イヨネスコ『授業』。むかし、渋谷はジャンジャンで常にやってました。中村伸郎さんが。
ジャンジャンは公園通り、パルコに上る左手の地下にあったんじゃないかしら。週末あの辺に遊びに行くと、必ずこのポスターが。
ポスターだけじゃありません。いつもガチでやってました。
◆授業 ー 前編
https://youtu.be/THDB6UhjzpQ
さんざ通っててガールフレンズにかまけ、結局観なかったのだが ー というのも俺は末期のアングラにハマっていたこともありまして ー 後悔余りあります。
なぜと言うに、中村伸郎さんをリアルで観なかったから。そして『授業』は・・・
ある教授の家に女学生がやって来る。彼女は大学生、3週間後に博士課程の試験を控えておる。
教授は請け合う。「君を絶対に試験に合格させる」と。教授はそれで有名だったのだ。
女子学生は優秀である。こと数学は抜群。教授はいったん、引く。その秀逸に。
ところがそれは足し算のみで、引き算になると全くわからない。こりゃヤバいと思った教授は、「数の何たるか」、基本に落として質問をする。「3と4は、どちらが大きいですか」。
彼女はわからない。
しかして力関係が逆転、教授は ー 本来教授たるはそうなんだが ー 優位に立つ。
彼は彼女のあまりの馬鹿さに憤り、殺害す。
実は、これで40人目である。
若い女子学生と年老いた教授との会話は、至極性的なメタファー。つまり、彼は彼女をやりたいのだ。その�牴當��爐海蹴慳笋鯢修箸靴拭崋�業」。授業って言葉自体、エロチックですよね。
教える者と教えられる者が順列→並列→逆列するそのありようは、性的であると共に普遍的。
人は教えていると同時に教えられている。これは教育関係のみならず、他の職種でも家庭でも友人関係でも同じですわね。だから「自分は努力した。自分の力のみで成功した」が大きな勘違い。我が子に対してさえ、それはマウント。ベタな例ではワタミのW氏なんかあり得ねー訳で。
もうひとつは ー 上記を深掘りすると ー 意識の問題。
教授はまず「若いチャンねーを食いたいぜ」といふのがある。しかし彼女はなかなかに優秀であるから、学問をトリガー（言い訳）では手強い。
ところが彼女にゃ瑕疵がある。そこを発見す。これはイイぞと彼は突く。
議論（ディベート）で勝つの要諦もここにありますが、意識の流れであると同時にこれは「人間のいかがわしさ・弱さ」を明らかにしておる。
『授業』のベースはさらに、教授がサイコパスである点。このような芝居・過程を通じてイヨネスコが問うのは
「君たちも,実はサイコパスなんじゃないの？」
音いきます。「誰がケネディ兄弟を殺したのか。結局俺とお前たちだったじゃないか」と悪魔が語ります。
◆ストーンズ ー 悪魔を憐れむ歌
https://youtu.be/GgnClrx8N2k
かくなる「問い」を設定したのが ー 答じゃなく ー イヨネスコ『授業』の肝かと。
だから普遍的なんだが・・・一般にこれは「不条理劇」と呼ばれます。ベケット『ゴドーを待ちながら』※ 等とともに、戦後世界を席巻しました。
※漫才界でもセント・ルイスが一所懸命これをやってましたね。
とまれ不条理劇は、カフカ『変身』『断食芸人』はたまた『街の紋章』よろしく謎であります。
だから心に残る。
ちなみに、目下日本の最高俳優・仲代達矢さんは60年代初期、パリでたまたま『授業』を観、衝撃を受けて近年演じました。
◆仲代達矢氏インタビュー ー ドキュメンタリー映画の舞台挨拶より
https://youtu.be/d0rrr2C4kQY
中村伸郎さんに仲代さん・・・。
こんな偉大な役者は少なくなりましたね。今のジャパンには。
しかして彼らの存在自体が、私どもにとって「授業」であります。
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