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2020年04月04日23:30

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かつてのベニス。疫病と町の風景

トーマスマン、der Tot in Venedig.大学に入ってすぐの1学期の講義の一つはこれだった。もう一つはからす、という不思議な小説だった。生まれて初めてのドイツ語の授業(リーダー)だったので印象が鮮烈だったのかも知れないが、そのとき、教授は「まだ君たちは若いからこのときのマンの気持ちは分からないだろうが」とつぶやいていたことを思い出す。
 これは真面目に自分で読んだので、今でも良く思い出す。
あのときのベニスの浜辺の異様な様子。
それはいま我々がホテルで、駅で、町で、砂浜で、季節こそ違うものの、けいけんしているものだ。
 いまとなっては二学期以降に次々に与えられた教材のことは記憶が曖昧になっている。学生運動も忙しかったし、特に夏以降はほとんど授業に出なくなっていたからかも知れない。おっと夏以降どころか、連休のころからもう忙しくて、ゼミ以外はでなかったのだっけ。
 英語はキーツの書簡集を読むという講義が真っ先にあったと思う。
かなり難しく、しかも授業では飛び飛びに指定されていたが、試験はその教本、熱さが3センチはあろうかというかなりな分量の全範囲から、と言うので絶句した者だった。
当時は英米文学に全く興味がなく、せいぜいエドガアランポーぐらいしか読まなかったので、特に英語の教本は苦痛だった。しかし、いま、このとしになると、あのときに与えられた教材の描いていた者をときどき鮮明に思い出す。
 キーツももっと真剣に読んでおけばよかった、案外、マルクスやレーニンよりも遙かに豊かな者を得られたのかも知れないとつくづく思う。

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