反撃しましたよ、当然

生徒に平手打ちや蹴り約30分
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なに、三十分も？
　
アホか、なんでやり返せへんねん？
　　
　
昭和三十年代後半の大阪の中学ちゅうのんは、今とは大違いで、
　
なんせひとクラス５０人、一学年２４クラス、学校全体で７２クラス、
　
３６００人で、朝礼でラジオ体操なんちゅう贅沢もできませんでした。
　
当然、生存競争は熾烈で、力が全てを支配する世界。
　
カツアゲ・苛めは日常茶飯事、それもひどい苛めでしたで…。
　
　
「子供の権利条約」なんかハイカラなもん、どこにもあれへんかったし、
　
塀の中では「日本国憲法」も機能してませんでしたで。
　
　
あの頃は、ホンマに碌な教師しかおらんかったし、
　
生徒をまるで牛か馬みたいに殴る蹴るちゅうのが、ごく普通の風景でしたがな。
　
中には「オンドレ、カタワにしたる！」て口走って、
　
顔と言わず腹と言わず殴る酒臭い体育教師もおりましたなぁ。
　
授業中にタバコを吸う数学教師もおったし…。ホンマ、碌なもんやなかった。
　
　
当然、僕らは自衛せんと生きて行けんから、やりましたがな。
　
僕の場合は忘れもせん中二の秋、英語教師が休んで、
　
その補欠に来たオッサンがこれまたひどい奴で、
　
教室に入ってくるなり「立てィ！」と号令、
　
やや遅れて立ったんがソイツの癇に障ったんでしょうな、
　
いきなり僕の胸倉を捕まえて往復ビンタ。
　
そのまま教室の一番後ろまで押して行って、また往復ビンタ。
　
こんどは向きを変えて教室の一番前まで押して行ってまたまた往復ビンタ。
　
何が起きたんやら、こっちは訳が判らんですやんか。
　
その挙句「一時間そこに立っとれ！」と命令。
　
やっと落ち着いたら、プライドをズタズタにされた怒りで、頭が真っ白。
　
教卓のそばにある木製の丸椅子を振り上げて、
　
油断して向こうむいとるオッサンの後頭部を横殴りにガツン。
　
オッサン、訳の分からん叫びを発して、蛙みたいに昏倒。
　
暴力の疼きにスイッチが入ってもた僕は、髪の毛をつかんで引きずり起こしたけど、
　
「中年男ちゅうのは意外と重たいな」て思たのを覚えてます。
　
こんどはこっちがオッサンに往復ビンタを何発も食らわしました。
　
生徒から半殺しにされるやなんて、生まれて初めての経験やったんですやろ、
　
パニックで目が泳いでしもたオッサンは、大急ぎで逃げてしまいよった。
　
クラスは総立ち、興奮が収まって丸椅子を調べたら血ィついてたから、
　
雑巾で綺麗にふき取って証拠隠滅しましたがな、もちろん。
　
　
そのあと、職員室から呼び出しはないし、担任は何も知れへんみたいでした。
　
そらそやろ、中二にやられたなんちゅうカッコ悪いこと、職員室で言えんわな。
　
それからオッサン、学校で目ェ合うても、顔そむけよる。
　
　
あとでよそのクラスから聞いた話では、そのオッサン札付きの暴力教師で、
　
授業中に女の子を机ごと蹴り倒して、薄ら笑い浮かべとるキチガイで、
　
ガキに殺されかけた一件以来、授業中の暴力はなくなったそうな。
　
おかげで「オマエ、よーやってくれたのー」て、みんなに感謝されましたがな。