1981年、51歳

BSプレミアムの「アナザーストーリー」で向田邦子を取り上げていた。
台湾で乗っていた旅客機が墜落して亡くなったのは1981年８月、
ちょうどいまから40年前の夏、人生の絶頂期を迎えようとしていた51歳。

脚本家として数々の傑作を著し、70年代を代表するひとりとして駆け抜け、初めて書いた小説「思い出トランプ」が直木賞を獲得した直後の出来事やっただけに、日本中が騒然としたのを記憶している。

生涯独身を通した向田さんは、亡くなる数年前に乳癌を患い、死を覚悟しなければならないところまでいっている。
それが寛解し、新たなステージに足を踏み入れかけた矢先の事故。
飛行機が発明されてからおよそ110年の間に航空事故に遭って亡くなった人の数は、アメリカで１年間に交通事故で亡くなる人より少ないと言う。
それなのにどうしてよりにもよって向田さんが。

飛行機事故で亡くなった有名人と言えば、日航123便の坂本九と宝塚女優の北原遥子。
南アフリカで事故に遭ったプロレスラーのハル園田。
古くはインド独立の闘士チャンドラ・ボースやスウィングジャズの創始者グレン・ミラーなどがいるけど、向田さんの唐突さはほかと比べようがないと思う。

なにしろ、脚本家として頂点を極めていたところへもってきての直木賞受賞やから、まさに時代の寵児となりつつあったタイミングやったんやから。

凛とした美しさの日さんには男性ファンも多かった、
まだ若かったボクもなんてかっこいい女性がいるんやろと思ってた。
それが51歳で亡くなってしまうやなんて。
まだまだやりたいことはいっぱいあったはず。
一回くらいは結婚してもええかと思ってたかも知れへんし、行きたいとこ会いたい人もたくさんやったはず。

50過ぎたらいつ死ぬかわからんのやから、やりたいことはやっとけ、買いたいもんは迷わず買え、行きたいとこへはすぐに行け、会いたい人にはいますぐ会え、好きな女に好きやと言えと常々まわりに言わせてもらってる。
向田さんの無念に触れて、ますます強く思うようになってもた。

生きてはったら今年で91歳。
生前、徹子と仲がよかったそうやけど、その徹子より４つほど年上やったんやね。
いま、長老と言えば橋田壽賀子と倉本聰。
存命なら、さらにそのうえに君臨してはったかも。
まだまだ頑張らなあかんで、ぢぶんも。