売れ行きが半減していくから、１巻ずつ６巻出していたら、最終巻の発行部数は微々たるものになってしまう。４〜６巻の発売日は現時点では未定だが、おそらくは２〜４ヶ月以内に、また３巻まとめて発売されるのだろう。全冊買っていたら財布に相当響くが、皆さん何とか予算を工面して、大人買いをしてほしいと思う。
　これも前の日記に書いたことだが、今は本当に漫画が読まれなくなっているから。
　漫画やアニメは日本が世界に誇る文化だと褒めそやされる割りに、漫画の歴史的価値をちゃんと理解してる人は、文化人と呼ばれる人の中でも少数派だから。
　この記事に付いたコメントをざっと眺めてみても、「少女マンガがないじゃないか」というクレームが寄せられたことについて、サヨクの反応だとかツイフェミが批判してるんだとか、頓珍漢なことを書いている人がやたら目立つんだけど、漫画をろくに読んだこともないからそんな的外れなことを言ってしまうのだ。実際、こういうアンソロジーが出たときに必ず出てくる作家の誰それが入ってる、入ってないで一喜一憂するコメントが全然ないんだよね。ろくに漫画を読んでないやつらばかりだって証拠じゃん？
　収録作家のラインナップを見れば、「女性」を排除したんじゃなくて、「少女マンガ」というジャンルの作品をオミットしたんだってことも分かるじゃない？　１〜３巻の段階でも、佐々木マキ、やまだ紫、つりたくにことか収録されてたよ？　「少女マンガで収録に値する作品がなかったってことなんじゃ」なんて発言をしてるやつに至っては、浅薄すぎて唖然とするしかない。
　全く、漫画に関して何か言える程度の知識も教養も見識もない奴が、何を偉そうに語っちゃってるのかね。

　私も、多分、収録作の大半が既読だとは思うが、それでもこのシリーズは全巻買おうと決心している。「歴史」の検証は、ある程度の評価が定まった後でも、常に再検証していかなきゃならないものなんだよ。
　そんなふうに漫画をいちいち「勉強」するなんて面倒くさい、と仰る方は、そもそも私には「漫画好きな人」だとは感じられないので、この問題自体に絡んでこないでほしいと思う。全く、どうしてたいして関心もない話題なのにコメントしないではいられないビョーキな人ばかりなんだろうかね？