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2020年02月02日08:00

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藤原歌劇団「リゴレット」(1日目)

指揮:柴田真郁
演出:松本重孝
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:藤原歌劇団合唱部

出演
リゴレット 須藤慎吾
マントヴァ公爵 笛田博昭
ジルダ 佐藤美枝子
スパラフチーレ 伊藤貴之
マッダレーナ 鳥木弥生

 ようやく本公演で聴くことができた須藤のリゴレット。いやー、素晴らしかった。マイミクさんの紹介で、サントリーの小ホールでピアノ伴奏の公演で聴いてから7年。その時もよかったが、今の須藤だからこその、満を持してのパフォーマンス。持ってた甲斐があった。
 名作だが、比較的日本で上演されることが少ない。椿姫に比べると5分の1以下じゃないだろうか。それもこれも、リゴレットを歌えるバリトンがいないから。記憶に残っているものでも、スカラ来日のヌッチやローマ来日のブルゾン、スカラではないボローニャ来日のガザーレ、日本人では二期会公演の上江くらい。新国でも誰かで聴いたと思うが、ほとんど記憶にない。神様ヌッチは別格として、記憶の中のカザーレやブルゾンより感銘を受けた。須藤のリゴレットは、神様に迫るということだろう。
 とにかく最後の la maledizione!の絶叫まで、どのフレーズやどの音をとっても、流している瞬間は全くない。全てが意識化され、彫り込まれ、表現されている。須藤がどれほどこの役にかけていたのか、はっきりとわかる歌唱。彼のキャリアのひとつのピークだったんじゃないだろうか。

 相手役の佐藤はベテラン。チャイコフスキー・コンクール1位の衝撃からもう20年以上か。去年のフォルヴィル伯爵夫人はよかったが、さすがにジルダはどうかと少し心配だった。出だしは少し年齢を感じさせるところもあったが(すいません)、Caro nome の技巧を尽くした歌唱から調子が出て、2幕、そして3幕の幕切れは素晴らしかった。後輩やたぶんたくさん来てた生徒さんに、ソプラノ・レッジェーロの正統とはこういうもの、というのを聴かせようとしてたんじゃないだろうか。デヴィーア様が藤原で歌ったヴィオレッタを思い出した。

 笛田は声質はスピント寄りのリリコ、今までよく聴いているが、イタリア的な美声ではまさに日本人離れしてる。ただ、クラウスやパヴァロッティなどのレッジェーロ系公爵が刷り込みだったので最初は違和感があった。でも聴いているうちに、公爵というのはこれぐらい自信満々でもいいなと思ってきた。だからこそ女性に対して、あれかこれか私にはどちらも同じ、なんて傲慢な事を言えるんだろう(一度ぐらい言ってみたいけど…、すいません冗談です)。そう思ってからは、その美声をたっぷりと味わった(自分では絶対に持てない気持ちを味わえるのも、オペラの醍醐味)。
 伊藤のスパラフチーレや鳥木のマッダレーナも役柄に合っていて、主役5人が揃っていた。

 指揮の柴田は、7年前に藤原で仮面舞踏会を聴いている。その際「全体的に自分のヴェルディを描こうという意欲に満ちている。しかも、それが空回りしないで歌手・オケ・合唱、劇場全体から立ち上げようとしている。こんな劇場感覚を持った指揮者が日本にいたとは思わなかった。」と書いたが、今回も同じ感想を持った。ただ、厳しい事を言うようだが、7年前から成長していたかというと少し疑問符がつく。まあ、今はキャリアを積み重ねる時期だろう。日本でも海外でもチャンスがあればどんどん振って欲しいもの。

 ピットの日フィルは、ルーティン・ワークではなく真摯で暖かい響きで悪くなかった。日フィル聴くのは40年ぶりぐらいだろうか、なんか昔の懐かしい音が残っているようだった。ピットにも入ってもらいたいし、機会があったら今度コンサートも行ってみたいかも。

 カテコはいつもの応援団が多かったようで、盛り上がっていた。私も主役3人にはブラボ・ブラバで参戦。ロビーは若い音大生が多かったようで、華やか。ペラゴロ・ジジイにはちょっとまぶしかった。歌の藤原という点では大満足。演出は…、まあ言わぬが花。
 今日は二期会公演でも歌った上江がキャスティングされてるけど、移籍したんだろうか。二期会と藤原の両方の本公演でリゴレット歌う歌手はなかなかいないだろう。聴いてみたいけど、まあ自重しておこう。
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